IS/stay scape   作:昆布さん

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と、言うわけで。実際のところどうかはともかく、オレの捉え方による判断の下、ネロとロアを倒したふたりなのでした。
では、本編をどうぞ。


act38 密談

目が覚めると、そこはベッドの上だった。

「・・・切嗣ー、起きてるかー?」

「・・・ああ、起きている」

声が帰ってきたので、雁夜は少しだけ声のボリュームを落として訊く。

「何があった?」

「二十七祖とやり合った。君に『混沌』を任せてた。ついでに、僕は別で『アカシャの蛇』と戦った」

夢だけど夢じゃなかった・・・。「だ~っ」と、雁夜はジブリ的な台詞を吐いて起こした半身をベッドにもたせかける。

「ふざけた冗談だぜ・・・オレ達があんな化け物連中とカチ合うとかよ。アレ『転輪する勝利の剣』が無かったら絶対電脳死してたって」

「・・・同感だな。ロアが生きた人間の魂を乗っ取る死徒でよかったよ・・・でなきゃ起源弾でも殺せなかったかも・・・」

やがて、二人の声が途切れ、しばらくしてから同時にため息をついた。

「まあ、『プライミッツ・マーダー』とか、『ORT』とかが出て来なかっただけよかったよな」

「・・・『混沌』と『アカシャの蛇』は情報がハッキリしすぎてたんだよ・・・だから恐怖の対象としてあの2つが具現化されていたんだ・・・多分」

と、切嗣はもう一つため息をつくが、雁夜の恐ろしいもののリストアップはまだ続く。

「『アインナッシュ』とか、『朱い月』とか・・・あと『タタリ』とか・・・おおざっぱな情報だけでよかったぜホント・・・」

一体どんなバケモノ連中なのか・・・詳しくは知らないからイメージは出来なかったが、もう少しでも能力を知っていたら手の付け所すらなかっただろう。

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

はあ。と、二人は再び嘆息した。

 

・・・・・

 

「・・・女性がこんなに食べていいものなのでしょうかねえ?」

半眼の狭間は、目の前の一人不思議の国のアリスを見て、そう嘆息した。

「ん~?いいんだよ、頭使うから」

そう言う一人不思議の国のアリスにはあ。とだけ返して狭間はテーブルに肘をつき、手を組んでそこに顎を乗せる。

「それで、束博士。私どもからのおもてなし、気に入って頂けましたか?」

「んー?そうだねー。そこの睡眠薬入りのスープ以外はね~」

「そう言いながらそれを飲みますか・・・」

束のそんな様子に軽く頬を引き攣らせつつも、狭間は彼女をレストランへ呼び出した用件に手を付ける。

「それで博士、あの話は考えて頂けましたか?」

「どの話ー?」

「私ども『亡国機業』にコアごと新造ISを提供して欲しいという話でしたけど・・・やっぱり駄目ですか?」

「うんやだ。めんどくさい」

即答だった。考える間も挟まないで、コンマ1秒で斬り捨てた。

「そこをなんとか・・・こっちも仕事なんです、頼みますよ・・・あと、骨まで囓ったら歯、欠けますよ?」

「お断りするし、私の歯は丈夫だから平気だよ。あー、それからケーキちょーだーい。あとね、ハンバーグとカレーと冷やし中華」

ここに書いてあるヤツ片っ端から持ってこい!とでも言わんばかりに束は怒濤の勢いで注文する。そんな様子に狭間はため息を1つ漏らすと、

「どうしても駄目なら彼女をバラせと、上から言われているんですけどねえ」

そう言って狭間が後ろを示す。そこから現れたのはオータムと、彼女に拘束された銀髪の少女。どこかラウラに似たその少女を殺す。と、狭間は、否、狭間の言を信じるなら今回彼にこの会談を依頼してきたスコールは言っているのだ。

