あの地平線の夕焼け目指して   作:偽帝

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ちなみに、薫が春に対して子猫ちゃんだったり呼び捨てだったり混同するのは、スイッチ入った時→子猫ちゃん、素の時→呼び捨て、みたいな感じです


2018/07/31 更新


学校の王子様との昼食と彼女の意外な一面

午前の授業も終わって時間はお昼。

教科書を机の中にしまっていると、中から何やら手紙らしきものが出てきた・・・。

 

 

中身を読むと、どうやら薫からの手紙だった。そこには綺麗な文字で『先に屋上で待っているから、一緒にお昼を食べようじゃないか。子猫ちゃん♪』と書かれていた。

 

 

彼女の字はとても達筆だけど、よく見てみると文字の所々が丸みを帯びていて、女の子っぽさがあるのがなんだか可愛い。ギャップ萌えってやつ?

 

 

それにしても、薫はいつも俺より遅く学校に来ているのに一体どのタイミングで机の中に入れたんだ?

 

 

そう思いながら、俺はあらかじめ買っておいたパンの入っている袋を持って椅子から立つ。歩き出そうとした時、教室のドアから薫が少しだけ顔を覗かせていた。

 

 

目と目が合う。

 

 

「おっと、君の反応が気になって観察しているのが見つかってしまった。儚いっ・・・」

「え、待ってたんじゃないんかい!?」

 

 

似合わないツッコミを言った後、手を振って薫はドヤ顔のまま廊下に颯爽と消えていった。てっきり屋上で風を浴びながら待っていたりするかと思ったら、やっぱりどこかしら可愛いところがある。

 

 

追うように俺も廊下に出たけと、もう薫はいなかった。いくらなんでも足早過ぎないか?と思いながらも、俺も屋上へと向かう。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

「やあ。案外早いね、春」

「いや、薫が早すぎるんだよ!瞬間移動じゃんか・・・」

 

 

屋上に続く階段で薫が待っていた。

 

 

「先に入ってても良かったのに」

「子猫ちゃんをエスコートするのが王子様。先に行って待っているのが筋なのさ」

「俺は子猫ちゃんじゃないってば・・・」

 

 

ドアを開けると太陽の日差しが眩しい。そこそこ人がいる中を歩き進めて手すりの近くに座る。薫が有名人なだけあって女子たちがざわざわしながら、俺の方にも視線が集中してなんか申し訳なくなった。というか怖い。

 

 

「ここなら涼しいし見晴らしもいいだろ。ま、食べる時に外の景色は見ないけどね」

「そうだな。じゃあ、食べようか、春」

「ああ」

 

 

お互い持ってきた食べ物を食べ始める、が意外と薫から話しかけてこない。何かを避けるように少し俯きながら箸を進めている。

 

 

「そういえば、薫はてっきり外側に座ると思っていたよ」

「ん、ああ・・・」

 

 

ん、この反応は・・・?

 

 

「もしかして高所恐怖症みたいな?薫に限ってそんなことないか~・・・」

 

 

一人で納得して一口パンを食べ、顔を上げる。すると、箸を止めていた薫がじっ、とこっちを見ていた。

 

 

「え、ほんとに怖いの?」

「・・・・・怖い」

「まじか。なんか、可愛いな薫」

「かっ、かわっ!?」

 

 

薫は頬を赤くさせて、あたふたしている。

 

 

「王子様みたいなのも、キャラだったのか」

「まあ、そういうことになるな・・・。全く、子猫ちゃんは察しがいい」

 

 

あれ、いつの間にかまたスイッチ入ってた。相変わらず外は見ようとしないけど。

 

 

「あ。飲み物買い忘れた。ちょっと自販に買いにいってくるわ・・・?」

 

 

そう言って立ち上がり、歩き出そうとしたが薫が俺のズボンをぎゅっと摘んでいた。

 

 

「私が子猫ちゃんの代わりに買ってきてあげるよ。さ、何が飲みたいんだい?」

 

 

と、薫は言っているが、この体勢は代わりに買ってきてくれる人の体勢というより、何か他の意味合いのほうが強いような・・・。

 

 

いつもドヤ顔で言う台詞なのに、今の薫の表情にはそんな余裕がない感じがした。不安そうに瞳も揺れているし、下唇も噛むように上唇で隠している。

 

 

 

「ほんとは?」

「ん、え・・・?」

「本音を言うと?」

 

 

そのまま薫の目をじっ、と見つめる。最初の数秒は薫もいつもの様なドヤ顔をしていたけど、諦めたのか、ふにゃっと気の抜けた表情で、恥ずかしそうに口を開いた。

 

 

