退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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(編集済み)
番外のRAISE A SUILEN結成編
どぞどぞ




第3.5章 番外編 〜RAISE A SUILEN〜
番外編 RAISE A SUILENというバンドが結成するらしいですよ? 〜前編〜


友希那たちのフェスが終わった翌日

 

ピンポーン

 

「ふわぁ……眠い…」

 

冷たくなった階段を降りて、扉を開けると

 

「Hello!

Mr.陽菜」

 

「おー…チュチュと…誰だ?」

 

そこには、チュチュはもちろんのこといるのだが、その隣に、どこかで見たことがあるような、カラフルな髪を持つ少女が立っていた。

そして

 

「初めまして。

パレオ、と言います」

 

そう言って律儀に挨拶するパレオと名乗る少女。

思わず礼をすると

 

「パレオはキーボードにするわ。

あなたもそれで問題ないでしょう?」

 

「もう集めたのか?」

 

「Of course.

ちなみに、ドラムも1人スカウトしたわ」

 

「ドラム?」

 

「はい。

マスキングさんという方で、実力もかなり高い人ですよ♪」

 

パレオが説明してくれた。

 

「へぇ…もう2人も。

とりあえず、なんだっけ…Galaxyだっけ?」

 

「That's right!

今からそこに行くわよ!」

 

「準備するか…」

 

「大至急よ!Harry up!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Galaxy

 

店に着いたのだが、俺も来るのは初めてだ。

新店だからか、中は綺麗に仕上がっていた。

すると

 

「今日は、ライブを観るわ」

 

「「ライブ?」」

 

パレオと声が重なりながら聞いた。

 

「Galaxyは、Open初日に間に合うようにバンドを集めていたの。

今日あるライブ。

目的は、その中からベース、ボーカル、ギターを見つけ出すことよ」

 

「もし見つからなかったら?」

 

「その時は、陽菜が言ってた人たちを紹介してもらうわ」

 

「そうか」

 

するとパレオが

 

「陽菜?

あなたは、陽菜と言うんですか?」

 

そういや、自己紹介してなかった。

なんてことを今更思い出して

 

「ああ、如月 陽菜って言う名前だ」

 

するとパレオの顔がパァっと明るくなって

 

「チュチュ様と一緒に世界を変えてくれるんですか!?」

 

「えっと…簡潔に言うと、俺はそれの手伝いだから」

 

「つまり、世界を変えるお手伝いをしてくれるんですね!?」

 

やたらとグイグイくるパレオ。

そして

 

「まぁ…そうだな」

 

面倒なのでそう答えると一段と明るくなって

 

「では、これからはあなた様の事を、『陽菜様』と呼ばせていただきますね!」

 

「待て、それはちょっと」

 

「それで、陽菜様はどんなお手伝いをなされるんですか?」

 

これはもう聞かないタイプだ、と俺の経験が自身に訴えかける。

 

「はぁ……。

少しの間だけ、このちびっ子のバンド結成の手伝いする」

 

そう言いながら、チュチュの頭に手をポンっと置くと

 

「ちびっ子言うな!」

 

話に噛み付いてきた。

そして拗ねたのか、せかせかと前を歩いていった。

 

「なぁ、パレオはどこまでチュチュの話を聞いてんだ?」

 

「そうですね…。

パレオは、チュチュ様がRoseliaのことを潰したがっていること。

それと、この世界を変えてくれる音楽を作る。

というところまでは聞いてますよ♪」

 

「俺とほぼ一緒か」

 

会話をしていると少し前を歩いていたチュチュが立ち止まった。

 

「ここがGalaxy…」

 

そう呟くとチュチュが

 

「ええ、そうよ!

ライブはもう始まるから、早く中に入って有力な人材を確保するわよ!

Are you ready?」

 

「おー!」「ん」

 

すると

 

「陽菜!」

 

「?どうした」

 

「やる気が感じられない!

one more time!」

 

「えぇ…。

早く中入らないと見れなくなるぞ」

 

「っ…!

