あの地平線の夕焼け目指して   作:偽帝

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コンビニとバイト組の二人

突然だけど、お腹減った。無性に。

 

 

寝る前とはいえ、まだパジャマに着替えてなかったのでスーパーかコンビニでも行こう。小腹が減ったというか、何かお菓子一つくらいでいいから食べたい、そんな気分だ。

 

 

「パイの木食べたい・・・」

 

 

パイの木・・・、ミルフィーユの様に何そうにも重なったパイ生地に切り株の年輪の様にパイとチョコを交互に組み合わせた一口サイズの・・・これ以上はもっとお腹がすくのでカットで。

 

 

ってことで出かけよう、いってきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「なんで・・・?」

 

 

コンビニを出て、駐車場の前で思わずしゃがみこむ。商店街のスーパー、周辺のコンビニ計四件も行ったのにどこにも置いてないなんてなにごとだよ。何で食べたい日に限って売ってないのだろう、俺嫌われてんのかな?

 

 

かくなる上は学校の奥のコンビニまで行くしかない。ここから歩くと往復で30分弱かかるけど、パイの木を食べるためなら多少、歩くことになろうが関係ない、こうなったら何が何でも探し出してやる。

 

 

パイの木を食べることだけを考え歩いていたら、あっという間に学校近くのコンビニにたどり着いた。食欲恐るべし。

 

 

コンビニの中に入り、一目散にお菓子の売っている棚へと歩く。深夜のコンビニは、今まであまり行く機会がなかったのでなんだか新鮮な気分だ。俺以外、客は誰もいないけど、夜だからか気にならない。

 

 

「あった・・・!」

 

 

ここのコンビニにはパイの木がある・・・!よかった、これでもうほかの店をあたらなくて済む、安心して寝れる!

 

 

一つ手にとってレジの方へと向かう、するとレジでぐったりしながら店員が寝ていた。あれ、なんか見たことある髪の色のような・・・。

 

 

人違いだと困るのでレジの前で立ち止まると、意外とあっさりと店員は起き上がった。あ、やっぱり予想通り、モカだ。

 

 

「ん、っしゃーせ・・・。あ、先輩じゃないですか~」

「おう、コンビニでバイトしてたんだな」

「はい~、この時間にシフト入れると寝れるしお客さんは来ないし、楽なんですよ~」

 

 

どうやらいつもバイト中寝てるらしい、モカもなかなかの強者だ。あれ、コンビニのバイトって寝ていいんだっけ?

 

 

「先輩、おつりとレシートです~」

「ん、ありがと。この時間はモカ一人で担当してるのか?」

「いえ、モカともう一人。今は奥で在庫整理してますけどそろそろ戻ってくると思います~」

 

 

モカからパイの木とおつり諸々をもらって、そのまま帰らずにその場で立っている。モカと一緒にシフトを組んだのは誰なのだろうか、そんなに時間もかからないと思うのでここで待つことにしよう。

 

 

「や~、意外とあって大変だったよモカ~。もう時間だから着替えて帰ろ?」

「わ~い、やっと帰れますね~」

「え、リサ!?」

「春!?奇遇じゃん、どうして?」

 

 

まさかモカと一緒のシフト相手がリサだったとは。ってことは二人も知り合いなのか。なんだか、俺とは初対面だけど他の友達とは面識がある、っていうのが結構ある気がする。

 

 

「ん、パイの木を買いにはるばるここまで」

「へえ~、春って意外と可愛いお菓子食べるんだね」

「そうか?」

「確かに、先輩がパイの木食べるところを想像すると、可愛いですね~」

 

 

そういうものなのだろうか、確かにパイの木は女子に人気のお菓子なのだが。

 

 

「春、ちょっと待っててくんない?もうバイト終わったからモカと着替えてくるからさ」

「先輩、一緒に帰りましょう~。ついでに家まで送ってくれると嬉しいです~」

「アタシも、その・・、送ってほしいな・・・」

「わかった、ここで待ってるよ」

 

 

ちゃっかりモカが言った後に、リサも慌てながらお願いする。教室よりも距離が離れている場所とはいえ上目遣いのリサもまた良い。それにしても、コンビニっていうシチュエーションも良いな、二人とも似合ってて可愛い。ん、シチュエーションって何だ?

