「このっ・・・!」
以前の反省点を踏まえ、呪的強化処理を施したキャレコから弾丸が吐き出され、『銀の福音』に襲い掛かる。
それは退路をふさぐように放たれたもので、狙い通りの効果を上げていた。
「誰かを信じて時間を稼ぐなんて僕のガラじゃないけどね・・・おまえをここから逃がさない!」
雁夜は、そして一夏は必ず復活する。『魔術師殺し』時代にセイバーを道具としてみて、信じることなど一切なかった切嗣が信頼する二人の親友のために体を張る。
切嗣はどこかそれに誇らしさを感じていた。皮肉げに唇を歪め、青くなったなと呟くと、切嗣はヘリカルマガジンを『高速切替』で交換し、弾幕を張り巡らせた。
それを幾度も繰り返し、疲弊した切嗣の弾幕がわずかに薄くなった。
そこを通り抜け、切嗣に迫る光弾。
しかしそれは切嗣に届くことなく、切嗣の後方から飛んできたレール砲が迎撃する。
「嫁、待たせたな」
「遅すぎだよ、ラウラ」
ラウラだけではない。立て続けに『銀の福音』に攻撃を仕掛ける専用機組に切嗣は苦笑した。
・・・・・
気付けば歌がやんでいた。
二人の子供は夜空の一点を見上げている。
「どうかしたのか?」
河原に降りて声をかける一夏。
その声にも応えないで少女が呟く。
「呼んでる・・・行かなきゃ」
「?」
気が付けば二人の子供の姿はなく、堤防の上にいる雁夜に視線を向けても肩をすくめられる。
堤防の上に戻った一夏はいつの間にか現れた見慣れぬ二人の人物に首を傾げた。
この夜の街はどうしてこんなに不思議なんだろうと
・・・・・
戦況は再び敵サイドが優勢になっている。
一度は追い詰めた『福音』も『二次移行』を行い、パワーアップした攻撃で切嗣達を苦しめ続ける。
甲高い咆吼の後に行われた攻撃でシャルロットが弾き飛ばされ、ラウラとおもわず庇った切嗣も被弾、一度のアタックで半分がダメージを負わされた。
衝撃に揺れる視界。幸いにしてこの戦闘は箝口令のおかげで外部に漏れることはない。痛みに顔をしかめるラウラを見た瞬間に切嗣はそれまでの封印を解くことを決めた。幸いにして『正義への贄』はこういう時のために出力系にリミッターをかけてあり、音声キーによってリミッターが一時的に解除されるようになっていた。魔術回路を励起させ、ギアを一気に叩き上げるたった2節の詠唱。紡ぎ上げられる言葉は切嗣の体を時の流れから切り離す。
「
鍵が外され、切嗣の速さが増した。
切嗣の魔術においてもっともハイリスクかつもっとも汎用性に富んだものであるそれは体内に、固有結界を展開し、術者の体内時間を調節するというもの。通常であれば解除した瞬間に肉体を損傷するリスクを負うが、人間の数倍のスペックを持つISを併用することで世界をごまかすという荒技をもってしてそのリスクを取っ払ったのである。
切嗣は倍速化したスピードをもってしてサバイバルナイフで斬りかかる。
だがまだ敵機の方が速い。
加速の分だけ衝撃の倍増した回し蹴りが切嗣を海面に叩き付けた。
時間が元通りになる。
続いてセシリアも鈴も沈められ、箒もギリギリで再びエネルギー切れを起こした。
『紅椿』の爪先から出力されるエネルギーの刃が消失した瞬間、敵の手が箒の首を掴み、そのまま翼で覆う。
・・・・・
「何のために、力を欲しますか?」
新たな二人の人物の片方、白い騎士のような、顔の上半分をバイザーで隠した女性の問いに一夏は考え込むような仕草を見せる。
「何のためにか・・・そうだな・・・友達を・・・いや、仲間を護るためかな」
「仲間を・・・」
「仲間をな。なんて言うか、世の中って結構いろいろ戦わないといけないだろ?単純な腕力だけじゃなくて、いろんな事でさ」
だからそんな不条理から仲間を守る力が欲しいと一夏は言う。それを聞いてもう一人の人物は雁夜に視線を向けた。
「マスター、貴方は良い友人をお持ちだ」
「ああ、オレなんかには勿体ないくらい良いヤツさ・・・でも、切嗣も、セシリアも、箒もシャルロットもラウラも白木も・・・鈴も。みんなオレの大切な仲間で、友達だ」
だからオレは行く。そう言って雁夜はランスロットを真正面から見据えた。
しばらく無言で互いの視線を絡み合わせた後に、ランスロットがふっと笑う。
「これを」
ランスロットが差し出したのは金の豪奢な装飾を施された鞘。そして太陽のように輝く一振りの宝剣。
「我が王より貴方にと仰せつかって参りました。『
「救えずに死んであそこにいるんだがな・・・けど、有難く使わせて貰おう。今度こそちゃんと護るために」
「では、これにて」
ランスロットが闇に消える。
「さて、覚悟は決まったか?一夏」
「ああ」
「だったら、行かなきゃね」
一夏の背後から先程の少女が言う。
彼女に手を引かれる二人の前で、冬木の夜が明けた。
ほんの刹那、深山町の方に赤銅色の髪の青年といっしょにいる二人の少女が見えた。
困ったような顔をする青年と、両側から話しかける二人の少女。
赤い服を着たツインテールの勝ち気そうな少女と髪の長い大人しそうな少女。
彼女たちを見たことがある。きっと知っている。そして・・・楽しそうにしている姿を見て、ほんの少し報われたような、前に進んでもいいと言われたような。
