退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

58 / 107
第19話 非文化委員のおしごと

翌日

 

(いや…昨日は普通にびっくりしたわ…)

 

起きたら、リサが顔真っ赤にしながら膝枕してんだよ?

そりゃ驚く。

 

なんて事を考えながらも、テープを持って頼まれた事を遂行しようとしている。

頼まれた事とは

 

一階の使わない教室に、立ち入り禁止区域にテーピングを貼っておいてくれ。

 

と生徒会長からメールで言われたので、今から貼る準備をしている。

 

「…俺は非文化委員なんだが…」

 

愚痴ってから、一階に向かった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

放課後は、生徒がほとんどいなくなる。

そして俺は1階の立ち入り禁止のテーピングをしていた。

 

すると足音がして後ろを振り向くと

 

「ご苦労様」

 

「?友希那?

帰ってなかったのか」

 

「リサを待ってるのよ。

今日は個人練のつもりだったけれど、リサが一緒にやりたいって言うから…」

 

「なるほど」

 

すると生徒会長から一通のメールが届き、その内容は『今すぐ多目的室に来て欲しい』

というものだった。

 

(?また仕事のメールか?)

 

そう思ったのは、仕事用としてメールをもらった事しか無かったからだ。

 

「すまん友希那。

ちょっと生徒会長に呼ばれたから行ってくる」

 

「そう。

一昨日の件もあるのだから、無理せずに」

 

「へいへい」

 

そして多目的室がある4階に向かった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

多目的に行き、ガラッと開けるとそこには会長がいた。

 

「……ども」

 

「っ!?

ゴホッゴホッ!」

 

何故か驚いていてむせている。

 

「うーむ。

呼ばれて来てみれば、これは酷い。

タバコの臭いが充満してるじゃないですか」

 

「っ……」

 

「まぁ、タバコはアウトです。

警察に自首したら、罪が軽くなるって本当らしいよ」

 

気休めを言うと

 

「……そうか」

 

会長は諦めた様子で応えた。

右手には、先端から煙が上がるタバコを持っていた。

 

(この臭い…。

この前、体育倉庫裏で見たのは会長か…)

 

そう結論付け、この際なのである事を聞いた。

 

「あの噂について聞いても?」

 

「?噂?」

 

「そう。

退学にさせたーだとか、裏の権力で生徒会長になったーだとか」

 

「ああ、あれは、俺が秘書に頼んで噂を流した物だ。

そうすれば、誰も俺に近づこうとしないだろ」

 

今のセリフで確信できた。

この会長は、自分に誰も近づけない事で、タバコの件を隠そうとしたのだろう。

 

「…なるほど。

じゃあなんで、俺をここに呼び出した?」

 

「?そんな事してないぞ」

 

「またまたご冗談を。

俺の携帯にメールしてきただろ」

 

「いや、本当だ。

そもそも、俺は携帯を所有していないから、全部秘書に頼んでやってもらってた」

 

「…!?」

 

(なんだ……?この違和感…。

何を見落としてる…)

 

「……おいちょっと待て…。

その秘書はどうした?」

 

「?アイツなら、今は別用だ」

 

「別用?」

 

「ああ。

確か…『やり残した事があるから、終わらせます』と言っていたぞ」

 

「やり残した事……?」

 

突如、この前友希那が襲われた事を思い出した。

 

「!しまった…!」

 

急いで友希那に連絡を入れた。

しかし、それは一瞬でノイズが発生し切られる。

 

「ちっ」

 

(電波妨害か)

 

次はリサにかけてみる。

 

生徒会長がバレたくなかったのは、タバコの件。

一方で、秘書は何も行動を起こしていないと思っていた。

けれど、一昨日襲ってきたあの3人組の雇い主は女だった。

 

(なんでこんな簡単な事を放っておいた!)

 

するとリサと連絡が取れた。

 

「!リサか!?」

 

『ん?陽菜?

