退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

56 / 107





第17話 戻る時は一瞬で

紗夜 side 〜3日後〜

 

〜〜回想〜〜

 

私達が頂点とは何か知った練習の後、ファミレスでの反省会。

そこで白金さんが

 

「あの……1ついいですか…?」

 

「?どうしたの?」

 

湊さんがそう尋ねると

 

「その…陽菜さんは……いつ帰ってくるんでしょうか……?」

 

「……」

 

返された質問に湊さんは沈黙していた。

そして私も白金さんと同じ疑問を抱いていた。

 

「確かに、決められた時間があるわけでもありませんから…」

 

すると

 

「それなら、今週の土曜日にCiRCLEでライブイベントがあるわ。

それに参加して、私達のライブを見せる」

 

「でも…どうやって…?」

 

「私が直接本人に、ライブチケットを渡すわ」

 

〜〜回想〜〜

 

(という風になってしまったけれど、大丈夫かしら…)

 

そして時間はどんどん進んでいった。

 

 

 

 

紗夜 side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

昼休み 校舎裏

 

 

最近じゃ誰も来なくなって静まり返った場所の校舎裏。

そこで壁にもたれながらウトウトしていると

 

ザッ…

 

足音が聞こえ、その音のした方へと目を向けると、眠気が一瞬覚めた。

なぜなら

 

「…友希那…?」

 

そこに立っていたのは友希那だったからだ。

すると

 

「今日の夕方5時。

CiRCLEに来てちょうだい」

 

「……!」

 

友希那がここに来た事に少し驚いていると

 

「…?」

 

どうやら、それを言いに来ただけだったようで、友希那は戻っていった。

 

「…まぁ、いいか」

 

そんでもって時間が過ぎて行った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

CiRCLE

 

CiRCLEまで足を運んだのはいいが、どうやら友希那はまだ来てないらしい。

すると

 

「あれ?陽菜くん?」

 

「ん?ああ、まりなさんか」

 

「やっぱり、最近全然見ないからびっくりしたよ。

それで、どうしたの?

今日はRoseliaの練習入ってないけど…」

 

「?入ってない?」

 

「うん。

今日は、友希那ちゃんの自主練だけだね」

 

「えっ?」

 

「あっ!私、オーナーに明日の事で頼まれてた事あったんだ!」

 

「明日?」

 

「えっ?あそっか、陽菜くん最近来てないから、知らないか。

実はね、明日の土曜日に、ライブイベントがあるんだ」

 

「?ガルパ?」

 

「ううん、今回は普通のライブイベントだよ。

なんと言っても、今は大ガールズバンド時代だからね!

裏方はなんとかしてみせるよ!」

 

そう言うとまりなさんは手を振って奥に行った。

 

「……うむ。

Roseliaでは予約してない…か」

 

すると扉のカランカランと音が鳴りこの時間帯に来る人物は、俺の中で大体限られていた。

そして振り返ると

 

「遅れてごめんなさい。

…話をしましょうか」

 

「…そうだな。

それで、探し物は見つかったか?」

 

「ええ。

私達の進むべき道も、私達に足りないモノも…。

ちゃんと見つけられたわ」

 

「……」

 

(頂点とはどこで、何があるのか。

それは、Roseliaにとっても、友希那にとっても見定めておくべきものだ。

だが…)

 

「じゃあ、聞くけど。

友希那自身に足りないモノは見つかったか?」

 

「…ええ。

でもそれは、ここで話しても、伝わりにくいでしょうから」

 

「そうか」

 

「だから、コレを渡しておくわ」

 

友希那が渡してきた物は、ライブチケットだった。

 

「明日のライブで、あなたに私達の事をわかってもらう。

…必ず、あなたに響く歌を歌ってみせる」

 

それを聞いて少しの安心感が出てきた。

 

「わかった」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日

 

時間通りライブを観に来ると、やはりと言うか、当然と言うか。

もう既に、観客席が大勢の人で埋まっている。

 

(そろそろか…)

 

そう思って、観客席の後ろへと向かっていると前方から

 

「よっ」

 

陽気な声で話しかけられた。

そしてその人物とは、カイトだった。

 

「…何しに来た」

 

不機嫌そうに聞くとカイトはヘラヘラしながら

 

「まぁまぁ、俺も見に来ただけやって。

んなことより、なーんで『頂点』に関して教えなかったんや?」

 

