【SAO+PSO2】ソードアートオンライン【パラレルダイヴファンタジア】   作:ポメラニマン

34 / 40
第33章「次、目が覚めたなら」

 

 

黒鉄宮へと向かう間、皐月は自分の過ちを悔いていた。

 

攻略組の彼がこの牢獄に何を思うかなど、この世界の住人ならば皆知っている筈。

しかし彼は皐月の事を数秒観察すると、表情を変えず引き受ける事を決断した。

 

少しだけ前を歩く彼の背中に、皐月は後悔と謝罪で胸をいっぱいにした。

 

今しか謝る機会はない。

しかし、その事実を自分が知っているのは可笑しい事だろう。

 

「あの…」

 

呼び掛けに応じ振り向く彼は気を遣ってくれているのか、小さく笑顔を覗かせる。

自分の弱さをこの世界に閉じ込めるくらいならと、駄目元を覚悟し告げる。

 

「外に戻れたら…私、貴方に謝りたい事があります」

 

彼は少しだけ戸惑いを見せたが、のちに微笑み前を見据えた。

 

そうしていると、目的地の黒鉄宮にはあっという間に到着していた。

 

 

 

「中に入れてくれないか」

 

門番と彼は言葉を交わさなかった。

視線はどこか悲しげで、それでいて真っ直ぐ。

数秒ほどそうしていると、門番は無言で扉を開いてくれた。

 

中に入り少し進むと、目的地である牢獄エリアは直ぐに辿り着くことができた。

 

「ここまででいいの、もう大丈夫」

 

彼は少し不審がったが、すぐに皐月の意志を尊重した。

 

「悪さしたい訳じゃないの。看守のムサシって子に会いに来ただけなの」

 

「そっか…じゃあ俺はここで」

 

ここからは自分で成さねばならない。

ましてや、彼にはこれから成さねばならない事があることを皐月は知っている。

 

皐月は、少しずつ遠ざかる背中に戦う事を再び誓った。

 

通路を歩いていると、直ぐに見覚えのある顔の少女とすれ違った。

すれ違い間際に発せられた一言により、皐月の一世一代の大勝負が幕を開けた。

 

「初めまして、本田玲奈さん」

 

「んなっ!?」

 

勢いよく振り返る少女は驚愕し、口を開けて固まり少しばかりの時が費える。

 

「なぜ知っておる!何者だ貴様ー!!」

 

その反応は、想像していたものとは全くかけ離れていた。

自分の個人情報が割れているのにも関わらず、彼女はまるで遊んでいるかの様に楽しげに見えた。

 

「えーと、…驚かないの?」

 

「よくわからんがー……バレてしまっては仕方がない!拙者も武士の端くれ、潔く負けを認めよう」

 

よくわからない設定を自分に課しているのか、口調はわかりずらいが話は聞いて貰えそうな雰囲気に少しだけで胸を撫で下ろした。

 

「それでー、貴女は拙者を脅迫しにでも来たのかな?」

 

彼女以外にこの言葉を言われれば、緊張感は増大し冷や汗をかいたことだろう。

しかし、彼女の人柄なのか、はたまた牢獄が寂しいのか。

ワクワクと返事を待つ表情からは隠しきれず、にやけた八重歯が顔を覗かせていた。

 

「脅迫って、でも……その通り!私は貴女を脅迫しに来たのだ!」

 

よくよく考えれば、彼女は敵ではない。

彼女の下手くそなポーカーフェイスを見ていると、張り詰めていた自分が馬鹿馬鹿しく思え、ごっこ遊びを演じる雰囲気に合わせ自らもそう名乗ることで親交を深める事にした。

 

「私の名前は橘皐月、ここではない世界……あるいは未来からやって来たのだ!」

 

「わお、未来人!?そんなんまで現れるなんてこのデスゲーム滅茶苦茶だー」

 

 