「春がいなくなったら、外が見えて、その・・・怖いっ」

 

 

デレた薫がまさかこんなに可愛いとは。いや、デレたというよりこれが本当の薫なのだろうか?まあ、どちらにしろ可愛い。よし、ちょっといじわるしてみるか。

 

 

「でも、もうのど渇いて限界だから」

 

 

無理矢理薫の手を放して、急ぐように一歩前に足を進めると、

 

 

「待って!・・・・・待ってくれ!」

 

 

勿論勝手に行く気はないので、その場で止まる。言い直したけど、最初の『待って』って凄い可愛かった。

 

 

「それじゃあさっ!」

「ッ!?」

 

 

俺は薫の手を掴んで、立ち上がらせる。

 

 

「一緒に行けば問題ないでしょ」

「そうだな・・・」

 

 

そのまま薫の手を掴んだまま、俺たちは屋上を出て自販のある場所へと向かった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

二人とも飲み物を買い終え、また屋上に戻る。まだ時間は十分にあった。

 

 

「さ、戻ろっか」

「ああ・・・」

 

 

教室の廊下を抜けて、屋上につながる階段の近くまで来た。さっきから薫は元気がないみたいに静かだ。

 

 

さっきは華麗に階段で待っててくれていたのに、登るのもなんだかたどたどしい。

 

 

「え、階段も怖いの?」

「ああ、実は・・・」

「まあ、ここの階段は屋上に繋がるやつだから作りも違うからな」

 

 

一段一段、ゆっくりと上がってくる辺り、結構重度の高所恐怖症なのかもしれない。

 

 

「薫」

「な、なんだい?」

 

 

薫のいるところまで降りて、彼女と手を繋ぐ。

 

 

「こうしてれば怖くないでしょ?」

「ああ、でも・・・」

「大丈夫。ちょうどお昼真っ只中だから、誰も見てないって」

「そ、そうか」

 

 

繋ぐ力が強くなったと思ったら、薫は指を絡ませていた。

 

 

「さ、階段登っちゃおう」

 

 

手を握ったおかげなのか、少し薫の顔にも自信が表れているようだった。階段と言っても数段なので気がつけばあっという間に屋上のドアの前だ。

 

 

俺は自然と繋いでいた手を離すと、薫は少し残念な顔をした。

 

 

「ドアを開けたら、私はまた王子様に戻らないといけない」

「・・・それも大変だな」

 

 

ドアノブに手をかけ、握りながら開けるためにゆっくりと力を込める。

 

 

「なら俺と二人きりの時は、ありのままの薫でいてくれよ。なんてな冗談冗談・・・」

「・・・っ」

「ん、薫?」

 

 

ドアノブから手を離して振り返ると薫はまた俯いていたが、直ぐに顔を上げて無言で後ろから俺を抱きしめてくる。これは話に聞いたことのある、あ〇なろ抱きってやつか!?でも、本来なら俺がやる方なんだけど、やられるのもなんか良い。

 

 

薫と俺は身長も大体同じなので顔が当たってるな、と思ったらいつの間にか耳の近くに顔を置いていた。

 

 

「春と二人きりの時は、私が子猫ちゃんにされてるな。もしかしたら、春が王子様だったりしてな」

「え!?」

「私の王子様になるのは、嫌なのか?春」

「いや、そういう訳じゃないけど!」

 

 

耳元で薫に言われると、背中が凄いゾクゾクする。ってか、薫ってこんな人だったっけ?凄い女の子っぽい!女の子であることには変わりないけど、今までとあまりにもギャップがありすぎる!

 

 

王子様になるって、遠回しに告白されてるってことなのか?それとも、もっと親しく接して良いってことか?いや、俺には蘭がいるし、薫を含め大切な女の子はいっぱいいるから・・・。

 

 

「薫の気持ちは嬉しいけど、専属の王子様になるのはちょっと厳しいかも、です・・・」

「んっ・・・」

 

 

そう返事を返すと、薫が頬をくっ付けてきた。

 

 

「つれないなぁ。でも、春が沢山の子を侍らせている理由もわかるよ、君には人を夢中にさせる何かがある」

「侍らせてないよ!」

「でも、知らず知らずのうちに周りには女の子がいるんじゃないかい?ま、そういう私もその一人だけどね、儚い・・・」

「それ儚いのか・・・?」

「勿論さ!さ、屋上に戻ろうか、春!」

 

 

 

テンションを元に戻した薫は、何事もなかったかの様に屋上のドアを開けて華麗に進んでいった。

 

 

「・・・?」

 

 

イマイチ彼女を把握できないが、女の子らしい可愛い一面があることは分かった。

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