しかし兄さん強化しすぎたかな・・・
act.3 フラグ、雁夜に立つ!
「織斑君。クラス代表おめでと~!」
「おめでと~!」
「ま、頑張れよ」
ぱん、ぱぱーん。クラスメイトの持ったクラッカーが乱射された。今日はクラスメイトによる一夏のクラス代表就任パーティーを開かれていた。
「・・・なんでこうなった?」
「知らん。知らんが、一夏、箒が睨んでくるからな。あれマジでびびるからオレちょっと外出てるわ」
雁夜がそう言って会場(寮の食堂)から出ようとすると、どんっ。という音がした。
「あ、すんません。大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ。えっと、私2年で新聞部の黛薫子って言うんだけど、噂の男子生徒二人にインタビューしに来たの。と言うわけで受けてくれる?」
当たり障りのない話になりますけど。と言いながら雁夜はぶつかったときに黛が取り落としたと思われるボイスレコーダーとカメラを拾い、慣れた手付きで損傷の有無を調べた。
「・・・大丈夫ですね。中身はどうか分かりませんが、少なくとも大事はないでしょう」
「手慣れてるね」
中学時代新聞部でしたから。と返して雁夜は一夏の所へ行き、そのまま手近なテーブルに座らせた。
「じゃ、黛先輩、質問をどうぞ」
「うん、じゃあまずは・・・織斑君にクラス代表になった感想を聞かせて貰おうかな?」
「えっ・・・と、何というか、頑張ります」
当たり障りがないにも程があるだろうと言うような回答である。案の定黛はもっと無いの?ときいてきた。
「・・・じゃあ・・・自分、不器用ですからで」
「うわ、前時代的!っと、じゃまあ適当に捏造しておくとして、間桐君も何かコメントちょうだい」
オレッスか?とちょとだけ目を丸くした雁夜はなんとなくビシッと決めなきゃ駄目な気がしてきた。
(一夏は日本の誇る名優を引き合いに出したわけだから、オレは日本の誇る名作でいこう)
というわけで立ち上がると腰を捻り、右手を開いて顔の前へ、左手は貫手の形に揃えて顎の下に来るように。ランクEX文化宝具、俗に言う『ジョジョ立ち』と言う奴だ。高校一年生にして180センチ前後のスラリとした長身に仗助立ちがよく似合っている。
「グレートに強くなってやりますよ!」
「・・・そう言えば夏に出るゲームって買うの?」
「予約済みッス」
ふうん。と言って彼女はクラスの輪の中にいるセシリアに声をかけた。
「ああ、セシリアちゃーん!こっち来てコメント一つちょうだーい!」
「こほん。ではまず、どうして私がクラス代表を辞退したかというと、それはつまり・・・」
「ああ、長そうだからいいや。写真だけちょうだい」
「さ、最後まで聞きなさい!」
「いいよ、適当に捏造しとくから。織斑君に惚れたって言うのでどう?」
「~~~~~~~~~~!」
「気持ちは分かるが固まってないで並べ並べ。黛先輩、お願いしますね」
「はいはい、じゃあとりあえず織斑君とセシリアちゃん握手して、間桐君はその横か後ろでそれを見守る保護者的なカンジで」
う~っす。と返事をしながら雁夜手動で言われたとおりにする。
「じゃあ撮るよ~。35×51÷24は?」
「・・・2?」
3人の写真だったはずがいつの間にやらクラス全員がフレームインしていた。このパーティの間中ずっと仏頂面だった箒までフレームインして一夏と背中合わせにくっついていた。
「ちなみに答えは74.375な」
・・・・・
宴もたけなわな雰囲気から脱出した雁夜は宣言通りに夜風を浴びていた。
「新聞部か・・・いいな・・・」
ふとそんなことを考えながらどうしようかなーと呟くと少しだけぶらつく。
そんな雁夜の耳がその声を拾ったのは偶然か否か。それは誰にも判別できないことではあったが、とにかく雁夜はその声を聞いた。
「あ~もう!本校舎一階総合事務受付ってどこなのよ!?」
・・・・・
時を少し戻してIS学園正面ゲート前
「ふ~ん。ここにあいつがいるんだ・・・」
その少女は長い髪をツインテールで纏め上げ、肩には小柄な身長には不釣合いなボストンバックを下げていた。全体的に勝ち気な印象を与える少女である。
「え~と・・・受付ってどこにあるんだっけ?」
上着のポケットから1切れの紙を取り出した。それは、受付の場所が示された紙だったがポケットに入れられていたのでその紙はくしゃくしゃになってしまっていて読みにくくなってしまっていた。
「あ~もう!本校舎一階総合事務受付ってどこなのよ!?」
苛立ち紛れに叫んでみても少女のイライラは収まらない。
結局行き当たりばったり、次会った奴に聞こうと言うことにしててくてくと歩き出す。
で、3分後。
