退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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番外編 自分の居場所 〜後編〜

チュチュのRAISE A SUILEN結成の宣言。

その大々的な宣伝と共に、チュチュが発表したのは

 

「2月2日土曜日の夜に、Galaxyで1stライブをやるわ!」

 

なんとファーストライブについてだった。

そしてチュチュが次に言い放ったのは

 

「ハナゾノ」

 

「は、はい…!」

 

珍しく肩に力が入っているたえに

 

「あなたは確か、他のバンドに入っているのよね」

 

「はい」

 

「だったら、その人達も連れて来て。

あなたの新しい姿を見せるのよ!」

 

すると、たえは手を少し握って覚悟を決めたように

 

「はい!」

 

そう返事していた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その翌日

 

(2月2日にファーストライブか…。

早いなぁ…)

 

なんて考えている俺は、今学校へと重い足を動かしている最中だ。

しかし、今の俺にとって優先事項とは、友希那にすぐ戻ると伝える事であった。

 

(そういえば…。

学校で、俺から友希那に話しかけたことって無いな)

 

そう思い出していると後ろから、ちょんちょん、と(つつ)かれて振り向くと

 

「!友希那」

 

「…おはよう」

 

「あ、ああ」

 

「?何かあったの?」

 

「いや、なんでもない。

えっと…それより、友希那」

 

「待って」

 

話を遮られた。

 

「話は昼休みにしましょう」

 

「?…わかった」

 

と言ってみたものの、なんで昼休みに話すのかわかってなかったが、とりあえず授業が終わるのを待った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

昼休み

 

校舎裏で風に吹かれてながら、のんびりしていた。

 

(休憩しないと……眠い…)

 

そう思いながらも、市販のサンドウィッチを袋から出すと

 

「如月」

 

片手に袋に包まれた弁当箱を持った友希那が来た。

 

「ん、来たか」

 

「それで、私に何か用があったの?」

 

そして友希那が隣に座ってから

 

「用…というか、言っておきたい事があるから」

 

「?言っておきたい事?」

 

「ああ。

今手伝っているバンドのことだ」

 

そう言うと友希那の手が一瞬だけ止まった。

 

「…それが、どうかしたの?」

 

「いや、全部終わったら戻る。

って事を一応伝えておこうかと思ってな」

 

「それは、いつ終わるの?」

 

「んー…次のファーストライブまでだから、2月の初め頃だな」

 

「そう。

…わかったわ」

 

その一言を聞いて安心していると

 

「そういえば、如月」

 

「ん?」

 

「そっちのバンドは手伝っていて楽しいのかしら?」

 

「多分、どのバンド手伝っても楽しいと思う」

 

「……そう」

 

「?何ふてくされてんだ?」

 

「別に、なんでもないわよ…」

 

やっぱり頰がちょっとだけ膨らんでいる。

 

「?あっ、そうだ」

 

「?」

 

「そのライブをGalaxyでやるらしいから、暇があれば観てやってくれ」

 

「あの商店街に出来た新しいライブハウスね」

 

「ああ」

 

「それなら、リサたちも誘ってみるわ。

…それで、そっちは大変なの?」

 

「んー…問題は今の所ないから、ライブが終われば俺もRoseliaに帰ってこれる」

 

自然に出た言葉にピクッと反応する少女と、思い出したように「あっ」と口に出す男。

そして

 

「帰ってこれる、ってのは違う…?か。

まぁ、戻ってこれるってことで」

 

「良いわよ」

 

「え?」

 

「Roseliaを、あなたの居場所にしても構わないわ。

Roseliaに『お手伝い』が付いている。

…混ざっていない、けれど、側にいる関係。

これなら、あなたの好きなRoseliaは保たれるでしょう?」

 

朗らかにほんの少し笑みをこぼす友希那。

そして

 

「…じゃあ、この件が終わったら、ちゃんと次の日には帰るよ」

 

「ええ、約束よ」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして、ついに来た

2月2日 1stライブ 当日

 

初のライブで、観客席は全て埋まっていた。

その頃、楽屋で準備しているRASメンバーに呼び出された俺氏。

 

(一体何が…)

 

そう思いながらも、スタッフの子に案内をしてもらい

 

「助かる」

 

「い、いえ!

こちらこそ会えて光栄です!」

 

さっきから緊張しっぱなしの眼鏡をかけた濃い青色の髪に、花の髪止めをしている少女。

 

(会えて光栄…か。

ってことは俺のこと知ってんのか?

