やー、眠いッスねえ・・・今日もうこれかきあげてねることにします。
では、本編をどうぞ。
「そういやさ、何で切嗣達の部屋って椅子が五脚あるんだ?」
三脚あれば十分だと思う。一夏はそう言っていた。
しかしこの五脚の椅子には理由があるのだ。
「では、今回の議題を発表する」
円形のテーブルを囲っているのは切嗣と雁夜という部屋の主に加えて鈴、ラウラ、白木の計5人だ。切嗣の台詞を受けて雁夜が口を開く。
「昨日のタッグトーナメントの時に、一夏に新たなリスクが確認された」
「リスクとはどういう事だ?」
「誰彼構わずフラグ建ててるから、いつか刺されるって事でしょ?」
鈴の質問にああ。と頷き、雁夜はため息をつく。
「何かあれ以来、ま、簪少し前からその傾向は見られたけど、今朝誰も起きてなかったんで差し入れに行ったら楯無さんも意識し始めてるっぽい」
「ふうん・・・生徒会長がねえ・・・」
「と、いうワケでだ。今回の『天然ジゴロについて考える会』の目的はこの現状を報告して、どうしていくか考えることだ・・・オイ岸波、何だそのかわいそうな物を見るような目は」
「いや・・・考えても出ない疑問について真剣に議論するのもどうかと思って・・・」
だよなあ。と雁夜はもう一つため息。
「と言うわけで、今後の方針としては、範囲を広げつつ今まで通り不用意にあの天然ジゴロが人を傷つけないように気を配る。と言うことで、お開きにしよう」
そう言って切嗣が締めくくると、雁夜は力を抜いてテーブルに「だ~っ」と突っ伏した。
「っつーかどんだけフラグ建てるんだよアレ・・・」
「・・・鳴上さんがいなければ千冬さんも或いは・・・」
「何!?教官が!?」
切嗣のコメントに過剰反応するラウラ。それに呆れつつも鈴は
「ホント、鳴上さんには感謝しなきゃね」
と、それに同意する。
「・・・真剣に恋愛対象としてみてる相手が実の弟とか、社会的にかなり問題だからね」
白木が席を立ちながら投下した爆弾発言。場の空気が一気に凍りついた。
「ま、まあ、とりあえず取り調べ行こうぜ!」
「そっ、そうね!早く終わらせちゃいましょ!」
「だ・・・だな・・・」
「うむ・・・」
そう言ってばたばたと飛び出していく専用機組の4人なのだった。
・・・・・
「視虫」
「またそれか・・・」
しょうがないだろ。と言って雁夜は切嗣を横目で見る。
「偵察向きの蟲なんてコイツしかいないんだから」
他に使用可能な蟲はと言えば、食い気120%の肢刃虫に、殺傷力の高い、角が刃になったヘラクレスオオカブトみたいな蟲(雁夜は斬甲虫と名付けた)、とか、やたらと物を溶かしたがる蜘蛛みたいな奴とか、でかくて鈍重で盾にしか使えない巨大ダンゴムシとか、動物に寄生して恐るべき攻撃性能を発揮させるバルバルとかそんなのばかりなので、偶には違うものをとかそう言う余地がないのだ。
「え~っと?確か蘭のとこが文化祭なんだっけ?」
「らしいな・・・ってああ!」
突然大声を上げる雁夜にラウラが少しだけ目を丸くする。
「どうしたのだ?」
「・・・巽さんだ」
は?と首を捻る3人に雁夜は指の腹を噛み切りながら言う。
「配達帰りの巽さんと偶然出くわしたらしい。くそっ、視虫じゃおっつかねえぞ・・・」
もし外で何かあったら。と、雁夜は不安に眉根を寄せる。切嗣と自分は装甲に攻撃が入る前に障壁で身を守ったためにISそのものへのダメージはない。しかし他のみんな、特に楯無、一夏、箒の3人は深刻なものだ。
「・・・そう言うことなら、僕の使い魔を使おう」
「・・・切嗣?」
「小型CCDカメラ搭載の蝙蝠だ。僕が視虫のイメージを使ってコイツは襲うなと命じておけば問題はないだろう・・・何より、地理的に見て僕の蝙蝠のほうが早く着く」
そう言って切嗣はナニカに集中するような素振りを見せる。恐らく、リモートで自宅に用意した蝙蝠の使い魔に魔力を送っているのだろう。
「・・・よし。じゃあ、視虫のほうは引き続き巽さんの車を追跡してくれ」
