退屈な日々を忘れたい俺がなぜバンドの手伝いをしているんだ......   作:haru亜

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第2話 不穏

今井家 リサの部屋

 

自宅に戻ってきて、すぐにシャワーを浴び、タオルで髪を拭きながら自室に戻った。

シャワーを浴びている最中も、練習でかいた汗を洗い流しながら、ずっと申し訳なさを感じていた。

 

(友希那が忘れてないってわかってたのに…。

本当は…誰よりも深く傷ついてるって……。

アタシわかってたのに…!)

 

「なんでアタシ…あんなこと言っちゃったんだろ…」

 

ポツリと呟くと同時に、視界がボヤける。

 

(…ううん…!

今泣き言を言うのはやめよう,

陽菜がいない今、アタシがもっとしっかりしなきゃだから…!)

 

そう心で思っていても、明日どうやって話そうか。

明日はどんな顔で友希那と会ったら良いのだろうか。

そんな考えしか浮かばず、ベッドで横になって考え込んだ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

氷川家

 

「おねーちゃん」

 

不意に部屋の前で呼びかけられ、ドアを開ける前に止まった。

 

「どうしたの?」

 

「陽菜くんのことなんだけど…」

 

少し部屋の内側に身を引いた。

その話から逃げ出したい。

何も聞きたくない。

そんな考えが過る。

 

「おねーちゃんたちは話し合うの?」

 

しかし、日菜の言葉に体を止める。

 

「話し合う…とは?」

 

「んー…実は今日さー。

パスパレのみんながやっぱりいつもより、どよーんってしてたら、彩ちゃんが『陽菜くんの件を受け入れて前向きに進もう』…って。

まぁでも、彩ちゃんも、どよーん…というか、話してる間ズズーン、って感じで…」

 

「?つまり…?」

 

「Roseliaのみんなはそういう話をしないのかなぁーって」

 

「!」

 

虚を衝かれたような表情を見せる紗夜。

 

「?おねーちゃん?」

 

「…そうね。

一度、私たちもそうしてみるわ。

ありがとう日菜」

 

あの日、目に映った光景の現実をその時だけ受け入れた。

けれど、もう2度とこんな辛い思いをしたくなかった。

だから、こんなことを考えながらずっと目を背けていくつもりだった。

そんな私には思いもしなかった考えをくれた日菜にお礼を言う。

 

「!うん…うんっ!

そうしたら、絶対るんっ♪ってくるアイデアが出てくるよっ!」

 

嬉しそうに話す日菜。

こんな風に話す日菜は久しぶりに見たかもしれない。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今井家 リサの部屋

ベッドから起き上がって座るとピコンッとスマホから音がした。

 

「!」

 

友希那からかも知れないと思い画面を見た。

しかし、友希那ではなく紗夜からだった。

 

「…?」

 

(紗夜からのメール…。

なんだろ…)

 

気になってグループを開く。

するとそこにはこんな文章が綴られていた。

 

『明日、少しの間だけ、皆さんと話し合いたいので、学校が終わり次第CiRCLEに集合して貰ってもよろしいでしょうか?』

 

これを見た時に、リサはこれだっ!と思いすぐに返信した。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一方で白金家では

 

『りんりんっ!

新しい素材落ちたよっ!

それもレア中のレア素材っ!』

 

『良かったね……あこちゃん…。

次のランクまで……後もうちょっとだから…一緒に頑張ろう…』

 

『うんっ!』

 

あこと燐子はボイスチャットを繋ぎながら、ゲームをしていた。

今さっきあこが言っていた『新しい素材』とは、大型アップデートが来たので、装備強化とランク上げも兼ねて、今はその素材を集めている。

するとヴゥーヴゥーとスマホが振動した。

と共に

 

『あれ?メールだ。

ちょっと待っててりんりん!』

 

あこの声が聞こえてきた。

 

『あこちゃんも…?

わたしの方にも……メール…。

ということは…グループかな?』

 

キーボードから手を離しスマホを見ると紗夜からのメールだった。

すると向こう側から

 

『紗夜さんからだ。

明日話し合いたいことがあるんだって』

 

『!……』

 

『りんりん?』

 

燐子には思い当たりがあった。

おそらくあの日のことだろう…と。

そして

 

『多分……陽菜さんのこと……じゃない…かな』

 

『あっ…!』

 

『ご、ごめんね…。

嫌なこと……思い出させちゃった…』

 

『う、ううんっ!

