退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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第18話 文化祭の準備を手伝う非文化委員

さて、日曜日はそれなりに練習を見たのですが、大変なのはまぁこれから。

 

 

文化祭の出し物を今週までに決めて、それから予算の割り当て、書類の整理、提出などの日々が始まる。

して、今は出し物を決める為の6時間目

 

「はーいっ!

それじゃあ、1日目と2日目のクラスの出し物決めよー!」

 

『おー!!』

 

前で指揮を執ってるのが日菜だからか、クラスがよくまとまる。

そして

 

「じゃあ、誰か出したいものあったら言ってねー!」

 

日菜がそう言うと、クラスの生徒たちは次々と手を挙げて、意見を出していった。

 

(…活気の良いことで。

文化祭は10月の20日に行われるから、早めに決めた方が良いんだろう…。

まぁ、当日休むけど)

 

頬杖をついて、窓から空を見ていると、まだ少し明るいくらいだった。

そして町の通りすがる人達を見下ろしながら

 

(今日も町は平和である)

 

1人心の中でそう思って、この時間が終わるのを待った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

放課後

 

 

クラスの生徒たちが帰って行く中、俺は教室に残っていた。

まだチラホラと文化祭が楽しみなのか、話し合っている生徒も見えた。

 

「……」

 

それを気にせず、下校中の生徒が混ざった町を見ていると

 

「よーしっ!出来たー!!」

 

『ん?』

 

残っていた生徒たちが俺の背後を見ている中。

俺は、背後からの声で嫌な予感を察知した。

 

「ねねっ!陽菜くん見て見て!!」

 

(今この状況で話しかけるとか、ホントすげぇ…)

 

とは、言えず。

俺は窓側から振り向いた。

 

「おい…」

 

「?どしたの?」

 

「あんまり、教室とかで目立つ事しないでくれるか?」

 

「まーまー、気にしない気にしないっ♪

それより、これ見てよっ!」

 

そう言って日菜は何か差し出してきた。

 

「なんだこれ…」

 

「てってれーん!

今日決まった、1日目と2日目の出し物☆

それと、3日目の会場企画で何するかの表だよー!」

 

「へぇ…って、え?

今作ったの?この数分で?」

 

「うんっ!

出来るだけみんなの意見取り入れたんだよね!

そしたらね、ここがるんっ♪ってきた!」

 

もう一度、表の方に目をやると

 

「なんだこれ…?」

 

「お化け屋敷とメイドカフェ!」

 

「あー…なんで2つもあるんだ?

あとで多数決か?」

 

「ううん?

この2つをやるんだよっ!」

 

「…1つ言っとくが、みんなの案を無理に詰め込んだら、ロクなもんは出来んぞ」

 

「だーいじょーぶ!

1日目と2日目でちゃんと分けたからっ♪

1日目にお化け屋敷やって〜、2日目にメイドカフェにすれば良いんだよっ♪」

 

「…予算はちゃんと考えてんのか?」

 

「もっちろん!

1日目に黒いカーテンと小道具のお金で大体…1万円くらい?」

 

(聞くな)

 

「それで、2日目のカフェで残りの2万円を使って〜」

 

日菜が何か描き始めた。

そして

 

「こんな感じで、お客さんを取り入れれば良いんだよっ!」

 

バンッ!と中々に上手い絵を見せつけられた。

 

「…それは、わかったが、誰がメイド役するんだよ」

 

「?クラスの女の子みんなにやって欲しいけど。

もし無理だったら、男の子にやってもらうよ?」

 

(クラスの同胞男子諸君。

俺らの命、この子に握られてんぞ)

 

そう。

日菜は男子に『やってくれるか聞く』

ではなく

『やってもらう』

という、もう既に拒否権が失われた選択だった。

 

「あー、俺は無理だな。

接客は相手の顔見たら、やる気無くすから」

 

「陽菜くん、メイド長候補ね」

 

「珍しく辛辣だなおい!」

 

「あははっ。

陽菜くんのメイド姿、面白いかもっ!」

 

何を想像したのか知らんが、もう笑っている日菜。

 

(まずい…。

このままでは、本当に、ガチで、マジでやらされる)

 

俺はこの時、人生最大の危機を感じた。

と同時に名案を思いついた。

 

