退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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4章は、多分短めが多い





第4章 波乱のラブコメに休日は無い
第1話 リサ姉さんは看病したい 〜1日目〜


(あー…頭痛が激しい……)

 

ベッドの上で体の不調を呪いながら、天井を静かに見つめていた。

 

(……これはアレだ…風邪だ…。

しかも、なんか視界がグニャグニャしてる……)

 

部屋から射し込む夕方の太陽が半開きのカーテンによって少しだけ遮られる。

 

すると充電していたスマホにメールでの連絡が入り、開いてみるとリサからだった。

 

『陽菜〜☆

学校終わったから、看病しに行くね♪』

 

という内容のメールが届いたので

 

感染(うつ)るから来なくて良い。

……っと…」

 

メールを返してから、頭痛薬を取りに行こうとベッドから降りると

 

ピンポーン

 

チャイムが鳴った。

 

(…いや、リサにはさっき拒否メール送っといたから、宅配便とかのはず…)

 

しかし俺は、手すりも使わないと平衡感覚がわからない上、足を動かすという行動に疲れが出る程に衰弱していた。

 

なんとか玄関に辿り着き、扉を開けると

 

「大丈夫陽菜!?」

 

本当にリサが来た。

それも私服姿なので、一度帰ったようだ。

 

「リサ……。

心配してくれるのは有り難いが、感染るってメールで言ったはずだけど…?」

 

「なんのことかな〜?

アタシの携帯、さっき充電切れちゃったからわかんないやっ♪」

 

(さては…俺が返すメール内容予想して、自分で電源落としやがったな……)

 

「はぁ……。

とりあえず……だめだ。

感染ったら練習に……支障が出る」

 

「でも…」

 

「これくらいなら俺1人で…も大丈夫………だっ……て…………」

 

「!陽菜!?」

 

その瞬間に視界が歪んで態勢を崩してしまい、そのままリサにいる方へと倒れてしまった。

 

「全然大丈夫じゃないじゃん!

やっぱり無理しない方が良いって!

早く中に入って休も?」

 

心配させないようにしたのだが、逆に心配させてしまったようだ。

そして俺は、リサの言われるがままに自室で休むことになった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

自室

 

部屋に入ってすぐに冷えピタを貼られて、ベッドに転がされた。

今はリサが下でお粥を作ってくれている。

 

(自分のことくらい…自分で出来るだろ俺……。

いくら……頼りになるからって……甘え過ぎだ…)

 

「……情けねぇなぁ…」

 

脳に響いてくる自分の声に、体の倦怠感が増した気がした。

『病は気から』という言葉があるが、アレは良くも悪くも本当らしい。

 

「……なんとか……感染(うつ)さないようにしないとな……」

 

なんて呟いていると下から階段を登る音が聞こえて、部屋のドアを開けたのは、おぼんを持ったリサだった。

おぼんの上には、お粥が入っている鍋が乗せてある。

 

「よいしょっ…と。

陽菜、自分で起きれる?」

 

おぼんをベッドの横にある机に置きながら聞かれ

 

「あぁ…」

 

起き上がろうとするが、少し腕が震える。

 

「待って、アタシも手伝うから」

 

「あぁ…すまん」

 

リサが、ゆっくりと体を起こすのを手伝ってくれたおかげで、楽に座れた。

するとリサは、体温計を取り出して

 

「それじゃあ、熱測るけど…良い?」

 

そう言って片手をベッドについて、グイッと近寄って体温を測ろうとするリサに

 

「いや……良くない……。

自分で測るから…。

離れてくれ…感染る…」

 

体の倦怠感が未だに抜けず、声が若干途切れる。

 

「もー…陽菜の意地っ張りめ」

 

リサが納得してない顔をしていたが、体温計をもらって熱を測ってから、リサに返すと

 

「んー、37.9℃かぁ…。

今、お腹とか空いてる?」

 

「…ちょっとだけ…」

 

「おっけー♪

別皿に分けるからちょっと待ってね♪」

 

そう言ってリサがお粥を別皿に移してくれた。

所までは良かったのだが…

 

「はいっ♪

あーんして陽菜」

 

「いや……自分で食べれるから……」

 

「だーめっ♪

今日は絶対に無理しないためにも、リサ姉さんが食べさせてあげよう☆」

 

「……甘やかそうとしてんのか…?」

 

「うんっ♪」

 

とびっきりの笑顔で答えられた。

すると

 

「まぁでも…陽菜のことを心配してるのは本当だから、これくらいはさせて?ね?」

 

「っ…わかった…」

 

どうにも俺という人種は、こういう心配する女の子の頼みごとには弱いようだ。

 

「それじゃあ、あーんっ♪」

 

リサがレンゲでお粥をすくい取って、口に運んでくれた。

そして、その数十分後

 

「美味しかった?」

 

「……ああ」

 

(まさか…『あーん』が1回だけじゃなかったとは…)

 

少しこそばゆい感じがしていると、カチャッと食器を置いたリサが

 

「そっかそっか☆

また食べたい時に言ってくれれば、リサ姉さんが食べさせてあげるからね♪」

 

胸を張って自慢気に言われたが

 

「……遠慮しとく」

 

リサのお姉さん力に、俺は耐えられそうにない。

 

「あははっ♪

それじゃ、アタシは食器片付けてくるから安静にしててね?」

 

そう言って人差し指で鼻をちょんっと、からかうように押された。

 

「……へいへい……」

 