いや、今はどっちでも良いや…)

 

そしてお礼を言ってから楽屋の扉を開けると

 

「あっ!陽菜様!」

 

名前を呼ばれると共に、パレオの髪がモノクロになっているのに気がついた。

 

「その呼び方は却下だ。

それより、おたえの姿が見えないけど」

 

「ハナゾノなら、さっきバンドのメンバーに会いに出て行ったぜ」

 

「そうか。

それで、俺を呼び出した理由は?」

 

そう尋ねるとチュチュが

 

「Yes!

これが終わったら、感想を聞かせてもらうわ」

 

「おー、凄かったぞ」

 

「今じゃないっ!」

 

やはり、からかうと彩並みに良い反応が返ってくる。

そしてそれを少し笑って誤魔化した。

するとドアから、たえが入ってきた。

 

「あっ、陽菜さん」

 

「香澄たちに会えたか?」

 

「はい」

 

たえは返事をした後、チュチュに向かって

 

「チュチュ。

後で話したい事がある」

 

「?わかったわ。

後で聞いてあげる。

でも、今は目の前のことに集中しなさい」

 

「はい!」

 

そうしてRASメンバーはライブへと上がっていった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

観客席にて

 

俺は楽屋から出て、観客席の後ろに並ぶと

 

「あっ!陽菜!」

 

「陽菜さんも来てたんですね」

 

「香澄に麻弥。

それにイブたちも来てたのか」

 

「はいっ!

カスミさんに誘われましたっ」

 

イブが明るく返事すると隣にいた有咲が

 

「まぁ…おたえがどんな演奏するのか気になったしな」

 

「ああ、そういうことか」

 

挨拶がてらの会話が終わると、会場が暗くなり、ギターの音が鳴り響いて、演奏が始まった。

 

「うむ…」

 

(やっぱり演奏技術は申し分ないな。

観客の心も動かせている。

何より、おたえのギター精度が上がってる)

 

そう思いながら聴いていると、香澄が珍しく不安そうな顔をしていた。

 

「……」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

RASの1stライブが終わった。

そして、観客が帰っていく中、俺は裏口へと足を運んでいた。

すると壁の曲がり角を曲がり切る前に

 

「ハナゾノを、いただけませんか?」

 

何やら話し合っているチュチュの声が聞こえた。

そして壁から覗いてみると、ポピパとチュチュが話し合っていた。

隣にパレオも居るが、多分チュチュのお付きであろう。

 

「おたえを…?」

 

香澄の不安と疑問が混ざる声が聞こえた次に

 

「Yes.

今日のライブ、観ていただけたでしょう?

アレが、ハナゾノの本来の姿…。

RASでなら、ハナゾノの本領を発揮出来る。

ですから、ハナゾノを私にいただけませんか?」

 

『っ……』

 

(……なるほど…。

そういうことか…)

 

チュチュが、たえにポピパのみんなを呼ぶように言ったのは、全てこの為だ。

たえに秘められた才能を見抜き、そのたえをポピパから引き抜く為に呼んだ、ということだろう。

 

(この事態を見逃せば、明日にはRoseliaの手伝いに俺は戻れる。

でも、見逃してしまえば、おたえはポピパじゃなくなる…か)

 

「…仕方ない…」

 

呟いた後に大きなため息を吐いてから

 

「おーいチュチュ何やってんだ。

外でレイたちが待ってるんじゃないか?」

 

そう呼びかけるとチュチュはご機嫌良さそうに

 

「そうね。

早く打ち上げpartyに行きましょうか」

 

「そんじゃ、先に行っててくれ。

俺は飲み物買うから」

 

そう言うとパレオが不思議そうに

 

「?飲み物なら打ち上げの時にありますよ?」

 

と聞いてきた。

 

「コーヒーは無いだろ?

だから、先に行っててくれ」

 

「はーいっ♪

チュチュ様?

全てのケーキを食べてはダメですよ?」

 

「そんなに食べないわよ!」

 

なんて会話をして裏口から出ていくのを確認した。

すると沙綾が

 

「陽菜さん…。

今の話、聞いてましたか?」

 

「盗み聞きをして初めて知った。

…それで、チュチュの話を聞いてどう思ったか。

それを正直に言ってみ」

 

そう言うと、不安になっている中。

真っ先にりみと有咲が

 

「私は…すごいと思った…。

ポピパじゃ……あんなにすごいおたえちゃん……全然見ない…」

 

「私もりみと一緒…だな。

おたえ、ギターめちゃくちゃ上手くなってた」

 

暗い顔をしながら言った。

それを見て

 

「…そうか。

…香澄たちは、このままおたえが向こうに行っても良いのか?」

 