おう。と頷くと雁夜もその旨を守った上で自立行動するよう指示を送る。
「何とも頼もしいものだな、鈴」
「確かに、こんな友達甲斐のある奴、そうはいないでしょうね・・・まして彼氏だもん。よく考えたらアタシらってすっごい幸運じゃない?」
そうだな。と、彼氏という単語に顔を赤くしながら頷くラウラなのだった。
・・・・・
「すいません、助かりました!」
「いいってことよ、そんじゃまた、ウチの店、ひいきしてくれよ」
そう言って車内の巽はドアを閉め、車をスタートさせる。
「完二さんのおかげで早く着いたな・・・さて、蘭を探すか!」
と、一夏は足を蘭の通う学校へと向けた。
それを遠巻きで見つめる二対の瞳・・・二対と言っていいのかは怪しいが。
「なんとかなったな」
「まったくだぜ。あ、モニターそのままにしてくれ。魔力爆弾の威力を温存したいから感覚共有はあんまりしたくねえんだ」
一対の瞳と一見一対に見える複眼の主・・・その視覚の向こうで二人の魔術師はそんなことを話していた。
「と言うか雁夜、何異議申し立ててるんだ?」
「?いいじゃん。取り調べからは解放されたし、一夏はまだ文化祭見てんだから。終わったら声かけてくれよ」
そう言って再び裁判ゲームに意識を戻す雁夜に、切嗣はため息を一つ漏らした。
「その態度に『異議あり!』だよ・・・」
・・・・・
「申し訳ございません。当レストランでは、そのような格好での入店はお断りしております」
「・・・え?」
そして夕食時まで時間は流れ、一夏は黛先輩から貰った件のチケットのレストランで初老のウェイターから入店拒否を受けていた。
「え、いや、でも、どうすればいいですか?」
「そうですね。スーツかタキシードでお越し下さい」
「・・・切嗣のダークスーツ、借りてくりゃよかった」
呟く一夏にウェイターが声をかける。
「お客様、三階のショップで買うこともできますが、いかがされますか?」
「えーと、ちなみに一番安いのでいくらくらいでしょうか?」
「そうですね、十万円ほどかと」
と、ウェイターのとどめの一撃。一夏の顔色がみるみる青くなっていくのを、認識阻害を施した蝙蝠の小型カメラが見ている。
不意にどうしたの?と言う声が聞こえてきた。
「これは・・・ミス・ミューゼル」
振り向いた一夏の目に映ったのは紫のドレスを着た金髪の女性だった。
「トラブルかしら?」
「いえ、こちらのお客様のお召し物が当店の規則に合わないので、お断りしていただけで、トラブルと言う程のことはありません」
「入れてあげたらいいじゃない。可哀想だわ」
「申し訳ありませんが、ミス・ミューゼルのお願いでもこればかりは・・・」
仕方ないわね。と、ミューゼルは呟き、一夏の方を向いた。
「じゃあ、服、買ってあげるわ」
「ええ!?そんな、悪いですよ!」
「いいの。私、若い男の子にプレゼントするのが趣味だから」
そう言って彼女は一夏を引っ張り、三階の紳士服売り場へと歩いて行った。
・・・・・
「言ってくれれば貸したのに・・・」
一夏の呟きになんとなくぼやいてから、切嗣は再びモニターに目をやる。
「何にせよ、デートは出来そうだし、何よりだな」
「ああ、だな」
野郎二人で顔突き合わせてタブレット端末を見ていると、なぜだか楯無が現れた。
「あら、一夏君は?」
「ああ、デートですよ。箒と・・・っていうかアンタ、もう動いて大丈夫なんですか?」
「ああ、そこはそれ、雁夜君の『金色の鞘』の力を借りたいな~って。ほら、あなた夏にアレで全身打撲とかから快復したらしいじゃないってデート!?」
知ってたんスか。と呟いて雁夜は『全て遠き理想郷』を展開する。それを楯無の体に埋め込みながら
「で、何ですか?夜這いですか?」
と聞いてみる。
「えへへ♪」
そんな可愛く笑われても・・・と、切嗣がため息を一つ漏らすと、そう言えばと楯無はその切嗣に質問する。
「ねえ、何見てるの?」
「ああ、これですか。その一夏の護衛監視衛星みたいなモンですよ。切嗣の飼ってる蝙蝠に取り付けた小型CCDカメラからの映像ですけど、見ます?」
