退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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第26話 何事も無し?『その時は』な!

この寒い中、体育館に集合させられる。

そして壇上に上がって来た叶先生が

 

『突然だが生徒諸君!!

今日から冬休みって伝えるの忘れてた!』

 

『はっ?』

 

生徒達の声が重なった。

そして当然の如く、叶先生には聞こえており

 

『いやーごめんね?

センセーも、ちょっと休みたいなーなんて思ってたらさ。

色々と仕事溜まっちゃって…。

それで伝える用のプリントを配らせるの忘れてたよ。

あはは〜!』

 

叶先生の校長らしからぬ態度で会場全体が唖然とした。

そして今日、12月22日から冬休みは始まった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして CiRCLE

 

いつも通り練習が終わるとまりなさんが

 

「あっ!Roseliaのみんなに陽菜くんもっ!

ちょうど良いところに」

 

『?』

 

「実はね。

1週間後の12月29日に、今年最後のライブを開こうと思うんだけど、Roseliaのみんなもどうかな?」

 

その質問に即答したのは

 

「受けるわ」

 

友希那だった。

そして

 

「ありがとう!

それじゃあ、陽菜くんはどう?」

 

まりなさんが質問すると、友希那たちもこちらを見てきた。

 

「…何を期待してるのかは知らないけど…。

俺は受けない。

いつも通り裏方に徹する」

 

「そっかそっか。

それじゃあ、Roseliaのみんなは参加って事で」

 

そしてそのままCiRCLEを出た。

 

 

 

 

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帰り道

 

 

「如月。

どうしてさっき引き受けなかったの?」

 

「裏方に徹していたかったから」

 

「そう」

 

意外とあっさり呑み込んでくれた。

そして

 

「…そういう友希那は、すぐに返事をしたな」

 

「私には、まだ掴めていないモノがあるわ」

 

「掴めてないモノ?」

 

「ええ。

あなたは、一度言ったわね。

『どうして挫折した今もバンドを続けているのか』と」

 

「ああ」

 

「それは……音楽の頂点に立つ為よ。

…けれど私たちは、その為に必要な経験が足りない。

だから、今回のライブイベントで少しでも多く、経験を積んでおきたいと思ったからよ」

 

友希那の説明は、いつものようなはっきりした物言いではなかった。

何か取って付け変えたような言い方に聞こえた。

 

「…うむ…。

まぁ、いいか。

友希那が決めた事なら、俺は何も言わない。

それに友希那が間違ってるとも思えないからな」

 

「そう。

なら、私はその言葉を信じるわ」

 

「信じてくれても構わん」

 

すると

 

「2人とも〜、良い雰囲気な所悪いけど…。

アタシがいる事忘れてないよね?」

 

「「っ!?」」

 

そう言われて急いでリサに

 

「そ、そんな訳ないだろ?」

 

「ホントかな〜?

陽菜の目、泳いでるような…」

 

「泳いでない泳いでない!

友希那も黙ってないで何か」

 

「……忘れてないわよ」

 

「俺的には今の間をどうにかして欲しかった」

 

なんて他愛ない話をしながら帰って行った。

 

 

 

 

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約束の1週間後

 

 

俺は一足先に向かってCiRCLEの中を伺っていると

 

「あ、陽菜さんだ」

 

「!おたえ」

 

ギターケースを片腕に提げるたえ。

 

「来るの早いな」

 

「うん。

このライブ楽しみにしてるから」

 

「へぇ、それはまたどうして?」

 

「ここにレイがいるって聞いたから」

 

「レイ?」

 

聞き覚えのない名前に反応すると

 

「花ちゃん…?」

 

これまた聞き覚えのない声が背後から聞こえ、振り向くとベースケースを持った女の子が立っていた。

多分、歳は俺より下だと思う。

すると視界の横で、たえが走って抱きつくのが見えた。

 

「レイ!」

 

「花ちゃん、久しぶり。

9年ぶりくらい?」

 

「うんっ♪」

 

たえが嬉しそうに返事をする。

 

(この子がレイ…?)

