一見紳士かつクレイジーでクレバーっていうタイプ。
アニメ見ながら更新中なんですが、ハザマ&テルミのキャラに病みつきになる・・・
では本編をどうぞ。
「ぐあ・・・ッ!」
わずかに展開が間に合わず、雁夜の左手を銃弾が射貫いていった。
「・・・っぐ・・・くぉぉ・・・」
振り下ろし気味に進路をふさがれた銃弾は一夏と雁夜の間のアスファルトを抉る。左手を押さえて苦しむ雁夜だが、不思議と痛みを訴えるような顔はしていない。それに気づき、悶える雁夜を嗤っていたマドカの顔が怪訝に歪む。
「雁夜!」
青ざめた顔で叫ぶ一夏に雁夜は引き攣ったような笑みで答えた。
「一応大丈夫だ・・・やべえやべえ、あんまり痛いんで痛覚が麻痺してやがる」
やばいといっている割に雁夜の顔にはそれほどの緊張感はなく、ぼたぼたと流れる血液を右手で押さえながら術式を組んでいく。
「
編み上げた術式と魔術回路を活性させるためのキーワード。
「!?俺は・・・何を見てるんだ・・・?」
「・・・ッ!?何だそれは・・・?」
みるみるうちに弾痕が塞がり、二人は自分の目を疑う。
しかし、次に一夏が浮かべた表情はなにはともあれ傷が治ってよかったという安堵ではなく怪訝。
雁夜の肩が小刻みに震えているのだ。
「・・・雁夜・・・?」
俯いた雁夜の顔は見えない。だが、くぐもったクツクツという声は聞こえる。
(・・・笑ってる?一体何で?)
「・・・くく・・・くははは・・・あっははははは!あ゛~、そうだった、魔術治療は一気に痛みが来るんだった・・・痛え痛え痛え痛え!やべえ、超痛え!痛えってことはまだ繋がってるし、生きてるって事だよなあ!いいね、五体満足でオレ生きてる、サイコーだ!」
10年近くいっしょに過ごしてきて、こんなハイになった雁夜を見たことは一度もない。
いや、ハイになると言うよりもこれは
「ヤベエ、楽しい、楽しすぎ!左手はまだ使えねえってのにこりゃヤベエ、楽しすぎる!っは~、いいねいいねえ!生きてるって良いねエ!さあ来な、ロリコン人形!手っ取り早く終わらせてやるから未練とか恨み辛みは置いてきな!そのまんまじゃ閻魔にやられかねんからな、ンなもんに落ちてこられちゃ鬼や怨霊も良い迷惑だろうよ!」
「あァ~ん?ンだよ、てめえらかよ・・・オレはてめえらが嫌いなんだって事ぐらい分かるだろ?」
かつて、コルネリウス・アルバの血液は、それ単体が空気と反応して発火するナニカのように燃えた。
「・・・虫?」
一夏が再び怪訝そうな声を上げる。
魔力の込められた血液が炎を生むように、銃創を治療するために魔力を流した雁夜の血は、『そいつら』を呼ぶ。
属性は水、際だった適性は召喚系統。
「GIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII!!!!!」
故に雁夜の血は、蟲を呼び寄せる。
「まあ合計1リットルないんじゃしょうがねえ、コイツらじゃせいぜい3匹がやっとだろうなあ!さあ躍れロリコン人形!『翅刃虫』!」
狂的な叫びに応じて水牛をも噛み殺す3匹の蟲が闇色の体を震わせ、一斉にマドカに襲い掛かった。
・・・・・
「・・・微かだが・・・銃声か?」
並外れて鋭敏な切嗣の耳がその音を捉えた。
「すまないラウラ、ちょっと一夏達を見てくる」
それだけ言って切嗣は織斑家を飛び出した。すぐ後に
「切嗣一人では心配だからな、私もついていこう」
とラウラも続く。
そしてそのすぐ後に
「何か嫌な予感がするわね・・・」
と、眉間にしわを寄せた鈴が飛び出していった。
・・・・・
3人が辿り着いたとき、そこには異様な光景が広がっていた。
何が何だか分からないでそこに突っ立っている一夏。
『サイレント・ゼフィルス』がナニカと戦っている。
そして闇色の体を持つ巨大な蟲と・・・
「どしたどしたァ!まだまだンなモンじゃねエぞォ!」
狂的な表情の雁夜。
「・・・まずいな・・・」
切嗣が呟くと、それに二人が反応する。
「ちょっと、まずいってどういう事よ」
と鈴、
「雁夜も魔術師だと言うことか?」
とラウラ。
「ああ、そうだ。魔術属性は水、主に使用するのは身体強化による聴神経保護。なんだけどな・・・」
と言って切嗣は戦局を観察する。
「水属性は召喚に際立った特性を示す。アレは雁夜の無意識と魔力のこもった血液が作り上げた不完全な使い魔だ」
だが問題はそこじゃない。と言って切嗣は雁夜の顔を注視する。
「さっきの銃声と今の状況を考えてみたんだが、多分どこかに弾丸を喰らった後、そこに空いた風穴をふさいだんだろう」
「そんなこと出来るの?」
鈴の質問に切嗣は頷いて言う。