そんな気がした。
・・・・・
二筋の光条が空を奔り、『銀の福音』を攻撃した。
白い光条の主は『白式第二形態・雪羅』を纏った一夏。
黄金の輝きを放ったのは『バーサーカー第二形態・
今まで黒一色であった鎧は白銀の手甲と腰に携えた黄金の鞘に彩りを添えられ、黒の部分もガンメタルブラックに輝いている。
「俺の仲間は誰一人としてやらせはしねえ!」
吼える一夏。その白く輝く姿に箒が涙を浮かべる。
「右に同じ」
短くそう言って先程まで真正面に突き出していた宝剣を鞘に収める雁夜。その宝剣こそがたった今黄金色に輝く光の断層を放った物。円卓の騎士の一人、最後まで完璧なる忠義に生き、忠義に死んだサー・ガウェイン卿の宝具。かの有名な『
腰に携えるは所有者をあらゆる攻撃から守り、所有者の魔力によって埋め込んだ者の傷を癒す。致命傷すらも治癒させてしまう不死性の象徴。かのアーサー王が所有していた『約束された勝利の剣』の鞘、『全て遠き理想郷』。
「雁夜・・・ったく、遅いのよ!来るならもっと早く来なさい!」
「悪いな鈴。ちっとばかり野暮用でな」
鈴に視線をやって、いつものように苦笑を返して臨戦態勢に入る雁夜。
切っ先を低く構え、腰を落とし、気迫をみなぎらせる。
「さて、話もあるし、チャッチャと終わらせようぜ」
「おう、再戦と行くか!」
一夏の突撃。『雪片弐型』を右手のみで構えて斬りかかる。
直線軌道の太刀筋。案の定容易に躱されてしまう。
「逃がさねえ!」
すかさず左手の新武装『雪羅』で追撃。一夏のイメージに合わせた形状に変化するエネルギー武装。それがクローの形をなして敵を襲う。
わずかにかすめただけで敵のエネルギーを削り取ったのが分かる。
<敵の情報を更新、攻撃レベルAで対処する>
翼から放たれるエネルギー弾。ほんのわずかな臨界時間に雁夜が飛び込み、マウントから外した『全て遠き理想郷』をかざして突撃する。
「『全て遠き理想郷』よ、オレの前にその不死の概念を示して見せろ!」
黄金の鞘が弾け、雁夜を覆うような形で結界を張り巡らせる。
零距離からの全弾相殺。そこへ一夏が飛び込み、『雪片弐型』と『雪羅』のそれぞれから出力した『零落白夜』で連撃を放つ。
たまらず離れようとする『福音』だが、はるか下方から飛来した9㎜軍用弾にその後退を阻まれ、雁夜にもう一太刀浴びせられる。
「切嗣!?」
「もとよりこの作戦での僕の役割は独自判断でのバックアップ。気にせず切り込め!」
続けて呼び出したのはブローパイプ式ロケットランチャー『飛行機殺し』。同じ型のロケットランチャーで育ての親を殺し、人々をバイオハザードの危機から救った切嗣には皮肉な名前だが過去の戒めと青臭く大切な1を護る正義の味方を目指す今の彼はその名前を気に入っていた。
3人の攻撃によって追い詰められる『福音』。
しかし切嗣は今にも途切れそうな意識を無理矢理引き起こして参戦しており、一夏もエネルギー残量がきつくなってきたらしく焦りに顔を歪める。
リミッター無しの軍用機がどれほどのエネルギーを持っているかは分からないが、こちらは底が見える。
互いが苦境に追い込まれていた。
・・・・・
「ぜらあああっ!」
「おおあああっ!」
二筋の斬撃が煌めき、『福音』を切り裂く。
雁夜が計器類に目をやると、『白式』のエネルギー残量がレッドゾーンに突入していた。
(そろそろ決めないといけないか・・・)
「一夏!」
「箒!?おまえ、ダメージは・・・」
「大丈夫だ!それよりも、これを受け取れ!」
箒が一夏に触れ、『白式』のエネルギー残量が跳ね上がる。
「な、何だ!?エネルギーが回復・・・これは!?」
「今は考えるな!行け!」
「おう!」
両手で『雪片弐型』を握る一夏。
雁夜が吼える。
「カタをつけるぞ、行け!」
「おうよ!任された!」
斬撃と下方からの援護射撃。一夏が右から斬りかかり、左に回避した『福音』に弾丸が襲い掛かる。
それも回避した『福音』を真正面に捉え、雁夜は『転輪する勝利の剣』を大上段に振りかぶる。
「我が宝剣は太陽の写し身、もう一振の星の聖剣!我が前にその真名と力を示せ!『
振り下ろすと同時に再び顕現する光の断層。
それは見事に『福音』をとらえ、叩き落とした。
「ってあ!やっべ!誰か受け止めろ!」
「はいはいっと・・・ツメが甘いのよ、ツメが」
スーツだけになった操縦者を回収した鈴がやれやれと苦笑した。
「無事か?ラウラ」
「ああ、大丈夫だ」
ラウラもシャルロットも無事、セシリアも・・・まあ、殺しても死なないようなキャラクターをしているので今は夢の中だが直に目が覚めるだろう。雁夜の耳に届いた「んふふ~。一夏さ~ん♪」という寝言は聞かなかったことにする。
「なんとか終わったな」
「ああ、やっとな」
「オレ達の粘り勝ちだ」
額ににじんだ汗を拭うと、雁夜はいつの間にか沈み行く夕日を眺めやった。
(長い一日だった・・・)
アニメ版BLAZBLUEの3話見ました。というか横で流してます。いやあ、いいハザマしてましたよ。もうほとんどハザマのまま行っちゃっていいですか?
ではまた次回、act14 DREAMY NIGHTでお会いしましょう。
ちゃおちゃおー。