退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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第22話 如月 陽菜の前準備は大変である

しばらく経った頃 校舎裏

 

「………ん?」

 

起きて体を起こそうとしたが、背中が何かに掴まれていた。

ので、少し振り向くと

 

「?友希那…?」

 

「……」

 

友希那が気持ち良さそうに丸まって寝ていた。

それも、俺の服の切れ端を指で掴んで

 

「……」

 

(まったく…風邪引いたらどうすんだ…)

 

「おーい、友希那。

起きろー」

 

「んっ…?」

 

少し目が覚めたようだ。

すると

 

「……きさりゃぎ…?」

 

珍しい事もあるものだ。

 

「お、おう?」

 

少しポーッとなって、少ししてから友希那はボンっと赤面になった。

 

「あ、いえ…今のは…!」

 

「如…なんだって?」

 

「っ〜!」

 

次に俺はこう思った。

 

(その振りかぶった手のひらをどうするんだろう…)

 

と……

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

数秒後

 

「からかってすまん…」

 

むすぅ…

 

見た目じゃわからないが

友希那がほんの少しだけ、むすっとしているのがわかる。

 

「まさか友希那が、寝ぼけて噛むとは思ってなかったんだ…。

まぁ、おかげで友希那の新しい一面が…なんでもないですもう勘弁してください…」

 

手を振り上げていたので、とりあえず謝った。

そして

 

「あっ…そういえばミーティング…」

 

呟くと友希那は落ち着いた様子で

 

「大丈夫よ。

紗夜に少し遅れると連絡したから」

 

「…そうなのか」

 

「でも、そろそろ行きましょう。

あなたがいないと始まらないでしょうから」

 

「俺がいなくてもやって欲しいんだがなぁ…」

 

「ふふ…。

ほら、つべこべ言ってないで行くわよ」

 

「へい」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

体育館

 

ガラッと扉を開けると

 

「ほら、陽菜さん来たじゃん」

 

「ホントだ〜。

エスパー蘭だね〜」

 

 

「あら?友希那も一緒ね!

これで全員揃ったわ!」

 

「ううん、こころん!

まだミッシェルが来てないよ?」

 

「本当だわ!

ミッシェルはどこにいるの?

ミッシェルーー!!」

 

「あー…ミッシェルは、今ちょっと来れないんだって。

だから、今日はあたしが変わりって事で…」

 

「そうなんだ…。

じゃあ、ミッシェルの分も頑張ってね!みーくん!」

 

「あはは…うん…」

 

 

もう既に、ライブに出る5バンドと他に出場するバンドは集まっているようだ。

するとつぐみが

 

「陽菜さん!

良かったら、これどうぞ」

 

渡されたのはプリントだった。

見たところ、セットリストのようだった。

各バンドは名前と番号が書かれていた。

 

「ありがとう。

助かる」

 

「!はいっ!」

 

笑顔になって戻っていったつぐみ。

そしてセットリストの方を見ると

 

(1曲目

ポピパは、キズナミュージック

アフロが、Y.O.L.O

パスパレは、ゼッタイ宣言

そんで、ハロハピは、ファントムシーフ

Roseliaは…LOUDER…か

そんで他バンドの人達の曲は…)

 

「えっ!?」

 

『?』

 

思わず声を出してしまい、周りから見られた。

すると麻弥が

 

「どうかしましたか?」

 

「いや……ちょっと…な。

なんか、凄いものを見てしまった…」

 

「どれですか?」

 

「!待て!」

 

『!!』

 

麻弥と他のメンバーが見ようとしたので、反射的に止めた。

そして

 

「あ、いや…すまん。

でも、ちょっと今は見ないで待ってくれ」

 

そう言うと蘭と千聖が

 

「なんでですか?

なんか不具合になる事でもあったの?」

 

「いや…これは不具合というか苦手というか…」

 

「へぇ…他に苦手な物があったのね…。

そのセットリスト、見せてもらおうかしら?」

 

片方は真剣にこちらを見て、もう片方は怪しげな表情でニコニコしている。

俺は後ずさりをしてから

 

「だ、だからちょっと待て!

後で説明できたらしてやるから」

 

「今説明出来ないのに、後で説明出来る保証はあるのかしら?」

 

「くっ…」

 

(千聖、やけにグイグイ来るな…)

 

そう思いながらも、さっき見たバンドの番号を見て

 

「と、とりあえず!