ふざけているのか、演じているのか。

この姿を見ていると、そんな事すら悩むのが無駄だと思える。

 

小一時間談笑を続けた結果、彼女の人柄を疑う事を辞め、自らも真実を語る事にした。

 

「ムサシちゃん、私がこれから話すことは全て真実なの。聞いて貰えるかな」

 

彼女の瞳に訴える事でしか、あるいはそれでも信じて貰える可能性はゼロに近いだろう。

皐月は、これまで体験した精一杯の全てを玲奈の瞳に送った。

 

「……玲奈でいいよ、皐月ちゃん!武士は友を疑ったりしないのである」

 

ふざけているのか、ちゃんと言葉の重要性を理解出来ているのだろうか。

真っ直ぐ過ぎる彼女の瞳は毒だ。

皐月は疑心と良心を目まぐるしく彷徨い、結局信じてくれた彼女に自分も応える事にした。

 

…………………

 

「ってことは、この世界クリアされるんだ!やったぜ!」

 

「うん、でもその数年後に現実世界で新しいデスゲームが始まるの。その事件の鍵として、玲奈は利用されちゃうの」

 

ここに辿り着くまでの皐月が体験した世界、これから起こりうる未来の話を玲奈はどこか楽しげに、目を輝かせて聞き入った。

 

「あちゃ、拙者とした事が何たる失態。〈poN〉の野郎ぉー、あっちにいるけど処す?」

 

「物騒な事言わないの!それに、彼には死なれたら困るの」

 

「どうして?犯人居なくなったら万々歳、みんなハッピーエンドじゃないの?」

 

「彼が居なくなってしまうと、場合によっては〈PSOP〉というVRMMORPGは大きく変化してしまう。そうなると、消えちゃうかもしれない友達がいるの」

 

「なるほど?よくわからんけど、〈poN〉を殺さずに事件を解決しなきゃなのか」

 

「そうしたい。じゃなきゃ…あの場で戦ったみんなに申し訳が立たない。私は…彼らを消したくない」

 

皐月はしばしの沈黙を思考に費やしたが、ふと前を見ると玲奈は悪戯に八重歯を覗かせ、皐月が気がつくのを待ち構えていた。

 

「やられてばっかじゃ、拙者悔しいなー。どうせならさ、盛大に仕返ししてやらない?」

 

何を言い出すのやら。

それが出来れば誰も苦労しないし死ぬ事もない。

根拠の無いハッピーエンドを語られても納得がいかない。

 

 

「もしさ、もしもだよ!拙者が洗脳された振りをして現実世界に戻って、聞いた話の通りを演じたら」

 

「あっ!」

 

「そんでそんで…」

 

「いいかも!じゃあさ…」

 

それからソードアートオンラインがクリアされるまでの数ヶ月、二人は楽しげに念入りに未来の話を計画した。

 

 

 

 

「生きてますかー?poNさん」

 

「ああ、また来てくれたんだね」

 

頻繁に訪れる玲奈に、殺戮者は洗脳をかけ続けていた。

 

つもりであった。

 

 

ーーーじゅげむじゅげむごこうのイヤッフー!!!

 

 

玲奈は殺戮者の会話を聞く振りをして、訳のわからぬ呪文を唱えたり変な妄想に明け暮れていた。

 

玲奈は、彼の会話など一切聞いていなかった。

 

それからも念入りに出来事をまとめ上げ、二人は会話をすることで正気を保ち未来を見据えた。

 

 

「目には目を、ニャウにはニャウを…」

 

 

数ヶ月後、命を懸け戦い抜いた者達、散っていった者達により、ソードアートオンラインというデスゲームは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 




本田玲奈って本名どこで知った問題発生。
どこかにさりげなく入れときますm(_ _)m
反撃が始まります。

読んでくれて感謝です!
また来てください!

物語の続きや整書を読んでみたいですか?

  • はい
  • いいえ
  • 悲しみ
  • ともしび
  • 嬉しみ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。