あの地平線の夕焼け目指して   作:偽帝

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2018/06/04 更新


新しい高校生活と個性の強い三人

「ねっむ・・・・・」

 

 

昨日は正直、あんまり眠れなかった・・・。今日から新しい高校生活が始まるから、シャキっとしっかりした朝を迎えたかったのに、寝不足で眠すぎる。

 

 

あの後、蘭と二時間くらい沢山のことを話した。蘭の入っているバンド、Afterglowの事、そのメンバーの事、蘭の音楽に対する考え・・・、ずっと聞き手に回っていたけれど、とても濃密でいい時間だった、いい話が聞けた。

 

 

一通り話を聞き終えたタイミングで丁度、蘭のお母さんが帰ってきたので俺は家に帰った。夕食を一緒に食べない?、と帰り際に誘われたがちょっとした気の迷いで断ってしまった。今度、機会があったらご馳走になろうと思う。

 

 

これで終わりだと思っていたが、夜になると今度は蘭から『ひま』、『さびしい』、『また話したいんだけど、お兄ちゃんはどう?』など多量のかまってほしいという気持ちが見え見えのメッセージが来ていて、無視するわけにもいかず。一つずつ丁寧に返事を返したり通話をしていたら、いつの間にか深夜になっていたのだ。

 

 

「いってきます・・・」

 

 

あくびをしながら玄関のドアを開ける。朝の太陽の日差しは、嫌でも眠気を覚ましてくれる眩しさだ。新しい1日、高校生活始まりの日がこんな晴れの日でよかった。眠くても気持ちが楽になる気がした。

 

 

「お兄ちゃん、おはよ」

「おはよう、蘭。もう家出てたのか。ごめんな、待たせて」

「ん・・・、全然大丈夫。行こっ」

 

 

ドアの開けた目の前に蘭が立っていた。俺と同じで眠そうにしているがそれを隠そうとしているのか、あくびをしないように頑張っているように見える、可愛い。

 

 

「蘭も寝不足か?」

「うん、眠い。面倒だし入学式寝ちゃおうかな・・・」

「ちゃんと起きて聞かなきゃ。まあ、為になる話はないかもだけどさ」

「なら、寝てもいいじゃん」

「駄目だって、しっかり聞いてないと」

 

 

突然、学校に向かって歩く足を止めた蘭がこっちを向いて上目で見つめてきた。

 

 

「ちゃんと聞いたらさ、なんか、その・・・、ご褒美くれる?」

「え、ご褒美?」

 

 

こういう時ってなんて答えればいいんだろうか、何か食べ物を奢るとか、休日蘭の用事に付き合うとか、蘭にとって何がいいのかわからない・・・。

 

 

「蘭は、ご褒美として何が欲しいんだ?」

「ん。その、・・・・・でて」

「?」

 

 

恥ずかしい顔を見せたくないのか、蘭はそっぽを向いてしまった。そしてさりげなく俺の手を強く握っている。

 

 

「頭、撫でてほしいっ・・・」

「な・・・!」

 

 

聞いたこっちが恥ずかしい。犬とか猫とかが喜びそうなことをしてほしいっていうのも、また可愛い。

 

 

「ほんとにそれだけいいのか?」

「うん、あたしはお兄ちゃんに撫でてほしいから・・・」

「そっか、わかった」

「うん、約束ね」

「ああ」

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

「それにしても立派だなー、うちの学校」

 

 

なんだかんだ話していたら、羽丘学園高校の正門に着いた。今、目の前に見えているのは校舎だけだが、他には中庭・グラウンドと、とにかく色々な場所の規模が大きいらしい、とにかくデカい。

 

 

「じゃあ、また後でね。お兄ちゃん」

「ああ、じゃあな」

 

 

学年が違うので蘭とは玄関で別れる。寂しそうな視線をこっちに向けながら、1年生玄関に歩いて行った蘭を見てるとなんとなく申し訳ない気持ちになるが、2年生の俺が1年生の方に行く訳にもいかないので蘭に手を振って見送り、俺も自分の学年・・・、2年生玄関の方に向かった。

 

 

「えーと、新しいクラスは2ーAか・・・」

 

 

