退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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今回というか、4.5章はオリキャラが多くなる予定です。




第4.5章 理想から嫌われれば運命からも嫌われる
第1話 黒の世代


その日付けを超える深夜0時。

 

「よし…大体こんなもんか…」

 

俺がちょうど銃のメンテナンスを終えた頃。

スマホが震え出し、手に取って画面を見た。

 

「……」

 

画面に表示される個人番号を見てすぐさま切った。

そして何事も無かったかのように銃を黒いケースにしまった。

するとまた掛かってきた。

 

「……」

 

また黙って切る。

しかし、すぐに掛かってきたので、めんどくさそうにため息をついた後に出た。

 

『あの……No.0(ナンバーゼロ)

さすがに、許嫁を無視するのはどうなのですか?』

 

落ち着きがあり、女性の声、それも透き通るような綺麗な声が電話越しに聞こえてくる。

 

「さらっと設定盛るな。

切るぞ」

 

『あ、あの!待って!お願い!

なんでもさせてあげますから!』

 

「そこは『なんでもするから』だろ…」

 

呆れながら言うと向こうの相手は真剣な声で

 

『コホン…では、No.0。

あなたに、1つ聞きたいことがあります』

 

「…なんでしょうか?」

 

誠意のこもっていない敬語で返すと向こうは泣きそうな声になりながら

 

『わたしの名前ちゃんと覚えていますか!?

仮にも昔一緒に遊んだ幼馴染ですよ!?』

 

俺は頭を抱えた。

名前は覚えている。

この同年代の女の子の名前は、天崎(あまさき) (ひめ)

 

だが、そこは割とどうでもいい。

本当にどうでもいい。

なぜならそれは、名前がどうこう以前に、コイツが能天気すぎるからだ。

 

「ちゃんと覚えてるから安心しろよ…」

 

『本当に?』

 

「てか、お前()()()()()()()()()、わざわざ俺の個人番号にかけて…くるな……よ…」

 

そこで俺は引っかかった。

なぜコイツが俺の個人番号にかけてきたのか。

昔の知り合いだからか、この天皇は時間は大切にする方で、無駄な時間は使わない。

つまり、もうすでに何か起こっているという事だ。

 

「……いつだ?」

 

すると姫の雰囲気が変わった。

 

『昨日の午前2時30分。

わたしの母と父が自宅で殺されました。

2人とも頭部をとてつもない握力で砕かれ死亡。

もちろん警備の者は50名配置していましたが…』

 

「全員漏れ無く死亡…か」

 

『はい…。

配置人数を把握していなければ、『そこ』に何人いたのかは不明でした。

そして、天皇が殺されたというのは、まだ公にはされていません』

 

(人1人の形が残らないほどに、一面血の海だった。

ってことだな…)

 

「…てことは、今はお前が代わりの天皇ってことか?」

 

『形だけはそうなっています』

 

「…そうか。

それで、なんでお前無事だったの?」

 

『そんなにわたしに死んで欲しいんですか!?』

 

「お前意味わかってんだろ!」

 

『コホン…。

わたしはその時、大学の用事で別荘に居たので大丈夫でした』

 

「……そうか」

 

(姫は…よく堪えてる。

コイツにとっちゃ、いつも通りの日々が唐突に壊されて、今かなり苦しい状況なのにな…)

 

そう思っていると

 

『それと…これは個人的な話になるのですが…』

 

「ん?」

 

『貴方の周りにいるあの可愛い女の子たちは誰なんですか!?』

 

「俺のプライベート調べたのか!?」

 

『だって気になるじゃないですか!

そんなの調べるじゃないですか!

そしたら女の子がいっぱい周りにいるじゃないですか!

それも美少女ですか!?

何呑気に美少女パラダイスしてるんですか!!』

 

「あー…頭痛ぇ…。

もう切ってもいいか?」

 

『あ待って!切らないで!ね待って!』

 

姫の敬語が外れたので、今はお仕事モードではなく、友達モードなのだろう。

 

「はぁ…。

別になんでもない。

ただの友達だ」

 

『なら良いのです!』

 

「あっそう。

それで、俺が海外に行く手立てをしたのは誰だ?」

 

『わたしと如月 葉一です。

あの方が武器を調達しろと言ったので、調達しました』

 

「…なるほどな。

親父さんがそこまでするってことは、今回のテロは似たような事が海外でも起きてる訳だ。

そして、お前が個人番号にかけてきた本当の理由は…」

 

『ええ、貴方が予想している通りです。

今、わたしは手も足も動かせません。

テロリストがわたしの母と父を殺したのは、そちらの方が裏の権限があったからです。

今のわたしは正式に天皇という訳ではありません…』

 

「だから、俺の個人番号にかけてきた。

……俺1人でどうこう出来る相手じゃないぞ」

 

『わかっています。

ですから、向こうに貴方の知り合いがいる事でしょう』

 

「それも海外に行かないとわからん…か。

…で?