「だああ~!ダメだわ、さっぱり分かんない!ていうか誰も自主練とかしてないの!?一人ぐらい出てきなさいよ!」
ブチ切れた。それはもう見事にブチ切れた。と、夜の闇から現れる改造制服の青年。
雁夜は苦笑を一つ漏らすと、そのまま少女に近寄る。
「あいかわらずだな、
「雁夜!アンタはちょっとくらいケガ病気しなさいよ」
「どういう例えなのかはさっぱり分かんないけどよ、とりあえず受付探すんだろ?着いて来いよ」
ハンドポケットでさっさと歩いて行く雁夜。
「ったく・・・いっつもああやってぐいぐい引っ張ってくんだから・・・」
・・・・・
鈴を本校舎まで送り届けた後、自室に戻った雁夜は『バーサーカー』の手甲と肩部ユニット、そして『無毀なる湖光』を部分展開し、表面の汚れを入念に取り除いていた。
かつての相棒から託された宝具なのだ。綺麗に保ちたいと思うのが人情というものである。
数分後、ピカピカに輝く艶消しブラックに仕上がったところで雁夜はシャワーを浴びてベッドに入った。
「ふぁ~・・・。今日はいろいろあったなあ・・・」
疲れのせいかすぐに眠りに落ちていく雁夜。
そして雁夜は夢を見た。
・・・・・
放課後の誰もいない教室。
当時中学二年生だった雁夜は話があるといって鈴を呼び出していた。
「何?このシチュエーション。告白でもしようっての?」
ここ数日感じていたアンバランスな明るさに雁夜は少しだけ眉をひそめた。
「なあ、無理してないか?」
自然に口が動く。当然だ。当時は慎重に言葉を選んだ結果出てきた言葉だが、これは夢、記憶の追体験。同じ言葉が自然に飛び出して当然なのだ。
「無理って何のことよ?」
「なんとなく、だけどさ。最近店の話が出る度におまえ、やせ我慢しているような気がするんだよ」
真剣に、まっすぐに鈴の目を見て話したことを雁夜は記憶している。
「何があったのかは聞かないし、知ろうとも思わない・・・本人が言いたくないならそれでいい。けどな鈴」
何が雁夜の体を動かしたのか?今となっては定かではないが、事実として覚えていることだ。雁夜は強く鈴を抱きしめてこう言っていた。
「楽しいときは笑えばいいし泣きたいときは泣けばいい。ムカついたら怒ればいいしびっくりしたら素直に飛び上がって驚け。誰もとがめやしない。あの時泣けなかったからっぽの俺が言うのもなんだが、その空洞で、全力で、オレが受け止めてやる」
俯瞰している16歳の雁夜の意識は、その時の自分がまるで許しを請うような顔をしていたことを知った。
・・・・・
「・・・嫌な朝だ」
目覚めの第一声から遠慮無しの嘆息である。
しかし今の雁夜は一人暮らしの身の上。
その呟きは誰に聞かれるでもなく、ただ雁夜自身の聴覚にすとんと落ちていった。
「まさかあの時あんな顔だったとはな・・・鈴にはしられてないよな?」
・・・罪。そう、罪なのだろう。
好きだった人の首を絞めた。救いたいと思った少女一人救えなかった。何の因果か訪れたやり直しの世界では死んだ両親を前に涙すら流せない。
ならこの嫌な目覚めは罰なのだろう。
この嫌な感じを一生背負っていくのがサガという物なのだろう。
「ちっっっっっっくしょう!」
慟哭は誰かに向ける物ではない。
ただただそんな自分に嫌気がさした。
それだけだった。
・・・・・
雁夜が教室に足を踏み入れたとき、なにやらクラスメイトたちが騒いでいた。
「よっす。なんかあったのか?」
叫んで少しだけ気分が晴れたらしい。雁夜の顔は普通より少しだけ大人びた高校生のものになっていた。
「あ、間桐君おはよう。なんか2組に転校生が来たらしいよ?」
「転校生?こんな時期にか?」
「一夏、突然後ろから現れるのはヤメロ」
掛け値無しに3拍休んだから。と言って青ざめた顔で一夏を睨む。
「そうみたい。珍しいよね、なんでも中国の代表候補生みたいだよ」
「ふぅん。で、雁夜、おまえはなんでそんなに落ち着いてるんだ?」
「知ってたから」
しっかりこの環境に順応した雁夜である。しれっと言い捨てて一夏に別の話を振った。
「で、対抗戦のほうは大丈夫なのか?」
「う゛・・・それをいってくれるな・・・」
ああ、だめそうだ。雁夜の頭をかすめたのはそんな諦観というかツッコミというか、まあ、そんな物だ。と、一人の女子(岸波さんだ・・・と、記憶している。ちょっと天然ボケが入っているが、しっかりした人だ・・・と、記憶している。彼女もエクストラCCCが好きで、確か彼女の使用サーヴァントはアーチャーだ・・・と、記憶している。)が大丈夫だよ。と話に入ってきた。
「なんで?」
「だって、専用機持ちは一組と四組だけでしょ?それに代表候補生だってコーチやってくれてるんだし、訓練機相手なら性能差で押し切れるんじゃない?」
ガラッ!