「……」

 

「お前の事やから、てっきりあっさりと教えるもんやと思っとったわ」

 

「それは、あの子達が自分で考えて気づくべき事だ。

それに、頂点が見つかったとしても、バンドをやる意味を思い出さないと意味がない」

 

「…ホンマに、初々しいバンドやな」

 

「ああ」

 

「まるで、7年前に結成されたばっかのオレらみたいやわ」

 

「…そうだな。

…フェスのコンテストまであと数ヶ月。

その間に、俺はR()o()s()e()l()i()a()()()()()()()()()()()()()()()()()()

その為にも、今回のライブは見届ける」

 

「…お前なぁ、ちょっとは周りのこと考えや」

 

「何が?」

 

「お前、昔から自分のこと無下に扱うやろ。

それをやめろ、って事や」

 

カイトが珍しく鋭い一言を放ってきた。

 

「別に、今も昔も無理に変わる必要なんて無いだろ」

 

「オレな、今でも覚えてるで。

お前がオレをバンドに誘う時。

そん時に、オレが左目が生まれつき見えんかった話ししたやろ?」

 

「……ああ」

 

そう。

コイツは、今ではキーボードを難なく弾けているが、生まれつき左目の視力と左耳の聴覚が奪われていた。

そして、そんなコイツを拾ったのが俺だった。

 

「それ聞いたお前は、オレになんて言ったか覚えとるか?」

 

「うっ…んん。

まぁ…覚えてる」

 

「ほな、言ってみぃ」

 

そして昔のことを思い出しながら

 

「ええとな、たしか…。

 

『それで断るんやったら、お前に俺のこの左目をやる。

それに掛かる手術の金も、俺がなんとかしてやる。

だから、俺達がフェスに出る為にも、キーボードをやってくれ』

 

…だっけか?」

 

「おう、そうや。

それを言われた分際でこんな事言いたく無いけどな。

あのお嬢さん方、なんやかんや言って、お前のこと待ってんねん。

ちゃんと自分を大事にするお前をな」

 

「……」

 

「これがわかったら…」

 

「…わかった」

 

「ホンマかいな…」

 

「ああ。

それに、その話をする相手はお前じゃないからな」

 

「…ちゃんと逃げずに話せよ」

 

「ああ」

 

すると照明でステージが照らされ、そこにはRoseliaが立っていた。

そして

 

「Roseliaです」

 

友希那がそう言うと同時に、演奏が始まった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Roseliaの演奏が始まってすぐ、会場はRoseliaの雰囲気に包まれた。

 

やっぱり聴くたびに、Roseliaの曲は進化している。

アレンジもあるが、なんと言っても、あの5人だからこそ奏でられる音が、この会場を覆い尽くす程に成長していた事に驚いていた。

 

(…あれは、そう簡単に易々と出来るものじゃない。

『ただ一緒に弾けば出来る』なんていう代物でもない)

 

しかし、今この会場で奏でてるのは、間違いなく

 

「『個々の音』」

 

そう発するとカイトは

 

「『個々の音』っていうのは、言わば絆の音や。

バンドメンバー同士が、お互いに同等の実力が無ければ奏でられへん。

やないと、音が乱れるからな」

 

「ああ…。

それも、たった約1ヶ月…」

 

(一体どんなチートだよ…)

 

そしてRoseliaの演奏を最後まで聴き続けた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

俺は、ライブを最後まで見届けた。

しかし、最後のアーティスト。

その後ろでバックバンドをしている1人に目がいった。

黒髪でベースを持っている。

 

(…上手いな…。

ライブにも慣れているし、今のところ、全体に調和している。

むしろ、他のメンバーが足を引っ張っている。

あの子は、そんじゃそこらのバンドにいるベーシストじゃない…な)

 

一目でそう判断していると、ライブが終わり、俺は外へと向かった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

友希那 side 〜CiRCLE前〜

 

「……」

 

待っていると、如月が入り口から出てきた。

そして

 

「来たわね」

 

「ああ」

 

「ライブはどうだったかしら?」

 

単刀直入に聞いてみると

 

「良かった」

 

如月がそう簡潔に答えると、リサが食い気味に

 

「ホント!?」

 

「あ、ああ…。

たった約1ヶ月満たない間に、あそこまで成長出来たのはすごい事だ。

…だからこそ、聴いておきたい」

 