「そ、そうだ。

男子がクラスの女子から、メイドを推薦したらどうだ?」

 

「?陽菜くんは着ないの?」

 

「それは捨てとけ。

そして二度と持ち出すな。

で、話を戻すが、男子はバカだ」

 

「陽菜くんも十分辛辣だよね?」

 

「優しく言えば、単純なんだ」

 

「うん」

 

「だから、そんな単純な奴らにメイド役を選ばせてみろ。

このクラスは何の汚れもない確実に明るい雰囲気になるだろう。

そして、男子は当日喜び、選ばれなかった女子に関しては、遊びたい放題。

つまり、WIN-WINな関係を保てるんだ」

 

「おおっ!

?でも、なんでメイドは女子がやらないとダメなの?」

 

「そっちの方が、客が集まるから」

 

「そっか♪」

 

(良かった……社会的死は免れた…)

 

「あっ、でも。

それだったら、誰が良いか紙に書いて前に提出してもらおっか。

そっちの方がわかりやすいよね♪」

 

「ああ」

 

「それじゃあ、この表に早速書いちゃお☆

あっ、でも陽菜くん」

 

「?なんだ?」

 

「3日目の文化祭は何にするかまだ決まってないんだよね」

 

「会場企画の奴か…。

んー…適当にライ」

 

ライブと言おうとしたバカがいた。

俺の知る限り、この学校には、もう既に5バンドが揃っている。

 

文化祭ライブなんて、日菜や香澄達が聞いてみろ。

確実にやるに決まってる。

 

(なんやかんやで、友希那達と蘭達も参加する未来くらい、ヨユーで見えるわ。

それで、日菜が後ろの席だろ?

そんなん、ぜってぇ当日連れてかれる。

絶対にライブなんて言わない…)

 

なんて考えていると

 

「ん?香澄ちゃんからメール?」

 

日菜がスマホに届いたメールを確認しているのを見て

 

「………………………………………………あっ」

 

もはや、嫌な予感しかしない。

だって

 

「わぁ…!」

 

目の前で日菜の目が、キラッキラしてんだから。

 

「陽菜くん陽菜くん!

見てこれ!香澄ちゃんすごいっ!」

 

「……あー、なになに?」

 

ワザとらしく、メールの文を読み上げた。

 

『日菜先輩、3日目の文化祭の会場企画。

みんなでライブをやりませんか?

Roseliaの皆さんも誘ってライブしたら、絶対盛り上がると思うんです!

あっ、あと、決まったら教えてください!

そしたら、Afterglowとハロハピのみんなは、こっちで誘っておきますね!

ついでに陽菜も連れて来て!』

 

伝わりやすい文で作られていた。

 

「……あーうん。

要するに、脅迫状が届いたんだな」

 

「もー!違うよ!

ライブしようってお誘いっ!」

 

そう言って日菜はスマホをカバンにしまった。

 

「…言っとくが、それを成立させるのは、難しいぞ。

学年の20クラス全員の賛同が無かったら、出来ないからな」

 

「ふ〜ん……なるほど」

 

何か良からぬ事を考えてそうなので

 

「帰る。

…とりあえず、さっきの表は後で俺に送っといてくれ」

 

「?陽菜くん手伝ってくれるの?」

 

「?手伝ってくれ、って前に日菜が言ってただろ」

 

「それは会議だけだよ?」

 

「……」

 

「……」

 

ガサッ!(訳: 日菜が即座にスマホを取り出した音)

 

パシッ!(訳: そして俺が瞬時にその手を止めた音)

 

「どーしたの?

手伝ってくれるんじゃないの?」

 

「いやいや!手伝いませんよ!