「その情報古いよっ!!」
ああ、やっぱきたか。という顔で雁夜はドアのほうを見る。
しかし彼女がいることを知らなかった一夏は目を丸くして質問するのみ。
「鈴・・・?お前鈴か!?」
「そう!中国代表候補生凰鈴音!今日は宣戦布告に来たってわけ!」
「ってことは何だ?元々の代表に代表の座を譲らせたってとこか?まあオレが闘うわけじゃないけどさ」
やはり落ち着いた様子の雁夜である。それが疑問なのはどうやら一夏だけではないようで、
「雁夜、何故そんなに落ち着いている?」
「そうですわ。何というか、その・・・今のにびっくりしないのがちょっと不思議でして」
箒とセシリアだ。二人の質問に応じて雁夜は昨夜鈴を受付まで送ったことを話す。
「まあそれはいいし、無事に手続きをすませたのは何よりだけどよ、早く2組戻れ。先生
「さっさと自分のクラスにもどれ馬鹿者」遅かったか」
スパァァァァン!
雁夜の忠告も時既に遅し。鈴の後ろから勢いよく出席簿が振り下ろされた。
「痛ーーーー!誰よいきなり!?」
「私だ馬鹿者」
スパァァァァン!
帽子被った海洋冒険家の本気の一撃でもここまで澄んだ音は出せないであろう出席簿アタックが再び炸裂。そんなことをするのは決まっている。
「ち、千冬さん・・・」
「織斑先生だ馬鹿者。さっさと自分のクラスに戻れ」
「は、はい・・・2人ともまた来るから逃げないでよ!」
「さっさと戻れ」
千冬に追い出される形で鈴は自分のクラスに戻っていった。
「あいつ・・いつの間に国家代表候補生になったんだ?」
呟く一夏。と、まあ転校生、しかも女子と知り合いの男子と来ては質問攻めは免れない。箒とセシリアを筆頭に質問が矢継ぎ早に浴びせられる。
「おい、一夏。あいつは誰だ?やたら親しそうだったが・・・」
「い、一夏さん!?一体あの方とどういう関係なのですか!?」
ドゴバゴドゴバゴ!
「さっさとお前らも席に戻れ!SHRを始めるぞ!」
某有名RPGの全体攻撃のように鮮やかに無駄のない出席簿アタックが降り注ぎ、全員が頭を押さえながら席に戻っていった。
(うん、見事な全体攻撃だ。しかもクリティカル率100%とかチートすぎだろ)
「何を考えている」
スパン!
・・・・・
「お前のせいだ!!」
「貴方のせいですわ!