今、国のお偉いさん方は一体何をしているんで?」

 

『今はテロリストの要件に対応中です』

 

「要件?」

 

『はい。

とはいえ、要件…というより、脅しに近いでしょう。

まぁ、そこは海外にいるあなたの叔父に聞いてください。

そちらの方が安全です』

 

「まぁ…な。

親父さんの所なら問題ないだろ」

 

『それに…』

 

「ん?」

 

どうせ、あの方達は、また陽菜のことをボロ雑巾みたいに使って捨てようとするのです。

だから、あの方々は頭を抑えられたのです。

今回、こんなバチが当たったのは日頃陽菜に対する行いですよ』

 

電話越しでも、ツンツンしているのがわかる。

 

「はぁ…?」

 

『それと…今回のテロリストの目的がなんなのか。

それはまだハッキリしていません。

ただ、送られてきたメッセージにはこう書かれています』

 

「メッセージ?」

 

『はい。

[満点の星空の下、中空の満月の明かりと共に、名乗りを上げよ]と』

 

(日本語…?)

 

「……なんの団体なんだか…」

 

『…先程、自宅で殺されたのはわたしの両親と警備員の方々です。

警察は、あの家にあった緊急時の連絡を受け、3時頃に到着してすぐに突入しました。

しかし、その中に3人の死体がありました』

 

(緊急時の連絡……。

誰かと会話してる暇は無さそうだな…。

てことは、ボタン式か)

 

「ん?身元不明とかでは無いのか?」

 

『はい。

その3人は似たようなローブを着ていました。

おそらく襲撃したテロリストだと思われます。

相当苦しんで死んだのか、全員目から血が噴き出していました。

しかし…不可解なことに、その3人は他の誰よりも遺体の腐敗が酷く、触れただけで体の一部がボロボロと崩れるほどでした。

ハエが飛び交っていたことから、かなりの時間が経っていると思われたのですが…』

 

「昨日の午前2時30分に襲撃…。

ってことは、そんなに腐敗が進むのはおかしい…。

なら、ドラッグか。

でもそんな症状が出るクスリあったか…?」

 

『いいえ。

そして、日本の警察のどの部署からも、まだそんな症状をもたらすクスリは広まっていません。

それに、科捜研にも回しましたが、どうやら尿、汗、血液…。

身体のどこからも検出されませんでした。

つまり…』

 

「海外産の新型ドラッグ…。

なら、その3人は日本に持ち込んで使ったってことか…」

 

(クスリの活動時間は…大体5分から10分くらいだな。

その間に50人もの手練れを何人いたか判らない程度に惨殺。

そして、人間の頭蓋骨を粉砕する程の握力。

…となると、クスリの効果は身体の異常強化。

3人のテロリストは…3割の確証しか無いが、おそらく下っ端。

実験体として使われたんだろう。

つまり、まだクスリは完全に完成してない訳だ。

てことは…)

 

「そいつらの親玉は海外に居て、今もクスリの開発を進めてるってことだな」

 

『はい。

それとどうやら、死に方はそれぞれ個体差があるみたいです』

 

「ん?」

 

『3人のうち2人の女性は遺体の腐敗と共に目玉の片方が半分しぼんで、もう半分は潰れていました。

そして最後の1人の男性は、中の血管が見えるくらいに全身の毛穴が広がっており』

 

(細胞も破壊するドラッグか…)

 

「3人の遺体の共通点は肘や膝、指の関節といった関節部分が飛び出しているのが確認出来ています。

おそらくクスリは痛覚麻痺も引き起こすようです』

 

「…はぁ…。

目的不明、しかも一国の頭を抑えたか…」

 

俺はケースをベッドの下に押し込んでから、ベッドに腰をかけた。

 

『はい。

ですから、特殊機関を動かすことにしました。

とはいえ、私の警護に付いてもらう方たちが大半日本に滞在です。

海外へ向かうのは陽菜ともう2人の方くらいでしょう』

 

「もう2人?」

 

『それは、海外へ行けばわかります』

 

「そうか…」

 

ため息混じりに呟くと電話越しに申し訳なさそうにしながら

 

『……今回…。

あなたに命令を下したのは、私の父ですから、私があなたの依頼を取り消すことは出来ません。

そして、その父ももう他界しました。

そのことについても、本当に申し訳ありません』

 

「……構わん」

 

怒る気はないので、とりあえず返事をした。

すると

 

『それと、今日のお昼。

私の別荘へ来てくれますか?』

 

「え、なんで」

 

『お話があるからです』

 

そう言われた俺は午後の予定を考え直してから

 

「まぁ…特に予定は無いな」

 

『ホントですか!?

