【SAO+PSO2】ソードアートオンライン【パラレルダイヴファンタジア】 作:ポメラニマン
都内高級店の一画。再奥にある目立たない席に二人は以前と同じ様に対面していた。
以前と違うところを探してみるならば、役目を終え回収されるのを息を潜めて待つ「カラの皿」が無いことと、両者の間に生まれる圧倒的な「危機感」
「私情の頼み事」で来ていた菊岡が、「総務省職員」の菊岡誠二郎に変わっているくらいだろう。
橘皐月(たちばなさつき)には、この話し合いの開催宣言を任せられるには荷が重く、菊岡誠二郎のその第一声を静かに待つばかりだった。
しかし彼は、前かがみにテーブルに両ひじを乗せ、握られた両の手を顎に引っかけ俯き動かない。
しかしその眼差しは、見つめているテーブルクロスを引き裂いてしまうのではないかと思う程に切れ味が鋭い。
それは、彼が落胆して俯いている訳ではなく、「打開策」を模索しているのだろうということが伺えた。
「皐月」は、そこから漏れ出る切れ味に少しだけ「恐怖」を感じたが、この「話し合い」において彼は味方なのだと「心強さ」も感じていた。
彼がゆっくりと姿勢を正す様は、話し合いの開催宣言でもあった。
「皐月、あの映像は見たかい?」
唐突に始まったものだから、彼女の身体は一瞬ぶれる素振りを見せたが、すぐ立て直し彼と向き合った。
「はっ…はい、見ました」
「どこで見たんだい」
「自室のPCを使ってプレイヤーズサイトから観ました」
「あの〈バナー〉を、開いたのかい?」
「はい、SAOイベント告知の時間帯に、笑う棺桶が出て来たことで関連性を感じて」
「その映像は、どんなものだった?」
「素人が作った様な雑なCGで…マネキンが…その」
「今、そのPCに異常は見られるかい?」
「いえ、念の為スキャニングも掛けましたが」
「最後に」と、これまで以上に瞳の奥を覗く様に見据えられ、「皐月」は目を逸らしそうになったが、菊岡への信頼がそれを寸前のところで止めた。
「君は、あの映像の出ところは…どこだと思う?」
「私の気持ちは前と何も変わりません」
その速さは、まさに即答であった。
一見して何の脈絡も無い返答に菊岡は少しだけ目を丸くした。
二人の間柄においては「その一言」は、菊岡を納得させるには充分な力を誇っていた。
呆れる様に口元の緊張を少しだけほぐすと、「総務省菊岡」は「ただの菊岡」に戻っていた。
「そうだったね、良ければ話し合いの後スウィーツでも頼もうか」
「そうですね、それがいいです。疑われた分は覚悟して下さいね、クリスハイト」
先程までの緊迫感はどこえやら。
二人は言葉も姿勢も崩していない筈なのだが、両者とも瞳の奥の色は温かく塗り替えられていた。
「これから、総務省菊岡が得た情報を話すよ?」
小さく一度だけ頷くと、「皐月」は耳を傾けた。
告知ムービー終了後、菊岡はその足で運営のいる株式会社SOGAへ向かった。
運営も、ここに来た目的と同様のことに追われていたらしく何処もかしこもバタついていた。
聞いてみると、ゲーム内の一部とプレイヤーズサイトがハッキングされていたらしい。
入念に練られていたからか、その足取りは調べてはいるものの、望み薄であることが表情から伺えた。
プレイヤー間で騒がれている、「行方不明のエネミーを探せ」についても問いただしてみたが、結果わからずじまい。
それどころでは無いらしく対応に追われていたため、一先ず何の収穫も無く引き返した。
「アミュスフィア」や「ザシード」に纏わるものがハッキングされたとなると話は変わってくるのだが、ハッキングされたのはSOGAの作成したシステムであった。
ゲームやサイトが小規模にハッキングされるのは珍しいことでは無く、「お粗末なCG」と「幼稚さ」から捜査される程度の事件にはなっても、そこには鬼気迫るものは無かった。
だが菊岡は、その「お粗末なCG」によって自らの盗撮非害を主張することが出来なかった。
この店の防犯カメラも同様に密かにハッキングされた形跡があり、その日の映像は改ざんされていた。
鬼気迫る事件として見ている役員は、菊岡だけだった。
「というわけなのだが、正直やられたよ。上の人間も堅物でね、オマケに僕は別の依頼に追われてそれどころでは無い」
皐月はもう返事を決めていたが、この事件はどうやら彼の些細な「疑問」から、彼が重要視する「事件」に変わってしまっているらしい。
危険もつきまとう事から、その言葉は「菊岡」本人の口から聞きたかった。
「総務省菊岡誠二郎として、橘皐月に依頼を要請したい。あのVRMMORPG、〈PSOP〉内に潜入してSAOイベントに参加して貰いたい」
「勿論、当初の依頼内容と何も変わらないじゃないですか」
「感謝するよ」と菊岡は申し訳無さそう半分、悔しさ半分な表情で皐月に頭を下げた。
皐月はその「事件性」は恐いとは感じた。しかし潜入先はVRMMORPGの中、死ぬ事など無い。
「ペインアブソーバー」がある限り、痛覚もゲーム内のものだろう。
何より、菊岡の手助けになれるのならなりたいし、自分自身も放って置けないと結論付けている。
「それで、報酬の件なのだが」
「前のものがまだ生きています。変えたら怒りますよ」
「そうだったね、……何か異変を感じたら、すぐログアウトするように」
「はい、行って来ます」
その言葉を最後に、この「話し合い」は幕を閉じ、「出陣式」を兼ねたティータイムは始まった。
菊岡本人も「甘党」なため、気を許せる仲間との食事は嬉しいものであった。勿論、「緊迫感」も「危機感」も菊岡を掴んで離さず、菊岡自身も頭の片隅では様々な事に思考を巡らせている。
ただ、それはこの「出陣式」を中止する理由にはなることはなかった。
「何にするのかな?」
「順番に食べてメニュー制覇する予定なので、全部ですかね?」
「全部かいっ!?」
「付き合ってくれますよね?」
皐月は、菊岡の驚く姿を見たことが無かったので「珍しいものが見れた」と満足気に口元を綻ばせた。
SAOでは菊岡さん、PSO2ではヒューイが好きです。
どちらも温度の違う熱さを持っていて滅茶苦茶かっこいいです。
読んでくれて感謝です!!!
また来てください!!!
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