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灰白色の髪の青年が夜の商店街を歩いている。
襟の高い黒いジャケットと黒いスラックス。襟が黒と黄色のチェックになっているのが少し洒落ている。
と、どんっ。という音と共にちょっとサイズの合っていない眼鏡の女性が青年の胸のあたりにぶつかった。
「あ、すいません、ちょっと急いでいたので」
「いや、いい。こっちもちょっとぼんやりしていたし」
ちょっと淡泊な口調だが、相手に対する気遣いが込められた言葉に女性はなんとなく、この人はいい人だ。と思った。
今日は勤め先のお客様感謝デーだった。ついでに夏休みも終わりが近付いており、客足は半端ではなく多かった。少しばかり気疲れしたので、青年は行きつけのバーに向かっているところだ。
「?なんだ、貴女もここだったのか?」
結局最後まで同行した女性にちょっとだけ目を丸くする青年。
「ええ、ちょっと待ち合わせで」
「そうか。じゃあ、俺が扉を開けよう」
ドアを開けると其処には落ち着いた空間が広がっている。
「お待たせしましたっ」
勢い込んで店に入る女性に、カウンター席に座るスーツの女性が振り向く。見知ったその顔に青年はちょっとだけ驚いた。
「デートかと思ったら・・・なんだ、うちのお得意様じゃないか」
「鳴上か。お前もここがお気に入りなのか?」
青年―『スーパーマーケットジュネス』の実質NO.2、鳴上悠がそう言った相手は織斑千冬だった。と来れば、女性の方も誰なのか判別がつくというもの。
「すまないな、山田先生。急に呼び出したりして」
「いえいえ。どうせ部屋で通販カタログを眺めていただけですから」
と、そんな会話を聞きながら鳴上は離れた場所に座ろうとして、千冬に止められる。
「鳴上、どこへ行く」
「邪魔をするのも何だから、俺は離れた場所で飲む」
「いや、ちょうど良いからお前もこっちで飲め」
鳴上に与えられた選択肢は3つ。 > 観念して千冬達と飲む> 大人しく離れた場所で飲む> 自分から進んで千冬達と飲む
(どうせなら気持ちよく飲みたい。ならここは)
「わかった。そっちで飲もう」
言いながら千冬をはさんで山田先生の反対側に座る鳴上。
「マスター、ハイボールを一杯」
「千冬さんも新しいのをお出ししましょうか?」
「頼みます」
「畏まりました」
初老のマスターが一人でやっているこの店は、マスターの容姿に惹かれてやってくる女性ファンが多いという。
「・・・千冬もやはり彼のファンか?」
「いつも直球だなお前は。・・・いや、そうじゃないんだ。ただ、マスターの落ち着いた声のトーンは好きだな」
そうか。と一つ頷いて鳴上は一言
「声フェチというヤツか」
と呟く。
「そうなんですか?織斑先生」
「・・・冗談だ」
ちょっとだけ目を丸くする山田先生にふっと笑って冗談だという鳴上。
「全く、お前は昔から嘘か本気か分からんヤツだな」
千冬がそう言ったところで、マスターがグラスを差し出す。鳴上のハイボール、千冬の黒ビール、山田先生のビール。それとサービスのキューブチーズ。
「「「乾杯」」」
なぜだか自然に鳴上の混じった乾杯。
「お前はいつもナチュラルに溶け込むな・・・」
「よく言われる」
千冬の呟きに答える鳴上。
「あの、ところで二人はお知り合いなんですか?」
「ああ、高校一年生の時同じクラスだった。今は俺の勤め先のスーパーのお得意様だ」
山田先生の問いに鳴上がそう返すと千冬はただの腐れ縁だと混ぜ返した。
「ところで織斑先生、今日はどうしたんですか?おやすみだから帰省されたんじゃ?」
「そのつもりだったんだが、家に女子がいてな」
「千冬のファンか?」
「いや、一夏と雁夜のツレだ。」
「と言うことは専用機持ちが6人ですかぁ。戦争が起こせる戦力ですね」
