「自分から行かず、引いて反応を見るのも大事・・・?」
今日の運勢で一日過ごすためにはそれがいいらしい。
つまりは、普段、親しい仲の友達などにあえて無視したり、冷たい返事を返したり、そっけない対応をすることでその相手の反応を見るっていうことか・・・。
よし、やってみよう。なんか面白そうだし、何よりどんな反応をするのか気になってしょうがない。朝からこんな楽しみを思いつくとは、今日の運勢も聞いておくものだ。
「いってきまーす」
「おはよう、お兄ちゃん」
玄関のドアを開けて、家を出るといつものように蘭が待っていた。実験の一人目は、蘭からだ。
「・・・」
「お兄ちゃん?」
「・・・・・」
完全に聞こえてない体で歩き続ける。
「ねえ、お兄ちゃんってば」
「・・・・・」
蘭の声が心配そうな声色に変わるが、そのまま数歩歩いて立ち止まる。振り返るとさっきの場所から蘭はずっと立ち尽くしていた。
「どうした、蘭?早く学校行くぞ」
「え、あ、うん・・・」
最初は不審がっていたのか、普通に返事を返したら何か安心した表情で蘭が近づいてきた。
「お兄ちゃん。あたし、何かお兄ちゃんに悪いことしたかな・・・?」
「・・・・・」
「ねえ、どうして無視するのお兄ちゃん。あたしも気をつけるから、何かあるなら言ってよ!」
「・・・・・」
少し強めの口調で蘭に言われるが、構わずに歩く足を止めない。
「お兄ちゃん!」
「離せよ」
俺を止めようとしたのか蘭に両手で腕を掴まれた。振りほどこうと思ったけど怪我をさせないために静かな口調と目で威圧する。
「あ、ごめん・・・」
「強く掴むなよ、痛いな」
本当は全然痛くないけど大げさに腕を払った後、さりげなく蘭を見てみるともう泣く一歩手前くらいなっていた。
「ごめんなさい、お兄ちゃっ、あたしが悪かったからっ。だからっ、嫌いにならないでっ」
蘭がこんなに泣くところは初めて見た気がする。正直、滅茶苦茶可愛い。今すぐ頭を撫でて謝りたいけどもう少し延長で。
「蘭を嫌いになるかならないかは俺が決めることだろ」
「そんなっ・・・!」
嫌いになることなんて一生ないと思うけど、蘭からしたら効果抜群なようで。ぎゅっと抱きつかれて離れない。
「いやっ、嫌いになっちゃいやっ!だから、離れないでっ!お兄ちゃ、いないとっ、あたし、寂しいのっ、一緒にいてっ!」
抱きしめながら大泣きしている蘭を見てると、もう罪悪感で一杯なのでネタ晴らしします。まさかこんなガチ泣きするとは思ってなかった。可愛い泣き顔が見れたから満足といえば満足だけど、嬉しいことも言ってくれたし。
「大丈夫、蘭のことを嫌いになんて思わないから」
「え、ほんと・・・?」
見上げた蘭の目が潤んで揺れているのを見ると、もうちょっと楽しみたいと思ってしまう。悪い癖だ。
「どうしよっかな~?」
「うえぇ、やらぁっ!」
ちょっと泣き止んだところで言ってしまったことで、また蘭は大粒の涙を零す。ごめんなさい、度が過ぎました。
「うそうそ、冗談だよ。家出たときから無視してたのも全部遊んでたっていうかさ。蘭、ほんとごめん!」
「・・・だめ、許さない」
「え?」
「もっと、ずっとお兄ちゃんと一緒にいることにするから。そうじゃないと、その・・・あたしの中のお兄ちゃんが足りないっ」
「そっか・・・」
なんか最近、蘭に残っていた多少のツン属性も無くなりかけてる気がする。デレ属性だけの蘭ってどれだけ可愛いんだろうか。
「あの、蘭さんそろそろ離してもらえます?学校に遅れそうですよ・・・?」
「お兄ちゃんにあんなこと言われて傷ついたから、しばらくこうして・・・頭撫でてもらわないとやだ」
「遅刻は気にしないのね・・・」
ずっとくっついたままの蘭の頭を撫でると、口元を緩めてさらに頬擦りしてきた。機嫌はすっかり直ったみたいだけど、蘭が満足するまで何分かかるやら・・・。嫌じゃないけど。
「可愛いなぁ、蘭は」
「っ!うるさいっ」
「そうやって照れてるとこもな」
「ばかっ」
蘭を冷たくあしらった結果、今よりももっと可愛くなって朝からイチャイチャすることになった。