ちょっと大丈夫……じゃないけど…大丈夫!!』

 

あの日、あこが1番泣いていたことを燐子は知っている。

その後は泣き疲れてそのまま寝てしまったことも、眠っている時もどこか苦しそうな顔をしていたのを覚えていた。

 

『『……』』

 

黙り込み、ゲームのBGMだけが流れているとまたスマホが震えた。

リサが行くと返信したからだ。

 

『これ…あこたちも行こっ!』

 

『…あこちゃん…?』

 

『もし、りんりんの言う通りなら…あこ、このままじゃ嫌だもんっ!』

 

『っ!』

 

あこの力強い声に圧された。

これまで何度かあった。

けれど、今回はいつもより声が鮮明に聞こえた。

 

(これは…今のわたしが…陽菜さんの話をしたくない…から…なのかな…?)

 

そう考えるとRoseliaに出会う前の自分が蘇ったようで、嫌な気持ちになる。

でも

 

『…あこちゃん…わたしも…一緒に行く…!』

 

『!りんりん…?』

 

今は違う。

その感覚から抜け出す方法も、あの人が居たRoseliaに学ばせてもらった。

 

『あの件のこと……もうちょっとだけ…頑張ってみる…。

だから…一緒に行く…』

 

『うんっ!』

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

湊家 リビング

 

「……」

 

紗夜から来たメッセージに既読をつける。

見ているとリサ、燐子、あこ、と次々に『行く』と返事をしていく。

それを黙って眺めていると

 

「友希那?

どうかしたのか?」

 

目の前に座っていたお父さんに呼ばれた。

 

「別に…なんでもないわ」

 

「そうか。

また陽菜に会ったらよろしく言っといてくれ」

 

「っ!」

 

「友希那?」

 

「…部屋に戻るわ」

 

「?そうか」

 

すくっと立ち上がり、二階に続く階段を上がる。

そう。

お父さんは何も知らない。

だから、ああいう言葉はどうしても胸を抉られてしまう。

 

「っ…」

 

全ては『あの人なら話し合えば一緒に帰ってくれる』と心のどこかで過信していた自分が招いた悲劇だ。

今だって、あの人の話をされて、またリサの時のように理不尽な八つ当たりをしてしまうかも知れない。

 

けれど、立ち止まっていては何も始まらないことも知っている。

だから、Roseliaが前に進むためにも、参加するという意思表示をした文章を書き、行くことにした。

 

(…前へ進む…。

たとえ、その先へ進んでも…あなたは居ない…。

私は…どうすれば良いの…?)

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日

 

学校へ来る途中、友希那には会わなかった。

一応、出た時に隣へインターホンを鳴らしに行ったのだが、友希那は先に向かったとのこと…。

 

(……昨日のアタシ地雷踏んじゃったなぁ…)

 

「はぁ……」

 

「リサさんがため息なんて珍し〜」

 

通学路を歩いて昨日のことを後悔していると急に話しかけられた。

 

「ひゃあっ!?も、モカ!?」

 

「あはは〜」

 

ふにゃっと笑うモカ。

珍しいことに1人で登校しているようだった。

 

「いや〜、リサさんの驚く顔はいつ見ても面白いですなぁー」

 

ほのぼのと話すモカ。

するとすぐに

 

「それで、どうしたんですかー?」

 

普段通り話すように聞いてきた。

そしてリサは話そうか一瞬迷ったが、口に出した。

 

「実は…昨日友希那と2人で練習してたんだけど…。

その時に地雷踏んじゃって…」

 

「!…もしかしてー…陽菜さんのことですかー?」

 

モカは最初だけ驚いた顔をして間が空いてから聞いた。

 

「そうなんだよね〜…。

アタシ、友希那が本当は辛いこと隠してるのわかってたはずなのにさ。

つい…というか、うっかり言葉にしちゃったって感じで…」

 

「あー…それはやらかしましたなぁー」

 

「うん……。

というか、モカ。

今のでよく陽菜の話ってわかったね」

 

「まー…さすがにアレは感慨深いモカちゃんも印象的過ぎて、結構心にきてますよー」

 

「そっか…。

やっぱり…みんなそうだよね」

 

「特に、蘭は陽菜さんのこと、ボーカルとして湊さん以上に尊敬してましたからねー。

あの日も湊さんと言い合ってから帰りに泣いていましたし…」

 

言い合った…というのは少し違うかも知れない。

あの日は、蘭が一方的に言い、友希那はそれに対して反論することをせずに、ただただ受け入れる姿勢をとった。

それが蘭の癇に障ったのか、今あの2人は喧嘩中である。

 

「……」

 

あの時友希那が反論しなかったのは、友希那にしかわからない感情があったからだとリサは考えている。

そして沈黙を続けていると

 

「…リサさんは、陽菜さんのことどう思ってたんですかー?」

 

モカが不思議な物でも見るかのような目で聞いてきた。

 

「は、陽菜のこと…?」

 

「そーですそーです」

 

「えぇ…?

