「春~。今日さ、お昼一緒に食べない?」
授業が終わってチャイムがなって直ぐに、前の席のリサが後ろを振り返って俺に言った。
「ん、いいよ」
「やった、じゃあ行こっか」
食べ物を持ってリサとほぼ同時に椅子から立つ。そういえば、一緒にお昼を食べようと約束してから数週間経っていた。
待たせてしまっていたのなら申し訳ない。。
どこに行って食べるのか知らないので、リサの後ろをついて行こうとしていたら廊下に出たところで彼女は立ち止まる。
「あのさ、春。手、繋ぎたいなっ・・・」
そう言って、リサはぎゅっと俺の制服を摘む。他のも生徒がいるお昼の時間に手を繋ぐのは若干恥ずかしい気もあるけど、どこで食べるにしても数分しか歩くことはないだろうから大人数に見られることはないだろう。
返事をする代わりにリサの手を握り返したけど、彼女は笑みを浮かべずに不満そうな顔をしていた。もしかして、手を絡ませた方が良かったのだろうか。
「もうっ、どうして欲しいか、わかってるくせにっ」
思ったとおりだ。
改めてリサの手と自分の手を絡ませる。
「こう?」
「ん・・・」
「今手離したら、怒る?」
聞いてみると、上目遣いな彼女と目が会う。そのまま無言で頷いたリサを見ると、少しイジワルをしたくなる。
さりげなく、手の力を抜いていく。
ゆっくりと自分の手から解けていく指を、気づいたリサは慌てながらまた強く絡ませた。
「やっ、ダメっ!」
そんな目に涙を溜めるなんて、反則ですよ・・・。
ほんと、純粋なギャルなんだから。
「イジワルしないでよ、春っ」
「ごめんごめん、ついつい・・・」
「もうっ・・・!」
「あまり廊下でイチャイチャしてるのもアレだからさ、行こうぜ」
「そ、そうだね!行こっか」
周りの視線が気になってきたので早く移動しよう。こっちも恥ずかしくなる。
二人してようやく歩き始めてたけど、リサは時折繋いでいる手を見ながらニコニコと笑っている。
「そんなに嬉しいんだ」
「うん。だって、教室じゃあできないでしょ?」
「まあ、それもそうだな」
リサとは席が前後だから、そもそも無理がある。だからといって隣の日菜と授業中に手を繋いでいるわけじゃないけど・・・。
授業中振り返るごとに、さりげなくボディタッチが多いのも関係しているのかな。
ずっと廊下を歩いているけど、先程から繋いでいるリサの手の力がなんとなく強いような・・・。別に痛いって訳じゃないんだけど。
「リサ・・・」
「あっ、ごめん。手、強く握り過ぎてた?」
「ん、いや大丈夫だけど・・・」
「そっか、ならいいんだけど・・・」
ホッ、とリサは安心した顔をしている。その表情を見ているとドキっとすると共になんか落ち着く感じがする。
生徒で賑わっていた場所を抜けて、俺とリサ以外誰も歩いていない人気のない廊下に来た。昼間だけあって日差しが差し込んだり人の声が聞こえるおかげで物静かでも暗くは感じなかった。
この先は、体育館か?