絶対に、とっておきの人材を見つけなさいよ!」

 

チュチュが悔し紛れの言葉を撒き散らした。

 

「まぁ…約束は守る」

 

そうして、音が鳴り始めたライブステージへと急いで向かった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ライブ中

 

(入ってから30分経ったが…。

ダメだな)

 

観客は盛り上がってはいる。

しかし、心を打たれることはない。

今やってるバンドの技術はもちろん、ギターとドラムのリズムが合っていなかった。

 

(まぁ、チュチュは気づいているだろうな。

残念だが、この中にはいな…)

 

そう区切りを付けそうになったが、次のステージに立つ1人を見てから

 

「…チュチュ。

あの黒髪のベースの子。

音をよく聴いておけ」

 

「?」

 

疑問の表情を見せるチュチュだったが、演奏が始まると、チュチュの見ている目が変わった。

そして

 

「……ベース枠」

 

俺の耳は、その言葉を聞き逃さなかった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ライブ終了後

 

「さて、と…行くか」

 

「ええ、やっと見つけたわ」

 

俺とチュチュの内容が浅すぎる会話に

 

「どこに行くんですか?」

 

とパレオが首を傾けて言う。

そして

 

「さっきのバンド。

後ろの方にベーシストがいたの覚えてるか?」

 

「ん〜?

あっ!あの黒髪の女の人ですか?」

 

「ああ。

とりあえず、本人にバンド入れるかどうか、聞いてみるか」

 

そうして少しの間だけ、入り口で待っているとベースケースを片腕に持つレイが現れた。

すると俺と目が合い

 

「?あなたは確か…。

花ちゃんと一緒にいた…」

 

「如月 陽菜だ」

 

「っ!?」

 

俺の名前を聞いた瞬間に、少し体を震わせるレイ。

 

「…嘘を付いている…。

というわけでも無さそうですね」

 

「まぁ、な。

訳あって、このちびっ子達の手伝いをしてる」

 

「…そうですか」

 

なんか隣で「ちびっ子言うな!」って言われた気がしたが、気のせいだろうと思い

 

「とりあえず、今バンドに入っていない。

って事で良いんだよな?」

 

「…ええ。

でも、その前に…」

 

「ん?」

 

「如月さん。

あたしとボーカル対決。

してくれませんか?」

 

「……ふむ」

 

『ボーカル対決』という単語。

これはその文字通り、ボーカル同士が対決することを指す。

しかし、それと同時に、こういう意味もある。

ボーカルで対決するという意味だ。

例を挙げるなら、ソロボーカルVSバンド。

そんなことも含めた意味なのだ。

ただ今回の場合は前者なのだが…

 

「ボーカル同士での対決。

誰も勝てなかった【神童】に勝てば、あたしはボーカルとして花ちゃんの隣に並べる」

 

レイは真剣な眼差しで訴える。

 

(なるほど…。

幼い頃の親友と並ぶため…か。

いい信念だ。

でも…)

 

「今のレイじゃ、俺には勝てんよ」

 

手をヒラヒラと火の粉を振り払うように振った。

 

「…どうして言い切れるんですか?」

 

「そうだな…。

確かに、俺はレイの実力も知らない。

……でも、バンドも組んだことない奴に、俺は負ける気は全くしない」

 

ちょいと煽ってみた。

するとチュチュが、ここぞとばかりに

 

「そこで、レイ?

あなたは私が作るバンドに入りなさい。

そうしたら、私があなたを」

 

勧誘をしようとしたのだが、レイはそれを遮って

 

「嫌です。

あたしは、遊びでやってるわけじゃない」

 

すると

 

「…私だって本気で言ってるの。

遊びなんかじゃない…!」

 

チュチュの雰囲気が変わった。

そして俺はパレオと共に黙ってみていると

 

「私は、私の最強の音楽を私たちの最強のバンドで奏でて世界を変えてみせる。

ベーシストとして高い技能を持つあなたが加われば、よりperfectで最強の音楽に近づける。

だから、New worldを切り拓くためにも、私について来なさい」

 

チュチュの力強い発言が飛ぶと

 

「…わかった」

 

レイの承諾したセリフが聞こえるとチュチュは得意げに微笑んだ。

すると

 

「でも、あたしが入ることに条件が1つだけあるけど、それでも良い?」

 

「ええ、なんでも言って」

 

「いつか、あたしと絶対にボーカルとして勝負してください」

 

「えちょ」「OK!!約束するわ!」

 

話す前に遮ってきた。

 

