<1年生の部、一回戦第一試合 間桐雁夜、衛宮切嗣/ラウラ・ボーデヴィッヒ、岸波白木 午前10:00開始>
くきくきっ。と首の関節を鳴らして準備運動を終えると、雁夜は更衣室の時計を見た。
同じく時計を睨み付けている切嗣が
「9:00だ。そろそろピットに行こう」
といってベンチから立ち上がる。
「それじゃ一夏、オレ達でぶちのめしてくるぜ」
「おう、いってこい」
一夏とシャルルに見送られて更衣室を出る。
そして9:45分。どちらともなく二人は相手の目の奥を覗き込み、そう言った。
「準備はいいな・・・魔術師殺し」
「愚問だな・・・魔術師」
そして更に15分が過ぎ、決戦の午前10:00。
「一戦目であたるとはな。手間が省けたというものだ」
「同感だな・・・手短に済ませよう」
試合開始・・・!
・・・・・
戦術予想・・・ラウラ・ボーデヴィッヒ、専用機は『シュヴァルツェア・レーゲン』。武装は『大型レール砲』一門、『ワイヤーブレード』4本に『プラズマ手刀』が両手分、『慣性停止結界(AIC)』。
長距離における射撃、武装に関する詳しいデータがないので詳細は不明だが本人の射撃技術は高い。威力は高く、命中精度は80%を超える。極めて注意が必要。
軍隊格闘の習熟度は通常の軍人よりはるかに高い。また、織斑千冬より直々に薫陶を受けていることから、近接戦における彼女の戦闘能力は学年トップクラスと推察。注意が必要。
備考。『慣性停止結界』、対象を特殊エネルギーフィールドで絡め取るシステムであると考えられる。作動には操縦者の高い反応速度が求められるが、対象は問題なく発動が出来ると推察してほぼ間違いない。
他方。これまでの模擬戦で使用した武装・・・トンプソン・センター・コンテンダーの通常弾頭。キャレコM950短機関銃。サバイバルナイフ。また、模擬戦闘における使用を禁じていたことから、ラウラ・ボーデヴィッヒには『強制解除弾』と大量の軍用兵器の予備知識はなく、故に切嗣のスタイルをただのガンナーだと誤解されていると見ていいだろう。
故に・・・
「はあっ!」
突然投げつけられた円筒形のものをラウラは停止結界で受け止める。しかし切嗣はそれを右手に呼び出したリボルバー式の拳銃で狙撃する。
円筒形のものはスタングレネード。安全装置を狙撃して吹っ飛ばすとスイッチが入り、あたりを真っ白な閃光が染め上げる。
「悪いな岸波」
「ぇぁッ・・・!?」
雁夜の拳が白木の『打鉄』に叩き込まれ、瞬時に左肩部の実体シールドを破壊してみせる。
「ッつぅ~・・・」
「悪いが岸波白木、おまえはこの間桐雁夜が相手をする」
白木に攻撃を仕掛けながら離れていく雁夜。それを見送った切嗣は拳銃を放り捨てると両手にキャレコを呼び出す。
「意表を突いた所でその程度!」
「チッ・・・!」
しかしそれを放つ暇を与えずラウラのプラズマ手刀が切嗣に襲い掛かり、やむなく左手のキャレコをサバイバルナイフに持ち替えてそれを受け止める。
「ほう・・・射撃だけでなく格闘戦の心得もあるのか・・・片腕のみで大した物だ」
「賛辞は大人しく受け取っておくよ・・・!」
いいながら更に一撃、もう一撃とたたみかけられる手刀をいなし、躱し、切り返す。
(やはりコイツ・・・やる!)
切嗣の頬を嫌な汗が伝いおちた。
・・・・・
「やああっ!」
「…っと!」
『近接ブレード』の腹を殴って突きの起動をそらし、そのまま素拳での一撃を放つ。
「きゃっ・・・!」
「もらったぜ」
たまらず距離をとった白木に『閃疾歩』で近付き、そのまま顎を『穿弓腿』で蹴り上げる。
「できたての連続技の効果・・・ためさせてもらう!」
『連環腿』、数発の拳と蹴りの連打、そしてトドメに踵落としと『寸剄』の同時発動!