靴を履き替えて、廊下に貼ってある新しいクラス分けの紙に書いてあった自分の名前を見つけ、階段の方へと歩き始める。周りには中学から同じクラスの人達だろうか、『同じクラスだね』とか『隣のクラスじゃん!』と賑やかに話している。

 

 

転校してこの高校に来た俺には、同級生の友達なんていないのでどのクラスに入ってもボッチスタートだから最初が肝心なのだ。もし、学年に友達がいないままで、年下の蘭しか知り合いがいないなんてていう状態のまま学校生活を進めてしまったら完全に詰み、高校生活終了だ。

 

 

引越しを春休み中にして、始業式兼入学式に日程が間に合ったおかげで一人だけ自己紹介する危機も免れた。あれは恥ずかしくてやりたくない、下手したらそれで高校生活が決まることもあるからだ。

 

 

「ラッキー、席は自由か・・・」

 

 

後ろのドアを開けて教室に入り、窓側の一番後ろの席に座る。一番楽な席が空いてて助かった、これで位置的には最高だ!。後は前、右斜め、右隣の三席にどういう人が座るか。それ次第で俺の高校生活は決まる。

 

 

「ねえねえ、君の前の席さ、空いてる~?」

「え、空いてるけど・・・?」

「ホント!?後ろ空いてないと思ったけど、ラッキ~!」

 

 

窓から外を見ながらぼんやりとしていたら一人の女の子に話しかけられた。彼女が聞いてきたことに対して、席が空いているということを伝えると、彼女はあっという間に俺の前の席に座る。

よく見ると、この人もしかしてギャル!?雑誌とかでしか見たことのない絶滅危惧種のギャルなのか!?でも、すごい美人な子だ。

 

 

「あたしは今井リサ、今日からよろしくね!君はなんて言うの?」

「宮坂春。春、でいいよ」

「おっけー、あたしも気軽にリサ、って呼んでいいから!」

「わかった。これからよろしく、リサ」

 

 

今井リサ・・・見た目はギャルだけど、すごい話しやすくてやさしそうな人だ、綺麗で可愛いし。これはいい人にめぐり合えたかもしれない。

 

 

「あ、リサち~!」

「日菜!日菜も2-Aなの?同じクラスじゃん!」

 

 

新たに教室に入ってきた日菜という女の子の言葉に、リサは立ち上がって歩いて彼女のところまで言って何か話している。どうやら二人は知り合いらしい。

 

 

「日菜は席どこにするの?自由に座って良いらしいよ」

「う~んとね~・・・・・」

 

 

彼女は口元に指を当てて教室を一通り見たあと、窓側の俺の座っている方を見た。

 

 

「・・・っ!?」

「るんっ♪」

「え?」

 

 

何か閃いたのか、彼女は教室に入ってきた時よりもテンション高めにこっちに歩いてきた。

 

 

「ここにすーわろっと♪よろしくねっ!」

「あ、はい・・・。あの、何でこの席にしたの?」

「んーとね、君と目が合ってるんっ♪、ってきたの!」

「る、るん♪・・・?」

 

 

笑顔でそう言うと彼女は俺の右隣の席に座った。『るん♪』とは一体・・・?

 

 

「う~んとね、日菜の言う『るん♪』ってのは何て言えば良いのかな・・・、『面白そう!』、みたいな感じで・・・あたしも詳しくはわからないんだけどさ」

「るん♪は、るん♪、なんだよ!」

 

 

多分いい子、なんだろうけど良く言えば天然、悪く言えば、やべーやつだ、うん。なんかあまり会話がかみ合わない気がする、可愛いんだけど。リサが面識あって、というか知り合いで助かった、もしかしたら頑張ればもっと仲良くなれるかもしれない。

 

 

「あたしは日菜、氷川日菜(ひかわひな)!君はっ?」

「宮坂春、よろしく」

「はる・・・、はーくんだねっ、やっぱりるん♪ってしてる♪」

「ええ・・・?」

 

 

どうやら『るん』、というのは口癖らしいけど、やっぱりわからない。『るん♪』って一体何なんだ?果たして高校生活の中で答えは見つかるのか、いや見つけて見せる!