『っ……』

 

問いかけると黙ってしまったが、沙綾が

 

「それは嫌…だけど…。

もし、おたえが向こうに行っても、おたえが話し合って決めた事なら」

 

「…もし、それがおたえの為を思って言ってるなら、優しい答えだが、間違いだ」

 

「!」

 

「…別に、バンドのギタリストという位置付けに来る奴らは、他の代えはいくらでもいる。

でも、Poppin' Partyの花園 たえに、代わりは居ない」

 

『っ!!』

 

「俺から言えるのはそれだけだ。

後は、自分たちで進む道を決めてくれ」

 

『……』

 

「さて、もう外が暗いから、早く帰った方がいいぞ」

 

そのまま香澄たちが帰っていくのを見届けた後

 

「……それで、さっきから盗み聞きしてるのは誰だ?」

 

すると

 

「キ、キュー、キュー」

 

「この声…おたえか?」

 

「ううん。

これは、うさぎが悲しい時に出す声」

 

そう言って、手をうさぎの耳代わりにして出て来た。

それも、隠し切れていない不安な顔をして

 

「…その様子じゃ、聞いてたんだな」

 

「…はい。

…どうして、私にスカウトが来たんですか?」

 

「…それは、おたえに実力があったからだ」

 

「っ…!」

 

「おたえは、その実力があったからこそ、チュチュにスカウトされた。

後は、おたえが決めることだ」

 

「私が…?」

 

「そうだ。

わからないなら、1つ聞くが…。

…おたえの居場所はどこだ?」

 

「!」

 

「まぁ、とりあえず打ち上げに行って考えてこい。

あ、後ついでに。

俺は急用で帰ったって、チュチュに言っといてくれ」

 

たえに言い残して、俺は裏口から帰っていった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日

 

俺は朝から、友希那に練習時刻を教えられて、チュチュには呼び出されて、雨が降りそうな天気の中。

俺はビルに来た。

すると

 

「あっ、陽菜さん」

 

エレベーターに乗るベースケースを持ったレイと鉢合わせになった。

 

「おっ、レイ」

 

そう言いながら、中に入って行き先ボタンを押した。

 

「チュチュに呼び出されたんでしょ」

 

「なぜ知ってる…」

 

「昨日打ち上げに来なかったこと。

チュチュが怒ってた」

 

「ああ…なるほど。

おたえは?」

 

「…花ちゃんなら、今日は向こうのバンドで練習だってさ」

 

「へぇ…」

 

そして俺は少し不思議になり

 

「そういや…。

レイはおたえとバンドを組みたかったんだよな」

 

「?うん」

 

「おたえがRASの正式メンバーじゃなくて良かったのか?」

 

「それが花ちゃんの決めた事だから」

 

「そうか」

 

ちょうどいいタイミングでエレベーターの扉が開き、スタジオへ入ると

 

「来たわね2人とも」

 

チュチュが自分より大きい椅子に座って、椅子ごとクルッと回転した。

そして

 

「それじゃあ、行くわよ」

 

「行くってどこに?」

 

「CiRCLE。

そこで、あのバンドからおたえを引き抜くわ」

 

「おいちょっと待てチュチュ」

 

「?なに?」

 

「いや、何?じゃなくて。

昨日の打ち上げでおたえから何か聞かなかったのか?」

 

「もちろん聞いたわ。

『自分は、2つのバンドを受け持つ程の力が無い』って」

 

「なら」

 

「でも、昨日はPoppin'Partyの皆さんにもお話をしたの。

ハナゾノをいただけないか、って」

 

「!!」

 

隣にいるレイの反応を見る限り、知らされてはなかったようだ。

すると

 

「だから、今日はその返事をもらいに行くだけ。

それじゃあ、早く行きましょうか」

 

チュチュがそう言うと、パレオがすぐに付いて行き、ますきがレイの肩に手を置いてから、レイを連れて行った。

そして

 

「はぁ…」

 

俺はため息を吐いた後に、空になったスタジオを出た。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

CiRCLE

 

着いた。

着いたけども…

 

「久しぶりね友希那」

 

「ええ。

それで、いつになったら如月を返してくれるのかしら」

 

「まだ返すかも未定よ」

 

「……」

 

(こういうバチバチしてるのは待ってない。

断じて待ってない)

 

そう思ってると

 

「陽兄ぃ〜!」

 

「?どうしたあこ」

 

「あこね!