「きゅぅ~・・・」
「ありゃ・・・チトやり過ぎちまったか?」
マンガのように目を回す白木を見下ろしながら頭をガシガシとかき、次に雁夜は切嗣を置いてきた方向へ目をやった。
「さて、あっちの首尾は・・・?」
雁夜が足下から拾い、弄んだ拳銃。
次の瞬間、その拳銃が
弾けた。
・・・・・
「上々だよ」
切嗣は長期戦に備えてキャレコM950短機関銃のヘリカルマガジンを大量に所有している。大量の9㎜軍用弾に混じって用意されていたゴム弾専用マガジン。
通常の軍用弾よりも数段威力の劣るそれで切嗣は狙い撃った。
絶妙の角度で雁夜が軽く手の中で浮かせたリボルバー識の拳銃の引き金を。
もとより切嗣の射撃の腕は超一流と言ってとりあえず差し支えない。
そこに『正義への贄』のハイパーセンサーによる補助が加わった。
結果として今の切嗣には500メートル離れた所にある拳銃の引き金を撃つことなど造作もない。
結果、撃鉄が起きたままで投げ捨てられた拳銃は弾丸を撃ち出すというその用途のもとに、ラウラを後ろから狙撃した。
「ッ!?なっ・・・!?」
「実弾による特殊偏向射撃・・・生身では出来ないことだが、ハイパーセンサーの補助があればなんてこと無かったな」
キャレコを仕舞い、両手にナイフを握った切嗣の猛攻。矢継ぎ早に襲い掛かる斬撃にたまらず後退すると、再び背中を突き抜けるような衝撃が襲う。
「だれが逃がすかよ」
『後旋腿』を叩き込むやそのまま体を逆に捻って『連環腿』につなぐ。
「間桐・・・雁夜・・・ッ!」
浮遊しているという特性を利用した無茶な体勢からの確実なコンボ。確実にエネルギーを削っていく雁夜にラウラは臍を咬む。
「くそっ・・・貴様ぁっ!」
たまらず停止結界を展開して雁夜を捕まえるが、レール砲を叩き込む前に切嗣のキャレコが弾丸を吐き出す。
「貴様ら・・・くっ!」
再び後退するラウラ。今度は正面から雁夜が突っ込んでくる。
右手には『無毀なる湖光』、使用しているのはこれまで使用した記録のない『瞬時加速』。試合を決めるべくして放たれた一太刀は
「ぐううっ・・・!」
『シュヴァルツェア・レーゲン』の装甲を深く抉った。
・・・・・
(こんな・・・・・こんなところで負けるのか、私は・・・・・!)
超高精度の射撃、予想を超えた連携、相手の予測するマイナスの状況を斜め下に突き抜けるような悪辣な身のこなし。想像以上の相手だった。致命的な判断ミスだ。それでも・・・
(私は負けられない!負けるわけにはいかない・・・・・!)
―――願うか・・・・・?汝、自らの変革を望むか・・・?より強い力を欲するか・・・?
(言うまでもない。力があるのなら、それを得られるのなら、私など・・・空っぽの私など、何から何までくれてやる!
だから、力を・・・比類無き最強を、唯一無二の絶対を・・・私に寄越せ!
Damage Level・・・・・D.
Mind condition・・・・・Uplift.
Certification・・・・・Clear.
《Valkyrie Trase System》・・・・・boot.
「あああああああああ―――ッ!」
センサーと合わせればこれぐらいのことができるんじゃないかと思いました。
で、まあ次回も切嗣が大活躍するんだけども。
もっと言うと次回こそ雁夜の出番がほとんど無い・・・
ちゃおちゃおー。