 

 

「はーくん、握手、しよっ♪」

 

 

考えていると日菜が手を伸ばしてきたので、とりあえず応じる形で握手する。両手でぎゅっ、とやさしく握られた。ふにふにしてて気持ちいい感触だ。

 

 

「よかったね、春。あたし含めもう友達二人できたじゃん!」

「そうだな・・・」

「ちょっと何その反応、あたしじゃ不満なの?」

「そ~だよ~!せっかく友達になったのにひどいよは~くんっ!」

 

 

少し適当な返事を返したら、リサと日菜に言い寄られた。近くで見ると二人とも、とても美人だ。リサは頬をぷくっと膨らませていて、日菜も口をつぐんでいるが何故か目はキラキラ輝いていた。リサに乗っただけで全然怒ってないんだろう。

 

 

「ごめんごめん。別に嫌じゃないよ」

「「ほんと?」」

「ほんと、ほんと!約束する」

 

 

何とか二人をなだめようとしていると、いつの間にか閉められていたドアを開けて新たに誰かが入ってきて開口一番、

 

 

「おや、子猫ちゃんたち、何をしているんだい?」

 

 

また癖の強い人入ってきたあああああ!!!子猫ちゃんって何!?てか見た目、男?女?どっちにしても、綺麗な人だなあ・・・。

 

 

教室の女子からの黄色い歓声を浴びながら、ゆっくりとこっちに向かって歩いてくる。なんかすごいオーラを纏っているというか、周りの空気を返る何かを持っている。この時点で固定の、というか人気を持っているのはすごい。

 

 

「リサ、日菜、なんかあったのかい?」

「え、二人ともこの人と知り合いなの!?」

「「うん!」」

 

 

ここにきて新展開。まさかこの三人知り合いだったとは。奇跡ってこんなに簡単に起こるものなんですね、信じられません。

 

 

「君はこの子猫ちゃんたちをたぶらかして遊んでたのかい?」

「いや、それは勘違いです!全然そんなことしてないです!」

「そうか、ならいいんだけど」

「そうだ、春も薫と友達になっちゃいなよ、絶対その方がいいよ!」

「え、あ、そうなの?」

 

 

確かに、この人も個性が物凄い強いけど、それを理由にして友達にならないって訳ではない。むしろ、どういう人なのか興味もあるし・・・。

 

 

「うんうん!薫くんとも友達になっちゃえば、はーくん、もっとるんるんっ♪になるよっ!」

「あ、薫は女の子だよ。女子に凄い人気あるけどね」

「あ、そうなのか」

 

 

女の子だったのか・・・、だとしたらこの人も凄い美人だな。

 

 

「よろしく、え~と・・・?」

「春です。宮坂春」

「ああ、春君、よろしく。私は瀬田薫(せたかおる)、薫って呼んでくれて構わない。これで君も、子猫ちゃんの仲間入りだ」

「はい・・・?」

「気にしないで、薫はこういう人だから」

「わかった・・・」

 

 

薫さん・・・、薫とも握手をする。何故か目が合った時にウィンクをされたので、ありがたく受け取っておこう。

 

 

「手、綺麗ですね」

「あ、ありがとう・・・」

「薫が照れるなんで珍しい。やるじゃん、春」

「照れてなどいないぞ、これは、儚いと思っただけだっ、断じて照れるなんて・・・」

 

 

意外と女の子らしいところもあった・・・、初日から良いものをたくさん見ることが出来てる気がする。

 

 

「さておいて・・・、空いてる席はどこかな?」

「あ、あたしの隣空いてるよ?」

「ほんとだ、じゃあ私はそこに・・・」

 

 

リサが指さしたところに薫は座る。あれ、これってもしかして・・・俺囲まれたんじゃ・・・?

前にはリサ、右斜めには薫、右隣には日菜、教室に入って早々友達になった美女三人に包囲された、包囲網敷かれてた!!

 

 

「これからよろしくね、春!」

「はーくんよろしくっ、るんるんっ♪」

「春、楽しい学校生活を送ろうじゃないか。あぁ、儚い・・・」

 

 

三人に囲まれて、これからどうなるんだろう・・・・・?

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