8番のバンドとちょっと話したい…。

いたら手を挙げてくれ」

 

すると後ろの方で手が挙がった。

 

「僕たちが8番のバンドだけど…。

何かダメな所でもあったかな?」

 

そう言って出てきたのは3年生で、少し優しそうな男子だった。

 

「いや…それよりも、なんで盛り上がる文化祭でこの曲を選んだ?」

 

そして周りを見ると、少女達は気になっているのか、こちらをずっと見て静かにしている。

なので

 

「ちょっとこっちに来て話してくれ」

 

「?」

 

そう言って、少し離れた所で話す事にした。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

各メンバー side

 

 

陽菜が連れて行って何か話し合っている。

そして少女達が今思っている事は

 

(陽菜さん、絶対なんか隠してる…)

 

(如月、また何か隠し事をしているわね…)

 

(隠し事だ…)

 

(何か隠してる…)

 

(絶対に隠し事してます…)

 

(今度は何隠してるんだろ…)

 

(あ、そういえば〜、家に秘蔵のメロンパンがあるんだった〜)

 

1人、違う事を考えているが、みんな大体予想はついていた。

 

 

 

 

各メンバー side out

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

数分後

 

「あははっ!

それっ♪」

 

「っ…離れろ日菜!

てか、なんでまだメイド服なんだよ!」

 

「いいじゃんかっ♪

そんな事より、さっきの話ってなにー?」

 

「教えんぞ…」

 

すると今度はこころが

 

「陽菜!

香澄の言ってた『空飛ぶ演出』をみんなでやりましょう!」

 

「やらないし、出来ないから!」

 

「?どうして出来ないの?」

 

「体育館で空飛ぶ奴がどこにいる!」

 

「誰もいないの?」

 

「当たり前だろ」

 

「だったら、私たちが最初にすれば良いのよ!」

 

「頼むからこころは止まってくれ!」

 

先程から、黒服の人たちが入り口でスタンバっている。

そして今度は

 

「陽兄ぃ!大変!」

 

「!今度はどうした?」

 

「あのねあのね!りんりんがね。

人が多過ぎて、目回しちゃった!」

 

「マジかよ。

やる事済んだら向かうから、それまで待っててくれ…」

 

「うんっ!」

 

すると次はおたえが

 

「陽菜さん。

ひょっとして、大変?手伝おうか?」

 

「じゃあ…。

さっきからなんか企んでる香澄を止めてくれ」

 

「うん、わかった」

 

意気込んだ感じで香澄の方へと向かっていった。

 

「香澄」

 

「あっ!おたえ!

ちょうど良いところに!」

 

「?」

 

「今ね。

空飛んでから着地する時に、みんなでどんなポーズにするか、考えてるんだ!

おたえも一緒に考えよう!」

 

「♪それ、面白そう。

わたしもやる」

 

これが、目の前で起こった会話である。

 

「呑まれんのかよ!」

 

(あー…もうシンドイ。

日菜は腕から離れない、こころは壇上でバク転してる。

その上、他のバンドの人は呆然としてる…)

 

「…だー!もう!

めんどくさい!!」

 

空いてる右手でマイクを取った。

そして壇上で

 

全員注目!!!

 

『っ!!!』

 

このだだっ広いホールの体育館にスピーカーから発せられる声が鳴り響いて、静かになった。

 

(しまった…。

勢い余って声の加減が…)

 

そう思ったが、気を取り直して

 

『あまり勝手な行動はしないでくれ。

怪我でもしたら大変だから、話を聞く事優先にな』

 

そう伝え終わった。

そして

 

『それじゃあ…ミーティングを始める』

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

セットリストの曲について考えていると友希那が来て

 

「如月。

さっきのセットリストだけど、少し考えさせてちょうだい」

 

「?ああ」

 

そう言って、近づいてきた友希那にセットリストを渡した。

そしてふと思い出して

 

「そういえば、友希那」

 

「何かしら」

 

「なんでシャンプー変えたんだ?」

 

「!!…気づいて…いたの…?」

 

「?ああ。

それに、その黒いヘアピン。

いつもは付けてないだろ?」

 

「!……」

 

友希那は驚いた顔でこちらを見てきた。

 

「ど、どうした…?」

 

「いえ…なんでもないわ。

変えたのは…ただの気まぐれよ」

 

「そうか」

 

そう言って時間を見ていると

 

ちゃんと私の事も見てくれてるのね…」

 

「?ちゃんと…なんだって?」

 

「!…い、いいえ…何も言ってないわ」

 

「?まぁいいか…」

 

そして立ち去ろうとすると

 

「待って…!」

 

「?どうした?」

 

すると友希那は白銀の髪を少し触りながら

 

「その…この香りは好き…かしら?」

 

「好きだな」

 

「………そう」

 

顔が赤くなっているのを悟られないように、少女は背を向けてセットリストを考え始めた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そしてかなりの時間が経った頃

 

全員に明日のおさらいなどを含めて、説明し終わった。

すると紗夜が3年生に

 

「あの、あなた方3年生が演奏するあの曲。

アレは、オリジナル曲ですか?」

 

少し耳を疑ったが、3年生はそれを聞いて

 

「カバー曲だね。

それもアレは、ネットに上げられた未演奏曲なんだ」

 

「?どういう事ですか?」

 

すると3年生は、少し自慢するようにして

 

「実はこの曲、あの第3回FUTURE WORLD FES.に出た神童。

『如月 陽菜』が作詞作曲した最後の曲なんだ」

 