「その時に痛覚が刺激されて脳内麻薬が過剰分泌されたんだと思う。要するに雁夜は自分の脳内麻薬で軽くトリップしているわけだ」
言われて鈴も雁夜を注視する。
血の気が足りない青ざめた顔、唇はつり上がり、瞳は混濁している。また、自覚がないのだろうか、よくよく見れば蟲達の行動も非常に直線的で避けやすい物だった。
そんな様子に鈴の目が座る。
「すぅ~・・・っ」
思い切り息を吸い込む鈴の様子に切嗣とラウラが怪訝そうな顔をしたときだ。
「こンのバカリヤあ!!!!」
鈴の全力シャウトがその場にいた全員の聴覚を震わせた。
「なにトンでんのよ、なんで逃げてんのよ、バカじゃない!?さっさと正気に戻って真面目にやんなさい!」
鈴が叫ぶ。大きな瞳にはもう見ていられないというように浮かべられる涙。
「あんた逃げんのが嫌いじゃなかったの!?だったらなんで逃げんのよ!」
何故逃げる。そのキーワードが濁っていた雁夜の瞳がクリアにする。
「鈴・・・そうだよな・・・痛みから逃げてた・・・アレじゃ逃げたのといっしょだ。オレの一番嫌いなことは苦しいことから逃げることの筈だろう・・・」
左手は痛むが、もう動かせないほどではない。そして、動かす必要もなかった。
魔力は時速300キロ超で
「感覚共有・・・思考リンク・・・動作の一切をこちらから支配・・・」
見る間に蟲達の動きが変わる。それまでバラバラに襲い掛かっていたものが統制の取れた動きで攻めかかる。
「ISと魔術の併用なんざ初めてのことだが、まあなんだかんだでやってやるさ!」
「・・・ッ!このぉ・・・っ」
鋭く研ぎ澄まされた瞳。体力は現界ギリギリだというのにその闘志は些かの衰えもない。
「さて、久々の出番だ、『無毀なる湖光』、『己が栄光のためでなく』!」
マドカの持つエネルギーライフルの照準がざらつくノイズに支配され、雁夜のスピードが増す。シールドエネルギーを犠牲にして性能を上げる宝具と同じくシールドエネルギーを消費して相手のセンサーをジャミングする宝具。
そして続けざまに躍りかかる『翅刃虫』。
「こんなもので!」
しかし敵もさるもの。銃剣の一振りで波状攻撃を仕掛ける『翅刃虫』を両断する。続けてナイフで斬りかかるマドカ。
「甘いな・・・」
『無毀なる湖光』の持ち味はそのパワーアップ効果のみならず、盾にも使えるほどの強度にある。反射速度に強化を施した雁夜は正確にナイフの動きを読んで、柄を打つことで弾き飛ばす。続けて剣を振るう右手に魔力放出を使用、魔力のジェット噴射を加えた高速の太刀筋が閃く。
「ぐっ・・・!」
その刃は速く、
「篠ノ之流剣術、派生我流奥義・・・」
そして閃く太刀筋は雪片の如く美しい。
「
空中ですれ違う雁夜とマドカ。
「くぁぅっ・・・!」
蝶の羽を思わせる『サイレント・ゼフィルス』のスラスターが片方吹き飛んだ。
「づ・・・あぁ、無茶したなあ、オレ・・・」
雁夜の手元から『無毀なる湖光』が消え、次にどうにか着地すると疲労困憊の体で膝を着く。
「雁夜!」
「鈴・・・ありがとよ・・・おかげでアタマ冷めたぜ・・・」
「そんなのどうだっていいわよ!ああもう!また無茶して!」
「ああ、そうだな・・・ホントにごめんな・・・じゃあ悪いけどオレ、ちょっと寝るわ」
・・・・・
「で、どうするんだ?『亡国機業』」
雁夜と鈴を庇い立つようにして切嗣がコンテンダーのみを展開する。
「雁夜が使った以上、出し惜しみに意味はない」
本気で行かせてもらう。と、切嗣は回路に魔力を流す。
固有時制御ではなく簡単な
続けてフリーの左手にサバイバルナイフ。
片翼の襲撃者はしかし、仕掛ける愚を犯さない。
半分になったスラスターで離脱すべく強力な加速をかける。
「待てよてめえ!」
我に返った一夏が『白式』を展開して吼える。
「逃がすと思うな」
ラウラがピタリと狙いを付ける。
そして次の瞬間、
「・・・次こそは、織斑一夏・・・お前の命を貰う」
と、マドカの口が動き・・・手元からナニカが溢れ落ちた。
「・・・ッ!スタン――ッ!」
とたんに4人の視界を灼く白い光。
高感度のハイパーセンサーが、暗視力を強化した切嗣の網膜が、一瞬で白く染め上げられる。
スタングレネードを置き土産にマドカは離脱していった。
感想いただいたら必ず見てます。何か雁夜はやばくなると狂いたがるタチだと思うんですよねえ・・・まして今回は風穴開けられてますから。そりゃ狂いそうにもなるわな。台詞は『DDDのフソウユキオ事件』のアリカのものをアレンジ。魔術回路の活性するところも憎悪ちゃんのシーン。あと、血液だけで召喚できたのは赤ザコさんのせいでごぜーます。
では次回、act28 家族(ファミリイ)でお会いしましょう。
ちゃおちゃおー。