 

そう思っているとそのレイという子と目が合った。

すると

 

「花ちゃん。

この人と知り合い?」

 

「うん。

みんなのお父さんみたいな人」

 

(お父さん…)

 

するとこちらを見て

 

「…花ちゃんの親友のレイです」

 

そう簡潔に答えられた。

そして顔をよく見ると、どこか見覚えがあった。

 

「あ…」

 

「「?」」

 

「えーっと?レイで良いのか?」

 

「はい」

 

「もしかして、結構前にライブのバックでベースを弾いてたか?」

 

「夏休みに入る前くらいなら、1度だけ手伝いましたよ」

 

「それがどうかした?」

 

(やっぱり、あの時のベーシストか…)

 

「…いや、ただベースが上手いなって話だ」

 

「…そうですか。

ありがとうございます」

 

するとたえが

 

「あっ、レイ。

実はこの人もボーカルをやってたんだけど、その時に呼ばれてた二つ名が」

 

「いやいや!ちょっと待て!」

 

珍しい事にたえが余計なことに口を滑らせそうだったので、手で口を塞いだ。

 

「おたえ?

俺のことはあんまり広めないでくれないか?」

 

小声で言うとキョトンとしながら

 

「?どうして?」

 

「もしこの子が俺のことを知ってたらどうすんだよ。

確実に面倒なことになる」

 

「それじゃあ確かめよう」

 

「えっ?」

 

するとたえはレイに向かって

 

「レイ。

『如月 陽菜』って人は知ってる?」

 

俺はまだ自分の名前をこの子に明かしていない。

しかし、その名前を聞いてから驚いた表情でレイは頷いた。

そして

 

「知ってるよ…。

かつて神童と呼ばれたボーカルでしょ?」

 

「うん。

やっぱり知ってたんだ」

 

「もちろんだよ。

だって…あたしがいつか超えたい人だからね」

 

「?どうして?」

 

「…あの人は…」

 

するとレイはそこで口を止めてたえに

 

「花ちゃんは、昔と一緒のギターなんだ」

 

「うん。

これ、お気に入りだから。

レイはベース?」

 

「うん。

それにボーカルも」

 

「ボーカル…。

もしかしてバンドやってるの?」

 

「ううん。

まだやってない。

いつか花ちゃんとバンドをやろうって約束したから」

 

その時たえは、落ち込んだような後ろめたいような複雑な表情を見せた。

大体は察しが付く。

すると

 

「花ちゃんはバンドやってるの?」

 

「…うん。

学校の友達と」

 

「そっか…。

じゃあ、また機会があったら一緒にバンドやろうね」

 

「うん」

 

そう言ってレイは立ち去っていった。

 

「…陽菜さん」

 

「…どうした?」

 

「寝ぐせ付いてる」

 

「今それ言うか!?」

 

 

 

 

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しばらくして4バンドの全員が来た。

パスパレは年末の仕事で忙しく来ることは出来なかったが、他のバンドは揃っていた。

そしてまりなさんが

 

「それじゃあ、お客さんも集まってる事だから。

みんな頑張ってね!」

 

『はい!』

 

大きな返事がしてポピパがステージに上がっていく時にたえが

 

「あっ、陽菜さん。

ちゃんと見ててね」

 

「ああ」

 

そしてポピパの最初の演奏が始まった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

演奏中

 

 

「うむ…」

 

(たえ上手くなってるな…。

前から気になってたが、成長が早い。

センス…いや、多分…。

あれはライカと同じ、天性のセンス…か)

 

ライカは昔、音には敏感でほんの少しの異変にも気がついた。

ライカのおかげもあって、技術が向上した面もある。

 

そんな事を思い出しながらも、ライブはしっかりと聞いていった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ライブ終了後

 

 

俺はまた一足先に帰ろうと外に出ると裏口から声が聞こえてきた。

 

「どうして!?

わたしのプロデュースで最強の音楽になるのに…!」

 

「私たちは自分たちの音で頂点を取るわ。

だから、プロデュースは必要ない」

 

友希那と誰かが言い合っている模様。

もう片方は壁で見えない。

顔をもう少し出せば見えそうだが…。

やったらバレそう。

なので黙って聞くことにした。

 

「聞けばわかる!

わたしの最強の音楽を奏でれば、最強のバンドになる!」

 

「…言ったでしょう。

私たちは自分たちの音で頂点を取る。

これは自分たちにも、あの人にも誓った事だから、絶対に変わらない」

 

友希那は割り切ったようだ。

するとこちらに向かってきた。

 

(あ、やべ)

 

急いで待っていた風に装った。

すると

 

「!…如月?」

 

「…どうした?」

 

「いえ、なんでもないわ。

早く帰りましょう」

 

そうして何事も無かったように感じられた1日だったが、俺はこの後、後悔することになる。




へい!
というわけでRAS入れました♪( ´▽`)
RASの前に

カルルス様 くろいぬん様
usagi..様 Ricktoku様


お気に入りありがとう!
(`・∀・´)

オマケ

マスキングや六花、パレオ。
この3人も出ますが、ストーリー的には番外編でメインで書いていきます。

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