退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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第25話 〜後半〜 過去の出来事の精算

テーブルを挟んで友希那の父親と向かい合っている。

 

「俺の知らない真実…?」

 

テーブルの上には、2つのコーヒーが置かれている。

さっき上に上がっていった友希那が出してくれたものだ。

 

「ああ。

とはいえ、些細な事だ。

それでもアンタの娘が先へ進む為には、誤解を解く必要がある」

 

「友希那が誤解を?

なんでまたそんな事に…。

あの時の件は、俺が断った時点で終わったんじゃないのか?」

 

「終わった。

でも、一度だけ友希那から聞いた。

『私のお父さんがバンドをやめたのは、フェスのせいだ』って」

 

と言ったのに対して彼は俺を見て苦笑を浮かべた。

すると

 

「ちょっと陽菜君…。

なんで教えなかったんだ!

俺がフェスで音楽を辞めた理由!」

 

「おまっ…!それは俺のセリフだ!

娘に勘違いさせてどうすんだよ!」

 

「迷っている事は知ってたけど、まさか勘違いしてるとは…」

 

「おい父親、しっかりしろ…」

 

そして少し落ち着いてから出されたコーヒーを口に入れようと手を進めると

 

「そうか勘違いしてたのか…。

って、あっ…!陽菜君、それは…」

 

「?」

 

何か止めていたようだったが、もう口に運んでしまった。

そして次の瞬間

 

「ブフッ!?」

 

(ナニコレ辛っ!?)

 

そう思ってからコーヒーを置くと湊さんが

 

「やっぱりか…。

昔から友希那って、塩と砂糖をよく間違えるんだ」

 

「そ、そういうことか…。

ゴホッ…」

 

するとトットットットと階段を降りる音が聞こえ、友希那が来た。

 

「?如月、どうして咳き込んでいるの?」

 

「いや…なんでもない…。

それより、今から友希那の勘違いを解いてやる」

 

「私の勘違い…?」

 

「ああ。

なんでこの人がバンドを辞めることになったのか。

それは…」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

時は遡り7年前

 

 

とあるライブハウスにて

 

 

「俺らの方が上手い」

 

「いいや、俺たちだ」

 

いがみ合っているのは、陽菜と若き日の頃の友希那の父親だった。

 

「だったら、もう一回勝負するか?」

 

俺の提案に

 

「ああ。

何度やっても楽しいだろうから」

 

と湊さんは返した。

するとカイトとシュウが

 

「オレ、そろそろ疲れたんやけど」

 

「まぁ…もうこれで10回目くらいだからね…」

 

と2人が言うので

 

「じゃあいい。

ボーカル対決だ」

 

そう言うと今度は彼が

 

「おいおい、それは君の専売特許だろ。

それにお前、そのボーカル対決で負けた事は?」

 

「98戦中、98勝0敗」

 

「しかもその内の9回は俺だろ。

さすが、神童の名は伊達じゃないか…」

 

「そんな事より、やるのかやらないのか。

どっちなんだ?」

 

「もちろん。

やるに決まっている」

 

2人のボーカルが笑みを浮かべた所で、誰も止めようとしない。

止めても無駄だと知っているから

 

 

 

〜〜数十分後〜〜

 

 

カフェ

 

 

「はぁ…これで君の勝ちをまた増やしてしまった…」

 

隣に座ってため息を吐く男。

 

「まだまだ、負けられん。

次は100勝目だな」

 

「ああ。

でも、これ以上はさせるか」

 

「大人気ねぇ…。

…てか、湊さんって結婚してるんだっけ?」

 

「してるよ。

娘が1人居て、ちょうど君と同い年だ」

 

「へぇ。

その子も音楽が好きなのか?」

 

「たまにライブを見に来てくれる。

この前の主催ライブにも来てくれたから…。

もしかしたら、いつの間にか君も会ってたかも知れないな」

 

「良い娘さんだ」

 

「陽菜君…いつの間にそんなおっさんに…」

 

「まだ中学生ですが!?」

 

「中学1年であれ程の歌声を出せるなら、文句無しって所かな」

 

「まぁ…それは置いといて。

俺と湊さんは、互いにフェスへの道は取れたんだ。

そこでも、どっちが良い音を出せるか勝負しようか」

 

「……そうだな」

 

「?どうした?」

 

「なんでもない。

それじゃ、俺は娘が待ってるから」

 

「ああ。

いってら」

 

俺はこの時、まだ気づいていなかった。

彼が隠している事も、迷っていた事も何も…。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

フェス当日

 

 

俺は楽屋から出てトイレに行った後、薄暗い廊下を歩いていると

 

「……ですから、あのバンドは無理ですと申し上げたのに…」

 

「?」

 

少し気になり声のする方へと壁越しに聞くと丸メガネをかけた女史とこのフェスの会長であり、音楽業界に多大な影響力を持つ男が立っていた。

 

(審査員の2人がなんでここに…?)