どうしたの?』

 

「悪いが説明は省くぞ!

友希那は一緒か?」

 

『それなら、さっき生徒会の人に体育館裏だっけ?

そこに連れて行かれたよ?』

 

「!!

わかった!」

 

『え!?ちょっ陽菜!?』

 

電話の向こうでそんな声がしたが、切った。

 

(事を済ますなら、人が通らない場所で、か。

友希那が危ない!)

 

非常口階段から一気に駆け下り、体育館裏に向かった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

友希那 side

 

(呼ばれて、体育館裏まで連れて来られたのだけれど…)

 

「…私に何か用だったかしら?」

 

「ええ。

少し、お話がありまして…。

先日の3人組について、どうあしらったのか、気になりましたので」

 

「!…あれはあなたがやった事なの?」

 

少し相手の口元が不気味に笑った。

 

「ええ」

 

「ありきたりなセリフだけれど、どうしてそんな事を?」

 

「強いて言うなら、ファンだからです」

 

「ファン…?」

 

「ええ。

私が湊 友希那のファンだからです。

人は欲に満たされれば、また新たに欲を持つ。

私も人です。

憧れの存在が近くにいればいるほど、所有欲のリミッターも外れてしまいますし…」

 

(如月がいつか言っていたわね…。

こういうファンが出てきてもおかしくない、と)

 

まさか、同じ学校から現れるとは思っても見なかった。

そして

 

「さて、そろそろ始めましょうか。

邪魔者も気づく頃合いでしょうから」

 

そう言うと彼女はカッターナイフを取り出した。

 

「っ…」

 

一歩下がると壁に当たり、逃げ道を探していると彼女は

 

「ああ、安心してください。

殺す時は一瞬ですから。

大丈夫ですよ、私練習しましたから」

 

すると

 

「っ!!」

 

向こうに見えるのは、間違いなく如月であった。

 

(如月っ!?)

 

しかし、目線に気づいたのか、秘書は後ろを振り向いた。

 

「…やはり間に合ってしまいましたか。

まぁ、それも致し方ありません。

早いこと済ませましょう」

 

そう言うと彼女は瞬時にカッターの刃を伸ばし、首を狙った。

とっさに目を閉じてしまった。

 

 

 

 

友希那 side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

友希那が切られそうになっている。

しかし、それは絶対に手の届かない距離にいた。

 

(間に合わない…!)

 

刹那、秘書の隣にある扉が開き、一瞬にして秘書の手からカッターが斬り上げられた。

 

「!!」

 

すると扉から出てきたのは、中等部くらいの竹刀を2つ持った女子生徒だった。

黒髪を後ろでまとめて、長さは燐子ほど有りそうな。

そして

 

「うるさいです」

 

一言だけ発した。

その間に俺は、友希那の方へと駆け寄った。

 

「すまん。

多分、今のは確実に間に合ってなかった」

 

「怪我はしていないから、心配しなくていいわよ」

 

「そうか…」

 

しかし、安心と共に驚く事もあった。

中等部の子が、カッターを斬り上げた事も少し驚いたが、何より驚いたのは

 

(今の剣技…まさか…二天一流か?)

 

そう思っていると中から

 

「ブチョー!

どうかしましたか?」

 

「ん?なんかどっかで聞いたような…」

 

そして中から出てきたのは

 

「あっ!ハルナさん!」

 

イヴだった。

そして案の定

 

「ハルナさんっ!」

 

ジャンピングからの抱きつき

 

「うぐっ…!」

 

「最近会えてなかったので嬉しいです!」

 

「うむ……今は非常事態だから、離れてくれ…」

 

「ヒジョウジタイ…ですか?」

 

パッと離れたイヴに頷くと立ち上がった秘書が

 

「まったく…少し物音がして見に来たら。

どういう事ですか?」

 

そう言ったのは、先程の竹刀を2つ持った子だった。

 

「…あなたは?」

 

「剣道部部長、宮本 雫」

 

それを聞いているとイヴが

 

「何があったんですか?」

 

と尋ねてきたので、ちゃんと説明した。

 

「なるほど!