「なんでだよ・・・」
一夏は箒が怒っている理由が解らなかった。箒とセシリアは授業中一夏と鈴の関係が気になり、まったく授業に集中できていなかった。そのせいで、山田先生から5回注意を受け、千冬の出席簿アタックを3回も受けていた。
「まあ何にせよ腹も減ったしメシ食いに行こうぜ」
と、雁夜の無難な提案である。とうぜん
「そうだな。二人はどうするんだ?」
「お、お前がそういうなら・・・」
「ご、ご一緒させて頂きますわ」
そう言って4人で学食へ向かった。
「待ってたわよ、あんたら!」
学食へ向かったら案の定鈴がラーメンを持って待っていた。
「悪いけどちょっとそこどいてくれるか?食券出せねえよ。あと麺伸びるぞ」
雁夜が注意するとちょっと「うっ。」という顔になった後
「わ、わかってるわよ・・・」
と言って鈴は渋々その場を動いた。そして、全員が食事を買うとちょうどいい6人掛けのテーブルに腰を下ろした。そのテーブルの周りには何故かクラスメイトが多数見受けられた。
「いつ戻ってきたんだ?驚いたぞ」
「ほんの2日前よ。中国に戻った後、すぐに代表候補生になったのよ。私こそ驚いたわよ、あんたらがIS動かしたってニュースで見たときは」
「ああ、あれは・・・」
「コイツがバカだからだ」
受験会場を間違えるのがバカ以外の何だってんだ?と続けると鈴は
「雁夜、アンタも苦労人ね」
と、しんみりと呟いた。と、箒が我慢できないといった様子で一夏の前に来た。
「一夏、そろそろこいつとの関係を聞かせてもらいたいのだが?まさか、こいつとつ、つ、付き合っているのか!?」
「違うわよ」
「ああ、鈴とはただの幼馴染だよ」
「幼馴染?私は知らないぞ!?」
「箒とは入れ違いに転校してきたんだよ。箒が転校したのが小学4年の終わりだろ?鈴は小学5年の頭に中国から転校してきたんだよ」
一夏の解説超の長台詞に続けて雁夜がおどけたように分かったか?と聞くと箒は頷いて自分の椅子に戻った。
「一夏、こいつ誰?」
「篠ノ之箒だよ。話したことあるだろ?俺が昔通っていた剣道場の先生の娘だよ」
「そう・・・初めまして、篠ノ之さん。凰鈴音よ、鈴って呼んで(安心して、私はアンタの敵じゃない)」
「篠ノ之箒だ。私のことも箒でいいぞ(なるほど、おまえとはうまい茶が飲めそうだ)」
「で、何?どっちがクラス代表になったの?」
一夏と雁夜の顔を見比べて鈴が質問すると、雁夜はすぐに一夏を指さして
「これ」
こともあろうに対物の指示代名詞である。せめてコイツにすべきだろうというのは誰もが思うことだったが、それは置いておくとして。
「ホントはこのセシリアが勝ったんだけどな。辞退して一夏にお鉢が回ってきたってことだ」
「アンタも闘ったんでしょ?」
聞かれたとたん、雁夜の表情がバツの悪そうな物に変わる。
「あ~、その、だな・・・『バーサーカー』、燃費クソ悪いんだわ。武装全部が常時エネルギー消費タイプだから。テスト兼ねて全部使ったら15分で電池切れってわけ」
「ふうん、で、この金ドリルが?」
きっ、金ドリル!?よろめくセシリア。
「ま、まさかこのイギリス代表候補生、セシリア・オルコットを知らないというのですか!?」
「うん、アタシ自分の国以外基本的に興味ないし」
「な、な、な・・・」
会話のボルテージがどんどんどんどん上がっていく。スティール・○ール・ランの終盤ぐらいハイ・ヴォルテージだ。それを涼しい顔で見ながら雁夜は一つ、鰻玉丼(税込み350円ナリ。わりに腹持ちがいいので雁夜的にかなり重宝しているお気に入りメニュー)を食べた後のちょっとだけ脂っぽい息をついてから席を立ち、
「お先に失礼っと。次織斑先生の授業だから遅れるとやばいぜ?」
と、後ろで息を呑む気配に少しだけやっちゃった感を抱いたまま、教室に戻った。
・・・・・
人は言う。
便利になれば超絶は非効率に取って代わられる。
