【SAO+PSO2】ソードアートオンライン【パラレルダイヴファンタジア】 作:ポメラニマン
【六芒均衡(ろくぼうきんこう)】
〈アークス〉の中でも「象徴」、「模範」とされる存在。一般的には、「特に生存能力が高い6人が着任することになっている」と周知されている。これは、言い換えれば「特に戦闘能力の高い6人」と捉えることもでき、その見解はどちらも正しかった。
通常ならば、子供が将来なりたい職業ランキング1位の殿堂入りを果たしてそうなものなのだが、その選出方法は一般のアークスには知らされておらず、血筋は関係あったり無かったり。突如として代替わりする事例もあったことから、
「目指してなれるものではない」と認識されていた。
この世界には、多種多様な武器が存在しており、性能に優れたものであろうと大量生産が可能だった。
ただ、全ての武器の基となった原初の武器「創世器」は複製不可能な例外である。量産性、耐久性を犠牲に「破格の性能」を誇ったその力を扱える個体。
それこそが、「六芒均衡」に選ばれる為の絶対条件であった。
その数少ない内の一つ、創世器〈破拳ワルフラーン〉待機状態を独自のコスチュームとして身に纏い、人混みを避けながら駆ける少年。この「簡易アーマー」の様な装飾は一点物であり、少年が六芒の〈六〉担当である事の証明であった。
「おう!ヒー坊、また寝坊かぁ?夜更かしすんなよー」
「違うって!急に呼ばれたんだよ!それと俺は朝は強いって、これ何度目だよっ!」
「ハッハッハッ」と、筋骨隆々な巌の様な男との走り間際の会話を聞きつけると「なんだなんだ?」とつられる様に、悪戯に飢えた人混みの視線は駆ける少年を「逃すまい」と追いかける。
「なんだぁ?ヒー坊また遅行かぁ?」
「ヒーちゃん、朝はちゃんと食べたのかい?」
「我が好敵手ヒートッ!!今日こそ決着をつけ……」
この対応には少年もいい加減慣れたもので、重なり合い、時には輪唱状態の全てに応える事は出来ないが、少年は手振り身振りで返答しその場を駆け抜ける。
アークス内で最強の6名に与えらる役職、六芒均衡。「ヒート」は16歳という若さで、その〈六〉を任されている。正義感に溢れ、活発な明るい性格は先代の〈六〉であり、師匠でもあるアークス譲りのものだろう。
燃える様に逆立った灼熱の頭髪に、瞳は綺麗に澄んだ蒼。まだ少し幼さを捨てきれぬ容姿に、年相応の身長。日頃の鍛錬の成果を隠す様に、謙虚に着痩せした体躯。
先代は彼の才能にいち早く気がつくと、早過ぎる段階にも関わらず自分の席を譲ることを即決した。器としてはまだまだ未熟、最強と呼ぶのはおこがましいという中途半端な身ではあったが、アークスや街の人々の助けもあり、何とかやっていけていた。
〈オラクル〉内の人々にとって今代の〈六〉は、「模範」「象徴」というよりは、「子供」であり「兄弟」であり同年代には「良きライバル」であった。
激動のショップエリアを抜けた先、〈ゲートエリア〉テレポーターの前で、その男は腕を組み仁王立ちしていた。
「遅いぞヒートッ!皆待ち兼ねてるぞっ!」
お互いの距離を考えると、少し大き過ぎるくらいの声量が「ヒート」の鼓膜を叩いた。しかしその声色は、誰かを叱る時のそれではなく、ヒーローが口上を述べる様な勇ましいものであった。
「すみません師匠、遅れながら参上致しました」
素早く一礼すると、男は「うむ」と腕を組み直し、師弟間の「お説教タイム」は瞬く間に終了した。
チクチクと伸びた青髪は綺麗に捉えられ、戦闘に邪魔だと言わんばかりにオールバックに纏め上げた頭髪。炎が灯そうな真っ直ぐな瞳に鍛え上げられたその肉体から、「熱血漢」という表現が一番しっくりくる。
男は「ヒート」の師匠であり、先代、六芒均衡の〈六〉。席を譲った現在も、「戦闘部・司令」として組織内を引っ張る存在。名を「ヒューイ」という。
「これ以上長居は不要だっ!さあ、いくぞ!」
まだ少し罪悪感が残っていたが、その勇ましい声に導かれ、師弟を乗せたテレポーターは艦橋にある〈コントロールルーム〉へと出発した。
テレポーターと言うだけあって、出発から到着までは一瞬の出来事であった。
「遅いぞヒー坊………私を待たせたのはこの頬っぺたかー!!」
「いたたたたっ!!!…いふぁいれふ」
余程怒らせてしまったのか。テレポーター前で待ち構えていた少女は、開口一番見るや否や「ヒート」の頬を抓った。
年齢はヒートと同い年くらいだろうか。真っ赤と言うよりはオレンジがかった繊細な毛髪は、テレポーターの淡い翠色に反射しその一本一本を輝かせる。手入れの行き届いたロングヘアーは肩甲骨を隠す様に二つに結ばれ垂れ下がっており、結び目には円形の装飾が利用されていた。容姿は「童顔」そのものだが、表情と姿勢から少しだけ大人びた雰囲気を感じさせる。
六芒均衡での、彼女の〈五〉という数字は役職の番号のみではなく、彼女「クラリスクレイス」が〈三英雄〉という位置に属することも意味していた。
「お説教も済んだことだし、そろそろ始めてもいいかな?」
迷子の子供に質問をする時の様な、優しい口調で召集の号令主「シャオ」は、集まった皆に話し合いの準備を促した。
コントロールパネルの椅子に腰掛ける「シャオ」を囲む様に整列し、各々集中しやすい体勢をとる。
「シャオ」は一同を静かに一瞥すると一呼吸置いたのち、その声色を変えた。
「この世界で、近々良くないことが起こる」
管理者は、六芒均衡+1人に不吉な演算結果を語り出した。
悲報、徹夜する。
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