 

そう思っていると女史が

 

「あの湊という男が率いるバンド。

あれは古い音にとらわれ過ぎです。

そんな事では、売れる音楽も売れない。

今の時代で最先端を行くのはその時代に合った音楽です」

 

「わかっている。

だから、このフェスに奴を上げたんだよ」

 

「…会長、それはどういう事ですか?」

 

「フェスのコンテストで入賞させる。

……そうすれば、後は何をするのか。

お前はもうわかっているだろう?」

 

「……なるほど…。

上げてから落とす。

とても良いやり方じゃありませんか」

 

俺はそのやり取りを聞いて前に出ようとしたが

 

「待て陽菜君」

 

「!?」

 

俺を止めたのは湊さんだった。

 

「……放せ」

 

「ダメだ。

今放したら、君は失格になる。

それは君の仲間たちに申し訳ない」

 

「それはアンタも一緒だろ」

 

「もう俺の仲間たちには話してある」

 

「!!

…こうなる事は予想してたのか?」

 

「まぁ…な。

ちょっと前に、あの会長に

『次は、売れる音楽とは何かを考えて作れ。

出来たらその曲を売ってやる』

って言われてたんだよ」

 

「っ!!」

 

「頼む。

俺が出るのを楽しみにして、娘がこのフェスに来てるんだ」

 

「っ……良いのか?

このままじゃ、アンタは…」

 

「構わない。

俺の夢が叶わなかったとしても

娘の期待は裏切れないからな」

 

「……っ…わかった」

 

そうして小さな虚無感の中、俺は楽屋へ戻った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本番

 

演奏中に、あの2人の審査員が見えるだけでイラつく。

 

(もっと…もっとだ。

まだ遠い、もっと高く全身を研ぎ澄まして。

心を撃ち鳴らす程の音をあの審査員に必ず届かせる)

 

「〜〜♪」

 

覇気を(まと)わせた歌声を会場全てに響かせた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

全ての演奏が終わり、結果が出た。

 

その1時間後

 

質問を受け付けて、それが終わった審査員の席では

 

「如月 陽菜…。

やはり、あの子は強い覇気を感じさせられる歌声だった」

 

杖を椅子に立てかけた1人のお爺さんがそう言うとそこへ現れたのは

 

「どうも。

審査員の方々」

 

俺だった。

そして

 

「会長」

 

「なんだね」

 

「このフェス。

最初から見事にあなたの手の上でまんまと踊らされたよ」

 

会長は不敵な笑みを浮かべて

 

「はて?何のことかな?」

 

「悪いけど、アンタとそこの女史が話してる所を聞いた。

最初から最後まで」

 

「……ふんっ。

何のことだか…なぁ女史」

 

「はい。

わたくしも何の事をおっしゃられているのか、わかりません」

 

「っ…言い切るか」

 

「無論だ。

なにせ、俺たちは()()()()()()()のだからな。

まぁ…君は次にでも置いておこう」

 

すると審査員のお爺さんが

 

「次…とは、どういう意味じゃ?」

 

「何。

このフェスに我々が見に来ているのは、売れる物かそうじゃないかを見極めているだけです」

 

「…っ!!

貴様、まさかこのフェスの出場者に手を出したのか!?」

 

お爺さんがそう言うと残りの審査員2人も

 

「っ!どういう事ですか会長!

まさか…出場前の選手に何かしたんですか!?」

 

「だとしたら、それは禁止行為ですよ!?