魔術的加工によって人が冬の寒さに耐えられるだけの防寒グッズをしつらえる間にホッカイロお徳用10パック税込み400円ナリを買ってきた方が値段も時間も無駄がないといった具合に。
かつて日本刀こそ最強の武器と言われたこともあるが、侍は新政府軍の当時の日本的に最新鋭の武装によって敗れ去ったとおり、銃は剣よりも強しという図式のほうが現代においてより深く浸透している。
それ以前に、キュプリオトの剣が
だからこの状況もある種必然と言えた。すなわち・・・
「ぎゃああああっ!!!」
一夏vsセシリア、現在の所0勝5敗。ついでに今回で黒星もう一つ追加。0勝6敗である。
「いつもの如く蜂の巣だったな~、ちょっとトレーニング見に来たけど、やっぱ射撃兵装ないのはきついだろ?」
ピットでクー○ッシュをすすりながら呟く雁夜であるが、射撃兵装がないのは同じである。しかしまあ雁夜の場合はとりあえず一度地に足を付ければ瞬時に『活歩』の歩法で懐に入ることが出来るので戦績はさほど悪くはない。
現状の戦績を上げるとこんなカンジである。
一夏
VSセシリア 0勝6敗
VS箒 2勝3敗
VS雁夜 0勝5敗
雁夜
VSセシリア 3勝2敗
VS箒 4勝1敗
箒
VSセシリア 1勝4敗
現状いつものメンバーでもっとも勝率が高いのは全員に勝ち越している雁夜である。
しかしながら、クラス代表は勝率最低の一夏で、クラス対抗戦の初戦の相手は中国の代表候補生であるところの鈴。
はっきりいって絶望的なのだった。
・・・・・
「さて、いよいよクラス対抗戦が始まるわけだが、箒、セシリア、この試合、どう見る?」
ピットで腕組みをした雁夜が対峙する鈴と一夏を見据えたまま二人に質問した。
「中国製最新鋭機
「さあな・・・とりあえず、覚え立ての瞬時加速の使い方が勝負を決めるのではないか?…っと。始まるぞ」
箒の言葉に、意識を少しだけそちらに集中させる。
一夏が専用機、『白式』の近接ブレード『雪片弐型』を振るい、同じく鈴も青竜刀で両刃の薙刀を作ったような形状の武装、『双天牙月』を振るって受け止める。
「へぇ・・・随分動きが戻ってきたじゃないか」
「ああ、以前同様・・・とは行かないまでも2割方復活していると言ったところだろう」
幼馴染みコンビのコメントが終わるのと同じタイミングで距離をとろうとした一夏が何もない所からの拳打を受けたような吹っ飛びかたをした。
「なんだアレは?」
箒の呟きにセシリアは一度視線をやり、すぐに説明してくれる。
「『衝撃砲』ですわね。空間自体に圧力をかけて砲身を生成、余剰で生じる衝撃それ自体を砲弾化して打ち出す・・・ブルー・ティアーズと同じ第三世代型兵器ですわ」
「なるほど、日本人的に言えば某格闘漫画の気合い砲みたいなモンか」
セシリアの説明も雁夜の相槌も耳に入らない様子で、箒はモニターにジッと見入っていた。
(『雪片弐型』の届く距離まで接近して『零落白夜』で一気に堕とす・・・バリアー無効化による極大ダメージしか一夏に勝利は望めないか・・・)
そう考えて雁夜が目をすがめたときだ。
「・・・決めに行くか・・・」
「の、ようですわね」
(一夏・・・)
モニターの中の一夏がグン!と加速し、一直線に鈴に向かっていく。
「
「ここで使うか!」
「行けっ!」
セシリア、雁夜、箒の順だ。『雪片弐型』の刀身がスライドし、白く輝くエネルギーの刃が現れる。バリアー無効化の効果を持つロイヤルストレートフラッシュレベルの博打技、『零落白夜』。それが決まると見えた刹那、アリーナの遮断シールドを突破した何かがステージ中央に激突し、巨大な衝撃を走らせた。
「全身装甲・・・」
「なんだアレは!?」
「覇気が感じられない・・・無人機か?」
アリーナの遮断シールドを突破した異形の何者か。それが一夏達に左腕を向け、ビームを放つ。
「これはもう試合なんてモンじゃないな・・・」