「おい待てチュチュ」

 

「?What's?」

 

「いやWhat'sじゃねぇ…。

何勝手に約束してんだ」

 

「それが彼女の望みよ。

それに、私のバンド結成を手伝うと言ったのは誰?」

 

「俺だな」

 

(バンド結成に必要だから、レイの条件も飲めってことか…)

 

ため息を吐くとレイが

 

「あたしは和奏(わかな) レイ。

これからよろしく」

 

「よろしくレイ」

 

そう言ってレイとチュチュが握手を交わした。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

それからのことを結論から言おう。

 

(なんか変なビルに連れてこられた…)

 

残るメンバーは、ボーカルとギターだけとなった。

しかし、探す前にチュチュに引っ張られ、この高層ビルに来た。

 

「で、今集めるべきギターはどうすんだ?」

 

チュチュにそう尋ねると

 

「何か宛はある?」

 

と返された。

 

「人頼みか…。

言っとくが、俺には無い」

 

「パレオもありません」

 

そう言うとチュチュが

 

「じゃあ、レイは何かある?」

 

レイに問いかけると、少し考えた後に

 

「ちょっと待ってて。

無理かもだけど、心当たりがあるから、呼んでみる」

 

そう言ってレイが誰かに電話をして、相手と世間話のような事と要件を話してから切った。

そして

 

「明日なら空いてるから、明日で良ければだって。

それと、あたし個人として、その子にはサポートとして入ってもらいたいんだけど、それでも良い?」

 

「OK.

なら後は、その子の技術確認ね」

 

と、話が終わったようなので

 

「…それじゃあ、俺は帰る」

 

「?もう帰るんですか?」

 

パレオに聞かれて、黙って頷くとチュチュが

 

「wait!

陽菜は、帰る前にまだすることがあるの!」

 

「なんかあったっけ?」

 

「ギターはいないけど、私の最強の音楽を聴いていきなさい!」

 

「なんでぇ…」

 

「いいから聴くの!今すぐ!now!!」

 

「はぁ…」

 

(なんか…駄々っ子を相手にしてる気分だ…)

 

そう思ったが、一応聴いてみることにした。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

スタジオに入ると、既に誰かがドラムの音を鳴らしていた。

 

「うむ……悪くない」

 

(ただ…なんだ…。

この机の上にあるホールのイチゴケーキは…)

 

そう思いながらも、ガラスの向こうにいる金髪のショートカットで、黒のスカジャンを着ている女の子の音を聴いている。

 

(にしても、上手い。

見て聴いて、素人でもわかるほどに上手い)

 

そう思っているとドラムが鳴り終わって、スタジオからその子が出てきた。

すると

 

「…誰だ?」

 

「まぁ…初めまして、だな」

 

「ああ。

それで…アンタの名前は?」

 

「如月 陽菜。

呼び方は好きにしてくれ」

 

「如月 陽菜…?

それって確か…」

 

そう呟くように言いながら、その子はレイの方を見ると

 

「うん。

この人が、あたしが越えようとしてる人だよ」

 

レイがそう言った。

俺はその会話が少し気になって

 

「?2人とも知り合いか?」

 

そう尋ねると

 

「ああ。

レイとは、Galaxyでバイト仲間なんだよ」

 

「って言っても、CiRCLEの方でも少しの間だけバイト仲間だったけどね」

 

「…なるほどな」

 

するとチュチュが

 

「これ!食べて良いの!?」

 

目を光らせて金髪の子を見ながらイチゴのケーキを指すと

 

「ああ。

てか、いつも勝手に食べてんじゃねぇか」

 

金髪の子が言い切る前にチュチュは、もう食べ始めていた。

 

(美味そうに食うなぁ…。

ま、こういう一面もあるって事か)

 

そう思っていると

 

「……あ。

そういや、まだ名乗ってなかったな」

 

「……あ。

そういや、名乗られてなかったな」

 

「あたしは、佐藤 ますき。

そっちも好きなように呼んでくれて構わないぜ」

 

「んじゃ、ますきで」

 

とりあえず、後はギターさえ集まれば、俺がこのバンドを手伝う事は、9割くらい無くなる。

 

「ん?

