しかし描いていて思ったけど、協調性ねえなこいつら・・・組織というか小隊というか・・・そういう意味では人選ミスだな、これ。
では、本編をどうぞ。
act40 強襲『亡国機業』
最近雁夜の眉間に皺が入ることが多くなった。
もうじき12月。寒さに耐えるために力が入っているから・・・ではない。それは鈴にも一夏にも、そして同じような表情で結界の点検をしている切嗣にもよく分かっていることだった。
近々何か大変な事が起こる。そんな予感がするのだ。
そして、これは鈴しか知らないことなのだが、今の体の、両親を亡くした事故以前の記憶が、ぼんやりと蘇りかけているのだ。
もっとも、雁夜が言うには、たかだか六年分の未成熟な自我が10年分に敵うわけもないから、多少の変化こそあれ、あまり性格に変化は起こらないらしい。
「で、どんな調子なのよ」
「・・・記憶のことか?」
頷く鈴にそうだな・・・と顎に手をやって雁夜は答える。
「・・・だいたい戻ってるかな。物心ついてからの親の顔とかさ、そう言うのは真っ先に思い出せたけど、何か余計に寂しかったぜ」
いなくなった人の面影を思うのは寂しいものだ。言外にその思いをにじませる雁夜に腕を絡め、鈴は普段よりも優しい口調で
「まあ頑張ればいいことあるし、大丈夫でしょ」
と言って食堂へ行こう。と雁夜を引き摺って歩き出した。
しかし、と引き摺られながら雁夜は顎に手をやって考える。
(あの剣みたいなの・・・何だっけ?)
両親を喪った事故。あれは確かアスファルトに突き刺さった剣のようなものが原因だったはずだ。蘇りかけた記憶がそう主張する。しかし、それをどこかで見たことがあるような気がする。雁夜は去来する疑問に首を傾げた。
・・・・・
その瞬間だった。
「――ッ!――」
アリーナの更衣室で、一夏は嫌な予感に背筋を凍らせ、
「・・・何か来る!」
ラウラといっしょに購買のパンを見ていた切嗣は弾かれたように身を翻し、
「・・・奴らか?」
「恐らくは」
千冬と楯無は目を細め、
「結界に反応!来ると思ってたぜ、『亡国機業』!」
雁夜は魔術回路を励起させた。
・・・・・
「おぉっとォ!やー、危ない危ない。もうちょっとで昆虫に採集されるところでしたねえ」
襲い来る蟲の全てをダガーナイフで串刺しにした狭間は、木の枝に着地してくつくつと笑った。
「・・・軽い男だ」
冷淡に言う綺礼に狭間は心外だ。と言う顔をして反論する。
「それよォ、何もしなかった神父様にゃあ謂われたかねえンだけど」
「それは済まなかったな、生憎と私があれを潰せば貴様も被害を受けかねんのでな」
襲い掛かる甲殻類に対して綺礼が攻撃すれば、なるほど確かに破片が飛び散って散弾のように狭間とマドカを襲うだろう。
素手ならば衝撃で弾け飛び、黒鍵であれば鉄甲作用で砕け散る。
「ままならないものだな・・・強力であるが故に行動しづらくなるとは」
「・・・テメエがそれを言うかよ、叢雲」
虚空より姿を現した叢雲に心底嫌そうな目を向ける狭間。
「否定はしないな。私はただ、自衛隊の愚かな上層部に電光機関の有用性を示すことが出来ればそれで良いのだ」
「ハッ!なんて協調性のないパーティーなんだか」
心底うんざりする。とでも言うように唇を曲げて狭間はコートの裾を翻す。
「じゃ、まあテメエらは好き勝手やってろよ。俺は俺で好きにやるからよ」
そう言って受け取ったばかりの『終わらない欲望』を起動させ、『ウロボロス』を射出、木々の間に消えていった。ついで
