【SAO+PSO2】ソードアートオンライン【パラレルダイヴファンタジア】   作:ポメラニマン

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第29章「殺戮のシナリオ」

 

 

幼少期のヒーローは、何故かどれも犯罪者だった。

 

情報機械修理販売店の一人息子として生まれた私にとっては、店内が遊び場であり商品の売れ残りが玩具だった。

徐々に仕組みがわかる様になる頃、きっかけは訪れた。

 

天才ハッカー、アイスマン。マックスバ○ラー氏の記事を見つけた時、目が釘付けになった。

その思考や人柄には全く興味は湧かなかったが、手段においては衝動的に胸が騒いだ。

生まれて初めて体感する「興味」に魅入られた私は、彼の悪行をなぞる様に学び始めた。

 

初めて試みた企業へのハッキングが何の苦もなく成功した時、自尊心が私に甘く囁いた。

 

ほら、君なら簡単じゃないかと。

 

生き甲斐を手に入れた私は自分を偽ることにした。

表向きの顔をゲームプログラマーとした私にとっても裏の目的の為にも、茅場晶彦(かやばあきひこ)の技術は必要不可欠だった。

 

ソードアートオンラインに潜り込んだ理由はそんなものでしかなかった。

 

閉じ込められたと知った時、私は独学で学んでいた催眠術や洗脳をプレイヤーにかけて暇を潰す事にした。

皆、面白い具合にかかる。

当然だ、そうでなければ私ではない。

 

自身を証明する様に無作為に明け暮れると、一人だけ効果の見られないプレイヤーに出会った。

初めに抱いた感情は度し難い怒りだった。

次第に彼への興味は増幅し耐え難いものとなり、私は彼を追いかけて殺人ギルドへの入団を決めた。

 

初めてのPK(プレイヤーキル)は、仲間の一人に教わった手段で行った。

しかし、感じるものは何もなく不快感さえ感じた。

 

自分に殺しは向いてないと、次を最後と定めると不思議と手段構想が捗り、胸に空いた穴を埋めてくれる気がした。

 

快感だった。

 

私の描いたシナリオは何と美しいんだ。

時折足掻き発生するイレギュラーに対処する至福。

散り際の瞳のなんたる美しさ。

誰かも私を称賛してくれている。

何と甘い囁きだろうか。

 

 

 

捕縛され牢獄の地べたを這った時、私は悟った。

これは私のシナリオではない。

私を上回る存在によるシナリオだと。

そして、エンディングは容易に想像できた。

 

このゲームは、いずれクリアされる…と。

 

ならば、証明しなくてはならない。

 

独房は個室になっており、時折やってくる看守を除けば邪魔をされる心配もない。

私は生還後、このシナリオを自身の世界によって上書きする事を決意した。

 

思考に明け暮れていると、独房の天井に穴が開いていた。

初めは幻覚の類いを疑ったが、しばらくすると瀕死の男が落ちてきた。

男は私の元へと這いつくばり、藁をもすがる様に腕にしがみつきながら訴えた。

 

「お前の予想通り、このゲームはクリアされる」

 

私にしか知り得ない情報に、私にしか持ち得ない声質。

その容姿は先程まで私が構想していた殺戮者。

気が狂った訳ではないが、無視をする理由も無くなった。

 

「せ、生還後…ラフコフや精神異常者には、監視がつく。そして…お前の殺戮は…総務省菊岡の派遣した黒の剣士によって失敗に、終わる!……」

 

一息に言い切ると、男は苦しそうに地に伏せ呼吸を整え始めた。

 

そうすると、穴からは後を追う様に猫の姿を模した妖魔が現れた。

暗がりに視界がボヤけ、初めは半信半疑だったが近づくにつれ確信へと変わった。

その猫は、私の勤めている会社のゲーム内歴代キャラクターそのものだった。

 

その猫は男の元へと辿り着くと、心配そうに背中を撫で瞳を潤ませていた。

 

「生還後SOGAはVRMMORPGを作る…全ては信じ難いが、これがその証明だ…このエネミーは、生きてい…」

 

気絶する様に男は崩れ、エネミーは涙を流しながら男を穴へと誘った。

その去り際に、目が合った。

 

楽しげに、笑いを必死に堪える瀕死の振りをした男と。

 

男は声を発さず口元で一言訴えた。

 

 

こ、の、ね、こ、を、こ、ろ、せ

 

 

穴が塞がり、全てを聞くと計画していた殺戮のピースは埋まった。

そして私は悟った。

私のシナリオは、まだ敗北した訳ではないと。

 

信じ難いが、やるべき事が変わる訳でもない。

監視がつくのも妥当だろう。

計画の最中、確証が得られればプランを変えればいい。

私はその不可思議を利用する事にし、現実世界生還後を見据え先手をうった。

 

独房の看守は頻繁に私の様子を見に訪れた。

その中でも一際頻繁に顔を出すプレイヤーに私は目をつけた。

 

