あの地平線の夕焼け目指して   作:偽帝

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投稿が年末になってごめんなさい。


日菜の紹介したい人

「はーくんっ!」

 

 

放課後になって帰ろうとしたら、日菜に呼び止められた。

何の用事か言うこともなく、日菜に腕を掴まれるとそのまま教室を後にする。日菜だからこそこういうことはよくあるけど、やっぱり何の用なのかは気になる。

 

 

「日菜、どこに行こうとしてるんだ?」

「ファミレス!」

「なんか食べたい物があるのか?」

「そうじゃなくてっ!はーくんに紹介したい人がいるのっ♪」

「紹介したい人?」

 

 

日菜が紹介したい人・・・、ますます気になるじゃん!

 

 

「多分先に着いて待ってると思うから、それまでのお楽しみだよっ♪」

 

 

ってことは、相手にはあらかじめ今日会う予定だってことを教えていたんだな。

 

 

「さっ、着いた!どこに座ってるかな~?」

 

 

二人で入ったファミレスは、羽丘学園と向かい側にある花咲川学園のちょうど真ん中あたりにあるので、よく両校の生徒がたむろしている・・・じゃなくて、憩いの場になっているとか。学校帰りに来るのは初めてだけど、聞くところによるとリサやモカもよく行くらしい。

 

 

 

時間帯が夕方ということもあってなのか、予想通り高校生が沢山いた。日菜はキョロキョロと周りを見渡した後、手を繋いでいないもう片方の手を上げて、ある方向へと歩き出した。

 

 

「いたいたっ!、おねーちゃんっ!」

「・・・!?」

 

 

ん、え、お姉ちゃん?

日菜が歩いて先を見てみると、彼女と同じ髪色をした女の子がボックス席に座っていた。一人だけ背筋をピンとして、とても姿勢が良いのでいい意味で目立っている。

 

 

ジュースを吸っていたストローを口から離して、彼女は日菜の方を向いた。

 

 

「遅いわよ、日菜。時間はちゃんと守りなさい」

「ごめんね、おねーちゃん。フライドポテト奢るからさっ」

 

 

日菜のその言葉を聞いた彼女は嬉しそうに目を見開いた後、後ろにいる俺の存在に気付いて何事もなかったかのように目を逸らした。

 

 

フライドポテト、好きなのかな?

 

 

そう思っていると、突然日菜に抱き着かれる。

 

 

「紹介するねはーくんっ、あたしのおねーちゃん!」

「氷川紗夜です」

「宮坂春です、よろしくお願いします」

「あっ、おねーちゃんも同い年だよっ」

「そうなのか」

「うんっ」

 

 

日菜との会話を遮るように、紗夜はわざとらしくコホンと咳をした。

 

 

「二人とも、とりあえず座ったらどうですか?立ちっぱなしだと他の人の迷惑になりますよ?」

「あ、そうですね・・・」

 

 

なんとなく、彼女から向けられる視線が冷たく感じる。というか、冷たい。

 

 

「え、俺が奥?」

「うんっ、ずっとはーくんとくっついていられるし♪」

「・・・・・」

 

 

さっきよりも冷たい紗夜の視線が送られる。

 

 

「おねーちゃん、怖いよ~」

「・・・、二人は付き合ってるのですか?」

「「!?」」

 

 

紗夜の突然の言葉に、飲もうと持った水を溢しそうになる。

 

 

「何言ってるのおねーちゃん!はーくんとは同じクラスの大事な友達だよ~」

「日菜、さっき抱き着いていたじゃない」

「それは、まあ学校でもよくあることで・・・、まあスキンシップというか・・・」

 

 

お互いに顔を赤くしながら慌てて紗夜に弁明する。

 

 

「そうですか・・・。そこまで言うならそうなのですね」

 

 

そう言うと、さっきまでの冷たい視線とは違って紗夜は優しい視線を送ってくれた。どうやら、誤解?は解けたみたいだ。

 

 

小さくため息を吐いた直後、紗夜の目を見計らってか日菜がさりげなく顔を近づけて耳打ちしてきた。

 

 

「あたしは、はーくんともっと大事な関係になりたいな、なんてっ♪」

「ッ!?」

 

 

そのまま顔を離すと、日菜は何事もなかったかのように俺の腕に体を寄せた。彼女の場合気まぐれでやっているのか本気なのかわからない分、こっちも色々と考えてしまう。

 

 