こちらこそ勘違いしてすみませんね!」

 

「勘違いなら、勘違いしたままでいいのにっ!」

 

「よくねーよ!」

 

「いーーいーーのっ!」

 

バシッ(日菜が勢いよく手を振り払った音)

 

「あっ…!」

 

ピコンッ(訳: 俺のスマホの通知音)

 

恐る恐る開いてみると、表の写真が送られていた。

 

「グハッ…!!」

 

すると日菜はニヤっとしたいたずら顔で

 

「これで陽菜くんは、あたしのお手伝いくんだねっ♪」

 

「なんて事を…」

 

「じゃあね♪」

 

「あちょ待」

 

そう言って日菜は止める間も無く教室から出て行った。

 

「……はぁ…」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

時はそれなりに経ち、次の週の月曜日の放課後

 

 

校内放送で会長に呼ばれ、生徒会室に行くと

 

「来たか」

 

「呼ばれましたから」

 

今日は、隣に秘書の姿が見えなかった。

 

「……」

 

ドアを閉めて少し進んでから立ち止まった。

 

「それで、呼び出された理由を聞いても?」

 

「ああ。

お前には、この文化祭で役に立ってもらうぞ」

 

「俺は文化委員じゃないんですが…」

 

「氷川 日菜の手伝いをしているのは知っている。

それくらい問題ないだろう?」

 

「……わかりました。

それで、俺は何をすれば?」

 

「簡単な事だ。

文化祭の校内企画がある2日間、そこで見回りをしてもらう」

 

「見回り?」

 

「ああ。

と言っても、警備を兼ねた写真撮影をしてもらうだけだ。

簡単だろう?」

 

「要するに、2日間。

見回りをしながら、文化祭の写真を撮ればいいんですね」

 

「そうだ。

それと、会議にはこれからも引き続き出てもらう」

 

「?なんで?」

 

「2日間の話が終われば、次は3日目の会場企画について話す事があるからだ」

 

「ああ…」

 

(そういやあったな…)

 

なんて思いながら

 

「わかりました。

失礼しました」

 

そう言って外に出て行った。

 

「……文化祭休めなくなった…」

 

俺は文化委員じゃないのに、文化祭に行くこととなった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次の日

 

 

朝、学校に来るとなぜか集会が開かれた。

 

(なんで集会…?)

 

そう思いながらも、前に出てくる奴を待っていると周りが少し騒めき、前を見た。

そしてそこにいたのは

 

「みんなー!!

おはよー!!」

 

日菜だった。

 

(何やってんだああああああ!!!?)

 

頭が追いつかない。

更に周りのアイドルが出て来たことへの反応がうるさくなる。

すると

 

「えーっと、単刀直入に言うよ!

文化祭の3日目にある会場企画で、どのクラスもまだ何も決まってないみたいだから、今決めるね!」

 

「おい……まさか……」

 

「3日目は、ライブ祭にしようと思うよっ!!」

 

「言いやがったああああああ!!!?」

 

俺が悲鳴をあげる前に周りの盛り上がる声で、儚くも掻き消された。

 

(終わった……俺の文化祭という名の休日が……今の宣言と共に終わりを告げた……)

 

絶望していると日菜は

 

「それじゃあ…。

何か質問、反対意見がある人は手挙げてねー!」

 

思いっきり手を挙げたいところだが、抑えている。

そして誰も意見する事が無かった。

すると日菜がこちらを向いて

 

イェーイ

 

満面の笑みでダブルピースサインを送ってきた。

 

(あのやろう…)

 

そして朝の集会はお開きとなった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

多目的教室

 

 

翌日、そしてその次の日。

その間にも、日菜の手伝いを進め、会長のメール通りに仕事をした。

 

 

会議にもちょくちょく顔を出し、ホームページ作りを任されたり、書類の整理、ビラ作りまでも他の生徒から任され、かなりの日付が経っていった。

 

 

「休日明けも雑用か…」

 

学校のデスクトップの画面に向かってそう呟いた。

 

「これも頼む」

 

しかし、そう言って手を休めてる間に他の生徒が書類を置いていった。

そして終わりそうだった付箋の貼られた書類の整理が、溜まっていく、この惨劇。

 

「はぁ…」

 

すると周りを見てもやはり頑張ってすぐに終わらせている者が多い。

特に()()()()()の仕事がとても速い。

 

「はいっ!これとこれ終わったよ。

あっ、あとね〜。

これも終わったんだけど、ここ間違えてると思うから、確認してねっ」

 

日菜が3人相手にしてすぐに話を終わらせた。

そしてもう一方の紗夜は

 

「確認出来ましたので、こっちの書類は整理係の方へ。

それで、こっちの資料は副生徒会長の方へ渡してください。

それと委員長。

3日目の会場で使う機材について確認を取って欲しいので、連絡の方をお願いします」

 