ですが、ブチョーに勝てる人はいませんっ!」

 

珍しい事ではないが、イヴがこれほどの太鼓判を押すのは見たことがない。

すると

 

「まったく……何をするんですか…。

殺し損ねたじゃないですか…」

 

秘書はゆらりと立ち上がり、胸ポケットから銃を抜き出した。

ありふれた種類のガバメントだ。

 

「その銃をしまいなさい。

こんな騒動を起こせば、もうじき警察が来るでしょう」

 

先程、イヴが『ブチョー』と読んでいた子がそう言うと

 

「黙りなさい!

今あなたが向けられているのは銃口よ」

 

鋭い言葉が飛ぶと共に、友希那を後ろに下がらせた。

そして

 

「なぁイヴ。

この中等部の子、そんなに強」

 

ブンッ

 

目の前で竹刀の剣先が止まった。

 

「わたしは3年の高等部です!

あなたより年上ですよ」

 

「すまん、見た目で判断した」

 

「なっ!?

わたしの身長が小さいと言いたいんですか!?」

 

「………………………そんな事は」

 

「なんですかその間は!

………いいです!

あなたには後できっちりとお説教しますから、そこにいてください!」

 

そう言うと長いポニーテールを揺らしながら、威風堂々と2本の竹刀を構えた。

ただ持っているだけに見えるが、俺の勘が当たっていれば、その構えはれっきとしたモノだ。

そして

 

「すぅ…」

 

彼女が息を吸う。

 

「あまり時間はかけられませんね」

 

そう言って、片手に持つガバメントにトリガーへと指をかける秘書。

イヴをこちらにグッと引き寄せた。

 

「きゃあっ!?

は、ハルナさん!?」

 

イヴの驚く声と共に

 

ダンッ

 

1つの銃声。

 

カンッ!

 

その悲鳴がしたのは、体育館の入り口扉だった。

イヴを寄せた左手には、微かに銃弾が擦れた跡があった。

そして前方では

 

「これで、終わりですね」

 

秘書を押し倒していた。

竹刀でガバメントを振り払い、もう片方の短い竹刀で押さえている。

するとよく聞くパトカーのサイレンが鳴り響いた。

 

(終わった…か…)

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

犯人も捕まり、とりあえず、生徒会長が自首する所を見届けた。

 

そして、校長に頼まれたのは

『この事は他の生徒にも、文化祭が終わるまで内密にして欲しい』

という、モノだった。

 

(文化祭が終わるまで…か。

生徒会長がいなくなった。

という事は、次は日菜がまとめるんだろう…)

 

少し日菜に任せっきりになった事に申し訳なさがあった。

 

(…にしても……本当に、さっきのは危なかった。

もし、あの剣道部の子がいなかったら……)

 

そう思うと悔しさから手を強く握りしめてしまう。

すると

 

「あっ!陽菜くんこんな所にいたんだ」

 

「?日菜?」

 

「生徒会長ってどこにいるか知らない?

さっきからずっと探してるんだけど、いないんだよねー」

 

日菜はまだ知らないようだ。

 

「…会長と秘書は警察に連れてかれた」

 

しかし、日菜に隠しても仕方ないので、話す事にした。

 

「えっ!?」

 

「これは文化祭終わるまで、他の生徒や先生に話したらダメだからな」

 

「?なんで?」

 

「校長からのお願いだ。

文化祭が終われば、この件をみんなに話すらしい。

それまで、絶対に他言無用だ」

 

「う〜ん…そっか。

わかった!」

 

「…何をしたか、日菜は聞かないんだな」

 

「だって、陽菜くんがまた頑張ってくれてたのはわかるもんっ♪」

 

「!!」

 

そう言って日菜は笑いかけ、廊下を駆けていった。

 

「まったく……」

 

窓から紅い夕焼けが射し込む廊下で、1人呟いた。

 

「天才ってのは、恐ろしいもんだな…」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

10月15日 月曜日

 

休日明けは、どうしても体が動かない。

だから俺は、遅刻した。

その昼休み

 

「如月。

ちょっとだけ話があるのだけれど、隣いいかしら?」

 

片手に猫柄の弁当を持つ友希那。

 

「いいぞ」

 

(猫好き…ってのは、隠そうとしてるのか…?)

