あの地平線の夕焼け目指して   作:偽帝

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冷たい態度をとって反応を見てみる(リサの場合)

「珍しいね、春が遅刻なんて」

「うん、たまたまだよ」

 

 

リサと軽い会釈をして、自分の席に座る。

 

 

結局、あの後は蘭と手を繋ぎながら学校に向かった。時折繋いでいる手を確認しながら『えへへ』と笑顔になっている蘭を見るのはとてもほっこりした。それぞれ教室のある階が違うので別れようとした時に、

 

 

「や、離れたくないっ」

 

 

っとまた手を掴まれた。もう授業が始まっていたので廊下には誰もいなかったから、蘭も普段人前ではしないことをしたのかもしれない。登校途中も人はいなかったし。

 

 

蘭の頭に軽く、ぽんと手を置いたら手を離してくれた。離してくれた手の指で、頬を撫でて一言言ってあげると恥ずかしそうにしながらも蘭は笑顔で自分の教室の方に歩いていった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

何の教科であれ一限の授業はダルい。眠いし、頭に入らない。

 

 

「早く授業終わらないかな~」

「ん、まだ始まったばっかりじゃん。ダルいのは同じ気持ちだけど」

 

 

いつもの様にこっちに向き直ったリサとの他愛もない話。この光景も当たり前になってきている。

 

 

よし、次の相手はリサだ。

 

 

「ねぇ、一緒にお昼食べるのさ、いつにする?」

「ん~・・・そうだな、いつでも良いんじゃない?」

 

 

本当は可能ならば毎日でも一緒にお昼を食べたいけど、敢えてどうでも良いような感じを装った返事をする。

 

 

「ちょっ、何それ。適当に考えすぎじゃない?」

「え、そうか?ごめん」

 

 

ずっと優しくて可愛い表情しか見たことのなかったリサの表情と声が初めて冷たいトーンになった。

 

 

「アタシは春と一緒に食べるの楽しみにしてるのに、春はそうじゃないの?」

「いや、俺も楽しみだけどさ・・・」

「なら適当な返事しないでよ」

「うん・・・」

 

 

納得してないような、少し面倒くさそうな曖昧でぼんやりとした返事を返して窓の方を向いて体を崩すと、リサも視界に移るように体を動かしてきた。

 

 

「今日の春、何か変」

「変じゃないよ、いつも通り」

「変!」

「・・・俺が変か変じゃないかなんてリサに決められたくないな」

「なにそれ・・・!」

 

 

ごめんなさい、100パー変です。指摘されて当たり前です、誰が見ても丸わかりです。

 

 

「アタシ、春が傷づくようなこと言ったかな?」

「ん、いや別に?」

「じゃあなんで今日はいつもよりも冷たいの?やっぱり変だよ」

「・・・」

 

 

意を決して、俺は口を開く。

 

 

「変、変ってしつこいなぁ。授業中なんだからうるさくするなよ、リサ」

 

 

いつも、というか毎日リサとは授業中会話しているのに今日だけ優等生ぶった事を言った。しつこいともうるさいとも思ってません。

 

 

「ッ!!」

 

 

俺の方を向いたまま、リサはその場に立ち上がった。突然のことでびっきりしたが、見上げると体を震わせているリサの目が潤んでいる様に見えた。

 

 

教室全体の視線が、俺達二人に集まる。思いもよらないリサの行動で、とりあえずは彼女を席に座らせようと頭では思っていても体が動かなかった。

 

 

「ひどいよ春っ!アタシは、もっと春とっ・・・!」

 

 

そう俺に言い放つと、リサはそのまま走ってどっかへ行ってしまった。数秒の沈黙の後一気に教室がざわざわと騒がしくなる。反応が気になるからやっていたものが、とんでもないことをしてしまったかもしれない。

 

 

「喧嘩はよくないぞ、春」

「薫くんの言う通り、るんってしないよはーくん」

「次の授業は先生に話をつけておくから、早く追いかけるんだ。お互いに否はあるかもしれないが、きっとリサは春が来るのを待ってるよ」

「言ってあげて、はーくん!リサちーと一緒に帰ってくるの待ってるね!」

「二人とも、ありがと。行ってくる」

 

 

薫と日菜から優しい言葉をかけられ、俺も席を立って廊下に向かう。本当は冗談で~、とか明るく言おうにも二人を裏切ることになると思うと言えない。今ので薫がイケメンって言われる所以が少しわかった気がする。

 

 

廊下に出たのは良いものの、リサはどこに向かったのだろうか。普段どこに行ってるとかわからないな・・・、とりあえず屋上辺りから探してみよう。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「いた・・・!」

 

 

屋上に行くとリサは外の景色を見ながら立っていた。風に髪がなびいている後ろ姿は何か寂しそうに見えたけど、声をかけずらい感じはなかった、元はと言えば俺からしたことだからここまで来て気づいてくれるのを待つ、なんてことはしない。

 

 

「リサ」

「ん、あ、春・・・」

 

 

名前を呼ぶとリサは振り返ったが、何か隠すように目をこすっている。もしかして泣いていたのか・・・?