今、どちらかの片目を閉じても、どちらかの働きは片目の視界に入るほどだ。

 

(…とりあえず、後20枚程度残ってるから、終わらせるか…)

 

そうして作業して行き、時間がいくら経ったのかわからずにいると

 

「今日はここまでだ。

そろそろ切り上げろ」

 

そう聞こえたので片付けを始める者もいた。

すると

 

「あと、2年のお前。

お前が今やってる書類の整理は明日までに提出だ」

 

「残ります」

 

「終わったら、まとめておけよ」

 

「ん」

 

そして時間が過ぎていき、俺は少し手間取った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

とりあえず、紗夜は練習があり、日菜も2つ程アイドルの仕事で帰って行き、つぐみは家の手伝いもあって、3人ともすぐに帰った。

 

 

「はぁ…眠い…」

 

書類の整理がやっと終わり、窓を見ると日が沈みかけていた。

 

(そろそろ帰るか…)

 

カバンを持ち、今日はそのまま下に降りた。

下駄箱で靴を履き替えていると第1体育倉庫から音が聞こえ、そこに向かうと

 

(?この臭いはタバコか…?

うむ…このまま見てたら、某探偵みたいに背後から殴られそうだな…)

 

気になったが、とりあえず眠いので帰った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして時は経ち10月8日

 

 

文化祭まで2週間を切ったくらいの頃。

事件は起きた。

 

Roseliaの練習が終わった帰り道。

友希那と帰っていると、1人フードを被った男が目の前に現れた。

 

「友希那。

この人と知り合いか?」

 

「あなたの知り合いじゃないの?」

 

「いや知らん」

 

するとフード男が近づいてきたと思うと

 

「どーも」

 

「っ!」

 

光る物が頰を切ると同時に、俺は友希那を連れて、数歩距離を置いた。

 

「……」

 

(いきなり斬りつけられるとか、予想外…)

 

手を少し頰に近づけると赤い液体が出てきていた。

 

「!如月…その傷…!」

 

「大丈夫だ。

それよりどうしようか…」

 

「逃げる一択でしょう。

構ってられるほど、暇じゃないの」

 

「だよな。

まぁ…後ろに向かって走れば…」

 

打開策を考えていると、背後に2人程出てきた。

 

「んー…待ち伏せ……か」

 

頰に液体がつたるのがわかる。

切られたところが、普通に痛い。

そして

 

「あー…君たちは、依頼主?雇い主?からこの子を殺せ、って言われてるのかな?

それとも、誘拐しろって言われてるのか?」

 

「後者だが、邪魔者は消せと言われている」

 

「ふむ……なるほど。

とりあえず誘拐しろ、邪魔者は殺せ、と。

そちらの親は何者で?」

 

「答える必要は無い」

 

すると3人は俺たちを囲むようにしている。

 

「…あそう。

それで、そのナイフ1本でやるの?」

 

そう言うと、3人はそれぞれ武器を取り出した。

 

「うわぁ…殺る気満々…。

友希那は出来るだけ下がっててくれよ…」

 

(…ルール上、俺は相手に本気を出しちゃいかんのだよなぁ…)

 

「ちょっと如月?

まさか戦うつもりじゃないでしょうね」

 

「そのつもりでいかないと、こっちがやられる。

だってアイツらの誰かが電波妨害の道具持ってるから、どうせ連絡出来んだろうし」

 

「本当ね…繋がらないわ」

 

「だから、テキトーに隙を作って逃げる」

 

「…やり過ぎには注意よ」

 

「う……む…」

 

友希那達に決められたルールの中。

どうしようか、なんて考えていると、前からナイフが振り下ろされていた。

 

「おっと危ない」

 

しかし、難なく手首を回しながらナイフ回収し、手首を背後に回して後ろの襟と一緒に掴んで地面に押しつけた。

 

「ふむ…サバイバルナイフか。

慣れない武器は使わない方が身の為だぞ」

 

ナイフを遠くに放り投げてから、関節を無理に動かしてしばらく痛みで動けなくした後、立ち上がりカバンを持った。

すると

 

「オラァ!!」

 

大男が横から来て、鉄パイプを両手で振りかざしていた。

 

「ん」

 

