【SAO+PSO2】ソードアートオンライン【パラレルダイヴファンタジア】   作:ポメラニマン

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第30章「魂の広報」

 

 

殺戮の主人公に浸る男は声高々にシナリオを読み上げた。

興奮がフィナーレを迎えると、立ち尽くす一同の視線を両手を広げ全身で浴びる様にして囁く。

 

「そしてこれがその作動装置だ」

 

目の前に展開したコンソールを自慢げに披露する。

愛おしく撫でられると電子色は一度警報を鳴らしその姿を粉々に砕いて見せた。

 

「これより先、ゲーム内で死亡する事があれば自動的にシステムは作動する。これはもう私ですら止める事は出来ない」

 

コンソールを開き、ログアウトを待機する二人に制止を促す様に殺戮の音色は告げる。

 

「今更足掻いたところで焦らされたプレイヤー達が君達の言葉を信じるのかな。この世界で私を殺す事は不可能!邪魔臭い猫も消え去った!君達は惨状を見守ることしか許されない」

 

 

返事など不要と、押し黙る四人の真ん中をに堂々と凱旋パレードでもするが如く歩む。

 

「今日限り神になれればそれで事足りる。これより私はデスゲームを宣言してくるよ。今殺してくれて構わないよ、寧ろ近道だ」

 

ゆっくりと一歩一歩を大袈裟に踏み締め去って行く主催者を一同はただ見てるだけしか出来なかった。

 

人が死ぬ

 

覚悟を持って挑んだ結果が、目の前で嘲笑しながら去って行く。

 

足が動かない

 

手のひらで踊らされていただけに過ぎない。

これじゃSAOでの二年間と結局何も変わらない。

テレポーターから主催者が消えると、聞き覚えのある声が空間に木霊した。

 

「ニャウのせいニャウ…」

 

「!?」

 

見回すがそこに声の主は存在しない。

それでもと、微かな希望を胸に一同は猫の石像へと走る。

ニャウという膨大な情報量は、未だ凍結を踏ん張りその額には微かな光を帯びていた。

 

「最期にみんなを連れて行くつもりで信じてずっと見てたニャウ。けど、あの人を見て思い出したニャウ」

 

微かな光はゆらゆらと輝きを小さくしていく。

 

「昔、僕は死んじゃいそうなあの人の最後の願いを聞いてあげたニャウ」

 

 

 

 

 

ーーーーーザシュ

 

「ログアウトした先で総務省菊岡がお前を待っている」

 

黒尽くめは背中に刀を帯刀すると、地に伏せる殺戮者に背を向け歩き出す。

 

「お、のれ…あと少しで…」

 

地面を鷲掴みする様に伏せる指は、憂さ晴らしを求め土塊を掴んで離さない。

そうしてるうちに膨れ上がる敗北感は徐々に重さを増し、踏ん張っていた腕をへし折り、全身から魂が抜けた様な倦怠感に襲われた。

 

そうしていると、頭上から声が聞こえた。

 

「どうしたニャウ?痛そうニャウ」

 

見上げると、そこには見覚えのあるエネミーが見下ろしていた。

瀕死を気遣う会話や表情、その姿は自身も携わったプログラムの範囲を明らかに逸脱していた。

 

「あり得ない…」

 

しかし、これが事実であるならばどうだろうか。

 

「私は…これから死んでしまう。最期に、おじさんの友人の元へと連れて行ってくれないかい?」

 

少しばかり悩む素振りを見せたが、大袈裟に咳き込む振りを見せつけると猫は私を誘った。

 

超越を成す風景を見て、確信に変わった。

この不可思議は何があっても過去の私に信じてもらわねばならない。

 

 

 

 

「あの人を見た時、僕のせいってわかったニャウ…」

 

額の輝きは陰りつつある。

一同に残された時間は僅か、打開策に思考を巡らせるが無情にも迫る時間は精神を擦り削る。

 

「いや、まだ…いけるかもしれない」

 

小さな鋼鉄は何を閃いたのか、徐々に声のボリュームを上げ皆を見つめる。

何かなくとも、もうそれに賭ける以外に道はない。

 

「…聞かせてもらおうか」

 

「ああ、あの快楽殺戮者の演説を聞いてたら一つ閃いた!」

 

微かに歓声が聞こえる。

もう時間は残されていない。

 

「目には目を、ニャウにはニャウをだ!」

 

それだけ言うと、「you」はニャウへ祈る様に確認を取る。

 

「ニャウ…飛ばせるか?」

 

「……今回だけ特別ニャウ」

 

石像の額は輝きを放ち、最期の力を振り絞る。

 

 

「秋雨を、全ての始まり…SAOクリア前まで飛ばせ!そんで、あのヘンテコ侍を救い出せ!」

 

 

額の輝きは宙を舞い、四人を覆い尽くすと砕け散り降り注ぐ様に煌めいた。

 

「you」を除く三人の身体は輝く粒子に分解され、風に乗って飛んで行く。

 

