【SAO+PSO2】ソードアートオンライン【パラレルダイヴファンタジア】   作:ポメラニマン

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第19章「予期せぬ宣言」

 

 

出発ゲート前は行きも帰りも同じため、「エネミー出現統計」を取るには最適な場所である。

ただ、素性を隠して潜入しようと思う者にとっては一番避けたい場所であるが、次元超越という超常現象を使うためには皮肉にも相応の対価が必要だったらしい。

気まぐれな猫によって、侵入者達は到着と同時に最悪の展開を迎えていた。

 

 

「っ、……ちょっと!…なに?」

 

賑わいを見せていたロビーの視線は、異次元の叫びに吸い寄せられる様に重なる五人の元へと集まっていた。

 

その気配を肌で感じ取った五人は、起き上がるまでの数秒間を「この状況をどう打破するか」に各々割いていた。

顔を互いの身体に埋め込む様にして、一同はヒソヒソと持ちうる情報の交換を始めていた。

 

 

「ちょっと、いきなり何なのよ!」

 

「死にたくなければ静かにしろ。貴様…見たのか?」

 

「はあ?見たって…あの穴のこと?」

 

その言葉が皐月から飛び出した事により、「最悪だ」とクラリスクレイスは幼稚な仲良し二人を睨みつけ、痛い程に突き刺さる視線の対処に思考を巡らせた。

 

「これ苦しいニャウ」

 

「ばか脱ぐな!黙ってそれ被ってじっとしてろ!」

 

特異点が故郷の「you」にとって、プレイヤーが最も密集するゲートエリアが視界に入ることは、最悪を通り越して恐怖すら感じる帰郷だった。

 

瞬間的にアイテムバックから禍々しいポンチョをニャウにすっぽり被せられたのは、密かな厨二病とニャウと同じ激レアな体型が起こした奇跡だろう。

 

「落ち着け!落下してから見られたのなら、ただの揉め事で片付く!ただ問題は姉さんをどうするかだ」

 

NPCとして存在するクラリスクレイスがこんな場所にいきなり表れるのは、まさに不自然な出来事だろう。

ロボットの〈you〉にとっては服など着る必要もなく、趣味のために持ち歩いていた唯一の一着は、ニャウに着せてしまっているためその手段も使えない。

ヒートはこれを「揉め事」にしようと提案しつつ、弱点の穴埋めを一同に求めた。

 

「おい、貴様。私も着られる服はないのか?」

 

「女性用は倫理コードが邪魔して着られない仕組みだ!持ってるわけないって!あーなにかあれば」

 

「あっ」と何か閃めく〈you〉に迫り来るタイムリミットを使うことを即断すると、クラリスクレイスは直ぐ様〈you〉を追い詰める様に迫った。

 

「貴様、何かあるのなら今直ぐ言え」

 

「いや、買えばある。着ぐるみならいけるかも」

 

「買うまでにはどれくらい時間がかかる?」

 

「専用カウンターはあちこちにあるから、でもそこまで走ったら不自然じゃない?」

 

「貴様はここじゃ死んでも死なないのだよな。決定だ」

 

何が決定したのかはわからないが、クラリスクレイスは何やら自分を見つめている。

よくわからなかったが、取り敢えず親指を立て笑顔でいることで彼女の不安を和らげようと考えた。

 

「よし、ヒー坊。〈you〉の口を押えろ」

 

「時間稼ぎは俺がするから、なるべく早く頼むぞ」

 

「娘、死にたくなければ私達の行動に合わせろ」

 

「……終わったら話を聞かせて貰うのが条件です」

 

「…止むを得ないか。わかった、貴様は足を押えろ」

 

今から自分は拷問でも受けるのだろうか。

テキパキと身体の自由を縛られていく。

 

幸いにも、真っ先に落下した小さな身体は埋もれて見えない。

これならば、問題なのは「声」だけだろう。

 

「これって……やだっ、何か生々しい!怖い!!」

 

「女々しい声を上げるな、これしかない!」

 

死に戻りを利用した唯一の望みであったが、思考する間にも時間は経過し、せっかちなタイムリミットは彼らの作戦を待ってはくれなかった。

 

「おい、お前ら……大丈夫か?」

 

突然の出来事に思考が停止していたプレイヤー達は、いち早く動いた一人によって目を覚まし、気がつけば周りを囲む様にプレイヤーの輪が出来ていた。

 

「ノーネーム?……みんな、こいつおかしいぞ!!」

 