どんな質問をされるのかは、見当がついていた。

 

「友希那は、自分に足りないモノが何かわかったか?」

 

それの答えは、もう見つかっていた。

コンプレックスとは違う、また別のモノ。

そして

 

「…ええ。

私は、自分自身の歌を好きと言えない。

自身の感情を伝える事も出来る音楽にとって、それはフェス優勝が遠退く事も、わかってる。

けれど…やっぱりどうしても好きになれないのよ」

 

その言葉は、自分の未熟さからくるものだった。

すると

 

「……そうか。

なら、友希那が自分の音楽を好きになれるまで、待ってる」

 

「……そう…」

 

そう返すと共に、如月は横を通り過ぎて行った。

 

「……」

 

「さて…と。

じゃあ、Roseliaの目指す頂点が定まった事だ。

とりあえずは、色々積もる話もあるだろうし、反省会だな」

 

『……えっ…!?』

 

「えっ、じゃなくて反省会、俺含めた反省会。

その…今回は俺もやり過ぎた感じあったから…」

 

再度言われると、驚いて声が出なかった。

すると

 

「ど、どういうこと…?

陽菜、戻ってくるの?」

 

リサがまとまり切ってない言い方で尋ねると

 

「ああ。

それと…俺の事は、まだわからなくていい。

学校でも何でも、会って話せば、どういう人間か。

それを理解できる時間はたっぷりある」

 

『……!』

 

それを聞いてこう思った。

 

(……ちゃんと自分の事も考えているじゃない…)

 

この人にとって、それが『珍しい』という事にならないように、ちゃんと考えてみる必要がある。

そう思考していると

 

「ほら、反省会するのか、しないのか。

どっちにする?」

 

「「…やり」」

 

「やるー!!

りんりん行こっ!」

 

「う、うんっ…!」

 

「「あっ!」」

 

あこと燐子が如月の方へと駆けていき

 

「アタシもー!」

 

リサもとたとた、と駆け寄った。

 

「「……」」

 

「まったく…」

 

「あの人はどうして、ああも人に好かれる体質なんでしょうか…」

 

「本当よ…。

ふらっと消えて、あっという間に戻ってくる」

 

「はい。

ですが…今回は、如月さんの事をよく知れた。

という事でもありますね」

 

「そうね。

……今回の反省会は、如月のルールも決めましょうか」

 

「ルール?」

 

「ええ。

たとえば、そうね…大雑把に言えば。

『如月が許可無く暴れることを禁じる』とかはどうかしら?」

 

「湊さん…」

 

「?」

 

「良い案だと思います。

それも加えて、向こうで、もちろん反省会も含めて話し合いましょうか」

 

「ええ。

それじゃあ、行きましょうか」

 

そうして歩いていくと如月が

 

「なんか……とてもメンドくさそうな話をされてましたねぇ…」

 

何か困ったような顔で言った。

 

「ついでに決めるだけよ」

 

「『ついで』で、俺の行動が制限されるのは、色々とキツイんですが…」

 

「それは、反省会で多数決をとりましょうか」

 

「よし、乗った」

 

 

 

 

友希那 side out




はい。
我が友がインフルにかかりました。
これで、しばらくFGOアーケードのカードは帰ってきません。

あんにゃろ…始業式から休みやがって…

とまぁ、愚痴は捨てて


久しぶりの長文オマケ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ファミレス店内

(自分自身の歌を好きと言える心。
そして何より、演奏を楽しむ心が、フェスで優勝する為に1番大切なことだ。
…それは自分で気づかないと意味が無い)

だが、今回のRoseliaのライブは、本当に良かった。
これが文字通りに感動した、という事だろう。

(……Roseliaはまだ進歩する。
上に進める)

Roseliaは()()()()()()()()と言うだけで、()()()()()()()()()はまだ知らない。

ならば、あの子達が楽しむ心を持ち続けて演奏出来るまで、俺は最後まで見届けよう。

そんな思想を巡らせていると隣でリサが景気の良い声で

「それじゃあー☆
『陽菜のルール』を決めるかどうかの多数決やろっか♪」

「へいへい…」

これに関して俺は勝つ未来しか見えなかった。

なぜか今日に限って自信があったからだ。

だからこそ、多数決に勝つ未来しか見えなかった。
(次回以降の主人公をお察し下さい

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。