IS/stay scape   作:昆布さん

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いよいよ最後の一校。
> こんぶ は いっしゅうかん の ゆうよ を てにいれた !
と、いうわけで。イベント戦、「聖杯の泥」です。
では、本編をどうぞ。


act44 MUD ON THE HOLLY GLASS

時間を遡って少し前のこと。

眼前に刃が現れ、男は若干目を見張りつつもそれを回避した。

刀を握っているのは長身で、ただそこにいるだけで周りを威圧するような女性。

「貴様、何者だ?」

「・・・ほう、貴様が世界最強・・・」

いきなり出くわすとはな。と言って男は軽く首を振る。

そして次の瞬間、今度は女性のほうが肝を冷やした。

瞬きするほんの一瞬で眼前に迫った男が、右手に保持した4本の直剣で引き裂くような斬撃を繰り出したのだ。

「・・・今のを躱すか。さすがに、世界最強の名は伊達ではないらしいな、織斑千冬」

とはいえだ。男は直剣をしまうと拳を握りしめた。

「生憎と私の標的は貴様ではない。早々に終わらせて貰うぞ?」

「随分と面白い口を利くじゃないか、侵入者。名前は?」

「言峰綺礼・・・だ」

そしてもう一度。今度は拳を握って肉薄する。

突き出される正拳を紙一重で躱し、頭上から刃を振り下ろす。それを掴まれれば即座に脇腹を蹴り飛ばす。

「ふむ、やはり腕はそれなりに立つらしいな」

蹴り飛ばされた脇腹を撫で擦り、肉体の損傷を確認すると、綺礼は痛みに少しだけ顔をしかめた。

「ふざけるなよバケモノ。全力で蹴り飛ばされて肋骨一本で済むなど、普通の人間では有り得ないだろうが」

「まあ、バケモノというのもあながち間違ってはいない」

続き、駆け込みざまの『連環腿』。雁夜のものとは異なり、完成した肉体の重みと熟達した技術が千冬を襲う。

「くっ!」

初段は躱した。だが次段は躱せない。咄嗟に鞘を盾にして防御を試みる。

「ふん・・・」

「ぐあっ・・・!」

しかしその防御すらも押し切る破壊力。蹴り飛ばされた千冬の体が背後の木に叩き付けられ、空気を絞り出すような声が喉から漏れる。

「私は聖堂教会の『代行者』。吸血鬼などというバケモノを狩るのなら自らが人間に甘んじるわけにはいくまいよ」

それより。と綺礼はそこから校舎の窓を見やる。

「・・・覗き見とは趣味が悪いな、オルコット家のご令嬢は」

貫き、まるで蝶の標本をコルク板に留めるピンのような無慈悲な視線がセシリアを捉える。

 

・・・・・

 

「ひ・・・っ!」

何だろうアレは。人の形をしているが人ではない。遠くからでも戦いの様子は目に見えた。

あの千冬を凌駕する力の持ち主。その存在にセシリアの喉がひくっ。と引き攣り、しゃくり上げるような悲鳴を漏らす。

気付けばUターンして廊下を元来た方向に走っていた。途中「廊下を走ってはいけません!」という山田先生とすれ違ったがそんなもの意識の片隅にも留まらない。

(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!)

恐怖に囚われて、それでも麻痺した頭で懸命に思考する。あの男の攻撃をかいくぐることの出来る力を持った人間・・・

その時、セシリアの脳裏に先日の無人機事件の様子が浮かんだ。雁夜のあの力なら男を打破して千冬を助けられるかも知れない。

二度三度とかけ間違え、四度目にやっと繋がったプライベート・チャンネルにセシリアは悲鳴のような声を叩き付けた。

「かっ!雁夜さんっ!」

 

・・・・・

 

バキィンッ!