そういえば、ここのバンド名聞いてなかったな」

 

「それは、明日来るサポートの子と一緒に発表するわ」

 

「そうか。

それで、今から演奏するのか?」

 

「Sure.

でも……マスキング」

 

チュチュがますきを呼んで

 

「集中するのは良いけど、自分の演奏に夢中になってオリジナルを組み込まないこと!」

 

「はぁ……わかったよ」

 

マスキングと呼ばれた子は、大きくため息を吐いてガラスの向こうにある楽器が並んでいる所に向かい、次々と中に入って行くレイとパレオ。

そして

 

「それじゃあ、ちゃんと見ておきなさい陽菜」

 

フォーク片手に口の横にクリームを付けて話すチュチュ。

 

「…ああ」

 

(なんか面白いからこのままでいいや)

 

俺はそう判断して、チュチュの言う最強の音楽を聴いてみた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

演奏終了後

 

「どう?」

 

と聞かれたので

 

「…とりあえず、ギターとボーカルのいない今。

俺が言えることは、このバンドが、そこら辺のバンドより遥かに上手いって事だけだな」

 

と答えた。

するとチュチュは納得のいかない顔をして

 

「…まぁ、良いわ。

陽菜には、明日もここに集合してもらう。

all right?」

 

「わかった。

じゃあな、俺は帰るぞ」

 

そう言って扉を開けようとドアノブに手をかけると

 

「そういえば、陽菜に聞いておきたい事があったわ」

 

「?どうした?」

 

「Roseliaの弱点を教えてもらえる?」

 

「…なんで、俺に聞く」

 

「What's?

あなたがいつもRoseliaの近くに居たからでしょ?」

 

チュチュは知ってて当然という顔をしながら言った

 

「はぁ…。

俺のこと知ってたのか」

 

「Yes.

だから、あなたがボーカル枠を埋めてくれれば、私はRoseliaの弱点を知り、かつ、【神童】如月 陽菜という最強のボーカルをget出来るチャンスだったのに…!」

 

なんか、また地雷を踏みそう。

そう直感で察していると

 

「陽菜」

 

「なんだ?」

 

「もう一度、私のバンドにボーカル枠として入って!」

 

「無理」

 

そう返すと、チュチュは顔を真っ赤にして涙目になりながら

 

「Why!?Pardon!?

To you is the strongest of the band if put(あなたがいれば最強のバンドになるのに)!!」

 

必死になって言葉使いが英語になっている。

 

(俺がいれば最強のバンドになるのに…か)

 

「悪いけど、諦めてくれ。

そのお願いは、例えRoseliaに頼まれても無理だ」

 

「だから、どうしてなの!?」

 

「…確かに、凄いぞこのバンド。

短期間でここまで出来るんだからな。

でも…俺の実力について来れる程の実力は、()()()()一切無い」

 

「!!」

 

「それに、俺以外にボーカルを探すことを優先した方が時間効率も良いぞ」

 

そう言って陽菜は出て行った。

そして空間に残されたチュチュの怒りのオーラ。

するとパレオが

 

「チュチュ様」

 

「何、パレオ」

 

「Roseliaの弱点は聞かなくてもよかったんですか?」

 

「っ!」

 

ハッと思い出したような表情をするチュチュに

 

「見事に、はぐらかされましたね」

 

「は、陽菜ー!!!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日 始業式当日

 

いつも通り登校していた。

すると

 

「陽菜くんっ!」

 

「うわっ!?」

 

横から出て来たのは日菜だった。

そして

 

「急に驚かせてくるのやめんか」

 

「あははっ♪

やっぱり陽菜くんの反応が2番目にるんっ♪ってする」

 

「2番目かよ…」

 

「そういえば、陽菜くん。

おねーちゃんとなんかあったの?」

 

一瞬ギョッとしたが、誤魔化すように

 

「あー、まぁ、いろいろ…」

 

「そっかー…色々か〜」

 

すると日菜は『あっ!』と何か閃いた顔をしてから、ニヤッといたずら好きの表情を見せる。

と同時に、俺は猛烈に嫌な予感がした。

そして

 

「そうだっ♪

今日さ、陽菜くんと一緒に居てもいい?」

 

「無理だ諦めろ」

 

即答した。

のだが、日菜がこれくらいで諦めるわけもなく

 

「じゃあ放課後だけでいいからさっ♪」

 

「いや…そういう問題じゃ」

 

無いんだが、と言いかけた所を遮るように服の袖を引っ張って

 

「良ーいーじゃーんーかー!