しかし、大男が『手首を掴まれた』と認識した頃には、石壁に叩きつけられている。

かろうじて立ち上がろうとするも、喉に打ち下ろされた(ひじ)が、大男の意識を奪う。

 

「うっ…!!」

 

「あっ…」

 

(思ったより防御力薄かった…)

 

なんて独り言を言ってると今度は背後から、メリケンサックを装備し、これまた別のフード男が正拳突きを放ってきた。

 

「それで頭狙うとか、殺す気かアンタ」

 

間一髪、街灯に映る影で気づき右に向かって避けたが、当たっていたら意識は奪われていた。

 

「お前は殺す。

その子は連れてく」

 

「ああ、そうかい」

 

シッ

 

男が殴るたび、風を切る音がする。

出来るだけ、相手の攻撃を受け流して、逃げる機会を伺っている。

 

(さて…そろそろいいかな)

 

「ふっ…!」

 

人型の残像の弧を描いて、相手の勢いを利用し地面に背中から叩きつけた。

 

「やっぱ…久しぶりに動いたらこうなるか…」

 

すると

 

「死ね!」

 

「……」

 

最初の男が起きたようだった。

ナイフを持っていたが、特に問題は無かった。

 

「えっ…?」

 

フード男は理解出来ないような声を出した。

躰が震えて動かないからだ。

 

殺気というものは、周りに対して当てるには、膨大な量も要らない。

ただ『殺す気迫』というものがあれば良い。

 

しかし、男に当てられたのは殺気ではなく、『遠当て』と呼ばれる武の達人が放つ現象に酷似したものだった。

 

放ったものが劣化版とはいえ、一時的に相手を足止め出来る程度にはなる。

 

かといって、何か特別な事をした訳ではない。

ただ、相手の目を()()()()()()()だけだ。

すると、フード男のナイフは手から滑り落ち、後退りをしながら座り込んだ。

 

「はぁ…」

 

(今の、結構疲れるんだよな…)

 

そう思っていると

 

「如月。

逃げる隙を作るんじゃなかったの?」

 

「あっ、しまった…」

 

「まったく…。

やり過ぎには注意と言ったでしょう。

ポイント1点追加ね」

 

「マジカヨ」

 

俺のルールは、約束を破ったら1点追加され。

5点になったら、罰を受けるそうだ。

 

「さてと……お前らの雇い主が誰か聞こうか」

 

電波妨害の道具を切ってから、近くにあったナイフを足でいじってチラつかせながら、質問すると

 

「し、知らない!

俺たちはただ電話で頼まれて…!」

 

「電話…?

相手はどっちだ?」

 

「女だった!

そ、それ以外は何も知らねぇ!」

 

(女…?あてが外れたか…)

 

そう思いながら、友希那が連絡しているのを見て

 

「……まぁ、後で警察来るだろうから。

そん時は、自首しろ。

友希那、今日はもう帰るぞ」

 

「え、ええ…」

 

そう言って帰っていった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日

 

「おーい陽菜ー!

って、どうしたのその傷!?」

 

廊下でリサがビックリしたような声で聞いてきた。

 

「落ち着け、ただの擦り傷だ。

浅いからすぐに治る」

 

「なら良いんだけど…。

文化祭の準備もあるんだし、無理は禁物だよ?」

 

「ん、善処する。

今日もまた忙しいだろうから」

 

「そっちも、あんまり無理しちゃダメだからね」

 

「…まぁ、頑張る」

 

そう言うとリサはスッと俺の顔に手を伸ばして、まじまじと見始めた。

 

「んー、ちょっとだけ目の下にクマが出来てるよ。

それに、目も充血して真っ赤になってる…」

 

心配そうな顔で近づいてくるリサ。

俺も、それほど拘束されては無いのだが、リサに触れられてるだけで動けない。

 

「あのリサさん?」

 

「ほら、目薬貸してあげるから。

目の下のクマはどうにもしてあげられないけど…」

 

「周りに見られてる」

 

「えっ…!?」

 

ここは廊下。

それなりに人は通る為、周囲の人からすごい見られてる。

するとリサの顔がみるみる紅く染め上げられ

 

「と、とりあえず目薬渡すから、ちゃんと使いなよっ!」

 

リサに俯きながら強引に渡された目薬を手に、俺はリサが教室に戻るのを見届けた。

 