「・・・せ」

「へ?」

「離せ」

刹那。束はテーブルに出ていたナイフとフォークのほぼ全てを狭間に向けて投擲する。それと同時。狭間がナイフを一本手にとってそれを全て捌く。

「ってどわあっ!?帽子帽子・・・」

飛来する凶器を全て防いだ狭間のソフト帽を踏みつけて束は跳躍、一気にオータムの懐へ躍り込む。

「ッ!なん――」

慌ててナイフを振るうが遅い。その手首を掴み、紙くずのように折り曲げてその切っ先を右肺に刺す。

「・・・ふうん?束さんについてくるんだ?」

「はあ。こちとら非合法なんで人員も少ないんですよ。ここで減るのは勘弁でしてね」

刺そうとしたところで、その手を狭間に払いのけられた。だが、束の目的であったところの少女の奪還は達成。

「くーちゃん、大丈夫かにゃー?」

などと気の抜けた声で少女、クロエ・クロニクルに問いかけ、素手で拘束を引き千切る。

「あのねえ、私って天才天才言われてるけどね、それって思考や知能だけじゃなくて、肉体も細胞単位でオーバースペックだからなんだよ?」

つ。と。狭間の頬を冷や汗が伝う。

(完全に誤算でしたね・・・これじゃあ私の勝ちは揺るがない(・・・・・・・・・・)にしても、こっちも重症じゃないですか!)

狭間自身、生身でISを完全に押さえ込めるだけの能力があるので、細胞単位でオーバースペックという言葉には納得できる。しかしそれと今回の事情は全く別問題だ。最終手段の力業も、これでは利回りがないとしか言いようがない。

「ちーちゃんぐらいなのさ。私に生身で挑めるのはね・・・っていうかそのはずだったんだけど、うん、君、なかなか面白いねー」

「へ?私・・・ですか?」

長めの前髪に隠れた目を瞬かせて狭間は気の抜けた声を漏らす。

「そうだねえ、君か、そこに隠れてる子の専用機なら作ってあげてもいいよ♪」

「気付いてたんですか・・・」

肩が落ちる。何とも言えない脱力感に苛まれて、狭間はまた気の抜けた声で

「・・・出てきなさい」

と束の向こうに向かって言う。その声に応じて現れたのはやはりというべきか、エムこと織斑マドカだった。

「・・・アハッ、アハハハハッ!誰かいるとは分かってたけど、これは予想外だよ!ッははははは!」

その顔を見て、その千冬を幼くしたような顔を見て爆笑する束に、狭間は再び顔を引き攣らせる。

「はははっ、ねえ、二人はなんていうの?」

「・・・は、狭間です。狭間照美。こっちは織斑マドカ・・・でよかったですか?エムって呼んだ方が良かったですかねえ?」

「わ、私に振るな!」

今だ放心中のオータムは別として、その場の空気は今、完全に束に支配されている。それにはなかなか感情を表に出さず、出してもそれは狂気的な笑みというマドカすらこの有様だった。

「じゃあ機体の話はおいといて、みんないっしょにご飯を食べよう!いっぱい食べないとまどっちもくーちゃんも大きくなれないし、てるみんも細っちょろいままだよ?」

「・・・無駄がないと言って下さいよ」

ふくよかな胸を揺らしてそう言う束に、がっくりと肩を落とすしかない狭間なのだった。

 

・・・・・

 

「雁夜、話いい?」

「ああ、いいけど」

いつになく歯切れの悪い鈴の様子に内心怪訝そうに眉を寄せつつ、精神体が接触したのだからと話の内容に当たりを付けて雁夜は校舎の屋上に出た。

そろそろ風が冷たくなってきている。夕日に赤く染まる雁夜達に吹き付ける、切り裂くような風は冷たく、冬が近付いていることを確かに感じさせた。

「で、話って?」

「あれ、アンタの記憶?」

「見たのか・・・電脳ダイブの時だろ?」

うん。と頷く鈴に、雁夜はああ。と頷きを返す。

「雁夜は今、あれについてどう思ってるのか聞かせて」

しばらく言葉を探すように視線をさまよわせ、それから雁夜は口を開く。

「正直、最初は後悔してた。あれを繰り返すのが嫌で、あれを否定したくて、剣術や八極拳を必死で身につけて・・・逃げるのが嫌とか言いながら、俺は自分の前世から逃げてたようなモンだった」