 

そう思ってると友希那は隣に座った。

そして

 

「それで、話って?」

 

「3日目のライブ祭について。

あれに私達も参加することになったのだけれど…」

 

「?嬉しくないのか?」

 

「いいえ。

ただ、いつものライブハウスのように、セッティングが万全な状態では無い可能性があるわ」

 

「まぁ…学校だからな」

 

そう言うと友希那は真っ直ぐな眼差しで

 

「だから、あなたにセッティングと前日ミーティングをお願いしたいの」

 

「っ……」

 

昔から、こういう目には弱い。

誰かが真剣に何かをするのを見ると、手伝いたくなる。

 

「…わかった」

 

「…そう。

助かるわ」

 

「麻弥が機材に詳しいから、音の調節はなんとか出来るかも知れない。

照明は、前にやってた時の暗さと同じでいいか?」

 

「照明は、私達も付き合うわ。

条件としては、リサと紗夜の手元が見えて、全体的に黒のイメージ…と言った方が伝わりやすいかしら?」

 

「充分伝わった。

とりあえず、前日の放課後辺りに呼ぶと思う」

 

「わかったわ」

 

そして少しして同時に食べ終わった。

すると

 

「そういえば、まだお礼を言ってなかったわね」

 

「お礼?」

 

「ええ。

この前、私が襲われてる時に助けに来てくれたでしょう。

そのお礼よ」

 

「いや……あの時は本当に危なかった。

気づくのが遅かったから、俺は間に合ってなかった…」

 

「でも、必死に助けようとしてくれたんでしょう?」

 

「…結果的に助けたのは、剣道部の人だ」

 

「私は結果は大事だと思うけれど、それ以上に過程も重視しているわ。

あなたが助けようと動いてくれた。

私は、その事実だけで充分よ」

 

「…!!」

 

驚いて言葉が出なかった。

すると

 

「?どうしたの?」

 

「いや…ありがとう。

そう言ってくれると助かる」

 

「そう。

なら…良かった」

 

すると予鈴のチャイムが鳴り、そのまま戻った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして時は過ぎて文化祭の準備も、9割型整ってきた。

 

10月19日 金曜日

 

3日目のライブ祭の為、このだだっ広い体育館の会場に照明の器具などを用意していた。

そして

 

「麻弥」

 

「あっ!陽菜さん。

お疲れ様です!」

 

「おつかれ。

スピーカーの方は問題ないか?」

 

「はい!

全部見て回りましたけど、特に異常はありません。

けど、本番はどれだけの音を出すんですか?」

 

「出来ればCiRCLEでやってる時と同じかそれ以上で」

 

「それなら問題ありませんね。

この学校に付けられてるスピーカーって、すごい高機能なんですよ!

出来る事なら、一度中を見てみたいくらいです!」

 

相変わらず、機械の事となるとワクワクしてるのがわかる。

 

「それは故障してから頼む。

明後日の放課後は前日ミーティングするから、みんなを呼んでおいてくれ」

 

「はいっ!

って、ええ!?

陽菜さん、ミーティング作業するんですか!?」

 

「まぁ…頼まれてな。

とりあえず、準備は今日限りで終わらせようか」

 

「はいっ!

お互い頑張りましょう!」

 

「ああ」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして文化祭 当日となった。




フェイト良かった♪( ´▽`)
次は幼女戦記か…

(見る金が有るとは言ってない)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。