(まぁ…気にすることでもないか…)

 

そうして時間も過ぎて行き、昼休みに突入。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

校舎裏

 

「ふわぁ…ねむ」

 

食後眠くなるのは、みんな同じ。

楽な時に楽するのは良い。

 

「ちょっと寝よう…」

 

昨日の事もあったので、寝ようとすると

 

「やっ、陽菜っ♪」

 

リサが来た。

それと同時に目薬の事を思い出し、『助かった』とだけ言って、返した後に寝る体勢に入った。

すると

 

「ほらっ!起きた起きたっ♪」

 

「…はぁ、俺は疲れてるんだが…?」

 

体を起こすと共に、リサは隣で律儀に正座の状態になった。

すると少しこちらに寄ってきた。

 

「…なぁぜぇ、くっつくんだ」

 

「えへへっ♪

ちょっとだけ寒いのっ♪」

 

「それで、『仕方ないな』なんて言うのは小説の中だけだぞ」

 

「もー、そこは『そうか』って言ってればいいのっ!

それに、陽菜だって来てくれて嬉しいクセにっ♪」

 

なぜかは知らんが、今日はリサのテンションが高い。

 

「……なんかあったのか?」

 

「!な、なんで?」

 

「いや…なんかテンション高いから」

 

「な、なんでもないよ〜?」

 

「?あ、そう…。

じゃあ、ちょっと……眠くなってきたから……あと頼む…」

 

「えっ!?ちょっと陽菜?」

 

そこで俺の意識は途切れた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

リサ side

 

陽菜が隣で寝ている。

それを見て

 

(あともうちょっとだけ…。

こっちにもたれかかってくれれば、アタシの肩に陽菜の頭が乗っかる…)

 

そんな事を考えている自分に気づいて、頭をブンブンと横に振った。

 

(って、何考えてるんだアタシ…!

うわぁ…!寝てるとはいえ、陽菜の前でそんな事考えちゃってた…!)

 

恥ずかしくて隣を見れずにいると

 

トンッ

 

陽菜がこちらに倒れて、肩に頭が乗った。

 

(へっ!?)

 

思わず声に出しそうになって危なかった。

すると

 

「ん…?」

 

陽菜が起きた。

 

「あれ…?

寝たのか俺…」

 

まだ若干半開きの目で、寝ぼけてることはわかった。

今なら…、そう思い

 

「ま、まだ時間あるから寝てても良いよ?」

 

「んぁ…そうか…」

 

「その〜……膝枕…してあげようか?」

 

「ん…」

 

ボフッ

 

「……」

 

周りはとても静かで風の音が聞こえる。

でも

 

(ふわぁああああああああ!!!

陽菜が寝たっ!!)

 

アタシの心の中はとてもうるさかった。

 

(めちゃくちゃ恥ずかしいけど…。

これなら…誰にも見られてないし……良い…よね?)

 

陽菜が膝の上で寝ている横顔を見ると、『本当に鈍感だなぁ…』と思わされた。

 

(でもやっぱり…陽菜見てたら支えてあげたい気持ち、出ちゃうなぁ…)

 

「……って、これいつ終わるの…?」

 

まったく考え無しに行動したため、予鈴のチャイムが鳴るまで、この状態は続いた。

 

 

 

 

リサ side out




なお丸様 ぶっかけうどん様

お気に入りありがとうございます!

なお丸様

この方もバンドリを投稿していますが、個人的にとても読みやすくて、面白いです!
♪( ´▽`)

皆さんも是非読んでみてください!

え?もう読んだ?

その方は読み返しましょう( ̄  ̄)

ついでに言うと

私は、キャラの照れ具合はああやって書くことも出来る事を知りましたd( ̄  ̄)


オマケ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

如月 陽菜に付けられたルール5(詳細を示せば3つ)

1, 無茶な行動をする時は、必ず友希那か紗夜に許可を取る。

2, 隠し事をしない

3, なんでも独りで抱え込まない

4, 上記のルールを破った場合は1点付与する。

5, 照れさせない

5点貯まればそれ相応の罰を受ける。
※罰は実行する人の気分で変わる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

……5、は上記に含まれていない……
つまり………そういうことだ……d( ̄  ̄)

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