資料「現代の戦争は一度の会戦で戦争の趨勢を決するような決戦主義は起こらずうんたらかんたら。また兵科も細分化されてうんたらかんたら。火力の発達によって要塞というものはほとんど意味をなさずうんたらかんたら」
彡(゚)(゚)「……………」
彡(^)(^)「フィクションに必要なのはリアリティであってリアルじゃないな!」
人型の空飛ぶ兵器なんて現実には存在しないんだよ!!
高原の長い道のりを歩き、ゼンダー門へと向かっていたリィン達一行だったが、途中で第三機甲師団と貴族連合の機甲兵部隊との戦闘と遭遇する事になった。
戦い自体はほんの小競り合い程度で終わり、第三機甲師団の強かな反撃を受けた機甲兵部隊が撤退する結果で終わったが、さりとて第三機甲師団の勝利とも言い難い状況であった。貴族連合側はほとんど被害を受けず撤退したのに対して、第三機甲師団には戦車数台の損失が発生している。
帝国本土からの増援が期待できないこの状況下では、このまま行けばどちらが先に音を上げるかは自明の理というものである。故にそんな最中に現れた《灰色の騎士》という援軍に第三機甲師団は沸き立った。
それは戦力的な意味合いでもそうだったが、何よりも総司令部側が“切り札”をこうしてこちらに寄越してくれたという事は、自分たちを決して見捨てるつもりはないのだという何よりの証左だった故に。帝都での激戦、そして双龍橋攻略により、既に《灰の騎神》とその担い手たる《灰色の騎士》はそういう存在と見られているのだ。
「ゼクス中将閣下にお会いしたい」と伝えたリィンの言葉に、警備の兵士はすぐに了承の意を告げて司令室へと案内するのであった。
「監視塔が貴族連合の手に落ちた……!?」
此処最近めっきりと動揺を表に出す事のなかった、リィン・オズボーンは伝えられた信じがたい出来事を前に珍しく声を荒げる。
案内された司令室にて、挨拶もそこそこに一行は本題へと入る。そうして情報交換を行っている最中、ゼクス中将は北部戦線に於ける苦境の由縁を伝える。曰く、内戦が勃発したあの日。カルバードの空挺部隊が大規模に領空を侵犯し、監視塔部隊がその対処している際に、西の空から機甲兵を積載した軍用艇が急襲し、完全に虚を突かれた形となった正規軍側は監視塔を放棄せざるを得なかったのだと。
「つまり貴族連合はカルバードの連中と話をつけていたって事か……やれやれ、クロスベルの件といい、宰相閣下を狙撃された件と言い、どうにも失態続きだな
タイミング的に貴族連合が敵国たるカルバード共和国と話をつけていた事は疑いようがない、であれば今回の事態の責任は、それを察知できなかった情報局の責任だろう。
如何にゼクス中将が名将と言えど、与えられた戦力には限りがある以上、どうしても対処するにも限界があり、“宿敵”カルバードへの対処は帝国軍人にとっては最優先すべき事項なのだから。共和国の侵攻という事態に際して、そちらを優先したゼクス中将の対応に非はない。故に責任は、貴族連合と共和国が通じていたという事を掴んでいなかった自分たちにこそあるとレクター・アランドールは断じたのだ。
「しかし不倶戴天の共和国と通じるとはな……はてさて貴族共は一体何を対価に取引したのやら。
身分制の存在しない共和国人がよもや、我が帝国の高貴なる方々のその尊き血脈に対する畏敬の念が突然芽生えたわけでもあるまいに」
リィンの放った言葉の中には隠しきれない嘲弄と抑えきれぬ怒りが込められていた。
よりにもよって宿敵たるカルバード共和国と通じるとは!帝都占領の折で理解していたつもりで居たが、どうやら本当に貴族連合は“恥”という概念を持たぬ人種であるらしい。内戦へと勝利するために“敵国”の力を借りる事がいかなる事態を齎すか、よもやわからぬわけではあるまいに。
(クロワール・ド・カイエン、やはり貴様にこの国を束ねる資格はない)
鋼鉄の理性により抑え込んでいる、灼熱の如き怒りの業火が己が心の内で猛る事をリィンは自覚した。
もしも、もしもカイエン公の掲げる理想が万一にも、父や自分のそれに勝るようであれば、祖国のために私情を捨てて膝を屈する事も視野に入れなければならなかったが、どうやらそれは杞憂であったらしい。これで憂いなく、ヤれるというものだろう。
清濁併せ呑まずして覇業を成し遂げる事など不可能だが、それでもこの世には超えてはならない一線というものが存在するのだから。“外患”たるカルバードと通じたカイエン公は明確なる“内憂”である。此処に至り、リィン・オズボーンはカイエン公に対してほんのわずかに抱いていた期待を捨て去り、完全に排除すべき“敵”として認定する。
「更に不利な状況がもう一つある、監視塔が占拠されて間もなく、高原一帯の通信機器が使えなくなった。故障というわけでもなく、詳しい原因は判明していない。第七機甲師団へと援軍の要請をする事もできず、消耗戦を強いられている理由だな。ーーーもっとも第七機甲師団は第七機甲師団でノルティア領邦軍と膠着状態に陥っており、その余裕は無いだろうが」