戦争だ。誰にともなく発された雁夜の呟きは喧噪に溶け、誰の耳にも届かなかった。
・・・・・
遮断シールド、レベル4。
現状、一夏と鈴の形勢は極めて不利。
敵戦力、無人機とおぼしき敵機、1。兵装はビームのみと思われるが装甲強度を利用した格闘戦、並びに回転しながらのランダム射撃は注意が必要である・・・
雁夜はそこまでで思考を中断した。
考えるだけ無駄だ。『騎士は徒手にて死せず』の特異性を完全に発揮すれば遮断シールド如き、ものの25秒や30秒で突破できる。
自室の窓に掛かったカーテンを開けるようなものなのだから。
「先生!私にIS使用許可を!すぐに出撃できますわ!」
セシリアの声に雁夜は少しだけ眉を上げ、
「無理だ。『バーサーカー』のセンサーはシールドのレベルが4に設定されていて、その上ドアも全てロックされるって状況を確認してる」
と答えた。
「!?それはあのISの仕業ですの!?」
「そのようだ、これでは避難することも救援に向かうことも出来ないな」
これは雁夜ではなく千冬。表面上は落ち着いているような口調だが、指先が気忙しくブック型情報端末を叩いている。
「で、でしたら!緊急事態として政府に助勢を・・・」
「やっている。現在も3年の精鋭がシステムクラックを実行中だ。遮断シールドを解除できれば、すぐに武隊を突入させる」
今度は千冬の眉もピクリとはねた。それが危険信号と理解したらしい。待っていることしかできないのですねと嘆息し、セシリアはベンチに座った。と、そのセシリアがすぐに辺りをきょろきょろと見回して山田先生と千冬、そして雁夜という今この場にいる3人に問いかけた。
「そう言えば、篠ノ之さんはどちらへ?」
それを聞いた瞬間、気難しげにひそめられていた雁夜の左眉がピクリと跳ね上がった。
「・・・ちっ。あの馬鹿・・・!」
無茶苦茶だ。と吐き捨てて『バーサーカー』を起動させた雁夜は遮断シールドにその籠手を叩き付けた。
「先生、時間がない。オレも参戦させて貰いますよ」
一方的に宣言し、雁夜は『騎士は徒手にて死せず』起動時の特徴である黒いオーラでじわじわと遮断シールドを侵食し始めた。
その間にも一夏の斬撃が人間には不可能な挙動を以て躱される様がモニターに映る。
「あの動き、間違いなく無人機か・・・」
そう呟く雁夜。彼の身長は170㎝弱。黒く侵食された部分は今のところ高さ150㎝程。
後もう一息。というタイミング。そこでアリーナ中に箒の叫びが響いた。
<男なら・・・男なら、そのくらいの敵に勝てなくてなんとする!>
「あンの馬鹿野郎が!」
最後の20㎝。侵食を待たずして雁夜はガラスを破るように動いた。
(『無毀なる湖光』展開、エネルギーの60%を推進系に)
中継室。箒と彼女にキツい一撃を貰って伸びているらしい審判&ナレーター。そちらを向くレーザー砲。瞬時加速の体勢に入る一夏。全てが鮮明に、スローに映る。
「『活歩』!」
赤いレーザーの光。中継室と砲口の間にギリギリで割り込むことが出来た雁夜は『無毀なる湖光』の美しい刀身を盾にそれを受けた。
「雁夜!」
盾があるとは言え、自らレーザーを喰らった雁夜の姿が爆煙に隠れるのを見た鈴がおもわず叫び声を上げた。
「間に合わなかったか!?」
敵の右腕を持って行った一夏が断面を見て機械だと認識し、次に視線を煙に向ける。
と、煙の向こうから微かな声が聞こえてきた。何かを宣言するような、力強く静かな声。
「朝の迷いはたった今吹っ切れた・・・今目の前にいる大切な人を守る・・・オレは・・・」
薄れていく煙の向こうに突きの構えをとる影が見えた。続く宣言は処刑宣告や否や?
「『
宣言するは些かの曇りも刃毀れもない、人ならざるものの鍛えし刃。其は湖の騎士の真なる宝剣。
煙を断ち割り、左胸を一突き。続けてそれを引き上げて左腕を落とし、大上段に振りかぶる。後は一気にそれを・・・
「『
振り下ろすのみ!