では、わたしの方で車を手配しますので、ゆっくり来てください!』

 

「へいへい…。

そんじゃ、切るぞ」

 

そう言って多少強引に通話を切った。

 

(中空の満月…ね)

 

誰にも知られず大切な人の見えないところで死ねるのなら、本望だ。

 

「…寝るか」

 

そうして俺はベッドに身を投げ、ゆっくりと深い眠りに入った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

10時29分

 

俺は玄関で靴を履いた後、スマホで時間を確かめてから外に出ると

 

「お待ちしておりました如月様。

どうぞこちらへ」

 

そう言ってどこかで見たことのあるような黒服の女性が黒いリムジンの中へと誘う。

とはいえ、完全一致ではない。

では、どこが違うのかというと髪の色だ。

 

金髪なのである。

おそらく染めている。

しかし、俺はそんなことより1番ツッコミたかったのは

 

(なんで目立つリムジンで来た…!!)

 

内心『あの天皇馬鹿なんじゃないか?』と疑問を投げかけていた。

すると

 

「あれ?

陽菜くん?」

 

「っ!彩!?」

 

隣の家から私服姿の彩が出てきた。

どこかに出かける様子だが

 

(マズイな…。

この状況を見られた…。

どう言い訳すれば…)

 

そう思っていると黒服の女性が小声で

 

「始末しますか?」

 

黒いサングラスをしているので目は見えないが、真顔で胸ポケットに手を入れて平然と言う。

 

「いや…せんでいい…」

 

「わかりました」

 

小声での会話を終えると彩に

 

「陽菜くん。

その人ってもしかして…」

 

彩が黒服を指差して口を開いたので息を飲んだ。

すると

 

「こころちゃんの所にいる黒服の人?」

 

「えっ!?」

 

黒服の人を見ると、どことなくこころの周りにいる黒服の人たちに似ていた。

 

(ていうか、格好一緒…。

てことは、謎の既視感の正体はそれか…)

 

そう思ってから俺は彩に

 

「あ、ああ。

ちょっと用事で…。

彩はどこか出かけるのか?」

 

「うんっ!

今日は事務所での仕事が終わったら、みんなで日菜ちゃんの家に行く予定なんだっ!」

 

「そうか。

まぁ、仕事頑張れよ」

 

「うんっ!

陽菜くんも用事頑張ってね!」

 

「…ああ」

 

彩が手を小さく振ってから、事務所へ向かうのを見た後。

俺はさっさとエンジンのかかった車の中へと入った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

天皇の別荘へ着くと、まず身体検査を3回受けてよくやく中に入れた。

 

だだっ広い空間には、空気洗浄も兼ねてか植木が部屋の隅っこにそれぞれ1つずつあり、窓から射し込む太陽光が白い部屋の半分を照らす。

 

部屋の中央辺りには、2つの赤いソファの間に白く綺麗な金の装飾が施されたローテーブルが置かれていた。

 

(久しぶりだな、ここに来るのも…)

 

そう思いながらソファに座った。

座り心地の文句を付けられる奴なんてこの世に居ないと思わせるほどのとてつもない満足感。

 

コツコツコツ…

 

という癖になりそうな一定の音程を保つ足音を聞き、俺はついに8年ぶりに天皇と対面した。

 

「……」

 

目を合わせても無口なそいつは、昔と変わらず純白のドレスを着て、透き通った薄い水色の布を肩に羽織っている。

 

当然のことながら、容姿は昔と変わり、神々しいほどに容姿端麗で見た感じお淑やかである。

そしてソファに座る俺は

 

「久しぶりだな」

 

そう言った。

しかしこの天皇…

 

「あっ…えと…。

お、お久し…ぶり……です……。

…は、はは、陽菜…!」

 

ビックリするくらいに人見知りなのであった。

今だって手を前にして指同士をもじもじさせながら、緊張で肩が上がり、顔を赤くしている。

 

「……お前…相変わらずの人見知りなんだな」

 

「いえ…あの……その……。

人見知りというか……これは…陽菜だけというか……」

 

「?ん?」

 

「と、とりあえず、ち、昼食を済ませましょう…!