 

 

「これは別に、泣いてたわけじゃないからっ。ちょっと目にごみが入っただけで・・・」

「・・・リサ、」

 

 

ごめん、と言うよりも先にリサが続ける。

 

 

「ごめんね。アタシも飛び出さないでもっと春の話、聞けばよかったのに」

「俺の方こそごめん。ああいう返事は間違ってた」

「ううん、もう気にしてない!今回はお互い悪かったってことで、ノーカンで水に流そ?アタシは春と衝突したい訳じゃないから」

 

 

顔を見れば涙を拭いたというのがわかるが、それでもリサは俺に笑顔を向けている。正直やりすぎた、こんなことでリサとの間に小さい蟠りすらも作りたくない。

 

 

でも、ここでリサの言った言葉を肯定すればこれは事実として二人の記憶に残ってしまう、それは本意ではない・・・。だから、なんと言われようと真実を言おう。

 

 

「あのな、リサ。俺の言ってたこと全部嘘、というか冗談なんだ?」

「え・・・?」

「朝の運勢で相手に対して引いて反応を見るのも大事って、それに少し冷たい態度をとったらどうなるかって実験みたいにやってたんだ」

「・・・・・」

「だから、適当に返事を返したり鬱陶しい感じにしたのは全部嘘。まさか、リサをここまで傷つかせたなんて・・・ホント、ごめん!」

 

 

言い訳がましいけど、言いたいことはしっかりと伝えたつもりだ。俺の言葉を受けてリサがどういう対応をするのかは彼女次第。そう、たとえ絶交されたとしても、それは当然の報いで仕方のないことだ。

 

 

俺の言葉に何も返事をせず、リサは無言のままゆっくりとこっちに歩いてくる。下を向いたまま、口を噤んでいる感じで淡々と目の前まで来た。

 

 

「っ」

 

 

片手を上げたリサは手のひらを俺のほうに向けてそれを勢いよく振り下ろす。これは、間違いなく平手打ちされる・・・!

 

 

覚悟を決めて目を瞑る。

 

 

「・・・?」

 

 

痛みに耐えようと目を瞑ったが何秒経っても頬に手が触れなることはなかった。恐る恐る目を開けると少し呆れた感じで、リサがくしゃっとした笑みを浮かべていた。

 

 

「なんてするわけないでしょっ、目瞑っちゃって可愛いなぁ」

「・・・・・」

 

上げていた手を俺の頬に優しくくっつけるとそのままツンツンと突っつかれる。どうやら本当に怒ってないらしい。それでも罪悪感が残っているのは事実で一人だけスッキリしない感じがある。

 

 

「ってことは春はアタシを使って弄んでたってワケだ・・・?ふ~ん・・・」

「ごめん・・・」

 

 

唇に人差し指を当てながら、リサはゆっくりと俺の周りを一周して、また目の前で止まる。

 

 

「アタシ、傷ついちゃったな~?」

 

 

一応反省の色を浮かべているから口には出さないけど、もうリサは反省してないんじゃないか?よからぬ何かほかの事を考えているような・・・。

 

 

リサは笑みを浮かべながらそっと人差し指を俺の口元に当てる。身動きが取れないけどなんかスベスベしてる、綺麗な指だ。

 

 

唇からゆっくりと指を離したと思えば、バッっと手を広げて抱きついてきた。

 

 

「うわっ、ちょリサ!?」

「捕まえた~、離さないからね~♪」

 

 

上目遣いで自慢げに見つめられる。恥ずかしくて直視できないけど時々視線が合う度に見せる笑顔が可愛い、可愛すぎる。

 

 

「とりあえず次の授業が終わるまでこのままね?アタシが傷ついたから罰だ~!」

 

 

そう言うとリサはもっと密着して俺の胸板に顔をくっつける。

 

 

「次の授業が終わるまでって言ったけど、ナシ!アタシの気が済むまでで!」

「ええ・・・」

 

 

たった今、無期限延長になりました。まあ嫌じゃないから良いんだけど。こうやって見るとリサも友希那みたいにねこっぽい所がある、ねこじゃらしとか絶対反応しそうだ。

 

 

「ん~、こうやってるのも気持ちいいな~。春を抱き枕にして寝たら毎日よく寝れそうかも、なんて♪」

「・・・」

 

 

ちょっと意地悪言ってみよっと。

 

 

咄嗟にリサを抱きしめ返して、リサの耳を近づける。

 

 

「じゃあ今度、抱き枕にして寝てみる?」

「ふぇ・・・?」

 

 

顔を真っ赤にしながら、リサは口をぽかんと開けている。

 

 

彼女の耳元で言ったのでリサからは俺の顔は見えてなかったと思うけど、正直言った俺のほうが恥ずかしい。しかも、こんな時に限ってお互い視線をそらせずに見つめていた。

 

 

「冗談だよ冗談。聞かなかったことにしてくれ」

「ばかっ、聞き逃せるわけないじゃん」

「え・・・?」

 

 

今度はリサが顔を近づけてきた。

 

 

「今度、春と一緒に寝たいな・・・?」

 

 

決して卑猥な意味はないのでご安心を。多分、添い寝程度だと思います。多分。別に何も期待してないですよ?ホントに。

 

 

「さすがにそれは考えさせてください・・・。」

 

 

蘭とも同じような約束をしているので心の準備ができない、ってか体が持たない!

 

 

「アタシのこと、春は嫌いなの・・・?」

 

 

うわ、拒否できない言い方された!しかも拾ってくださいと言わんばかりの捨て猫のように目を潤ませて見つめられている。可愛いんだけど、なんかあざとい!

 

 

「いえ、嫌いじゃないですけど・・・」

「なら、良いよね?はい、けってーい!」

 

 

弁明すら与えられずリサによって決められました。まあ、このまま抵抗しても結局言いくるめられそうだったかも。

 

 

「うう、わかったよ・・・」

「やったーっ!」

 

 

さっきよりもさらに強く抱きつかれる。さっきまでのはどこえやら、いつものリサに戻った。

 

 

リサにもやってみたら、友情を失いかけたと思ったけど結果的には新しい約束をして前よりも仲良くなれた。めでたしめでたし・・・?

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