最近会ってなかったから陽菜くん成分が不足なのー!」

 

いや、カバンと制服をがっつり掴んで引っ張ってきた。

しかも結構周りから見られるほどに声がでかい。

 

「なんだその栄養素ゼロの成分は!

それと駄々をこねるな。

無理なモノは無理だ」

 

そう言って前に進もうとしていると

 

「あれ?陽菜に日菜じゃんっ☆」

 

「?如月?」

 

リサと友希那が居た。

そしてリサが状況を察して

 

「あははっ☆

2人とも相変わらず仲良いね♪」

 

「やめてくれ…」

 

頭を片手で抱えて言うと友希那が

 

「それで、2人は何をしているの?」

 

「ああ…。

この駄々っ子が放課後連れて行けって。

無理だとは言ってるんだが…」

 

「?どうして無理なの?」

 

「いや…日菜が絡んでくると俺が制御しないといけないし…」

 

「日菜。

如月が付いて行っても良いそうよ」

 

「どうしてそうなった!?」「ほんとっ!?」

 

「ええ、本当よ」

 

「やったぁ!」

 

喜ぶ日菜は、俺が何か言う前に校舎内へ走って行った。

 

「……」

 

俺は無言でリサに助けを求めたが、苦笑で首を振られた。

そして友希那に

 

「それじゃあ…頑張って」

 

去り際にそう言われて、ガクッと落ち込むとリサが

 

「はーるなっ♪」

 

「…どうした…?」

 

「なんで、友希那があんな態度なのかわかる?」

 

「俺が他のバンドを手伝ってるから?」

 

「んー、惜しいっ♪

本当は嫉妬してるんだよっ☆」

 

「?嫉妬…?」

 

「そっ♪

『陽菜はRoseliaのお手伝いさんなのに、なんで他のバンドの所に陽菜がいるんだー』って。

まぁ、友希那自身は気づいてないみたいだけどね☆」

 

「んー…そうか。

じゃあ…」

 

「ん?」

 

「『全部終わったら戻る』って。

友希那に伝えておい」

 

すると俺は言い切る前にリサの指を口に当てられて

 

「だめだめっ☆

そーいうことは、自分で伝えなきゃっ♪」

 

「えぇ…マジか」

 

その後、始業式が終わるのを待った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

始業式も終わった事なので、俺は昨日のビルへと向かおうとした。

途中、友希那と話そうとしたのだが、どうやら先に、練習で帰ってしまっていた。

 

(どうしようか…。

友希那に伝えないといけない。

しかも…なぜだ…)

 

「陽菜くんっ♪」

 

このアイドルが本当について来てる。

 

「日菜。

ついて来るのは、もうこの際気にしない。

だが、ついて来たからには、俺の頼みを聞いてもらうぞ」

 

「うんっ!」

 

「紗夜に『すぐ戻って来るから安心してくれ』って伝えておいてくれ」

 

「?戻るってどこに?」

 

「Roseliaの手伝いに、だ」

 

「あっ、そっか♪

陽菜くん、今絶賛浮気中だもんねー?」

 

(この天然の小悪魔をどう扱ったものか…)

 

そう思っていると

 

「あれ、陽菜さんと日菜先輩」

 

背後から呼ばれて振り返ると、そこにはギターケースを担いだ、たえがいた。

 

「ああ、おたえか。

今から帰るのか?」

 

「ううん。

友達に呼ばれて、今からバンドのお手伝いする」

 

「おたえも手伝いか。

お互いお手伝いとして頑張ろうな」

 

「はい。

頑張りましょう」

 

すると

 

「2人とも…仲良い」

 

日菜がジトッ…と恨めしそうに言う。

そして

 

「普通だ。

それより日菜、絶対に目立つことはするなよ」

 

「なんでー?」

 

「俺は目立たないように行動したいんだ」

 

「あたしの中ではいつも目立ってるよっ♪」

 

「俺も日菜の行動は疲れるから言ってんだよ…。

てか、早く行かないと、あのちびっ子に怒られる」

 

「「ちびっ子?」」

 

