と、いうわけで。今回はマジです。
では、本編をどうぞ。
<次のニュースです。現在多数の感染者が出ている奇病、
ぷつん。これまでつらつらと調子よく喋っていたニュースキャスターの声が無くなり、織斑家の食卓に静けさが舞い降りた。
千冬は相変わらず仕事で忙しく家にいないし、一夏も今日は大学に行っていて、今家にいるのは仕事が休みの雁夜だけだ。
はぁ。とため息をつくと手近にあった雑誌を手に取る。
「くくくっ・・・あの政治家、もうじき失脚するんじゃねえの?」
苦笑を一つ漏らして雑誌を流し読みし、読み終わるとまた深くため息をつく。
「・・・暇・・・だ・・・」
漏らした呟きはだんだんと大きくなっていく。
「暇だ暇だ暇だアアアアア!」
ああかったるいと付け足して、自室にあるゲームに手を伸ばす。
「・・・・・・・・・・・・やりこんだモンしかねえ・・・むう・・・」
唇がへの字に曲がる。金がないときは古いゲームをやりこんで口寂しさを紛らわすというのはよくあること、何度も何度もそれを繰り返すうちに気付けば雁夜の持つ面白いゲーム全てにプレイ時間99時間59分の称号が輝いている。
のだが、そのせいでまたしても暇が出来てしまい、雁夜はがっくりと肩を落とす。
「・・・最近ゆっくり寝てなかったしなあ・・・よし、寝よう。後ついでに・・・漫画も読みたいし」
そう言ってソファにマンガの単行本を持ち込み、寝転がって読む。
「ああ、懐かしいなあ・・・こうやってゆっくり漫画読むのもどれくらい振りだろうな・・・」
その若さにしてはノスタルジックな台詞を吐きながら雁夜はなんとなく寂しさを覚える。
一人。
それにうっすらと嫌気が差し始めたころ、雁夜の意識は深く深く沈んでいった。
・・・・・
それは桜が咲き始めた3月のこと。
「そうか・・・やっぱり帰るのか」
寂しげにそう言う雁夜を元気づけるように、鈴は努めて明るい声でその問いに答えた。
「ええ、でも絶対戻ってくるから」
それを聞いて少しだけ雁夜の顔がほっとしたように緩む。
「じゃあ、待っててよね。日本じゃまだ無理だけど、絶対戻ってきて、雁夜のお嫁さんになってあげるから」
「それは嬉しいな・・・じゃあ、オレからのプレゼントだ。餞別代わりに受け取ってくれよ」
そう言われてきょとんとする鈴。雁夜はその細い体を抱きしめ、唇を重ねる。
しばらくそうしていて、やがて二人は身を離した。
「またね」
「・・・ああ、またな」
二人の間に、春一番で飛ばされた桜の花びらが舞っていた。
・・・・・
ぴんぽーん。
「・・・んぁ・・・?」
インターホンの音に目をさまし、雁夜は応対に出る。気付けば窓から夕日が差し込んでいる。
「は~い・・・どちらさん?」
「宅配便で~す。こちら織斑さんのお宅でよろしいですよね?」
「ああ、そうっすよ」
初仕事らしい、緊張した面持ちの配達員を安心させるように受領印を押してやると、ほっとしたようにありがとうございますと言って彼は次の配達先に向かっていった。
一夏の部屋にその配達物・・・多分一夏が大学で使う何かの資料・・・を置いておき、雁夜はもう一度ソファに横になる。
「・・・一人・・・か・・・」
なんとなく今の自分の姿が滑稽に思えて、自嘲気味に呟いた。
今日唯一の来客も一夏あての配達物だった。
まるで自分が存在していないような。そんな錯覚すら覚える。
はあ。とため息を落とし、ふと目をやった時計の日付表示にふっと目を優しくする。今日は鈴の20歳の誕生日。
「・・・ハッピーバースデー、鈴」
小さくそう呟いて、もう一度眠ろうとしたところでまたインターホンが鳴った。
「今度は誰だ・・・?」
疑問符を頭の上に浮かべながら玄関に向かう。
「はいは~い」
がちゃり。とドアを開けた雁夜の目が大きく見開かれた。
「・・・鈴・・・」
「・・・ただいま、雁夜」
にっこり笑う鈴がそこにいる。
「おかえり、鈴。今メシの用意するから上がって待っててくれ」
涙をこらえて昔のように、にっ。と笑って大切な人を迎え入れる。
そして他愛ない会話をしながら食事して、片付けも終わらせる。
「鈴」
雁夜が淹れたお茶を飲みながら二人並んでソファに座っている。ことり。と、テーブルに湯飲みを置いて、雁夜は鈴に話しかける。
「・・・何?雁夜」
つい先程までの砕けた口調はそこにはなく、いつになく真剣な色がそこにあって、鈴は引き寄せられるようにその顔を見る。
まっすぐな視線が鈴の顔を覗き込んでいて、あっという間に顔が赤くなる。
「・・・オレの、や、ちがうな、オレと・・・ええい、これも違う・・・」
言葉を探るようにしばらくあれこれと言っていたが、最終的に落ち着いたのはシンプルな形。
「結婚してくれ」
二人の間に沈黙が流れ、やがてゆっくりと鈴は首肯する。
「・・・これからも・・・お願い」
頬を染めてそう言う鈴に、雁夜は笑う。そして、笑顔のままでこう言った。
「ああ、よろしくな!」
隣に座っているだけで感じられる。
その温もりは全てが現実で。
あの夜触れられなかった幸せな終わりが、そこにはあった。
IS/stayscape 間桐雁夜END...幸せはいつかここに
再会からプロポーズまで持って行く雁夜エンド。今回は幻覚じゃないぞというのが前書きの意味にございます。
では次回、エピローグ3 朱い世界でお会いしましょう。
ちゃおちゃおー。