会長はそれをわかって」

 

その2人の声に会長は被せるように

 

「わかっているさ。

…だが、お前ら老いぼれの考えはもう古い。

精神論だけの音楽なんて、もう終わったんだよ」

 

「!なにっ!?」

 

「今の世の中…いや、いつだってこの世は金だ。

結局、音楽なんて物は売れればいいんだよ。

だから、有力者が集まるこの大会を利用した。

それにな、お前を見つけた時は嬉しかったぜ」

 

そう言って俺を指差した。

 

「!」

 

「100年に1度の神童。

そんなものがフェスに出れば、この先音楽は繁盛間違い無しだ。

今回のフェスが終わった今頃は、憧れてバンドをやり始めるバカな輩が増えるだろうな」

 

『っ!!』

 

「初める時は大体が素人。

だが、それでも俺が才ある者だけをプロデュースすれば。

この先バンドという物だけで俺は食っていける。

…礼を言わなきゃな。

俺のためにここまで育ててくれたんだからよ」

 

「…音楽の本当の意味も音楽を作る意味も、思考停止した奴が…」

 

さすがに、ここまで音楽を『物』として見られては腹が立つ。

言い返す言葉がありすぎて、それすら(まと)まらない事に苛立ちを覚え始める頃に

 

「待ってくれ!」

 

そんな声が聞こえて、振り向いた。

 

「……何しに来た」

 

「わ、悪い…。

ちょっと娘の相手をしてた」

 

湊さんは少し笑って返した。

 

「んな事どうでも…」

 

すると会長が

 

「なんだ今更ノコノコと…。

君にはさっき、手切れ金を渡した筈だが。

俺の決めた金額に何か問題でも?」

 

「ああ、アレなら燃やしました」

 

「……」

 

少し会長の表情が歪んだ。

そして続けてるように

 

「会長。

俺はあのバンドから抜ける事にしました。

ですから、『売れる音楽』の件はお断りさせてもらいます」

 

『っ!!』

 

断った。

それはつまり、音楽での活動を止める。

そういう事だった。

 

「おいちょっと待て湊さん!」

 

そう呼び止めたが

 

「いいから。

大体この話の発端は俺なんだから、自分の問題くらい自分で解決させる」

 

「…娘はどうするつもりだ」

 

「その問題はもう大丈夫だ」

 

その言葉を聞いて俺は確信した。

この人は家族の為だけに自分の夢を諦めたという事を。

 

「……そうか」

 

別に止めるつもりは無い。

俺でもこの人と同じ状況ならそうするからだ。

すると

 

「…わかっているのか。

自分がどれだけ愚かな選択をしたのか!」

 

「わかっています。

あなたを怒らせたとなると、俺たちは音楽業界でもう生きられない」

 

「そうだ。

それを理解した上で断ったのなら、疾く失せろ。

今を生きて、人が欲するのは常に新しい音楽だ。

それを理解できない今の君達の音楽は必要ない!」

 

「…わかっています」

 

「ちっ…時間を無駄にしたな」

 

そう言って会長は荷物をまとめて帰っていった。

 

「……」

 

「悪いな。

こんな形になってしまって」

 

「……別にいい…」

 

「…じゃあ、また会う日まで」

 

「ああ…」

 

そうして2人のボーカルはそれぞれの選択をした。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして現在に至る。

 

「…それでその後会長に寄って、バンドは解散に追い込まれた。

悪評でも流されたんだろ。

…もしかしたら友希那は、会長と話していた時の会話を聞いてたのかもな…」

 

「…ええ、思い出してきたわ。

…あの時の私は、お父さんが帰ってくるのが遅かったから向かえに行った。

けど私は聞いた話が信じられなかったのね…」

 

「そうか…。

やっぱり、あの時はもう少し柔らかく話すべきだったか…」

 

湊さんはそう解釈してから俺はその言葉に

 

「なぁ…アンタ。

昔から思ってたけど。

もうちょっと他人に厳しくしても良いんじゃないか?」

 

「いやぁ…だって君みたいに厳しくなったら、色々と…ねぇ」

 

「おいそれは俺に問題があるとでも?」

 

「俺だって友希那から色々と聞いてるけど…。

君の場合、身内を大事にするけど、自分を疎かにしてる部分はなぁ…」

 

「……?ちょっと待て。

なんで友希那が俺の話をアンタにしてんだよ」

 

「ほら、友希那がLOUDERの件で迷ってた時があったの覚えているか?」

 

「ああ、あったな」

 

「その時に、お手伝いをしてる君の話を聞いたんだ」

 

「あぁ…そういうこと」

 

「にしても、変わらないなぁ」

 

「何が?」

 

「昔と一緒じゃないか。

態度とか考え方とか…。

変わった所は身長くらいじゃないのか?

