【SAO+PSO2】ソードアートオンライン【パラレルダイヴファンタジア】 作:ポメラニマン
飛ばされた先は、一人暮らしするには丁度いい大きさの部屋だった。
近未来な自動ドアを開けてみれば、BBQも開けそうなスペースのバルコニー。
タイヤの無い車が道路の様に敷かれたレールを音も無く走り去る街並みは、忙しない筈なのにどこか虚しさも感じさせる。
見上げた空には雲は無く、空もない。
綺麗に円形に囲まれたこの世界を見つめていると、何故だか地球が無性に愛おしく、恋しく感じた。
「ニャ!」
「痛っ!」
転送早々にたんこぶを拵えた(こしら)二人は、到着からもう五分は怒られ続けている。
しかし、直立して動かないキャストは心ここに在らず。
目に映る光景は、確かにこの空っぽの一室の筈なのだが、〈you〉の脳は違った景色を見せていた。
ーーーーどうして逃げるの?
「……」
ーーーー卑怯者
「……」
ーーーー空気読めよな
「……」
〈you〉は、この部屋に閉じ込めて逃げ出した日のことを思い出していた。
あの日、俺は
「聞いてるのか貴様っ!!!」
「痛たっ!!!」
クラリスクレイスのサービス精神は旺盛な様で、追加料金を払わずとも〈you〉の頭に小さな雪だるまをプレゼントした。
「反省するニャウよ」
「お前もな」
開かれた室内は殺風景で、人が住み着いていたであろう匂いすら感じない。
〈you〉がこの部屋に戻るのは何日振りか何年振りか。
本人すら忘れてしまったこの部屋は、どこか寂しく息苦しさすら感じさせた。
「それより、約束しましたよね。私にわかる様に説明して下さい。嘘をつかれたと感じたら、外に出て人を呼びますからそのつもりで」
皐月こと、プレイヤー名「秋雨」は周囲のプレイヤーや彼らの焦る様子から、「この事件を知る者」と考察し入口の前に陣取りいつでも逃げられる体勢でいた。
「話すのは構わないが、聞いてしまったら後戻りは出来ないが…それでも構わないか?」
分かりきった質問だが、地面にあぐらをかき座り込むヒートはじっと、彼女の意見も尊重したいと意思を見せる。
「はぁ…どうせもう逃してもくれないんでしょ。悪い人じゃないのは大体わかったし。それに私も聞きたい事があるの。いいわ、話し合いをしましょ」
出入り口から離れ、敢えて窓際を陣取る事で彼女はそれを意思表示とした。
「そうこなくちゃニャウ!〈you〉は直ぐにお菓子と飲み物を用意するニャウ」
「んなもんねーよ!でもまあ…まるごしの言うことも一理あんな」
見渡す限りと言う言葉を台無しにする様な殺風景は、あまりに息苦しい。
〈you〉は室内のショップ端末を軽快に操作し出すと、カタカタと何やら楽しげな音が室内を包む。
刻まれるリズムは時折スキップし、口笛を吹いてる事からか、一同の緊張感も不思議と和らいだ。
「おけ!ちょっとみんなどいてて!」
円形の目に優しい緑のカーペットを一つと、それに相応しくない和風の座布団を五つ。
曲の終わりを飾る様に「タンッ」と弾かれたルーム端末は、一瞬の内にそれらを定位置に展開した。
「全く貴様は、センスの欠片も感じさせぬ組み合わせだな」
壁に寄りかかり、何処か訝しげ(いぶか)に腕を組んでいたクラリスクレイスは溜め息を一つつくと、誰よりも早く赤色の座布団に腰を落ち着かせた。
「あっ、姉さん!赤は俺も考えていた!こうなればやむ終えない」
ヒートの赤への拘りは良く分からないが、第二希望である青の座布団に腰掛ける頃、一人と一匹は白の座布団を巡り揉みくちゃになりながら争っていた。
「ふふ、貴方たち…子供みたい」
秋雨が黒の座布団に腰掛けると、時間が惜しいと白の座布団は焼き払われ、一人と一匹は仲良く地べたに腰を据えた。
「私は秋雨。貴方たち、イベントの事で何か知っている事はない?大事なことなの」
一同は、まず自分の名前を名乗るとクラリスクレイスが代表して回答役を名乗り出る。
「私達はその為にここに来ている。言っておくが、解決する側だぞ。その前に一つ聞きたい。貴様の言う大事な事とは一体何だ?」
イベントへの興味のベクトルが違うことに違和感を感じていた彼女は、これを聞いておかねばならない。
場合によれば、良い関係性を築けるかもしれない。
「ごめんなさい、気を許しても確証を得られなければ話せない事なの。でも、どうやら貴方たちは私と同じ目的なのはわかった。私も解決する側なの」
利用するか、協力して貰うか。
どの道、このまま平行線を辿っていても拉致があかない。
「あー、ちょっといいか。俺らの考察だと、殺人事件が起こる可能性が高いとみてる。あんた、もしかして捜査で来てる警察だったりしない?」
警察とは何かは分からないが、分からない事がある所に口を挟んでも逆効果だろうと、一同は見守る。
「貴方はどうなの?」
「ふつーのプレイヤーだけど」
「みんな楽しんでるよ?どうしてそんな物騒な話になっちゃったのかな?」
「いや、お前も気がついてんだろ。あの穴から俺以外はやって来た。俺はそれに巻き込まれて事情を知った。俺のメインフレームを見ろ。向こうでの怪我なんだが、帰って来ても治らねー」
「向こう…君たちって運営の人?」
「ちげーよ。説明難しいし、実際見てもらった方がはえーな。まるごし、穴開けてくんね?」
「嫌ニャウ」
どうやら未だに呼び名を嫌っているらしい。
しかし、出し惜しみされた疑問の一つが明かされるチャンスを皐月は逃しはしなかった。
「ニャウ君、お願い出来るかな?」
「了解ニャウ」
彼女もそれなりにこのゲームについて調べてきたつもりだ。
しかし、NPCであるクラリスクレイスは意思を持った様に対応していた。
オマケに腰の高さ程の高さに開けられた穴は、間違えなく超時空エネミーであるニャウの特性。
そのエネミーが、意思を持って喋りプレイヤーの命令を聞いてくれている。
「私は、このイベントを主催した人物を探してるの。ここの外で事件が起こる可能性が高い。貴方たちは……」
「ああ、こいつらは異世界からやって来た。信じられねーだろーが事実だ。このゲームはどうやら色々とおかしい」
長かったので一区切り。
続く…
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