と、いうわけで。今回はどこかで見たシーンです。些細な違いこそが救いなのだ・・・
では、本編をどうぞ。
衛宮切嗣は卒業後しばらくしてラウラと結婚、寿退役した彼女とせわしなくも穏やかな日々を送っていた・・・
・・・・・
「ああ、今から寝るところだ・・・ああ、ああ、大丈夫、仕事も片付いたし、明日の夕方にはそっちに帰れるよ」
<そうか。では土産を楽しみに待つことにしよう>
「ふっ。了解しました」
口元だけで微笑むと、切嗣は電話を切った。
切嗣がいるのは出張先のビジネスホテル。大手商社の渉外担当になった切嗣は現在商談のために瀬戸内海に面した地方都市にやってきていた。
「・・・」
別の世界だとは分かっているが、立地条件からどうにも冬木を想起してしまう。
郷愁に少しだけ目を細めて窓の外を見やる。そして、切嗣の顔が強張った。
この街は現在再開発の途中であるらしく、地元民が新市街などと洒落て呼んでいる区画。その方角の空が、朱く染まっていた。
「火災か・・・!?くそっ、『自分の正義』!」
冬木市新都をたった一晩で焼き尽くした、切嗣自身が深く関わった大災害・・・頭をよぎる冬木大火災のビジョンを振り払って『自分の正義』を呼び出す。
数年ぶりの
「間に合ってくれ・・・ッ!」
始動と同時にトップスピード。朱く燃える空へ向けて黒い影が駆けていった。
「シールドエネルギーが削られる!?・・・炎のせいか!」
辿り着いた切嗣はその手にボウガンを呼び出すと炎にそれを向ける。
「『偽・螺旋剣Ⅱ』!」
衝撃が走り、黄金の光が炎を吹き飛ばした。
・・・・・
ああ。死ぬんだ。
少年は漠然とそう思った。
両親に庇われたらしい。気付けば自分の周りには二人分の焼死体があり、それを打ち据えた瓦礫が転がっていた。
・・・・・
「よかった、まだ息はある!他に生存者は!?」
意識を失って横たわっていた5歳くらいの銀髪の少女を背負い、切嗣は周囲を見回した。
しかしその視界を埋め尽くすのは炎と煙、そして瓦礫と死体、少女の両親らしき物もその中には含まれている。続けてセンサー類に目をやっても生体反応が多すぎた。
生存者と救助隊の境界が曖昧で判断がつかない。
付け加えて今し方消防の放水が始まったのだ。それまでに加えて水と水蒸気によって目を完璧にふさがれる。
「くそっ、誰か!誰かいないのか!?」
必死に視線をさまよわせる切嗣。やがてその眼が、吸い寄せられるように一点に止まった。
そこには、力なく天を仰ぐ赤銅色の髪をした子供がいた。
・・・・・
なんとなく、少年は朱い空に向けて手を伸ばした。
深い意味はない。ただ、雨が降ればきっとこの火災は終わるだろうと思う。
だけどそれまでにどれだけの人が死ぬか判断がつかない。そして自分もその中の一人になるだろうと思う。
そう思うと、何だか無性に悔しかった。
手を伸ばしたことに深い意味はない。ただ、空が遠いなあ。と思っただけだった。
そしてその手が力を失い、力なく、パタリと地面に落ちる。その前に。
「生きてる・・・生きてるぞ!」
その手を掴む男がいた。
なんて顔だと思った。助けに来たっていうのに救われたような顔をしている。
だから、何だか手放しづらくて、少年はその手をめいっぱい握りかえした。
・・・・・
「……」
「……」
翌日、午後7時半、衛宮家。
居間には重苦しい沈黙が降りていた。
原因は和室に敷いた来客用の布団で眠る二人の子供。
「・・・説明しろ、誰との子供だあいつらは」
しばらくして、その沈黙に苛立ったラウラに凍りつきそうな瞳でそう言われ、切嗣は事の次第を話し始めた。
「結局、二人とも昨夜の火災で親を亡くしていたんだ」
あれから、あたりに生存者がいなくなったことを確認し、切嗣は二人を病院に担ぎ込んだ。
「ご両親が亡くなっている上に、煙を吸い込んで脳に障害を負ってしまったらしいんだ」
「障害?」
「ああ、障害と言うよりリセットといったほうが正しいかも知れないけど」
つまり、二人は自分のそれまでを喪ってしまったのだ。両親のことにしたって、それは拾ったときの様子から判断したにすぎない。
「施設に行くのと知らないおじさんの子供になるのとどっちがいいか・・・って医者が言ったら二人は迷わず僕を選んだ・・・と、こういう次第だったわけだ」
「ふん、まあ、あの子達が決めたというのなら仕方がないが、名前は覚えているのか?」
ああ。と切嗣は続ける。
「男の子が士郎で女の子がイリヤ・・・だ」
「士郎に、イリヤか・・・よし、覚えたぞ!」
・・・・・
新しい名前?
ああ、そうだ。君が、衛宮士郎。
士郎・・・衛宮・・・士郎・・・オレの・・・名前・・・うん、分かったよおっさん
おっさ・・・まあいい、で、君が衛宮イリヤだ。
えみやイリヤ?あたしのなまえ?
ああ。じゃあ改めて自己紹介させて貰うよ。僕の名前は切嗣。衛宮切嗣だ。彼女は・・・
切嗣の嫁の衛宮ラウラだ
ああ、それから士郎、おっさんはやめてくれよ。僕らはもう家族なんだから。親父でいいよ
・・・努力する
・・・・・
それから更に5年の月日が流れたとある満月の日。
今や魔術師殺し時代と変わらぬ見た目の切嗣が呟いた。
「綺麗な月だ・・・」
ふと、切嗣の脳裏をよぎる光景があった。
(オレがなってやるよ)
と、元いた世界の士郎が言い、
(ああ・・・いい月だ・・・)
と、学生時代の切嗣が言う。
「うむ。綺麗な月だな・・・」
後ろから聞こえた声に振り向くと、そこには家族がいた。
「あの日もこうやって月を見上げたな」
「ああ、何だか酷く懐かしいよ」
ラウラの呟きに切嗣が答えると、士郎が手に提げていたビニール袋を見せる。
「生憎二人きりじゃないけどさ。バイト代で団子買ってきたし、みんなで食べようぜ」
「団子か・・・そりゃいいな」
「あたしもお団子すきだよ!」
「よし!それじゃイリヤからだな。みたらしに黒蜜、三色団子。どれにする?」
親ほったらかしで盛り上がる子供達に軽く肩をすくめると、切嗣の隣にラウラが座った。
「ふふ。昔とは比べものにならないくらい賑やかになったな」
「ああ、こう言うのも悪くない」
それはいつかとよく似た夜のこと。
綺麗な月の光が、ゆっくりと流れる時を照らす。
正義の味方は家族と笑う。
それを空虚な求道者は堕ちたというかも知れない。
しかし、それは彼にとって紛れもない救いであった。
IS/stay scape 衛宮切嗣END...anotherFATE/ZERO
ちなみにイリヤですが、もう一回だけ出番があります。・・・ついでに業務連絡をば。
エンディングの所を章分けし忘れてたので分けておきます。
では次回、エピローグ3 流れる世界かact.EX3 生きるでお会いしましょう。
ちゃおちゃおー。