その一言で、周りが一瞬にして静かになった。

すると

 

「えっ……?今…なんて?」

 

彩が言い

 

「陽菜さんが……作った…最後の曲…?」

 

蘭も言い、5バンドのメンバーが一斉に1()()()()を見た。

 

「……そうだな。

その曲は、確かに俺が作った…」

 

ため息を吐いてから言うと紗夜が

 

「!それは如月さんの現役の頃の曲という事ですか?」

 

紗夜の質問に3年生はキョトンとしていた。

そして

 

「……準備も終わった事だ。

最終下校時間もとっくに過ぎてるだろうから、そろそろ帰るぞ」

 

そう言って、下足室に向かった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

下足室

 

靴を履き替えているとこんな声が聞こえてくる。

 

「陽菜さんの曲、何気に初めて聴くね〜」

 

「やっぱり陽菜さんの事だから、カッコイイ曲か?」

 

1年の列からモカと巴の声が聞こえ、隣の列からは

 

「陽兄ぃの曲ってどんな感じなのかなぁ…。

やっぱり、カッコイイ系かなっ?

りんりんはどう思う?」

 

「わ、わたしも…そう思う…」

 

あこと燐子の声が聞こえる。

すると

 

トントン

 

肩を叩かれて振り向くと

 

「陽菜さん。

あの曲って、いつ頃に作ったんですか?」

 

「私も気になるっ!

教えて陽菜!」

 

沙綾と香澄に聞かれて

 

「…あの曲は7年前作った。

俺の夢が()()()()()作詞だ。

でも、あの曲は…」

 

そこで口を止めた。

曲の事が少し気恥ずかしい気がしたから。

 

「あの曲は…何ですか?」

 

りみに聞かれたが、それに答えずに

 

「いや、忘れてくれ。

もう暗くなるだろうから、早く帰れよ…」

 

手をヒラヒラと振って、俺もそのまま帰っていった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

帰り道

 

「なんか久しぶりだね。

こうやって2人で帰るの」

 

隣で彩が微笑みながら言った。

 

「スキャンダルには気をつけろよ」

 

「うっ…わかってるよ!」

 

「だと良いんだが…」

 

「な、なに?」

 

少し動揺する彩を横目に見て

 

「彩だからなぁ…」

 

ため息混じりに言うと

 

「それって、どういう意味…?」

 

「さぁ?どういう意味だろうな」

 

「うぅ…陽菜くんのいじわる〜!」

 

やはり、彩をからかうと面白い反応が返ってくる。

 

「とりあえず、明日は頼んだぞ」

 

「なんかはぐらかされた気がするけど…。

うんっ!頑張りゅっ…あっ…」

 

「……ホントに大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫だよ!」

 

「そうか。

じゃあな」

 

そう言って家の鍵を取り出すと

 

「あっ!そうだ。

陽菜くんに言いたかった事あったんだ」

 

「?どうした?」

 

すると彩はぐっと近づいてきて

 

「あの時のスキャンダルの件、ありがとっ!」

 

「……さぁ…なんの事だか…」

 

そう言って振り返り、鍵を開けた。

そして

 

「…じゃあな」

 

「うんっ!またね!」

 

バタン…

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

夜10時頃

 

ベッドの上でスマホをいじっていると

 

ガチャ

 

「んっ…?」

 

扉の前には咲織がいた。

 

「お兄ちゃん。

明日、学校で劇と文化祭ライブあるんだよね?」

 

「ああ。

それがどうした」

 

「それって、見に行ってもいい?」

 

「いいけど…。

なんでわざわざそんな事を?」

 

「その話を友達と後輩友達にした。

2人とも見に行きたいって言った。

はい、以上」

 

「あぁ…なるほど。

まぁ、席は空けておく。

何人来るんだ?」

 

「あたしとその2人の3人だけ」

 

「了解…。

じゃあ寝る、今日は疲れた…」

 

「また倒れたりしたら、病室が大変だから気をつけてね」

 

「?」

 

妹が謎のセリフを言ったところで、眠りに落ちた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日

 

なにやら、昨日の3年生の所で問題が起きたらしい。

 

「どうかしましたか?」

 

紗夜が聞きに行くのを見ると横から

 

「お兄ちゃん。

なんかあったの?」

 

「なんかあったみたいだな」

 

妹に受け答えしていると紗夜がこちらに駆けてきた。

そして

 

「如月さん。

8番のボーカルが体調不良で学校に来れないそうです」

 

「8番…か」

 

(…なんか…モヤモヤするなぁ…)

 

そう思っていると

 

「如月さん」

 

「?」

 

「8番のボーカル枠。

あなたが埋めてみてはどうですか?」

 

「えっ…?」

 

そうして、紗夜の提案に対する答えは




お気に入りありがとうございます♪( ´▽`)


また、感想、評価、質問などあれば遠慮なくどうぞ!


インフルで最低5日間休まないといけないのって、結構辛いですね…



それと、次回は遅くなるかもですm(_ _)m

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