「だった?今は違うってワケ?」

ああ。と答えて雁夜は鈴をまっすぐに見つめる。

「悪かろうが何だろうが、それも全部オレだからな・・・受け入れて前に進もうと思ったのが、ほんの少し前。鈴にどやされたときだ」

「それまでは逃げたくないとか言って逃げてたのね?」

それを聞いて苦笑する雁夜。

「耳が痛いな・・・けどさ、吹っ切って、受け入れて前に進もうと思ったのは鈴のおかげなんだ。お前がいたから、護りたいヤツがいるからオレは嫌な過去も全部力に変えようと思ったんだ・・・・・・・・・何から何まで世話になりっぱなしでさ。けど、スッゲー感謝してる。ありきたりだけどさ・・・ありがとう、鈴」

「~~~~~~~~~~!」

まっすぐそう言われて、鈴の顔はみるみる赤くなっていく。

「じゃっ!じじじじゃあ、さささ寒いしそろそろ戻るか」

「そっ、そそそそそうね!」

らしくもなくクサい台詞を吐いたと気づき、雁夜も真っ赤な顔で鈴に校舎に戻るように促す。二人ともしどろもどろで、しかし歩調はピッタリ揃って、夕日を受けて階段に映る影は1つに寄り添っていた。

 

・・・・・

 

尋ねたら答えてくれた。

切嗣自身から聞いた記憶の大半は、学年別個人トーナメントの時の不思議な世界で漠然と見ている。しかし今回電脳ダイブ中に見た物はハッキリしたもので、人物像までよく分かる。だからラウラは1つだけこう問うた。

「切嗣は・・・私にアイリスフィールを重ねて見ているのか?」

銀の長髪に赤い瞳。白い肌を持った作られし命。両者の特徴はあまりにも似すぎている。そして切嗣はその問いに言っていいものか。と考え込む。ラウラの胸の内に去来する言いようのない悲しみ。やがて切嗣は意を決したように口を開いた。

「・・・最初の内は」

それを聞いてラウラは足下が崩れるような錯覚を覚えた。不安に思ってこそいたが、改めて言われるとやはり愕然とする。

「でもすぐにその見方はなくなったよ」

安心させるように優しく抱き留め、切嗣は続きの言葉を紡いでいく。

「いっしょに買い物に行くころにはもう、そんな見方はしなくなった。君は君だ。言い聞かせなくてもそう思えるようになったんだ。重ねることはとっくの昔にやめている、今の僕は君をただ一人の女性としてみているんだ」

切嗣の言葉が、込められた熱が、そして回された腕から伝わる暖かさがラウラに安心感を与えていく。

「アイリもイリヤも関係ない。僕はただ一人の衛宮切嗣として、ただ一人のラウラ・ボーデヴィッヒを愛している。今はただ、それだけだ」

「きり・・・つぐ・・・」

「あの日の誓いを今、ここで果たそう。僕、衛宮切嗣はラウラ・ボーデヴィッヒを嫁にする。異論は認めない」

「ぁ・・・」

以前は逆だった。ラウラが切嗣に嫁宣言を行ったときのように、今度は切嗣が宣言し、唇を重ねる。

言い尽くせないような幸福感で、ラウラの胸の中はいっぱいになっていた。

 




人食い林に究極の一、現象、人間に対する絶対殺害権利、直死でも殺せない地球外生命体・・・カリギリコンビだけで勝てるわけがないという言葉を∞回言っていい・・・(T_T)
あと、メルブラに出演しているのでモーションがイメージしやすいのがネロ&ネロアの登場の特に大きな理由でした。
あと、雁夜の台詞はちょっとP4を意識して作りました。
では次回、act39 血を呑む尾呑蛇~ウロボロス~でお会いしましょう。最後の敵キャラもここで登場!ダカダカしながらお待ち下さい。
ちゃおちゃおー。
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