「日菜、今宮川君に何かした?」

「ん、何もしてないよ~?」

 

 

え、今の日菜の行動見えてたの!?日菜もタイミングを狙って紗夜さんがジュースを飲んでいる時を見計らっただろうに、完全に見えている!?流石姉妹なだけあるな。

 

 

「あ、山盛りフライドポテトくださーいっ。あと、ドリンクバー二つ!」

 

 

いつの間にか日菜が注文していた。

 

 

「はーくん、ドリンクバーとってくるよ。何がいい?」

「うーん、ウーロン茶」

「コーラね~♪」

「え、聞いてた!?」

 

 

振り返った時には、ルンルンしながら日菜は歩き出していた。

やっぱり彼女といると、いい意味でも悪い意味でもドキドキする。まあ、楽しいし、色々と新鮮な気分を味わえるから良いんだけど。

 

 

右側の壁に頭を寄り掛からせていると、自然と視線が向かい側に座っている紗夜と目が合う。

 

 

「何かしら?」

「いえ、特に何も・・・」

 

 

俺と日菜の一連の行動を見てもあまり無反応なところを見ると、姉妹間では意外とよくあることなのかもしれない。馴れてしまえば、ってやつか?

 

 

「二人は、姉妹なんですよね?」

「ええ、そうよ」

「なんか、似てるようで似てないような、似てないようで似てるような・・・」

「でも、それがちょうど良いんじゃないかしら。私達にとっては今くらいの関係が一番歯車が合うのよ」

「なるほど・・・」

 

 

普段の二人がどんな感じで、今までどう歩んできたのかは知らないけど、この姉妹はお互いを上手く補って信じあっているんだな、となんとなく感じた。

 

 

「・・・なんでずっと私を見てるのかしら?」

「あっ、すいません。見とれてました」

 

 

その返事をした瞬間、紗夜さんの顔が真っ赤になった。

 

 

「な、何言ってるの?」

「ごめんなさい。可愛いなーって思ってつい・・・」

「そうっ・・・・・」

 

 

頬を赤く染めた紗夜は、また気を紛らわすようにストローに口を付けてジュースを飲んでいる。そしてなぜか、今度は彼女がチラチラとこっちを見つめ返してくる。

 

 

さっきよりも空気が気まずくなって、早く日菜が返ってこないかなと思っていた時、日菜が両手に飲み物を持って帰ってきた。あ、ちゃんとウーロン茶を入れてくれてる。さっきのはわざとボケたのか。

 

 

「ただいまー。飲み物持って来たよー、ってあれ?」

 

 

俺と紗夜さんが下を向いてお通夜状態になっているのを見て、日菜は首を傾げる。

 

 

「二人ともどうしたの?」

「何でもないです・・・」

「何もないわ・・・」

「ふーん・・・」

 

 

日菜が取ってきてくれたウーロン茶を飲みながら、フライドポテトが来るのを待った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ポテト来たー!」

 

 

テーブルの真ん中に置かれた山盛りフライドポテトの皿。そして、それを輝かせた目で嬉しそうに眺める紗夜さん。

 

 

「さ、食べましょう」

 

 

口ではそう言ってるけど、紗夜さんもう手にポテト持ってんじゃん、めっちゃ持ってんじゃん。そんなに食べたかったんですか。

俺と日菜がポテトを持った時には、紗夜さんは嬉しそうに口を動かしていた。その顔は、さっきまでの堅い表情とはあまりにもギャップがありすぎる。ちょっと同一人物とは思えないくらい表情豊かになっててちょっと戸惑ってしまう。

 

 

「フライドポテト、好きなんですね」

「んっ!?」

 

 

紗夜さんは、食べる手を止めてハッと我に返ったかのように静かになった。そして、さも豪快に食べていたのは別人だと言うように、ポテトを一本手に取ってうさぎのようにちびちびと食べ始めた。

 

 

「おねーちゃん、ポテト大好きなんだよー♪」

「ちょっ、日菜っ」

「さっきのを見て、ポテトが嫌いな人なんていないですよ・・・」

「そっ、そうですね・・・」

 

 

ポテトを手に取るスピートは変わらないものの、紗夜さんは明らかにテンションが下がっている。そんなに見られたことがショックなのだろうか。

 

 

「大丈夫だよ、おねーちゃん。はーくんはいい人だから、リサちーに言ったりとかしないよ!」

「宮坂君、今井さんと友達なの!?」

「はい。前の席ですし・・・」

「一緒にお昼食べたりしてるよねー」

「ちょっ、日菜っ」

 