「・・・ッ!」

「ふっ・・・」

とすっ。という何とも味気ない音を立てて折れた切っ先が地面に突き刺さる。

「くっ・・・このっ!」

「ふむ、やはり甘いな。スペックは超一流でも戦士としては二流以下だ」

いつものパリッとしたスーツは砂埃に薄汚れ、肩で息をしている千冬とは対照的に、綺礼のカソックには最初の攻防以降汚れがつくことはなく、呼吸もまた安定している。

この場の勝敗は完全に決していた。

「・・・まだ・・・だ・・・!」

次の瞬間、千冬そっくりの人間が五人姿を見せた。

「・・・ほう、『霧纏の淑女』・・・ロシアの機体だな・・・だが、この程度のモノが見破れないようでは、代行者はつとまらん」

現れたモノを全て殴り、消し飛ばし、続けざま黒鍵を2本明後日の方向に投げた。

「水蒸気を使って光を屈折させ、姿を隠す・・・姿を消すのだけはうまかったが、気配が隠し切れていないな」

やはり子供か。綺礼がそう呟くと、はたして黒鍵が虚空で何かに当たり、鉄甲作用で楯無を大きく弾き飛ばした。

視界の端で捉えただけの所見だが、装甲はもう使い物になるまい。これで戻ってくることはないだろうと、楯無に対する注意はこれで完璧に切った。

そして、千冬に向き直ったとたん、足下が青緑色の魔法陣で輝き始める。

「遂に現れたか・・・衛宮切嗣に間桐雁夜・・・!」

<―繰り返すことは愚なり>

声の発信源は分からない、意図的に散らせた声が高らかに呪文を紡ぎ上げる。

<―繰り返すモノが過なれば、繰り返しを超越し、愚の骨頂とならん。されど振り返ることは愚にあらず。さりとてただ振り返るもそれは愚なり。そうでなければ拾い上げよ。振り返りは拾うモノがあればこその益なり。ならば我が前にその姿を見せよ。鉄壁にして血壁、残虐にして冷静なその姿を。其は狂おしき愛の形、かつての英雄の威光を持って我が前の敵を殲滅せん―>

紡ぎ上げる呪文はただ綺礼を攻撃するだけのモノではなく、同時に千冬を救出するための手段でもある。

<『串刺(カズィクル)――――城塞(ベイ)』!>

地面から鋭利な刃を持つ蟲が飛び立ち、一斉に綺礼の視界を覆い尽くす。

「くっ・・・何という数だ・・・!間桐雁夜・・・よもやこれほどのパフォーマンスが引き出せるとは・・・伊達に2度目の生を送っているわけではないらしい」

視界を覆い尽くす蟲達を殴殺しながら、綺礼の耳が拾うのは羽音や炸裂音、打撃音だけではない。それに混じってもう一つ、深みのある声が小さく微かに聞こえてくる。

time alter(固有時制御)――double accel(二倍速)!」

「うわっ・・・!?衛宮!?」

雁夜が時間を稼ぎ、切嗣が千冬を救出する。即興にしてはなかなかのコンビネーションだ。綺礼が内心で感嘆の声を漏らす。

やがて、蟲の発生が止まると、クリアになった視界には二人の人間が立っていた。

生気のない瞳を持った黒髪の青年。纏うISは黒いボディアーマーに黒い外套という、おおよそ兵器らしからぬスタイルで、しかしこれ以上もないくらいに正義の味方には似合っている。

悲しみをたたえた瞳を持つ白髪の青年。纏うISは所々に白銀の装飾が施された黒い鎧で、兵器ではなく誇り高き騎士――例えばアーサー王に仕えた円卓の騎士――を連想させる。

青年の名は衛宮切嗣といった。

青年の名は間桐雁夜といった。




中ボス戦のサブタイはそれぞれ「ハザマのテーマ」と「機体名」と「電光機関」を拙い単語力でどうぞこうぞやったカンジです。後、タイトルとは裏腹に綺礼は泥を使うことができません。肉体がSNからzeroに戻っているのでズレがあるカンジです・・・というかぶっちゃけるとある程度制限付けないとどうにも・・・
では次回、act45 最後の一太刀でお会いしましょう。
ちゃおちゃおー。
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