その一言は静寂を切り裂き、真意に気がついた声は大波を起こし「you」の背筋をも震わせた。

 

「やばい…ネーム表記が無い!!」

 

「説明しろ!!!」

 

「見ればすぐに誰だかわかる様に名前が映る様になってんだよ。お前らにはそれがない!!」

 

人気の無い場所で諸々の確認を行うつもりでいたところに拍車をかけるようにして移動を見られた事により、「you」は肝心な事を取りこぼしてしまっていた。

 

「〈you〉、それはどれくらいマズイ事なんだ!」

 

「ああ、素性がバレたに等しい危機だ!普通じゃ無いって事は確実に勘付かれてる!!」

 

後戻りできないのなら、もうここで行動を起こすしかない。

時間の経過は在らぬ妄想を膨らませ、暴動を巻き起こしかねない。

 

クラリスクレイスは「合わせろ」と一同に囁くと、先陣を切って作戦を実行した。

 

 

 

「貴様ら、私が誰だかわかるな」

 

怪しげに俯きユラユラと立ち上がる姿は、ゲーム内において見たことも感じたことも無い殺気をロビー全体に放つ。

 

そこにある「死」を感じ取った脳は、「アミュスフィア」を通じてプレイヤー達を萎縮させ、その輪を一回り大きくさせた。

 

「クラリスクレイス!?何でだよ……まさか!!!」

 

先走って情報を漏らしたプレイヤーに合わせるように、クラリスクレイスは異質を放ちながら演じる。

 

「そのまさかだ。こいつを見ろ、見せしめに痛めつけてやったわ」

 

片足から宙吊りにされる小さなキャストのメインフレームは割れ、擦り傷まみれの身体からは生命を感じない。

 

「プラモさんじゃねーか!おい、お前何しやがった!」

 

「乗ってきた」と一息入れるにはまだ早い。

クラリスクレイスは一段と表情を黒く染め上げ、邪悪な笑みを浮かべながらだめ押しの一撃を見舞った。

 

「貴様ら、つまらん。こんな弱っちくては、あの人に合わせるには相応しくない。この場で皆殺しにしてやっても構わんのだが…」

 

一瞥した箇所は凹むように恐れおののき、一人虚しく散ったであろうキャストの仇を取るためと、観衆はイベントに感情移入し没頭する。

 

「貴様らにチャンスをくれてやろう。明日、戦技大会の決勝で私を倒すことが出来れば情報をくれてやる。私すら倒せぬ様ならば、貴様らに生きる価値など無い。その場で纏めて爆破する」

 

「何だって!?」と観衆の食い付きは好調。

焦らされたプレイヤーの感情移入はとどまることを知らず膨れ上がり、とどめの一撃を見舞う。

 

「こやつらは人質に貰っていく。逃げればどうなるか、わかっておるな」

 

死なない世界ならばと、安心して持ちうる殺気の全てを放たれた観衆はとどめを刺され、ついに怒号が飛び交うまでにロビーは表情を変えた。

 

「場所は明日、こやつらの一人を向かわせる。これを機に殺戮ショーは開催されることとなろう。私を止めねば、その前に貴様ら全員ゲームオーバーだ」

 

 

「今だ!」と〈you〉は一同をマイルームに転送し、プレイヤーの輪にはポッカリと穴が開かれた。

 

〈you〉は友達が一人もいないことと、普段からルームロックしていた自らの閉ざされた感情に、この時ばかりは感謝の念を送るばかりであった。

 

 

 

「……みんな、開催は間近だぞ!!!」

 

「うおー」と歓声がロビーのみならずオラクルを包む頃には情報は巡り巡り飛び回り、数時間も経たぬうちに各自は武器や装備の最終確認に勤しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「いけないんだー、人の邪魔する悪い子はだーれだ」

 

 

殺気をたぎらせた視線は、プレイヤー達を値踏みする様に舐め回す。

ケタケタと笑いながら、時折待ち切れずプレイヤーをつまみ食いでもする様に、嬉しそうになぶり殺す影が一つ。

 

 

日を跨ぐ事なく、数時間には掲示板に一通の書き込みが残されていた。

 

 

【「SAOイベント」主催者より皆様へ】

 

戦技大会終了後、ショプエリアにてイベントの開催を宣言します。

イベント共々、細やかな余興もお楽しみくださいませ。

 

 

個人主催者「ムサシ」より

 

 

 

 

 




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