頭部から中心線上を一直線に断ち割られた無人機は最後そのカメラアイに疲弊した様相の雁夜を写し、機能を停止させた。
・・・・・
「う・・・づ・・・」
全身を走る鈍痛にうめき声を上げ、雁夜は目を覚ました。
「・・・保健室・・・?」
と、様子を見に来てくれたらしい山田先生がいた。
「ああ、気が付いたんですね」
雁夜をいたわりながらベッドの隣に椅子を持ってきて腰掛ける。どうやら仕事が一段落した休憩も兼ねているらしい。
「ええ、一応・・・」
「致命傷は何もありませんし、後遺症が残るようなケガもありません。全身に軽い打撲の症状がありますが、織斑君から聞いたあなたの快復力なら一晩で元通りでしょう」
そうですか。と答えた雁夜は一つ息をついて山田先生に続きを促す。
「遮断シールドを撃ち抜くようなレーザーを受けてもそれで済んだんですから大した物です、でも間桐君?あんな無茶は今後慎んで下さいね」
普段は童顔のせいで少々頼りなげな印象を抱いてしまう山田先生だが、こういう時は教師然とした顔を見せる。善処しますとだけ返して雁夜は嘆息した。
「『無毀なる湖光』は保ってもオレは全身打撲ですか・・・」
「というか剣でレーザーを受けるなんて無茶ですよ!もし主武装の剣が砕けたらどうするつもりだったんですか?」
「その心配は皆無ですよ。先生。部分展開、『無毀なる湖光』」
手元に呼び出された『無毀なる湖光』はまるで一度も使われていないふうにすら見える美しい刀身をしていた。
「確かにそうみたいですけど・・・なんでこれを予測できたんですか?」
予測してなきゃあんなことはできません。と続けて山田先生は『無毀なる湖光』の美術品のような美しさに一つ感嘆の息を漏らした。
「先生、『無毀なる湖光』というのはそもそもがアーサー王伝説にまで由来を遡る宝剣なんですよ?サー・ランスロット、知ってますか?」
「ええ、湖の騎士、完璧なる騎士と呼ばれていたが、王妃ギネヴィアとの不義により円卓を追われ、裏切りの騎士としてその汚名をも後世に残してしまった悲劇の英雄・・・ですよね?」
「はい、そのランスロットが振るったとされる剣こそが『無毀なる湖光』、人ならざる者によって鍛えられた、決して刃毀れしない無窮の剣です。そしてそれを由来に持っている、この無窮の剣の名を冠している以上、寧ろアレは最低限度の耐久性です」
と、雁夜が話し終えてすぐに山田先生が立ち上がった。
「じゃあ、そろそろ仕事に戻りますけど、くれぐれも無理はしないで下さいね」
「出来る限りは」
山田先生が出て行った後、雁夜は少しだけ思案してから、無理せずもう一眠りしてから部屋に戻ろう。と、そう考えた。
・・・・・
「スゥ・・・スゥ・・・」
意識が戻りかけた、体は動かないけど周囲の状況が曖昧に把握できる状態というものが人には存在する。
夢と現実の間で雁夜はその音を聞いた。
(足音・・・誰か来たのか・・・)
「雁夜・・・」
(鈴・・・?)
「なんであんな無茶すんのよ・・・」
(・・・・・)
「ホントに心配したんだからね・・・」
うすぼんやりとした世界でその声だけははっきりと聞こえている。
「なんていうか・・・うん、アタシはアンタのことが好きなの。」
(・・・・・)
返事はできない。体はまどろみの中。ただ意識だけが覚醒している。
「だからさ」
一瞬。雁夜は暖かいものが自分の唇に触れたのを感じた。
「あんな死にそうな真似、もうやめなさいよ」
それだけ言って、恥ずかしくなったらしく、さっさと保健室を出て行く鈴。
「・・・現実・・・?」
不思議なバランスで夢と現実がミックスされた心が今の出来事を認識する。
「オレなんかでいいのか・・・?」
雁夜は、ずっと揺れていた。
・・・・・
IS学園には生徒の知らない地下室がある。
その部屋の中央には『鉄の巨人の残骸』が横たわっていた。
かろうじて人型を保ってはいるが、両腕を失い、上半身も真っ二つに切り裂かれてみる影もない。
「やはり、無人機でした。コアも未登録のコアです」
山田先生は解析結果を千冬に告げた。
雁夜の歩法による加速を乗せた連撃を浴びてコアが無事だったのは奇跡に等しい。
「そうか……」
何かを思案しているかのような溜息をもらしつつ返答する千冬。
それを意に介さない様子で説明を山田先生は続ける。
「ISのコアは全部で467個しかないはずなんですけど。このコアはそのどれにも当てはまらないコアが使用されていました。一体……」
「…………」
黙り込む二人。未確認のコア、所属不明のIS。不可解な事が二つ、まるで鎖のように絡み合う。
答えは、出なかった。
切りどころがわからずにこのままになってしまった・・・ちなみにランクEX云々は完全に俺の感覚。あと俺PS3持ってないから買えんかった・・・いろいろ酷評されてるけどやってみたいのに|||or2