人見知りは…しばらくすれば…直ると…思い……ますから…」

 

目を合わそうとすると顔をほてらせて目を逸らす姫。

 

「な、何か…要望は…ありますか?」

 

「なんでもいい」

 

そう答えると姫は一瞬だけ『あっ』と不意をつかれたような表情をした後、すぐに微笑んで部屋に付いている電話で『なんでもいいそうです』と楽しそうに言ってから受話器を置いた。

 

何が良いか聞かれた時『なんでもいい』と答えても何も言わずに微笑んでくれる。

それが姫の良い所なのかも知れない。

そして姫は俺の前にあるソファにゆっくりと腰を置いてから

 

「ふふっ」

 

1つの笑みをこぼした。

 

「どうした?」

 

「昔も、ここでよく遊んでいた時。

お腹が空いたら、何が食べたいのか聞いたら『なんでもいい』と答えてましたね」

 

「そう……だな…。

まぁ…ほとんど覚えてないが…」

 

「!…そう……ですか…」

 

しゅん…と落ち込んでしまう姫。

すると板チョコみたいな形をした扉が片方だけ開き

 

「昼食をお持ちしました」

 

と良い香りのする黒服の女性が入ってきた。

 

「?」

 

(この黒服の人…)

 

持ってきた食べ物を並べる黒服を見て少し考えようとすると姫が

 

「あの……陽菜。

そんなにこの方を見つめて…どうかしましたか?」

 

「いや…この金髪の人ってもしかして…」

 

そう言うと黒服の女性は

 

「今日お迎えにあがりました。

琴吹(ことぶき)と申します」

 

「ん、ああ…」

 

(彩を俺の知り合いだとわかっていて始末しようとした…。

俺的にはそれが許せんが…。

はっきり言って、あの判断力は実戦で生きる為に役に立つ…)

 

甲乙つけがたい。

そんな風に考えていると姫が

 

「陽菜。

いつまで見つめているつもりですか?

早くお昼にしましょう」

 

「ん、ああ」

 

返事をすると琴吹は口を開き

 

「では、私はこれで失礼します」

 

用事が済んだので帰っていった。

そしてテーブルに並べられたのは、どれも一般家庭で作られる物ばかりであった。

 

「これは…」

 

「陽菜は昔から高級食材嫌いでしたから」

 

「まぁな。

アレの何が美味しいのか俺にはわからん」

 

(リサの料理の方が美味い。

絶対に)

 

俺の中でリサの料理は、おにぎりしか食べてないが、今まで食べてきた中で1番美味いと言い切れる自信がある。

そしてテーブルの上に絶対に使わないであろう。

2つずつ置かれたフォークとナイフを無視して、横向きに置かれている箸を手に取って

 

「ま、そんなことはどうでも良い。

俺をここに呼んだ理由がちゃんとあるんだろ?

食事がしたいとかいう建前は置いといて」

 

「それは…ありますが…」

 

「?」

 

「一緒に食事したいというのは…建前ではないのです…」

 

「えっ…と…なんで?」

 

すると姫は華奢な身体だと言うのに、大きな声で

 

「わ、わたしは陽菜のことが『好き』だと。

昔申し上げました!」

 

「うっ……む。

言っとくが、それに応えるのは無理だ」

 

「やはり…そうですか…」

 

冷静な声だが、露骨にがっかりしている姫。

羽織っている布で見せないようにしているが、薄いので表情が見える。

すると

 

「…まぁ…断るとわかっていたので後悔はしません。

食事にしましょうか」

 

「そうだな」

 

そして食事中。

俺は少しぎこちなく感じていたが、姫は静かに微笑みながら食べていた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

食事後

 

「うむ…お粗末さん」「お粗末さまでした」

 

普段ご馳走様と言うのだが、ここに来ると何故か自然にこういう言葉になる。

すると扉が開き、さっきの黒服の女性が入ってきて皿を下げにきた。

そして姫が

 

「ここからはこちらの話になりますが、良いですか?」

 

「?なんだ?」

 

「今日の23時。

あなたに、ある人間の暗殺を命じます」

 

「……場所は?」

 

「意外と…迷わないのですね」

 

「こんなことでいちいち迷ってられるか。

それで、標的は誰で、どこで殺せばいい?」

 

そう言うと姫は3枚の写真を並べた。

 

「これは?」

 

「いずれも政府側から追放した方々です」

 

「ほう…」

 

そこで俺はムズムズしていた頭の中を解消すべく

 