 

「っ」

 

 

さりげなく暴露した日菜に驚いたが、紗夜さんの口元が緩んでいるのが見えて手を止める。

 

 

「どうやら宮坂君は、私が思っていた以上に色んな人に信頼されてるんですね」

「まあ、そうなんですかね・・・」

「あたしもリサちーも薫くんも蘭ちゃんもモカちゃんも、みーんなはーくんのこと大好きだもんっ♪」

「なっ・・・」

 

 

ちょ、ファミレスでそんなこと言わないでくれ。ほんと恥ずかしいから・・・、嬉しいんだけど。

 

 

「最初、日菜から話を聞いたときは半信半疑でしたが、じかに会ってみて分かりました。私も、あなたを信じてみたいです。改めて、友達になってくれませんか?」

「はい、こちらことよろしくお願いします」

 

 

彼女が差し出してきた手をゆっくりと握り返す。優しくて、暖かい手だった。

 

 

「やったっ、作戦大成功♪」

 

 

握ったままの二人の手の上に、笑顔の日菜がそっと自分の手を置いた。ニコニコしている日菜を見て、俺と紗夜さんも思わず笑みがこぼれた。

 

 

「ってか、もうポテト冷めてない?」

「「あっ・・・・・」」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「はーくん、あーんっ♪」

「ん・・・」

 

 

日菜が開けた口にポテトを一本持っていくと、はむっと食べる。彼女のお願いでこれを繰り返ししているけど、ほんと恥ずかしい。食べている本人は嬉しそうだけど、食べさせる側は相手の表情が見えるだけあって、そう感じてしまうのかもしれない。

 

 

「はい、はーくんもっ。あーんっ♪」

 

 

今度は、日菜がポテトを持って俺に近づけてくるのを食べる。・・・・・、なんでこんなカップルみたいなことしているんだろう、食べさせあいっこしている子の姉の前で。

 

 

またポテトを一本持って日菜に食べさせようとしたとき、あることに気づいた。

さりげなく紗夜さんが小さく口を開けてポテトが来るのを待っているのだ。時々視線を送ってこっちにアピールしてくる。

 

 

「え?」

「あ!」

「・・・?」

「あ!」

 

 

プライドが高いのか、はたまた恥ずかしいからなのか、彼女は頑として『あーん』とは言わない。ただ頬を赤くして、小さく口を開けてこちらを見ているだけだ。

 

 

「はーくん、おねーちゃんにもあーんしてあげてっ」

 

 

日菜の小さな声でのアドバイスに軽く頷いて、持っていたポテトを彼女の方に向ける。

 

 

「んっ・・・」

 

 

日菜のようにはむっ、っとポテトの先に食いついた彼女はちょっとずつ食べ進めていく。しかしポテトは短いので食べる時間はあっという間に終わり、唇と指先が軽く触れたところで彼女は唇を話した。

 

 

「・・・りない」

「えっ?」

「足りないわ、もう一本頂戴っ」

 

 

顔を真っ赤にしながらも、またねだってきた紗夜さんは日菜とは別の可愛さがあった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ポテトを食べ終えて何分か話した後、三人でファミレスを出た。帰りの道を歩いている時も日菜とくっついていたが、その間ずっと紗夜さんが羨ましそうに視線を送っていたのは言うまでもない。

 

 

「それじゃあはーくんっ、あたしとおねーちゃんこっちの道だからっ」

「そっか。じゃあまた明日、学校で」

「うんっ♪」

「紗夜さんも、また・・・」

 

 

今度、と言う前に紗夜さんにも手を掴まれる。

 

 

「私も・・・、その・・・・・、また、会いたいです」

「俺もです、時間が合えばまた会いましょう」

 

 

途端に紗夜さんの表情がパアっと明るくなる。

 

 

「ありがとう宮坂君・・・、いえ、春君」

「えっ、今なんて?」

「なんでもないわっ、それじゃあまたっ!行くわよ日菜っ」

「あっ、うん!じゃあね、はーくんっ♪」

 

 

紗夜さんに引っ張られながらも手を振ってくれる日菜に手を振り返しながら、遠くなっていく二人の姿を見送った。さりげなく紗夜さんが下の名前で呼んでくれたのは信頼してくれたことの第一歩なのだろうか、と考えながら俺も止めてた足を動かした。

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