「なんでもない。

早く行くぞ」

 

そう言って学校の敷地内を出て、右へ曲がると

 

「ん?おたえもこっちか」

 

「はい」

 

「偶然だねっ♪」

 

そしてしばらくしてから、商店街を出て道路沿いの道に来た。

 

「…おたえもこっちか」

 

「はい」

 

「おー、偶然っ♪」

 

その数分後、ビルに着いて中に入ろうとすると

 

「……おたえもこっちか」

 

「はい」

 

「すごい偶然っ♪」

 

「こんな偶然あってたまるか!」

 

我ながら鋭いツッコミを入れた気がした。

 

「「?」」

 

この時点で俺は理解した。

昨日レイが電話してた相手は確実にたえの事だ、と。

俺は疲労しながらも、昨日の場所へ向かった。

 

「あー…着いたな」

 

そして既に俺の心は、隣で目がキラキラしてる子を制御できる気がしなかった。

すると

 

「お邪魔するよー♪」

 

「あっ!日菜!」

 

止めようとした頃にはもう遅く、日菜はスタジオの扉を開けていた。

当然のごとく、その中には

 

「?誰?」

 

チュチュやレイ、ますきがいる。

すると俺を横切って進む影があり、その影は

 

「初めまして。

私、花園 たえです」

 

ちゃんとした挨拶をしていた。

 

「花ちゃん…!」

 

レイが駆け寄っている間にチュチュが

 

「それで、Mr.陽菜。

なんで2人も来ているの?」

 

「んー、この子がただ勝手に付いてきた。

まぁ、ちょっとした見学がしたいんだとよ」

 

「…ま、良いけど、練習の邪魔はしな」

 

すると

 

「あー!このケーキ美味しそう!」

 

パクっ

 

「あー!!それ私のケーキ!」

 

チュチュがケーキに目がいって、自分の言葉を遮った。

 

「そうなの?

でも、美味しいからみんなで分けた方が良いよっ♪」

 

そう言いながら日菜は手を止める事はなく、イチゴだけを食べ、俺はチュチュに睨まれることになった。

 

(勘弁してくれ…)

 

そう思い、ため息を吐くとますきが

 

「陽菜。

お客が来るなら来るって、言ってくれれば2個作ったのに」

 

「いや、俺も急にコイツ連れて行くことになってな」

 

「それは…災難だったな」

 

「全くだ。

てか、このケーキ。

ますきが作ってたんだな」

 

「まぁな。

作るのも結構楽しいから」

 

「2つの意味でうまかったぞ」

 

「…そうか」

 

なんて会話をしているのにも関わらず

 

「陽菜!」「陽菜くん!」

 

「なんだどうした…」

 

「この女が勝手に私のケーキ食べたの!

それも、イチゴの部分だけ!」

 

「あたしにも分けてよ!

イチゴだけで良いからさっ♪」

 

「はぁ…。

喧嘩すんな2人とも。

どっちか引けば収まるだろ」

 

「「いーやー!」」

 

(だー、もう…。

駄々っ子が2人もいる…)

 

「……ん?そういや、パレオはどうした?」

 

「パレオなら今。

私のおつかいに行ってもらってるわ」

 

「おつかい?」

 

「そう。

ジャーキーのストックが切れたから、ジャーキーを買いに行ってもらっているの」

 

「へー」

 

すると背後で、ガサッと袋を落としたような音が聞こえて振り返るとパレオが居た。

居たのだが、なぜか涙ぐんでいる。

 

「えっ、ちょ、おい?

パレオどうした?」

 

「……が居る…」

 

「なんだって?」

 

「日菜さんが居る!!」

 

そのセリフで、俺はどこかで見たと思っていたパレオの髪の色を思い出した。

 

(そうか…。

どこかで見たと思ったら、この髪色。

色合いがパスパレに似てたからだ)

 

そう思っていると日菜がイチゴの刺さったフォークを片手に持って

 

「?呼んだ?」

 

と言ってイチゴをパクっと食べた。

すると

 

「可愛い…」

 

「えっ?」

 

「日菜さんやっぱり可愛いです!!」

 

「ホントっ!?

ありがとっ♪」

 

「はいっ!」

 

パレオのテンション高い。

多分、余程のファンなのだろう。

すると

 

「陽菜くんっ!