 

 

5分くらい待って、私服の二人が奥から出てきて店員の立つ側からこっちのスペースに来る。

 

 

「じゃ、帰りますか~」

 

 

コンビニを出て元来た方に向かって歩き始める。俺・モカ・リサの三人以外、車すらも通っていないので深夜ならではの物静かさがある。

 

 

「二人って知り合いだったんだな、知らなかったよ」

「高校でもバイトでも先輩後輩の関係なんですよ~」

「そうらしいな」

「アタシとモカ、結構前からの付き合いなのよ。バイトではモカ一人だとすぐサボっちゃうから、アタシがモカにシフトを合わせるうちに一緒の時間が多くなったの」

「リサさんがいるおかげでモカは楽できますから~」

「こら、寝ちゃだめって言ったでしょ?」

「あう~、リサさ~ん」

 

 

注意しながら、リサはモカの頬を両側からつっついている。隣でリサにつんつんされるのを楽しんでいたモカは、タイミングを見計らってそれを避けると俺の左に移動して腕にくっついてくる。

 

 

「春先輩~、リサさんに怒られました~」

「バイトの時間くらい起きてないと、モカ。よしよし」

「ん~、気持ちいいです~」

 

 

ぎゅー、っと腕にくっついてきたモカの頭を撫でる。すると右にいるリサもさりげなく腕を絡めてきた。

 

 

「モカだけずるいっ。アタシも撫でてよ、春っ」

「わぁ~、リサさんがデレるとこんな感じなんですね~」

「可愛いよな」

「可愛いですね~」

「ちょっ、二人ともっ!恥ずかしいから・・・」

 

 

辺りが暗いので顔ははっきり見えないけど、声色から察するにモカの言うとおりリサはデレているだろう。さっきまでモカと同じように腕を絡ませていたけど、いつの間にか顔を隠すようにくっつけていた。

 

 

「先輩、リサさんを撫でてあげてください~」

 

 

そう言うとモカは腕から離れる。俺は空いた左手をリサの頭においてゆっくりと撫でる。その様子をひょい、と体を前かがみにしてニヤニヤしながらモカが観察している。

 

 

頭だけでなく、ポニーテールにして下ろしている髪も手ぐしにして撫でてみる。2、3回くらいしようと思っていたけど、思っていた以上に触り心地がいい!サラサラしていて何回も繰り返してしまう。

 

 

「ん、春、くすぐったいっ」

「ごめん、なら止めるよ」

「・・・・・ゃ」

「え?」

「止めちゃいや、もっと撫でて?」

「リサさん、積極的ですね~。まあ、先輩の撫で撫では病み付きになりますよね~」

「うんっ・・・・・」

 

 

モカの言うことに対して渋々返事を返しながらも、リサは時折腕に頬擦りしながら撫でられる感触を楽しんでいるようだった。その様子をずっと見ていたモカも、いつの間にかまたくっついていた。

 

 

「やっぱりモカちゃんもくっつきたいです~、えへへ」

「はあ・・・、ってことでリサ、撫でられなくなったわ。ごめん」

「アタシは大丈夫、こうしているだけでもいいからさっ!」

「そっか・・・」

 

 

歩くのを止めて、立ち止まって撫でていたがまた歩き始める。

 

 

「先輩~、左にモカちゃん、右にはリサさんで両手に花ですね~」

「っ!?」

「そうだな、二人とも美人で可愛いからな」

 

 

今、蘭に出くわしたら殺されそうな予感がするな、と考えていたら左右から腕を少し強く掴まれる。また立ち止まると、近くの街灯の灯りで二人の顔がはっきりと見える。頬と耳を紅くして二人ともじっ、と上目遣いで見つめてくる。二人でそれをしてくるなんてずるい、目を合わせる俺も恥ずかしくてたまらない。

 

 

「もうっ、ずるいよ春っ」

「春先輩~、嬉しいです~」

「二人とも顔近いってっ!もう暗いから早く帰ろうぜ?」

 

 

少し無理やり一歩歩き出そうとしたが、二人に腕をホールドされて前に進めない。女の子って協力するとこんなに力があるものなの!?ぜんぜん動けないんだけど!

 

 

「春はアタシとモカと一緒に歩くの、嫌なの・・・?」

「先輩、モカちゃんシュンってしちゃいますよ~?」

 

 

そんな二人して目を潤ませながら言われたら断れないじゃないか。まあ、断る気はないけどさ。でも、このままだと家に着く頃には一体何時になることやら・・・。

 

 

「嫌じゃないよ。むしろ嬉しい、かな・・・」

 

 

そう返事を返すと、今度は目を輝かせながら二人はさらに体を密着させてきた。ち、近い・・・!けど、二人とも良い匂いがする。

 

 

「えへへっ、春っ♪」

「せんぱ~いっ♪」

 

 

この後、二人を見送って自宅に着くまで一時間と少し、かかったが時間が遅くなっても嫌な気持ちはなかった。あと、家に入る前に蘭の家の方から視線を感じたのは気のせい・・・だろうか?

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