返事をするとリサは静かに微笑んで下に降りていった。

そして、俺はリサが用意してくれた薬を飲んで、ベッドで横になった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

リビングで食器を洗って、いろいろと陽菜の役に立つ準備をしてから部屋に戻ると、陽菜が既に横になっていた。

 

「……陽菜〜…?」

 

小声で聞いても返事が無かった事が気になり、そっと上を向いた顔を覗き込むと、ぐっすりと眠っていた。

 

(良かった♪ちゃんと眠れてるみたい)

 

確認をした後にベッドに座った。

 

「……」

 

静かな空間で、寝ている相手を見つめている。

 

(陽菜ってば、寝顔可愛いなぁ…。

この前、膝枕した時にもこんな顔してたっけ)

 

「こうやって……ちゃんと誰かに弱い所を見せてくれるようになって良かった…」

 

そっと片手で頰に触れて、寝顔を眺めていた。

 

「……?あれ…?」

 

ふと、視界の横にあった黒い机に目が移り、机の上に伏せている写真立てを手に取った。

気になって裏を返して見てみると

 

「!これって…第1回ガルパのみんなで撮った写真…」

 

それは、ボロボロになって、綺麗に保存されている状態とは言えないけれど、とても大事に飾られてあった。

 

(そっか…。

海外に行った時も、大事に持ってたんだ)

 

そう思って写真立てを伏せて戻した後に、ベッドの横で床に座って

 

「陽菜のそういう友達思いなところ…。

アタシ大好きだよ…」

 

部屋に射し込む夕陽が眩しい中、耳元で小さな告白をした。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……ん……?」

 

起きると夕日もほとんど落ちて、ほんの少し外の明かりで照らされる部屋。

 

そして起き上がってから、右手を安心する暖かさに包まれていることに気づいた。

 

「リサ…?」

 

隣でうつ伏せになって寝ているリサに、手を握られていた。

すると

 

「ん……あれ?

陽菜起きたんだ…」

 

そう言って小さなあくびをするリサ。

 

「もう暗いから、電気つけるね」

 

「ああ…」

 

そしてリサが部屋の電気をつけて明るくなった。

 

「そういえば陽菜。

Roseliaが事務所に所属したのって友希那から聞いてる?」

 

「いや、聞いてない…。

まぁ、事務所に所属することになったんだな…」

 

「そっ♪

Roseliaの音楽をたくさんの人に伝わるように、って」

 

「そうか…」

 

「契約も申し分なさそうだし、今のところは順調に活動出来てるよ♪」

 

「そうか…」

 

「って、話聞いてる?

あっ!それとも、どこか体調悪い?

それなら早く言ってね。

ちゃんとお薬も飲ませるから」

 

1人用のベッドにリサが乗って、軋む音が聞こえたが、リサはお構い無しに言い寄ってくる。

 

「いや…だいぶ楽になってるから…。

そんなに心配すんな」

 

「…うん」

 

やっとベッドから降りてくれた。

 

「はぁ…。

まぁ、薬も飲んだから、どうせ明日にでも治るだろ」

 

「だと良いんだけどな〜。

明日はRoseliaの練習があるから、抜けたくても抜けられないし…」

 

「これ以上一緒にいたら、風邪が感染るから……。

お見舞い来るのは今日だけで良いぞ…」

 

「ええ〜?

アタシ、空いてる日は毎日来るつもりだったんだけど…」

 

「…世話焼きは程々にしてくれ…。

それで感染ったら元も子もないから…」

 

「………うんっ、わかった☆

リビングにいろいろ用意しておいたから、良かったら使って良いよっ♪」

 

リサは笑ってそう言ったが、俺にはどうも、それが下手な作り笑いに見えた。

そしてリサがカバンを持って出て行く際に

 

「ちょっと待て…。

…コレ渡しとく」

 

「?」

 

「この家の鍵だ…。

とりあえず、鍵を閉めておいてくれ…」

 

「えっ?

でも、この鍵はどうするの?」

 

「別に…持って帰るなり、悪用しない限りは好きにして良い…」

 

するとリサの顔が花のように明るくなると

 

「やっぱりアタシここに居る!」

 

謎の決意を持った言葉を放つと共に、病人に抱きついて来た。

その瞬間に漂うリサの仄かな甘酸っぱい良い香りと感触に、理性を保つための脳に負担がかかった。

 

「っ!頼む後生だ帰ってくれ」

 

「もう無理!

ずっと我慢してたのに!」

 

「意味がわからん…」

 

「こうなったら、陽菜の家に泊まる!」

 

「何言ってんの?え?リサ何言ってんの?」

 

「ここに泊まって付きっ切りで思いっきり看病する!」

 

「いや…明日学校だよ」

 

「無理っ!やっぱ無理!

それに陽菜。

夜1人でトイレ行けるの?」

 

「小学生か俺は…」

 

「1人でお風呂入れるの?」

 

「何があっても絶対に1人で入るぞ…」

 

「勝手に倒れたりしない?」

 

「しない」

 

「やっぱりここで看病する!」

 

「今の質問の意味どこいった…」

 

この後、どうにか理由をこじ付けて帰らせることに成功した。

しかしこれは、俺の日々に波乱を起こす序章にもならなかった。




kakera様

お気に入りありがとうございます。
♪( ´▽`)


この先、5章くらいで一度音楽方向に戻って、6章で4章の続きが始まる感じになると思います。

それではまた
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