「織斑一夏…今度こそ…!」
と、マドカが『サイレント・ゼフィルス』を起動させ、どこかへ飛んでいく。
「…では、私も行かせてもらうぞ」
「好きにするが良い。私は止めんよ」
「では、先に失礼させて貰おう。電光迷彩、起動!」
叢雲の声に応じて電光服が反応、光学迷彩を起動させて叢雲の姿を掻き消した。
そしてしばしその場に佇んでいた綺礼はやがて、
「・・・10年ぶりか・・・間桐雁夜は。しかしまずは衛宮切嗣だな」
そう呟き、無造作に黒鍵を放って視虫を仕留めると、その長身を影の中へとくらませた。
・・・・・
視界の端で緑色の光が揺らめく。
それを見て取るや、雁夜はその直線軌道上にいた鈴を突き飛ばした。
「あぐぁッ!」
「雁夜!」
光の中から飛来した蛇頭の鎖。それが撃ちぬいたのは、奇しくもマドカの銃弾と同じ、左手の平だった。
「おやおや、これはラッキー。早くも一人戦闘能力が激減してしまったようですねえ」
現れた男の顔はうつむき気味で、ソフト帽の鍔で隠されている。
ただ、大部分が隠された顔の中で、ニンマリとつり上がった口元が蛇のような印象を抱かせる。
「ぐうぁっ・・・つぅ・・・!」
「ちょっと雁夜、大丈夫なの!?」
左手を押さえてうずくまる雁夜とそれを心配する鈴。そんな様子を見て、招かれざる来客はますます笑みを深くする。
「痛そうですねえ、痛いですか?痛い?ねえ、痛い?アーッヒャッハハハハハ!そりゃ痛いよなあー!掌穴空いてるもんなー!ッハハハハハッ!!」
細い体を仰け反らせて爆笑する男を青い顔で睨み付けて雁夜は恨めしそうにその名を呼んだ。
「てめェ・・・狭間ァ・・・!」
・・・・・
冷や汗が頬を伝って地面に落ちる。
「今回は誰も助けに来ない」
「・・・マドカ・・・何でそこまでして俺を狙うんだよ」
どん。と、背中が木に触れて、後退がストップする。
「前にも言ったはずだ。私が私たり得るためだ」
「どうしてもやるってのかよ・・・」
「無論だ」
実力は圧倒的にあっちが上だ。逃げることも叶わない。ならば活路は唯一。今日までの特訓で成長したほんの少しの力で渾身の『零落白夜』を叩き込む。
退路がなければ、前に踏み出すしかない。
竦みそうになる脚を叱咤して、一夏は腹から声を出す。
「来い!『白式』ぃぃぃっ!」
・・・・・
「そこ!」
ダァンッ!という音がして、切嗣の持つワルサーP38から弾丸が放たれる。
それはあるところまで来ると、急に二つに分かれて廊下の壁を抉った。
「ほう、この私の電光迷彩を見破るとはな」
虚空から姿をにじませるのは見覚えのない男。
「何者だ?」
「『亡国機業実働部』所属、元自衛隊の叢雲零也」
ラウラの問いにそう答えて叢雲は握った日本刀を切嗣に向ける。
「愚かな国を正し、我が電光機関で世界を手に入れるために、死んでもらうぞIS乗り!」
「・・・ラウラ、応戦するぞ!『自分の正義』、起動!」
「『レーゲン』!」
「ほう・・・2対1とはなかなかに楽しめそうだな。こちらも行くぞ!電光機関、解放!」
・・・・・
こうして切って落とされた火蓋。
物語を終幕へと導く。
戦いのゴングが。
鳴り響いた。
時価ネットたなかのテーマがぐーるぐーる頭の中を回っています・・・なんだあの謎の中毒性。
中ボス戦で一話ずつ使っていくつもりでストックがあるので、まずは雁夜&鈴VS狭間です。
では次回、act41 GLUTTONY FANGでお会いしましょう。
ちゃおちゃおー。