あの地平線の夕焼け目指して   作:偽帝

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このメンバーで掃除なんて絶対に務まるわけがない その3

屋上に上がると先に来ていたであろう薫が立っていた、華麗に。儚くは・・・・・無いんじゃないかな、わからん。

 

 

「やぁ、みんな」

「薫~、それで、なんかわかったことあった?」

「それがね・・・、私なりに聞いてみたんだけど、これといって有力な話を聞くことはできなかったよ。儚い・・・」

「儚い?何が儚いんですか?」

 

 

蘭、そこは真に受けたらキリがなくなるぞ。

 

 

「リサたちはどんな話を聞いたんだい?」

「うんとね・・・」

 

 

 

 

ーーーーー

 

「そうか。やっぱり、私が聞いた情報以上のものは無いみたいだね」

「だな・・・」

「色んな噂の話はあるけどさ、やっぱり何も無いんじゃない?」

 

 

日菜の言葉にリサは負けじと言った。

 

 

「で、でもさ!こんなに沢山の噂があって一つも無いって言うのも変じゃない、やっぱり怪しいよ・・・」

「モカちゃんとしても、噂は聞いたことありますが事実かどうかの信憑性については疑わしいかもですね~。そこはモカちゃんでもチンプンカンプンです~」

「ちょっ、モカも信じてないの・・・?」

 

 

良くできた作り話、ってオチかもしれないけど、こんなに色んな噂の話があって何一つ実害がないのもあり得ない、って言うことね。どっちの意見もわかる。

 

 

「どっちにしても、井戸を見に行かないとわかりませんね~」

「そうだね~。じゃあ、早速井戸に行こっかっ♪」

 

 

怖い噂をものともしていない日菜の明るい一言を聞いて、俺たちは井戸を目指し屋上を降りた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

この噂の話がでるまで、うちの校内に井戸があるなんて知らなかったけど、改めて校内に井戸があるって考えると他の高校よりも敷地が広いということを改めて感じる。

 

 

グラウンドの端、木々が生えていて薄暗いところにまるで追いやられているかのように例の井戸はあった。

 

 

怖い噂を聞いたとはいえ、普段井戸なんて中々見ないので物珍しさがある。

 

 

「こうして近くで見ると、立派ですね~」

「井戸の中にいるのかな?」

「見る限りだと井戸の中から出る気配はなさそうだし、大丈夫なんじゃないかな?」

 

 

あれ、井戸に近づくにつれて薫の様子がおかしくなってると思ってたら、やっぱりだ。ドヤ顔してるけど、ぎゅっと自分のスカートを掴んでる。学園の王子様でもこういうのは怖いんですね、そのギャップ可愛いです、はい。

 

 

「ちゃんと奥まで見ないとわからないじゃないですか」

「いないと見せかけて、除いた瞬間に出たりしてな」

「お兄ちゃん!怖いこと言わないで・・・」

「あたしも、ここより先はるんってしないかも・・・」

 

 

井戸の近くまで来たところで、俺を先頭にして後ろに4人がくっつく形になった。ちなみにモカは隣にいる。

 

 

「モカちゃんも一人だと厳しいので、先輩にくっついてますね~」

「え、俺任せ!?」

 

 

モカに腕を絡ませている以外、全員に制服を摘まれている。一番強く離さないようにしているのはリサか薫だと思う。

 

 

「アタシ、これ以上は一歩も行けないから!絶対無理だからっ!」

「あたしも、もう限界ですっ・・・」

「あたしはさっき背伸びして見たけど、何も見えなかったよ~?」

 

 

ええ、日菜いつの間に!?

ちゃっかりしてるな!

 

 

「私はもしもの時のために、子猫ちゃんたちを守らないといけないからこの場を動くわけには行かないんだ。だから、君に井戸を見てきてもらいたい、春」

 

 

いや、怖くていけないんでしょ薫さん、バレバレですよ。あれ、良く見たら涙目になってない??

 

 

「お願い、春っ。見に行ってくれない?」

「お兄ちゃんっ・・・」

「先輩がんばって~」

「は~くん行ってらっしゃ~い♪」

 

 

なんか、二人くらいから応援されてない気がするのは気のせいでしょうか?

 

 

「とりあえず、皆手を離してくれ。じゃないと俺も見れないから」

 

 

そういうとあれだけ慎重になってた5人はスッと手を離した。こういうときだけすごい正直。

 

 

木々が生い茂っているせいで日光が遮られていても、今は昼だ。これが夜だったらさすがに怖いけど、まあ見に行けないことは無い。一応、応援もされたし。

 

 

一歩、二歩と井戸に近づいて、目の前に来たところで中を覗いていて見る。井戸の底まではハッキリと見えないけど、内側が古くなって藻みたいなのが生えているのが確認できた。

 

 

念のため、ポケットからスマホを出してライトを付けてもう一度中を覗いて見る。

 

 

すると・・・・・、

 

 

カサカサカサカサッ

 

 

「ッ!!!」

 

 

大量の何かが動く音と、光に照らされたその正体を確認した俺は、5人が固まっていた所まで素早く戻った。

 