雁夜が何とはなしに聞いてみるが、楯無は僅かに首を捻るだけ。
「どーかしたんスか?」
「んっと・・・この女の人だけど、見覚えあるのよね・・・ちょっと前から写せる?」
ああ、大丈夫ですよ。と言って切嗣が思念を送る。
「・・・あ、やっぱり見覚えあるかも・・・あ、ああ~~~~っ!」
「なっ!何スか!?」
「やっぱり間違いないわ、彼女、『キャノンボール・ファスト』の時にいた『亡国機業』の人間よ」
・・・・・
「ぐええっ!箒!首を絞めるな首を!」
レストランでうっかり者のウエイターに出された酒を飲んでしまい、酔いつぶれた箒をしょって一夏は夜道を歩いていた。
のだが、店の規則のせいで、一夏はタキシードのまま、箒はドレスのままで、しかもときどき笑い出すものだから、何かと周りの目を引いていて、正直気恥ずかしい。それに、さっき突然笑い出したときに様子を見て、寝顔が可愛くて赤面してしまったこともあり、なんとかこの状況を脱出できないものか・・・と考える一夏なのである。
「・・・アレ?電話だ・・・もしもし?」
<よう、何かまた随分と悪目立ちしてる見たいじゃねエか>
「雁夜・・・何でそんなこと知ってるんだよ」
<お前のボディガードに付けた蟲の視覚からな>
しれっと言ってのけた雁夜に一夏は半眼になる。
「・・・で?わざわざ電話してきたって事は何かあるんだろ?この状況を脱出する方法」
冗談のつもりの質問に、しかし雁夜は驚いた。と言った様子で間を置く。
「マジで?」
<ああ、ちょっと前に鳴上さんに電話して迎えに行ってもらった。大体の位置は教えてあるから、そこで待ってれば会えると思うぜ>
「わりいな、世話かけて」
電話の向こうで雁夜は喉を鳴らすような笑みをこぼすと
<気にすんな、いつものことだ>
と言って電話を切った。
それから数分ほど。
4人乗りの車が一夏達のすぐ近くまでやってきた。
「すいません鳴上さん」
窓を開けて乗るように促す鳴上に一夏は軽く頭を下げた。
「・・・気にするな。知り合いが困っていたら助けるのは当たり前だろう?」
そう言って鳴上は薄く笑みを浮かべる。箒を後部座席に寝かせて一夏は助手席へ。
「鳴上さん・・・その・・・迷惑じゃなかったですか?」
「問題ない。ちょうど千冬に頼まれてたのが届いたからな。ついでと思ってくれて構わない」
「頼まれてたの・・・って、あの・・・ツカレトール・・・でしたっけ?」
ああ。と頷いて鳴上は視線をミラー越しにトランクにやる。
「いやあ、おかげで助かりました、ありがとうございます」
「・・・デートの邪魔になったと思うが・・・」
「でっ!ででで、デートって・・・それよりあのままじゃ俺、恥ずかしさで悶絶死してますって」
そうか。と言ってまた薄く笑う灰白色のドライバー。その様子が酷く大人っぽくて、何だか面白くないので一夏はミラー越しに箒の様子を見る。
「むにゃ・・・いちか・・・」
「・・?目、さめたか?」
呼ばれたので上半身を振り返らせる。
「うに」
しかしまだ酔っ払って寝ぼけているらしい。
「あにょにゃ」
「何言ってるか分からん」
トロンとした、いつものりりしい姿とは違った顔でそう言う箒に内心どきどきしながら、一夏はいつもより半オクターブほど高い声で普段通りに返答する。
「ふに」
「鳴上さんが水買っといてくれたけど、飲むか?」
と、座席横の、飲みさしの缶コーヒーと並んだ水を手に取る一夏。
「・・・しゅき」
「・・・?・・・箒?」
「・・・すう・・・」
どうやらもう起きそうもない。そう思って一夏が体を戻すと、鳴上が横目でじっとりした視線を送ってきていた。
「この鈍感め」
「・・・何で?」
・・・・・
翌日。
顔を赤くして悶絶する一夏と箒に、学園中が何かあったのかと耳をそばだて、どこかで5人の女子のとんでもない殺気が確認されたらしい。
では次回、act34 システム・ハックでお会いしましょう。
ちゃおちゃおー。