あたし、可愛いって褒められた!」

 

「あーうん、カワイイヨー」

 

なんてテキトーに返すと

 

「むぅ……」

 

「なんだ…」

 

「褒めるならちゃんと褒めてっ!」

 

(いや)

 

「おねーちゃんの方は、ちゃんと褒めるくせに!」

 

「紗夜だからな」

 

「陽菜くんのバカー!」

 

「うわっ!?

ちょ、離れろ日菜!」

 

抱きつこうとする日菜の両肩を抑えて抵抗している。

すると今度はパレオが

 

「陽菜様…」

 

「どうした」

 

「まさか…。

陽菜様は…日菜さんの恋人なんですか?」

 

信じられないような目で見てくるパレオに

 

「おぞましいことを言うな」

 

「全然おぞましくないっ!

至って普通だよっ!」

 

「いや普通でもねぇよ!」

 

本日2度目の鋭いツッコミを入れたところでチュチュが

 

「パレオ!

遊んでないでジャーキーと演奏の準備!」

 

「はーい♪

すぐに用意致しますー♪」

 

パレオは、袋からジャーキーを取り出してワイングラスに入れて、チュチュに渡した後に、スタジオの中に入っていった。

するとたえが

 

「陽菜さん」

 

「ん?」

 

「結局、レイに正体バレたんですね」

 

「あぁ…そうだった…。

まぁ、誤魔化すのがメンドくさくて、名前晒した。

そしたら、面倒な約束をこじつけられた」

 

「ふふ。

陽菜さんらしい」

 

するとレイが

 

「約束はちゃんと守ってくださいよ」

 

笑いを投げかけるように言った。

 

「うっ…わかった」

 

そして

 

「それじゃあ、花ちゃん。

そろそろ準備しよう」

 

「うん」

 

レイとたえも中に入って行き、ますきもそれに続いて中に入って行った。

 

「どんな演奏するんだろっ!」

 

「一言で言うなら…。

『最強を目指す音』かな」

 

「最強…?」

 

「まぁ、聴いてればわかる」

 

「ふ〜ん…。

あっ、陽菜くん」

 

「ん?」

 

「絶対に他の女の子に好かれるような事しないでねっ♪」

 

「…全くと言って良いほど意味がわからん」

 

「とーにーかーく。

だめ!」

 

「…まぁ、出来る範囲で善処する」

 

そう返すと疑いの目を向けていた日菜が

 

「ふっふーんっ♪」

 

ご機嫌になった。

 

(女心、もとい、日菜心わかんねぇ…)

 

俺はしばらく頭を悩ませた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

演奏終了後

 

ガラスの向こうに見えるたえは、少し息を切らしていた。

そして、たえに水入りのペットボトルを渡すレイも同じく息切れしていた。

そんな中、俺は日菜に

 

「…どうだった?」

 

と尋ねると

 

「うんっ、カッコ良かったよ☆

でも、あたし的には、るんっ♪ってしなかった…」

 

「なら今はそれで良い」

 

(日菜がるんと来なかった理由。

それは、この音楽に足りないモノがあるからだ)

 

と思いながらも先のことを考えていると

 

「Mr.陽菜。

中に入りなさい」

 

チュチュに言われて、とりあえず中に入った。

するとウィィン…と機械の動作音が聞こえると上からスクリーンが降りてきて、プロジェクタで何か写し始めた。

 

(…レイズ ア スイレン)

 

「このバンドの名前は

RAISE A SUILEN!略してRAS。

意味は『御簾(みす)を揚げろ』

そして、改めて言うわ。

私は、私のプロデュースする最強の音楽で、このガールズバンド時代を終わらせる!」

 

幼い少女の宣言で、たった今、この瞬間に新しいバンドが結成した。

 

バンド名 : RAISE A SUILEN




renasuart様 ロコナ様
オボロコボロ様 Ritsu:様

お気に入りありがとうございます。
♪( ´▽`)

いやね、忘れてた訳じゃないっすよ?
アニメでRASを見て「あっ」ってなったりもしてないよ。
それで、急いで後の物語と合うようにして頑張ったりもしてないよ?
全てが作者の手の上だ(大嘘

今回はミス多そうだな…

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