山田先生の言葉にそれは怖いな。と言って苦笑する鳴上。
チーズを頬張り、しばらくもっきゅもっきゅと租借していた千冬はそれを飲み込むとバツが悪そうに
「先月、臨海学校があったんだ」
と言った。へえ。とだけ反応する淡泊な顔つきの野郎が一人。
「そのときにな、私は少し余計なことを言ってしまったんだ」
「・・・と言いますと?」
いつになく歯切れの悪い千冬に山田先生が興味津々といった様子で尋ねる。
「例の3人にな、一夏はやらんと言ってしまった」
きょとんとする山田先生。はい?と聞き返すとよいが手伝ったのかいつになく饒舌に千冬はしゃべり出す。
「いや、その・・・違うんだ。別にあいつがどうとかそう言うのではなく、何というかその・・・弟は姉の物だろう?家族的な意味で」
「・・・ブラコンめ」
「お前だってナナコンだろうが。知ってるか?高校時代のお前の渾名、鋼のシスコン番長だぞ?」
「満更でもない」
鳴上の発言に二人はちょっとだけ驚く。
「で、一夏に惚れた女子が千冬をライバル視して動きづらくなっているわけだ」
「ああ・・・鳴上は理解が早いな」
「それほどでもない」
「で、織斑先生は一夏君が女子と付き合うのには賛成なんですか?」
「賛成だ。あいつは他人のことも女のことも、色々と知るべきだ」
「じゃあ良いじゃないですか」
「いや、よくない」
は?と疑問の声を上げる鳴上。
「よくないというか、あいつが変な女に引っかかりはしないかが気がかりでな・・・」
「つまり心配だと?」
「いや、あいつの人生だから好きにさせる」
なら何がそんなに引っかかるんですか?と山田先生が聞く。千冬はそれに対していくつか言葉を並べた上でよく分からん。と言った。
「まあとにかく、十代女子の覚悟を邪魔するのも何だから家に居づらくてな」
「で、こうして飲みに来たわけだ・・・お前は一夏と似ているところがあるな」
「あ、鳴上さんもそう思います?」
「むう・・・二人とも人を見る目がないな」
ちょっと不機嫌そうな千冬の反撃に鳴上は苦笑を一つ漏らして俺は人事もやるぞと混ぜ返す。
「今日は朝まで付き合いますよ」
「ふん。お前も、そう言う台詞は男に言ったらどうだ」
「そうですねえ。目の前の人より魅力的な人が現れたらそうします」
言って山田先生は千冬を見る。
「ではマスターだな。おすすめだぞ」
「千冬さん、年寄りをからかうものではありませんよ。どうです?鳴上さん」
「気の効いた答えは返せないぞ?」
悪戯っぽく言う鳴上。マスターは微笑しながら千冬の前に新しいグラスを差し出した。さっきまで飲んでいた黒ビールではなくソルティードッグ。
「まだ頼んでない」
「でも飲みたい頃だったんだろ?」
なあ?と言うように鳴上が視線をやると千冬はムスッとして
「私の周りはお節介ばかりだ」
という。子供が拗ねているような様子に、鳴上はどこか微笑ましい物を感じながらチーズを一欠片口に放り込む。
「愛されてるってことですよ。ね、マスターに鳴上さん?」
「そうですとも」
お節介ついでに何か作ると言ってキッチンに消えるマスター。鳴上も少し赤くなりながら頷いている。
子供じみた様子で拗ねたままの千冬は、残りのチーズを全部口に放り込んだ。
「みんな成長していくんですよね。色々やって、色々あって」
山田先生のそんな言葉に千冬は少し吹き出し、意趣返しとばかりに年寄り臭いぞ。と返す。
「なっ!何ですか、もう!笑うなんてひどいですよ!」
「悪かった悪かった」
頬をふくらませる山田先生と笑いながらなだめる千冬。鳴上はそれを横目で見て、
「・・・そうだな」
と、静かにグラスを傾けた。
アニメ版BB・・・未だにバング殿が出てこないとはこれいかに・・・結構重要なキャラだと思うんですがねえ・・・あとプラチナがずるがしこすぎる・・・
では次回、act17 会議でお会いしましょう。
ちゃおちゃおー。