ドラムが前よりもちょっとだけ上手くなった気がする!」

 

「おー。

それじゃあ、今からRoseliaの練習に付き合っ」

 

すると服を後ろに思いっきり引っ張られた。

 

「ちょっと待ちなさい陽菜。

まだやるべき事が残されてるわ」

 

「?なんかあったっけ?」

 

「何の為にここに来たの!?」

 

「あ、ああ…そうだったな。

おたえの件か…」

 

すると

 

「あれ、陽菜さん。

それにチュチュ達も…どうしたの?」

 

中々、良いとも言えない状況に、たえがポピパのメンバーを連れて来た。

そして案の定チュチュが

 

「昨日はどうも。

それで、ハナゾノを譲ってくれる気になりましたか?」

 

その質問に、リサとあこが驚いた顔をしていたが、『落ち着け』と口パクで伝えると落ち着いた。

 

(口パクって意外と通じるのか…)

 

そう思いながら、話に耳を傾けると

 

「チュチュ。

昨日言った通り、私には力が無い」

 

たえが覚悟を決めたように話し始めた。

 

「聞いたわ。

だからこそ、ハナゾノはRASかポピパ。

その両方のどちらかを切り捨てれば、力不足も補えて、あなたはそのどちらかに専念できる。

この前のライブを観て、あなたも実感したでしょう?」

 

「うん。

でも、私にはポピパがある。

私の居場所はここなの。

だから私は、RASには戻らない」

 

「…っ!」

 

「ごめん…チュチュ」

 

たえのその一言で、チュチュは黙って振り返り、CiRCLEを出て行った。

パレオはチュチュを追いかけて行き、レイとますきもそれに続いて行った。

 

『……』

 

そして、この何を言っていいのか誰もわからない静かな空間。

 

「はぁ…」

 

そこに1つのため息が零れた。

すると

 

「陽菜さん」

 

「ん?」

 

「昨日はありがとうございました」

 

そう言って頭を下げるたえ。

 

「私にもう一度、自分の居場所をわからせてくれて。

私に断る勇気をくれて。

本当にありがとうございました」

 

眩しすぎる言葉を並べられて、少し動じてしまったが

 

「う…む。

まぁ、なんにせよ、良かったな。

これで、おたえの居場所がわかったわけだ」

 

「はい」

 

「おたえ。

本当に、よく頑張ったな」

 

「はい。

だから…ん」

 

頭を前に傾けてきた。

 

「ん?」

 

「頑張ったご褒美は

『頭を撫で撫でする』で良いよ」

 

「何言ってんだか…」

 

「陽菜さん早く」

 

急かされたので、仕方なく軽く撫でた。

 

(なんでだろう…。

合意の上なのにRoselia方面からの視線が痛い)

 

そう思って、撫でるのやめた。

すると、たえは満足した笑顔で

 

「満足」

 

と言ってポピパの方へ戻り、俺はため息を吐いてから

 

「さてと…どうしようか」

 

そう口に出して悩むと

 

「行ってあげなよ陽菜。

さっきの子が、心配なんでしょ?」

 

どうやら、リサには全てお見通しのようだ。

そして俺は友希那の方へと目を向けると

 

「ちゃんと…終わらせてから、必ず帰って来なさい」

 

「すまんな。

そんじゃ、行ってく…。

いや、ちょっと待て。

外雨降ってんじゃねぇか…」

 

ザァアアと降り注ぐ天の雫。

そしてそれを見て

 

「…傘…!」

 

バッと傘立てを見ると、どうしたことでしょう。

傘が1本もありません。

 

「アァ……」

 

亡者のような声を出しているとリサが

 

「なんかこのシチュエーションは見た事あるような無いような…」

 

「無い」

 

「あっ!思い出した。

ほらっ♪良く漫画とかである。

ヒロインを助ける為に主人公が傘を持って、外でずぶ濡れになったヒロインに傘を差し出すシーン!」

 

「その主人公が持つはずの傘が1本も無いんですけど」

 

「そんな事してる間に、あの子が風邪引いちゃうかもよ?

行ってらっしゃい☆」

 

「俺が風邪引いたら覚えとけよ!」

 

カランカランと音を立てて飛び出した。

すると紗夜が

 

「…なかなか、奇妙な捨て台詞を残して行きましたね」

 

と呟いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

雨の中、追いかけていると電話がきた。

 

「?もしもし?」

 

『ああっ!

陽菜様!大変です!大変です!』

 

「パレオか。

どうした?」

 

『チュチュ様が!チュチュ様が!』

 

「!チュチュに何かあったのか?」

 

『見失ってしまいました!

ついでに、パレオも迷子になってしまいましたぁ…!』

 

「パレオは傘持ってるのか?」

 

『は、はい!