まぁ、それも数cm程だけど…」

 

「ほっとけ。

てか、身長は160超えてたら良いんだよ」

 

すると

 

「ちょっと2人とも。

話が脱線しているわよ」

 

「……うむ」「……ああ」

 

友希那に止められて落ち着き、思わずコーヒーを手に取ろうとしたが、その手を引っ込めた。

そして

 

「あー…それで話を戻すが…。

友希那には1つ謝っておきたい事がある」

 

「謝っておきたい事?」

 

「ああ。

…2年前のあの時、友希那が父親の歌を歌う事に躊躇(ためら)っていた時。

俺はその時に説明してこの誤解を解くべきだった。

だから、ごめん」

 

「…多分だけど、あの時に説明されても、私自身が整理出来なかったと思うわ。

それに、私だって、あの時からちゃんとRoseliaの為にFUTURE WORLD FES.を目指すと決めたもの。

だから、そんなに謝らなくても良いわ」

 

友希那は笑って許してくれた。

すると

 

「……もしかして…俺はお邪魔…かな?」

 

「「っ!!」」

 

その声に俺と友希那は同時に雰囲気から覚め、友希那が

 

「お父さん!

そうやって茶化すのはやめて貰えるかしら…!」

 

「あはは…。

まぁ落ち着け友希那。

それにそろそろ時間も遅いから、陽菜君の親も心配するんじゃないか?」

 

それを聞いて、母親の心配する様子が浮かんだ。

 

「あ、帰るわ」

 

そして玄関まで友希那に見送ってもらった。

 

「じゃあな。

また月曜日に」

 

「ええ。

…如月、今日はわざわざありがとう」

 

「?何がだ?」

 

「私の誤解を解くだけの為に、来てくれたんでしょう?

それくらいは、わかるようになってきたわ」

 

「そうか。

まぁ…友希那の為でもRoseliaの為でもあるから」

 

「ええ、ありがとう」

 

「…ああ」

 

そして俺は自分の家へと帰って行った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

陽菜が帰ってから、友希那は玄関の鍵を閉めた。

すると後ろから

 

「なんだ、やっぱり良い雰囲気だったじゃないか」

 

「っ!?」

 

急いで振り向くと父親が立っていた。

 

「いつから聞いてたの?って顔だな。

まぁ、そんな事はさておき。

…友希那は陽菜君の事、どう思ってる?」

 

突然の質問と内容に友希那は動揺しながら

 

「っ…別に…如月の事なんて…」

 

「本当に?」

 

「!本当よ…!」

 

そう言って友希那の長〜い言い訳のようなモノが始まった。

 

「まず、如月は周りに心配をかけ過ぎているわ。

私が変われたのはあの人のおかげだけど、ソレとコレとは話が別よ。

やっぱり如月は無意識に自分を疎かにしてしまうから、もうちょっと私が支え…いえ、みんなで支えたいけど、如月は隠すのが上手いから、私が近くで見てあげないと、また独りになって、その……また危ない事をされたら嫌なだけよ」

 

「つまり?」

 

「つまり…その…別に如月の事はなんとも思っていない……わ。

そう…私はあまり心配させないで欲しい…と思っているだけよ」

 

途切れ途切れの言葉に父親は少しばかり口元を緩めて

 

「なんだかんだで、彼の事を心配してるんだな」

 

「……」

 

友希那はコクンと小さく頷いた。




蒼風啓夜様 セプティート様

お気に入りありがとうございます!
♪( ´▽`)


…最近寝不足だ

テストも近いし、検定もあって

「勉強したら?」

と母親に言われては

「英語以外は大丈夫だから良い」

なんて返したらさ…
どうなったと思う?

「あっそう。
じゃあ赤点1つでも取ったら、小遣い分の0を1つ消すから」

なんて言われ、今は関係代名詞をやっております

いや、本当に英語だけは苦手じゃ…

それと、月の小遣いが3000円なので

0が1つ消えたら300円になるね


漫画が買えねぇ…


あ、ちなみに


母親は小説投稿してる事を知りません


なので、これがバレたら殺されます


コンコンッ


おや?誰か来たようですね
それでは、また次回!


ガチャ……
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