眼前の甥弟子から迸る以前あったときとは比べ物にならないプレッシャーに内心戦慄を覚えながらも、ゼクス・ヴァンダールはもう一つの苦境の要因を説明する。
「なるほど、それで先程の戦闘はああも精彩を欠いていたわけですか」
「……そう見えたかね?」
「はい、失礼ながら正規軍屈指の名将と名高き閣下とその旗下の部隊とは思えぬ程に対処の速度がやけに鈍いなと。個々の練度自体は高いのに、上官からの指示が伝わるのにタイムラグが在るかのようなチグハグさを感じていたのですが、ようやく合点が行きました」
遭遇した戦闘で第三機甲師団は明らかに精彩を欠いていた。
敵の指揮官が凡将であるが故に何とか撤退させる事が出来たが、これが音に聞きし貴族連合の英雄“黄金の羅刹”や“黒旋風”であればとてもではないが、持ち堪えられなかっただろう。
とにもかくにも反応が鈍いのだ。それこそ、
これが本当にあの名高き、隻眼のゼクスの部隊かと。そう、困惑した。
だが、近代戦の要たる通信を封じられているのならばそれも合点が行く。むしろ、そのような状況下であっても戦えた事こそゼクス・ヴァンダールの非凡さの証明と言えよう。
「ですが、そうなると兎にも角にも通信の復旧が最優先となりますね」
「うむ。グエン氏に話を伺いたいところだが、どうやら高原全域に貴族連合に雇われた高ランクの猟兵団が展開していてな。偵察に送り出した部隊が既にいくつかやられてしまい、どうしたものかと思っていたのだが……」
そこでゼクスは不敵な笑みをリィン達に向けて
「どうやら女神は、いや元帥閣下は我らを見捨てなかったようだ。このような頼もしい援軍を寄越して下さるとはな。改めて頼みたい少佐、高原へと趣きグエン・ラインフォルト氏と接触し、この異常の原因を調査して貰いたい。リミットは貴官の駆る灰の騎神が再び稼働出来るようになるまでの間だ。それまでにグエン氏との接触や、原因の特定ができなかった場合はやむえん、調査の方はリーヴェルト大尉らに任せて、貴官の方はこちらへの合流を優先して欲しい」
階級はゼクスの方がリィンよりはるか上だが、あえて頼むという表現をゼクスは使った。それは直属の部下ではなく、総司令部からの援軍、半ば客将に近い立場故の配慮であった。
「は、その
「うむ、至急手配しよう」
こうしてリィン・オズボーン少佐らはノルド高原に於ける調査を開始した。
・・・
「おまたせ致しました!我が軍が所有している軍馬の中でも特に選りすぐりの馬を5頭用意させて頂きました!!」
「ほう、これは確かに素晴らしい馬だな。流石は我が第二の故郷たるノルド、我が友ロラン、そして我が兄弟らと共に草原を駆け抜けた
喜色に満ちた様子でリィンはそうして
「どうした、アランドール大尉、リーヴェルト大尉。そんな狐に化かされたような顔をして。せっかく中将閣下がこんなにも素晴らしい馬を用意してくれたというのに」
再会してから久しく見ていなかった少年のような笑みをリィンは浮かべる。
それは二人にとって見れば喜ばしいものだ、だが何故だろう。まるでその笑みが別人の浮かべたもののように感じるのは。
何よりも二人が困惑している理由……それは
「いえ、確かに良い馬だとは思います、少佐。ただ、どうにも腑に落ちないんです、貴方はそこまで馬が好きだったかと、そんな疑問が心に過ってしまって……」
「ーーーーーーーー」
リィンは馬術も一通り習得したし、決して馬が嫌いというわけではない。むしろ好きな部類に入るだろう。
だが、それは所謂嗜みとしての領域を出ないものであって、此処まで喜ぶ程に馬が好きな男ではなかった。それほどまでに馬が好きだというのなら、部活選びの際にアレほど悩まずに馬術部へと入部していた事だろう。
「それに、「我が第二の故郷たるノルド、我が友ロラン、そして我が兄弟らと共に草原を駆け抜けた
「ーーーーーーーーー」
そうだ、目の前の義姉が告げる通りだ。自分がノルドの地を訪れたのは半年前の一度きり。
良い思い出はあるが、それでも第二の故郷等と呼ぶ程に過ごしていたわけではない。
それに何より、ロラン・ヴァンダールは自分の友ではない。
そうだ、草原で過ごしたこれら遠き日の思い出は、自分の記憶ではない。これはドライケルス帝の記憶である。
自分はドライケルス・ライゼ・アルノールではない、リィン・オズボーンだ。
だと言うのに、何故こんな勘違いをしたというのかーーーーー
「……ああ、済まない、驚かせたようだな。どうやら少し、記憶が混濁してしまったらしい、だがもう大丈夫だ」
目を覚ますためにリィンは軽く頭を振る。気にする必要はないのだと安心させるように笑みを浮かべて。
「記憶の……混濁!?」