 

「春、どうだった・・・?」

「やばい。あれはやばい」

「幽霊?」

「幽霊はいなかったけど、あれはほんとにやばい」

 

 

リサや蘭に色々と聞かれて返事をしてるけど、まともに返せない。完全に語彙力の低下。あんなものを見たらまともに喋れない。

 

 

「幽霊がいないなら、見に行っても大丈夫そうですね~。5人で行けば怖くない~っ」

「じゃあ、行ってみる・・・?」

 

 

モカの行った事に渋々リサも同意して、5人は固まったまま井戸のほうへと歩き出した。その姿を見ながら、無意識のうちに俺はまた数歩後ろに下がる。

 

 

井戸の中のアレを見たら、彼女たちは絶対こっちに走ってくるだろう。

 

 

井戸の目の前まで来て、みんなそれぞれのスマホを取り出して光を付け、ゆっくりと井戸の中を覗き始めた。

 

 

そう、井戸の中には・・・・・、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大量のGがいるのだから!!

 

 

カサカサカサカサカサ

 

 

さっきよりも大量の光を浴びた大量のG達は、ここまで聞こえるくらいの音で井戸の中を這い始めた。同時に、悲鳴が響く。

 

 

「出たーーーーーっ!!!!!」

 

 

各自、とんでもない速さでこっちに向かってくる。と、思ったらいつの間にかまた皆に抱き付かれていた。

 

 

「無理無理無理無理無理っ!もーっ、最悪っ!!」

「ヤバイっ、うっ・・・」

「あれは・・・、るんっ、とできないっ」

「モカちゃん、夢に出てきそうで怖いです~」

「流石の私でもさっきのやつは・・・、儚いっ!怖いっ!!」

 

 

それぞれが一心不乱に感想を述べてきてくれる。ずっと目を瞑っている子、涙目になっている子、明後日の方向を向いてる子、普通に引いてる子、純情な女の子の反応になっちゃった子・・・、それぞれが違う反応をしていてこれはこれで面白い。

 

 

に、してもまさか正体がGだったなんで誰も予想していなかっただろう。しかもあの大群、何年も掃除されてないところを見るとそれも仕方ないことなのかもしれないのか?

 

 

ま、何にしてももう二度と見に行かない。

 

 

「よし、帰って先生に報告しよう」

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

あれから教室に戻るまで全員片時も離れなかった。その間、学年問わず男子生徒たちに冷たい視線を浴びせられ続けたが、何とか耐え切った。

 

 

今日は全校清掃だけで、放課後部活動もなく帰宅。

 

 

下校中も皆がくっついていたが、家が向かい同士の蘭以外は方向が違うので途中で別れた。皆、見たことないくらいの寂しい表情を浮かべていたが、何とか笑顔にさせて俺と蘭の二人は家路についた。

 

 

「・・・やばかったな」

「うんっ」

 

 

腕を組んでいる蘭が、指に少しだけ力を込めた。

 

 

「幽霊じゃなかったのは良かったけど、もうトラウマ・・・」

「だな」

 

 

いつの間にか家の前まで歩いていた。離れたくない気持ちを惜しんでいるのか、ゆっくりと蘭が絡ませていた腕を放した。

 

 

「じゃあね、お兄ちゃん」

「ああ、今日見たものは忘れよう」

「うん・・・」

 

 

お互いに手を振って、蘭が自分の家へと歩いていくのを見守る。後姿を見てもわかるくらい、蘭は疲労しきっている。

 

 

そうだ、ここでちょっとイタズラしてみよう。

 

 

「あれ、蘭」

「ん、どうしたの?お兄ちゃん」

 

 

俺は蘭の部屋を指差して、わざとらしく少し眉を細める。

 

 

「今、蘭の部屋に何か影見たいなのが見えたんだけど、気のせ・・・」

「っ!!!」

 

 

言い終わる前に蘭が猛スピードでUターンしてきて、ガシっと強く抱きついた。

 

 

「ら、蘭?」

「・・・・・」

 

 

顔を埋めていて、何も話そうとはしない。

 

 

「とまるっ」

「え?」

「泊まる。今日お兄ちゃんちに、泊まるっ!」

「ちょ、それは・・・!」

 

 

無理だ、と言おうとした時、蘭が顔を上げた。目に涙を貯めて、ウルウルと潤ませている。

 

 

「冗談なんだけど・・・?」

「それでも無理っ!絶対泊まるからっ!」

「えー・・・」

 

 

確かに明日土曜日だけど、あまりにも唐突でこうなるとは予想してなかった。

 

 

「怖くて、一人じゃ寝れないもんっ・・・」

 

 

ちょ、それはずるいよ。可愛すぎるって。

 

 

「でも、両親に連絡取らなくて良いのか?」

「ん、お兄ちゃんちで電話すれば大丈夫・・・」

 

 

ええ、家に泊まるための許可ってそんなユルいの!?

 

 

「今日は、離れちゃダメだから、お兄ちゃんっ」

 

 

そのまま蘭に引っ張られるように、俺は自宅の方に向き直って歩き出した。

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