「もう着くから、春」
「うん・・・」
そのまま体育館に入るのかと思ったら、グラウンドにつながる横のドアの2、3段ある階段の所だった。なるほど、ここは日陰になるし確かに穴場かもしれない。
「リサはよくここで食べるの?」
「いや、アタシもあんまり来ないかなー。屋上は混んでるかなって思ってここにしたんだ」
リサは繋いでいた手を自ら離すと、そのまま手を俺の胸元に置いた。細くて綺麗な指がどことなく、くすぐったく感じる。
「ここならさ完全に二人っきりだし・・・」
「そうだね・・・」
近い・・・、しかもちょっとずつ寄ってきてるような。良いにおいがする。
「昼食べようよ、リサ」
「えっ、あ、そうだね、うん・・・」
シュンとしているリサの頭を撫でて慰め、階段になっている場所に座る。
俺は購買で買っておいたパン、リサはお弁当を持ってきていた。
「春、いつも購買のだよね。ちゃんとしたものも食べないと、体に悪いよ?」
「っていってもなあ・・・」
「春が良いなら、その・・・アタシが春の分のお弁当も作ってこようか・・・?」
「え、良いの?でも、毎日だと大変だから、週に何回かで良いよ」
「うん、わかったっ。今度作ってくるから、楽しみにしてて!」
ってことでリサに昼のお弁当を作ってもらうことになった。彼女に負担をかけてしまうことに少しだけ申し訳ない気持ちも歩けど、ここで断って傷つけてしまいたくない。
それにしてもギャルなのに母親属性を持っている辺り、彼女が器用だということがわかる。真逆の二つを兼ね備えているのがすごい。
会話の後、黙々と食べ進めた結果あっという間にパンを食べ終えた。もう2、3個買っておくべきだっだかなぁ、モカほど食べたいとは思わないけど。
パンの袋を片付けて、リサが持っているお弁当に視線を向ける。卵焼き、ハンバーグ、ウインナー・・・、全部手作り感があって、見てるだけで食べたくなってくる。
「食べてみる?」
「え、良いの?」
「もちろんっ!」
リサは箸で卵焼きを1つ摘んで、もう片方の手を溢さないように下に置いて俺に向ける。自分で食べるから、と言うよりも早くリサの行動のほうが早かった。
もう逃げられない。数秒間、口をパクパクとしていたけど諦めて、俺は卵焼きを口に入れる。
リサにあーん・・・、ってしてもらった。ドキドキして冷静になれない。もちろん卵焼きは美味しいけど、中々味を理解できない。
「どう、かな・・・?」
「ん、美味しい・・・」
「ありがと。ね、春・・・」
ようやく卵焼きを飲み込んで水を飲もうとペットボトルを持ったけど、気になって彼女の声のする方を向く。すると、目の前にリサの顔があった。そのまま、耳元で・・・。
「間接キス、しちゃったね。春」
「~~っ!!」
思わず恥ずかしくなった俺は、逆の方向に顔を向ける。こういうときのリサはとてつもなく色っぽい。セクシーというかエロいというか、なんか体に悪い!害はないけど色々と危険だ!
「なんでそっぽ向いちゃうの・・・?」
リサにそう言われて、思うように力が入らないのもあり顔を元に戻す。持っていた弁当を置いたリサに両手で顔を挟まれる。
これはもしかしてキスする流れですか。お互いの唇が触れ合うくらいの距離で、吐息もはっきりと聞こえる。だんだん頭がボーっとしてきそうで、まともに何も考えられなくなりそうだ・・・。
でも、今ここでこの先のことをするわけには・・・。
「ちょ、リサっ」
「んっ・・・?」
力を入れずにやさしくリサの手を離す。
「あ!」
「ひゃっ、冷たっ!?」
彼女の手を離した反動で俺が持っていたペットボトルの水がリサにかかる。顔や制服にかかって、胸元辺りは水が浸み込んでいた。
「ごめん、リサ」
「ううん、大丈夫!ハンカチあったかな・・・」
俺は直ぐにペットボトルのふたを閉めて、リサの近くに寄ろうとしたけどそれ以上近づくのを止めて、踏みとどまる。目の前にいるからこそわかるけど、見ちゃいけないものが透けて見えるような・・・・・、どこを見てればいいのだろうか。
「あ~、今日ハンカチ持ってきてないや。春は・・・?」
「え、俺・・・?」
普段ハンカチなんて持ってきてないよ、って言う前に無いこと前提でポケットを探すと、予想外なことにズボンの裏ポケットにハンカチが入っていた。今日に限って何で入っているんだ、これはラッキーなことなのか。
「あったわハンカチ、はい」
「春っ」
手を伸ばしてハンカチを手渡そうとすると、その上からリサが自分の手をかぶせてきた。
「お願い、拭いてくれる?」
「いや、それは・・・」
いかんでしょ、流石に。女の子の、濡れた部分を男が拭いて上げるなんて。しかも濡れてる部分を考えると、おっぱ・・・胸とかも!って、何を期待しているんだ俺は。
「自分で拭いたほうがさ、その・・・俺がしちゃいけない所もあるというかないというか・・・」
「そんなことないよ・・・?アタシは春に拭いてほしいな、なんてっ」
理性がぐらぐらと揺れているけど、それを何とか抑えて冷静さを保つ。リサにそこまで言われたらもうやるしかないじゃないか。
意を決して、俺はまたリサの近くに座ってゆっくりとハンカチを彼女のに近づける。