陽菜は…弟…かな?」

 

出来るだけ近く間違っていないものに当てはめると

 

「…リサさんが嘘つくなんて珍しい〜」

 

一瞬で見抜かれた。

 

「な、なんで!?」

 

ビックリして声を上げて聞く。

それにモカは自信満々に答えた。

 

「ふっふっふー…。

モカちゃんには全てお見通しなのだよーリサ君」

 

「えぇ…もぅ…」

 

「それで、本音のところはどうなんですかー?」

 

逃げられないと悟ったリサは腹をくくった。

 

「…なんというか…そのー…好き…といえば好き。

でも…」

 

「でも?」

 

「陽菜って結構みんなから好かれてるから…。

それなら、アタシの『好き』っていう気持ちは抑えながらも、離れ過ぎないようにして、たま〜に1番近くに居てあげられたら良かった……かな…」

 

「…それって、あたしが貰っても良いってことですかー?」

 

「!それは…!

……ん?」

 

リサは自分の耳を疑った。

今なんて?貰う?

誰が誰を?モカが陽菜を?

 

「んー?」

 

またも不思議そうな目で見るモカ。

 

「えっ?」

 

「えー?」

 

しかし、今ので何かを見透かしたモカはニヤケながら反応してみせる。

 

「ええっ!?」

 

「あはは〜」

 

「モカ、陽菜のこと好きだったの!?」

 

桜並木の通学路に続く道を曲がった所で思わず声を張って聞くと、またもやモカは自信満々に答えた。

 

「そーですよー、そーそー」

 

「全然気づかなかった…」

 

「まぁ、ほぼ直感なんですけどね〜…」

 

「直感?」

 

「好きになった理由も特になくて、なんというか…これが俗に言う一目惚れなのかな〜っと思いましてー。

リサさんは?」

 

「あ、アタシは……えーっと…。

陽菜のどこかが好きになったっていうか…陽菜の存在自体が好きっていうか…」

 

「ほーほー」

 

「だから、好きになった理由は…無い…かも…」

 

自信なさげに言っているのは自分でもわかる。

すると

 

「…『ありふれた言葉』ですけど…」

 

「!」

 

「人を好きになるのに理由なんて要らないとモカちゃん思うんですよねー」

 

「な、なんで?」

 

モカの言い方の1部に少し引っかかった。

しかし、それよりも先にそのありふれた言葉の意味を知りたいと思い、咄嗟に聞いた。

 

「だって『何々だから好きー』っていうのは、その『何々』の部分が偽物だったりした場合は、好きじゃなくなるってことじゃないですかー」

 

「!」

 

「それってその時にあった『好き』って気持ちが本物じゃ無かったら、悲しいですからー…。

だから、モカちゃんは最初に人を好きになるなら本物が良いと思いますよー」

 

へらっと笑いかけるモカ。

 

「やっぱり、人を好きになったり惚れたりするのは、自分の直感が1番信頼出来ますねー」

 

(『好き』になる時は『本物の好き』が良い…。

ヒナは…陽菜に『本物の好き』伝えられてたのかな…?

だとしたら…凄い勇気だなぁ…)

 

「はぁ…」

 

ため息を1つ捨てる。

 

「……アタシも、1回くらいちゃんと告白しとけば良かったなぁ…」

 

「…」

 

リサがポツリと呟く。

その元気の抜けた言葉をモカは黙って聞き入れた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

廊下を歩く紗夜。

朝から風紀委員の仕事で見回りをしている。

たまにいるのだ。

朝早くから来ては、校内でスマホを触る輩や、いちゃつく男女。

さらには、学校の掃除用具が壊れているという報せを受けた。

チリトリが欠けていたり、箒が明らかに意図的な折られ方をしていたり…。

 

夕方の時間帯では無いというのは、後輩たちと確かめていたのでわかっている。

時間帯を考えて、朝しかないと判断した紗夜は、いつもより早く学校へ来て校内を回っているのだ。

しかし…

 

「…」

 

ロッカーを開けて掃除用具を点検する。

けれど、特に目立った損傷は無かった。

 

(…今日は何も壊されていないようですね…。

となると…掃除をする時間帯かしら…?)