折りたたみ傘を持っています!』

 

「わかった。

じゃあ、あのビルで待ち合わせだ。

そこからでも、あの馬鹿みたいにでかいビルが見えるだろ?」

 

『あっ!見えました!』

 

「それじゃあ、そこに向かってくれ」

 

『わかりました!』

 

そう言って通話が切れた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ビルの下で

 

「はぁ…はぁ…陽菜様ぁ…」

 

「その様呼びはなんとかならんのか…。

とりあえず、傘を貸してくれ」

 

「え?は、はい」

 

そして、パレオから折りたたみ傘を受け取ってから

 

「それじゃあ、パレオはスタジオを見て来てくれ。

俺はそこら辺探してくるから」

 

「はいっ、わかりました!」

 

別れた後で、俺はずぶ濡れになった服を着ながら

 

(さてと、どうしたもんか。

探すって言っても手がかりがない。

……こういう時はやっぱ勘だな)

 

そう考えて、チュチュが居そうな所を当たってみた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

数十分後

 

(マズイな…。

そろそろ体が持たん。

震えも止まらないし、体温が低くなってきてる)

 

そう思った矢先、公園に目が止まった。

ベンチには、探していた姿カタチが、そこにはあった。

 

(ようやく見つけた…)

 

呆れながらも、チュチュの方へと向かうと

 

「……何しに来たの?」

 

「助けに来た、って言ったら満足か?」

 

「……友希那の所へは、戻らないの…?」

 

「俺だって今すぐ戻りてぇよ…。

でも、こんな大雨じゃチュチュは風邪引くだろうと思ってな」

 

「……」

 

「まぁ、とりあえず傘に入ってくれ」

 

「っ…!要らない!」

 

小さな手で弾かれて傘を振り落とされ、泥に落ちた。

 

「Why!?どうしてなの!?

どうして友希那も!ハナゾノも!

私のプロデュースを断ってまで、自分のバンドにこだわるの!?」

 

「そこが自分の居場所だからだ」

 

「そんなの…!

ただ引きこもってるだけじゃない!!

自分の本来の実力も発揮出来ない場所が、自分の居場所なわけ無い!」

 

「…説明が足りなかったな」

 

そう言って傘を拾い上げて、2回ほど傘を振って泥を落とした。

 

「何がよ!」

 

「良いかチュチュ。

自分の居場所っていうのは、本当の自分を受け入れてくれる場所のことを言うんだ」

 

「っ!」

 

「友希那には、Roseliaという居場所があって。

築き上げた経験の中にいろんな想い出がある場所だ。

友希那はそういう場所を見つけたし、そこが好きな場所だ。

そしてそれは、おたえも一緒なんだ」

 

「っ……!

だったら、私はどうすれば良いの!?

そんな場所の作り方なんて、私にはわからない!!

全く!全然!これっぽっちもわからない!!」

 

耳を塞ぎこんで心の中にあった叫びを上げるチュチュ。

そして、その塞ぎこんでいる両手を離して

 

「聞けチュチュ!」

 

「!!」

 

そして目に涙を浮かべ、雨の雫が足されてそれが流れる。

 

「…居場所の作り方なんて、誰も知らない。

それは、自然に創り上げていくしかないからだ。

でもまだ、チュチュには創る為の時間がある。

急がず、焦らずにじっくり迷って創れば良い。

そうすれば、いずれチュチュにも居場所が出来る。

誰かに居場所を与えられるような人間になれ」

 

「っ!!」

 

「よく周りを見てみろ。

いつも隣にいるパレオも、なんで隣にいると思う。

それは、パレオの居場所をお前が作ったからだ」

 

「っ…」

 

チュチュは、堪えながらも目から止め処ない涙を流した。

すると

 

「あっ!チュチュ様ー!!」

 

公園の入り口辺りから聞き覚えのある声がした。

そして

 

「……そんじゃ…お互い元の居場所に帰るか」

 

そう言うとチュチュは服で涙を拭ってから

 

「……っ…ええ。

今日まで、仮のお手伝いさんとして助かったわ」

 

「ああ。

後は、頑張れよ」

 

すれ違いざまにパレオに傘を渡して、俺は自分の居場所へと戻った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日 2月4日 月曜日

 

マジで風邪引いた。




グォレンダァ様 けん玉マスター様
ロリコンの人様 劉蘭様
如月ユウト様

お気に入りありがとうございます。

ここで、番外編は終わりです。

まぁ、第4章は、1、2と分ける事になると思います。

では、次は4章で会おう!
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