【SAO+PSO2】ソードアートオンライン【パラレルダイヴファンタジア】 作:ポメラニマン
湧き上がる歓声は鼓膜を叩きつけ、耳鳴りと頭痛が鳴り止まない。
味方と思っていた者達からの間接的な攻撃は、〈you〉の心拍数を無理矢理に盛り上げるべく騒ぎ立てる。
偽装された抽選を終え、画面に表示されるトーナメント表を眺める振りをする事で、〈you〉は体験した事のない緊張から自我を保っていた。
「〈you〉、緊張するのはわかるがそこに居ては邪魔だろう」
「あ、ああ。すまん、こーゆーの初めてなもんで」
一回戦第一試合を数分後に控える二人は、リングとなる一画の脇に小さく建てられた待機場で身を休めていた。
「それより、先程も話したが」
「ああ、わかってる」
両者が見据える先、漆黒のマントに同色のフード。
小柄ながらにも、じっと動かず殺気を漂わせるその姿からは異様なものを感じさせ周囲を寄せ付けない。
その人物、プレイヤー名「poN」はイベント参加者達の中では大本命とされ、「映像の人物」として注目を浴びていた。
「あいつは本当にこの世界の住人なのか?」
「ああ、間違いない。ネーム表記もヒットポイントゲージも表示されてる」
「緊張してるところすまないが、あいつは危険だ。かなりやばい」
お互い渦中の人物を見つめているため表情は読めないが、その声色と言葉から只事ではない事が伺える。
「姉さんの合図が出次第、勝負は打ち切りだからな」
「わかってんよ」
再びの静寂。
隣り合って座り込む二人からは出番前であるのに闘志は感じられず、競技者としては失格な面持ちを見せていた。
「なあ、みんなの期待を背負うってどんな感じなの?」
「どうもこうも、助けられてばかりだ。自覚はしているが、その対応に必死だ。〈you〉だって他のプレイヤーから慕われていたじゃないか」
「あれはそーゆーんじゃねーよ」
「…俺からしたら、そう見えたんだがな」
再びの静寂。
言い合いをするのでも無く、落ち着きのある問いかけに両者はどんな気持ちを持っているのか。
答えを要求したわけでも無く、かといって嘘をつくこともない。
であるならば、この質問合戦に果たして意味はあるのだろうか。
これから始まる試合で伝えればいい。
わかって貰えるまで立ち続ければいい。
「開始一分前、両者姿を見せい」
さて、と二人は汚れを払う仕草をし立ち上がると準備運動も忘れ歩き出す。
「お姉様がお呼びだし、いくかーヒート。」
「ああ」
少し先を歩く「you」は、そういえばと何か思い出したように振り向く。
会場の照明が眩しくて見えないが、何やら影が伸びて来る。
「っ!!」
跳躍した小さな鉄腕はヒートの頬を打ち抜き、呆気に取られる彼の前に仁王立ちする。
「なあヒート。俺の事好き?」
殴られた者は、腹の底から込み上がる笑いを堪え、滲み出て上がった口角からは楽しさを感じさせる。
言われるまでもないだろう
「ああ、大嫌いだ!」
ノーモーションから水平に放たれた蹴りは「you」の頭部を捉えるが、ふらつきながらもこれを堪える。
直後、飛び上がりぶつかった両者の頭部は「ガツン」と鈍い音を上げ激しくぶつかる。
「俺も」
照明は眩しく両者の表情を隠し、二人は並ぶようにして歩む。
「手ぇー抜くなよな」
「ああ、そのつもりも失せた」
「ばーか、殺すんじゃねーぞ」
「死なないなら良かろう」
「あ、そーだっけ」
ーーーーー選手入場!
殴り合うよ!
読んでくれて感謝です!
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