 

ロッカーを閉めてから考え直す。

こんな時、周りに頼れる人が居ないのが、これほどもどかしいとは思いもしなかった。

 

(今…あの人が生きてくれれば…。

……いいえ、今日はそれについて皆さんと話し合うと決めたでしょう。

今後、もういない人に頼るなんてことは……)

 

「っ……!」

 

関係のあることを思い出すだけで、あの日に見たオレンジ色の光と轟音が蘇り、しばらく耳から離れない。

胸が張り裂けそうなくらい痛くなる。

けれど、私は長女なのだから、日菜よりも先に泣きはしない。

 

(そう……あの日の夜に誓ったでしょう…?)

 

「……」

 

ため息を堪えて、1階の生徒会室へと戻った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

1階 廊下

 

生徒会室へ続く道に最中に、下足室がある。

ふと視線を、真っ直ぐ向けていた廊下から横の下足室に向けるとリサが居た。

 

「あっ…おはよっ紗夜」

 

目が合うと笑顔で返される。

紗夜は、その笑顔が嘘だとすぐにわかった。

取り繕ってもバレるとわかっていたリサも、気まずさから目を少し逸らした。

 

「…おはようございます今井さん」

 

紗夜も、その原因はわかりきっていた。

けれど、今は自分のことで精一杯だった。

 

「紗夜…その…今日も巡回してるの?」

 

「はい。

今日の所は異常は無かったので、ちょうど生徒会室に戻るところです」

 

「そうなんだっ…」

 

「……今井さん。

今日の放課後は大丈夫ですか?」

 

「!うん…大丈夫だよっ」

 

へらっと笑って言う。

そして、紗夜はその暗い表情をした顔を見た後

 

「…そうですか」

 

と言ってその場から離れようとすると

 

「ま、待って紗夜!」

 

声をかけられて振り返った。

 

「?どうかしましたか?」

 

「その…なんで今日の放課後にみんなで集まろう…って言い出したのかなーって、気になっちゃって」

 

「そういうことですか。

…理由は…日菜に言われたのもありますが…。

やはり、皆さんバンドに悪い影響が出過ぎています。

それを改善するためにも、今日の放課後に集まってちゃんと向き合おうという考えです。

具体的には、如月さんについて…」

 

「っ…!」

 

ピクッとリサが反応して、ほんの少し後退りをする。

それを紗夜が見逃すわけがなかった。

 

「……今井さん。

辛いのはわかりますが、これは受け入れなければならない事実です」

 

「それは…わかってるけど……」

 

「……今ここで話しても仕方ありません。

また放課後、CiRCLEで会いましょう」

 

「……わかった」

 

(今井さん。

あなたが悲しんでいるのも、辛いことも、息苦しく感じていることも、私は知っている。

あなたも、それがあなただけが抱いている感情ではないと気づいているはずよ…)

 

口に出すには惜しかった。

それは、リサ自身が正直になって改めて再認識しないといけないことだったからだ。

紗夜はかつてあの人がRoseliaにそうしてくれたように、何も言わずにその場から立ち去った。




メイ(旧nomade)様 長シュ様
MOBIUS513様 リセエール様

お気に入りありがとうございます。
なんか、私の居る学校は文化祭のやる時期が他校と少し違うみたいですね。
なので、他校の文化祭に行くとやはり少し暑いです。
まぁ……まだ文化祭の準備すら終わってないみたいですがね。

ここから全く関係ない愚痴みたいなことなので、物好きな方はどうぞ。
ーーーーーーーー

私「はいやって参りました。
もう何回目かわからない私の愚痴コーナー」

?「出た。
わざわざ愚痴らなくても良いのに愚痴る回」

私「いやー、実はですね。
人間関係がちょいと面倒になってきましてね」

?「じゃあ縁切れ」

私「辛辣っすね。
まぁ聞いてくださいよ」

?「何?」

私「実は私、結構人から相談受けるんですよ」

?「ふーん…。
陰キャでコミュ障ぼっち隅っこぐらしのお前がなんで?」

私「この前リア友に付けられたあだ名やめろ?
それで、ある相談内容が『友達』に関することだったんですよ」

?「ほーおーおー(?)」

私「その時に私少し思ったんですね。
『友達の定義』ってなんだろう…って」

?「うん」

私「だから、いつか書きます」

?「うん?」

私「この小説のどこかで友達の定義について書きます」

?「いや、友達って証明しようの無い」

私「これにて閉廷!」

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