「いや、ちょっと待て…」

 

「?なんですか?」

 

「琴吹さん居るんだけど…。

話進めて良いのかこれ」

 

そう言った。

普段なら仕事関係の話は、1対1で話していたので、3人目がいるのは流石にマズイのではと感じた。

しかし、琴吹は

 

「私のことはお気になさらず」

 

「いやめっちゃ気になる」

 

すると姫は

 

「大丈夫ですよ。

琴吹は私が1番信頼している側近ですから」

 

「そ、そうか…。

なら、すまん。

話を戻してくれ」

 

「はい。

まず、1人目は元公安の竹中(たけなか) 正文(まさふみ)

そして2人目は、元内閣府の人間である田中(たなか) 玄海(げんけい)

彼らは、この国にテロリストを招き入れました」

 

「よく出来たな」

 

()()()()()()()()()を作ったのでしょう。

葉一さんが、あなたを無料で海外へ運んだ時のように」

 

「てことは…親父さんみたいな権限を持ってる奴が向こうにもいる…つてことか?」

 

「いいえ。

わたしも最初はそう考えました。

けれど、彼らを助けたのは、この3人目。

伊藤(いとう) (じゅん)

元特殊機関の執行官No,14です」

 

「は!?え?

特殊機関にスパイ?」

 

「はい。

しかし、昨日捕まえました」

 

「ん?どゆこと?」

 

「捕まえましたが…。

今日の夜9時に証拠不十分として釈放されることになりました。

…というのが、政府側の建前で。

本当のところは、釈放してさっさと始末しろ。

というのがこの国の頭が出した命令です」

 

「…強引だが、判断力は良いな。

でも、そいつが釈放されてから、どこに向かうのかわかってんのか?」

 

「はい。

彼は家族を人質に取られています。

ですから、竹中と田中の2人のいる場所へ向かうでしょう」

 

「へぇ…。

その交渉材料は?」

 

「おそらく特殊機関の内部情報かと思われます」

 

「なるほどな…。

向こうからしたら、俺ら特殊機関の情報なんて喉から手が出るほど欲しいだろうな」

 

独り言のように言うと琴吹が

 

「はい。

ですから、その情報が向こうへ渡る前に始末してしまえば良いのですよ」

 

「なんでもかんでも始末しないでくれよ琴吹さん…」

 

「邪魔になると判断したら始末します」

 

「…まぁ…良いや。

俺の友人には手を出さないように」

 

「わかりました」

 

(なんか…忠実な犬みたいだ…)

 

なんて思いながら見ていると、ふとサングラスが気になった。

細かく言えば、サングラスの()()()()が気になっていると姫が

 

「陽菜」

 

細目でジト〜っと睨んでくる。

 

「な、なんだ…」

 

「陽菜は琴吹のこと。

好きナンデスカ?」

 

「なぁぜぇ最後カタコトになる…」

 

そう言うと姫は両腕を組んでむすっとしながら

 

「そりゃあ、好きな殿方が他の女を見ていたら嫉妬もしますよ」

 

「あ、そう。

俺が気になってたのは、そのサングラス外した顔が気になっただけで…」

 

「別に…構いませんよ」

 

「「えっ?」」

 

俺と姫の声が重なると同時に琴吹はサングラスを外した。

意外というのか意外じゃないというか…。

 

かなり可愛い美少女ギャルだった。

リサとはまた別のものを漂わせ、白肌で金髪に染めた髪をシュシュで後ろにまとめている。

目はダルそうにしており、黒服という重い色が合ってない気もするが…

 

「これはこれで…良い」

 

なんて呟くと

 

「ありがとうございます」

 

とお礼を言われてしまった。

すると姫がむすっとしながら

 

「陽菜は女たらしです」

 

つんっと顔を横に逸らした。

 

「なんでそうなん…」

 

刹那、ゾクっと背筋に感じた殺気。

 

「!!」

 

「!危ない!」

 

琴吹が叫ぶと共に、銃声とガラスの割れる音がした次の瞬間。

 

(あ…これはマズイ…)

 

そう思った瞬間。

1つの銃声が鳴り響いた。




祐也様 カゼハヤカミト様
うぉーくまん様 戦刃 rim様
ディファイアント様

お気に入りありがとうございます。

さて、今回から4.5章の始まりです。
今回7000文字くらい書いたのに、全然進んでない(絶望)

ま、まぁ?
次の話から進むし?
別に?
バンドリで、被りしか出ない30連の爆死してやる気無くしてるとか無いし?
いやホントに……



誰かガチャ運分けて下さい(切実)

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