プレイヤー名「ムサシ」という女性。

私は彼女を生還後の身代わり人形にすると決め、常人に成りすまし近づいた。

 

日常会話など、彼女好みの性格に成り済ますと、気がつけば頻繁に顔を出す様になった。

それから「SAO」クリアまでの数ヶ月、私は気がつかれない様に洗脳をかけ続けた。

 

脳に五感に、現実世界へ生還しても解けないほどにキツく念入りに染み込ませた。

 

生還後、私の欠員を人形は期待通りに埋めてくれた。

私の元にも聴取の役員が現れたが、怖がった振りで適当な嘘を並べたらその内に姿を見せなくなった。

 

世界ごと消滅してしまっては、まさに「死人に口なし」であった。

 

第一段階は成功し、私は監視の免罪符を手に入れた。

 

 

精力的を装い、リハビリを早々に済ませた私は自身のSAO生還者としての経験、それまで積み上げたキャリアを売りに進行していたプロジェクト「PSOP」プロデューサーの座を勝ち取った。

 

第二段階として、私は棺桶を手に入れた。

 

 

サービスが安定し始めると、各アカウントから個人情報を根こそぎかき集めた。

この世界を捨て棺桶の死神になる事を決めた私にとって、捕まった後の事などどうでも良かった。

 

 

同時に役者を揃えるべく行動を開始した。

「総務省菊岡」という男の足取りは掴めなかったが、現れる事を聞かされている私にとってはどうでも良かった。

「SAOイベント」の噂を広めると、ご丁寧にも向こうから挨拶に現れた。

姿を晒せば、追跡は容易だった。

 

黒の剣士もろとも派遣依頼の瞬間を抑え釣り上げる予定であったが、イレギュラーが起きた。

 

黒の剣士は別の事件を依頼された。

聞いた話と違うが、来ないのであれば好都合。

そして、この映像は予告ムービーには使わない事にした。

他人の殺しに水を差すのは、私の美学に反する行為であるのと同時に、私のシナリオに他人の殺しが入る余地は無い。

 

第三段階で役者を揃えた。

 

 

派遣される少女からは、黒の剣士の様な危機感を一切感じなかった。

戦意を彼女は持ち合わせていないと、SAOでの殺しの経験が訴えた。

役者としては文不相応だが、それはそれで良しとした。

 

 

第四段階として、用済みな身代わり人形の廃棄計画に取り掛かった。

 

獄中の日常会話から、彼女の所在地を洗い出し近辺の保護施設で「poN」さんに会いたいと訪ねて周ると僅かながら面会が許された。

 

「君はどう足掻いてもアインクラッドに戻る事は出来ない。でもね、もし君がアインクラッドで無くてもいいのなら……新たな殺戮の舞台を提供しよう。準備が出来次第迎えにくるよ」

 

 

彼女が乗らないはずがない。

何故なら彼女はpoNなのだから。

彼女を役者として廃棄する事は決まっていたから、予告ムービーは適当に作ったものを流した。

 

重要なのは、ラフコフとpoN。

それさえチラつかせれば良かった。

 

 

 

後はイベント当日

↓

本田玲奈「ムサシ」を誘拐

↓

用意した社内シークレットルームに監禁

↓

自身のPCから繋いで用意したプログラム

↓

システム作動後に死亡したプレイヤー

↓

ハッキング済みの住居家電製品をオーバーヒート

↓

ショートさせ火災を起こし火炙り

↓

同日一斉火災を起こす

 

 

この世界を捨てた私は、捕まった後の事など恐れない。

全ては早い者勝ちだ。

 

しかし、唯一の心残りがあった。

 

あのねこをころせ

 

ここまで来てようやく意味を理解した。

成就間近でシナリオを邪魔されては困る。

 

しかし、プログラム中どこを探しても見つかる事はなかった。

だから私はプレイヤーを利用する事にした。

 

「行方不明のエネミーを探せ」

 

見つかってしまえば情報を凍結させてしまえばいい。

直ぐに見つかったが、泳がせておく事にした。

 

 

プレイヤー達はどう足掻くのか。

自分の作り上げた殺戮者はどんな演出を見せるのか。

あとは、当日楽しく観覧するだけだ。

 

 

 

【シナリオ】

 

イベント開始時、開催宣言に集まったイベント参加者が集まる広場にエネミーを一斉解放し大戦争を起こす。

 

ゲーム内で死亡したプレイヤー宅の家電製品をショート、放火し火炙りにする。

 

ゲーム内復活地点ショップエリアで事件を起こす事で苦しみログアウトする姿を周知させる。

 

イベントを焦らしに焦らされたプレイヤーは、「よく出来たイベントだ」に落ち着きのめり込む。

 

イベント参加者は真実を知らずにデスゲームを心の底から楽しみながら死んでいく。

 

PSOPという世界は、笑う棺桶になる。

 

 

 

 

 

 

 

 




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