「えっ、これって私達どうなっちゃうの?」

 

「正直なところ、俺もわからん。二人は恐らくオマケであっちに戻れるんじゃねーかな」

 

 

猫の石像に目をやると、輝きを失い冷たく佇んでいる。

 

 

「ニャウのみぞ知るだが…行き先不明の片道通行になるかもだ」

 

三人は互いに見合う。

視線は次を見据えると訴える。

 

「私たちはそれでいい、残された〈you〉はどうするのよ」

 

「適材適所だと思うね。俺はSAOにもPSOにも何の関わりも持たない。異物が入るとどうなるか、シャオに教えて貰ったし」

 

三名は自分達がどこに飛ばされるのかわからない。

しかし、あれだけ振り回してくれたニャウならやってくれるんではなかろうか。

そこに恐怖はなく、これから己がやるべき事に頭を切り替えていた。

 

そうする間にも、半身は溶けその時は近づく。

 

四人は向き合い、手短に最期の別れを告げた。

 

「それに、俺にはまだやらなきゃいけない事が残ってる」

 

「…私にも、SAOでやらなきゃいけない事がある」

 

「…俺たちはお前らを信じて待つ」

 

「まあ、改変されるまでは凌いでみせよう」

 

 

ーーーまた会おう

 

 

 

光の粒子が風に溶けるまで、「you」は立ち尽くしていた。

最期の粒子がチラチラと左右にブレる様は、手を振っている様にも見えて瞳が潤んだ。

 

もう動く事の無い猫の石像をそっと撫でる。

 

 

「お疲れ様、俺も負けてられないよな」

 

 

皆に続く様に、小さなキャストも歩き出す。

テレポーターを最短で乗り継ぎ、一分も経たないうちに目的の場所へと辿り着いた。

 

ショップエリアに集う観衆の最後尾。

見据える先は最前列で今まさに開会の挨拶を始めようとしている。

 

呼吸を一つ整えると、喝采に沸くプレイヤーの群れに大声を張り上げ割って入る。

 

「お集まりの皆様ぁー!!ご注目下さいませぇー!!」

 

宣言を前に静まるこの場において、空気の読めない変人の登場により「何事か」と辺りはざわつく。

 

最後尾中央から観衆に無理矢理割って入ると、この場に相応しく無い異物が入ったとでも言わんばかりに群衆の塊は中央から裂けて行く。

 

小さな鋼鉄はモーゼが海を割った様に、プレイヤーの波を割って見せた。

 

ヒソヒソと耳に入る声に心が折れかける。

しかし、歩みを止めるわけにはいかない。

湿ったメインフレームは前を見据え歩みながら続ける。

 

「えー、皆様がこれから参加するイベントのー!1番槍をぉー!僭越ながら勤めさせていただきまーーす!」

 

ざわつきは徐々に罵声へと変わりつつある。

 

「初めましてぇー、俺のリアルネームは安藤優!世田谷区○〜△在住のソロプレイヤー!このイベントを荒らしに来た!てめぇら、滅茶苦茶にしてやるから覚悟しろよ!」

 

 

一瞬、何のことやらと観衆の上空に疑問符が浮かんだが、言葉の意味を理解すると罵声は波を打つ様に広がり、大波となって降り注いだ。

 

ふざけんな、特定厨はよ!など罵声まみれのトンネルを抜けると、最前列の小高い足場を睨みつけ対峙する。

 

「よー、さっきぶり!俺が死ねば真っ先に特定厨が現実世界の異変を知らせてくれる筈だぜ。まさに大スクープだろうな。あんたが楽しむ暇なく、ここは直ぐに大混乱ってわけだ」

 

「今更何をしに来た…ご退散願おうか」

 

「現在俺は人生初のパーティプレイの真っ最中でね。この観衆の中、俺はお前が無視しようがお構いなくお前を殺し続ける」

 

「狂ったか、失せろ」

 

「どうせお前は死なないだろうが、お前は俺を殺さずにはいられなくなる。お前が俺を殺さずとも、イベントを荒らされたこいつらが俺をタダで返してくれる筈もねぇ。」

 

 

これで俺はおしまいだ。

あとは任せたからな。

 

 

「どの道俺は真っ先に死ぬんだよ!いいのかぁ?俺はこのままじゃお前以外に殺されちまうぞーwww」

 

「此の期に及んで、余計な真似を!!!」

 

 

折角仲良くなれたのに、ごめんな

一人でも多く助かってくれよな

 

 

「もうソロプレイは辞めたんだ……俺だけ楽なんて出来るかよぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

「楽には殺さん、消し炭にしてくれるわ!!!」

 

 

武器を手に勢い良く襲いかかる「you」の姿に罵声は歓声へと変わる。

 

「安藤優」決死の自爆特攻による、命を犠牲にした広報活動が幕を開けた。

 

しばらくすると、小さな鉄腕は中指を立て悪戯に笑いながら散った。

 

 




ニャウと「you」が死亡しました。
託された者へと主人公が入れ替わります。

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