だが、その笑みは何の意味も齎さなかった。告げられた言葉にクレア・リーヴェルトは驚愕の表情を、レクター・アランドールは彼には珍しく虚を突かれたようにポカンとした表情を浮かべる。
「ああ、起動者には過去の起動者の記憶を継承する事が出来る。それによって、短期間で騎神を操縦する事が出来るようになるわけだ。そして私の先代の起動者はドライケルス大帝陛下だったと、要はそういう事さ」
サラリとリィンはこれまで伝えてこなかった事実を告げる。別段隠していたわけではない、言ったところで俄には信じがたい事だし、アルノールの血を引いても居ない自分が、さも大帝陛下の後継者のような顔をすれば妙な火種になりかねないと判断したための処置であった。
知られたところでそも起動者にならなければ何ら役に立たない知識だし、そも起動者になれば自動的に知る内容だ。故にシャーリィ・オルランドに聞かれたところで何ら問題ないとリィンは判断した。
「……なるほどな、まるで別人のようになったと思ったが、それは大帝陛下の記憶を継承したからってわけか。所作だとかそういうものも、何から何まで大帝陛下から学んだってわけか」
未だ衝撃から立ち直っていないクレアとは異なり、いち早く再起動を果たしたレクターは正鵠を射抜いていた。
「ああ、その通りだ。とんだズルをしているようで若干気が引けるが、せっかくの機会をみすみす捨てるのも勿体無いと思ってな」
平然とした様子でリィンは言うが、当然であるがそのような上手い話というのは世の中に転がっては居ない。
短期間での別人のような急激な成長の種には当然それ相応のリスクが存在している。
記憶を引き継ぎ自分の血肉に変えるという事は、それは下手をすれば自我が曖昧になる危険性を孕んでいる極めてリスクの高い行為なのだ。
それ故に数年単位で起動者は重要度の高そうな記憶だけを起動者を引き継ぐのだ。
それをリィン・オズボーンはこともあろうにわずか一ヶ月で、記憶の総てを引き継いだ。
それは自我の崩壊の起こりうる極めて危険なもの、意識が若干混濁した程度で済んでいるのは奇跡と言っていいだろう。
「大帝陛下にとってノルドは思い出深い地であり、そして陛下は何よりも馬をこよなく愛されているお方だった。
故にさっきのような事が起こってしまったが、このような事はそうそう在ることではない。故にどうか安心して欲しい。ーーーさて話は終わりだ、そろそろ出発しよう」
何の心配もいらない、大した事はないのだと告げるように平然とした顔で軽やかにリィンは馬へと乗り、それに続くかのように呆然としながらもクレアが、顔をしかめながらレクターが、何かの確信を得たかのようにシャーリィもまたそれぞれ馬へと跨っていく。
そんな中、ただ一人アルティナ・オライオンだけは所在なさげにして、恐る恐ると馬へと近づくが、途方にくれたように馬の前で再び立ち止まる。
「オライオン曹長、もしかして貴官は乗馬の経験がなかったのかな?」
リィンの問いかけにアルティナは黙ったままにコクリと頷く。そんなアルティナの様子にリィンは苦笑して
「そういう事ならば、私の後ろに乗ると良い。この中で馬術の腕が一番優れているのは恐らく私だろうからな」
レクターにしてもクレアにしても馬術の腕はあくまで乗れると言った程度のものでしか無い。二人乗りをしても問題ないかは正直怪しいラインだし、シャーリィ・オルランドへと任せるには若干の不安がある。
リィンもかつては二人とどっこいどっこいだったが、今のリィンにはノルドの民と過ごし、草原を駆けたドライケルス帝の記憶がある。今の自分ならばそれこそ後輩であるガイウスにも馬術の腕は引けを取るまい。それ故の処置だった。
そうして恐る恐ると馬へと跨ったアルティナはリィンの背中へとしっかりとしがみつく。どうやら乗馬というのがどうにも未知の体験で不安なようであった。
「では、改めて出発する。北部と南部の境目、半年前にノルドの民の集落があった地点をひとまずの目的地だ。各員、道中の警戒を怠るなよ」
戦略ゲー的に言うと
凡将←統率が60後半~70前半位で貴族連合の基本的な将帥、及び百日戦役前の正規軍の将帥はこの辺
良将←80前半位で現在の正規軍の機甲師団の司令官はこの水準
名将←90以上でオーレリア、ウォレス、ゼクス、オーラフ、ヴァンダイクなどの一部ネームドが該当
というイメージで覚醒後オズボーン君の統率は現状80後半あるイメージです。
これは今後実際に部隊を率いて経験を積んでいく事で更に伸びていくことでしょう。
まあ端的に言って化物です。
懐かしのリッテンハイム君は現状50位です。
これは彼が特別低いわけではなく、士官学校卒業しても居ない若僧なんて普通はそんなものなのです。むしろ曲がりなりにも大貴族の嫡男として英才教育を受けているので優秀な方です。
パッパ?パッパはあらゆるステが90超えているチートユニットだよ。
ドライケルス帝も同様です。