(完結)灰色の騎士リィン・オズボーン   作:ライアン

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この辺りを原作でやっていた時の作者「これ最初からヴァリマールで強襲かけて装置破壊すれば、特に潜入する必要なかったのでは?」


監視塔攻略作戦

「あ、リィンだ!おかえりー!」

 

 ゼンダー門に到着すると予定通り一足先に戻っていたシャーリィ・オルランドは満面の笑顔を浮かべながらリィンに抱きつこうとするが、リィンはそれをヒラリと軽やかに躱す。流石の朴念仁とは言え、これ程までに露骨にアピールされれば、どういうわけだか目の前の少女が自分に好意を抱いている事はわかる。

 なればこそ余計に、勘違いされるような事は避けるべきだろう。何せ目の前の人物は猛獣のようなもの、一時的に契約の関係で共闘しているに過ぎずそのうち雌雄を決する事となるのだから。……此処で適当にあしらって籠絡するという発想が浮かばない辺りがリィン・オズボーンの美点であると同時に欠点でもあっただろう。不世出の英傑たるドライケルス大帝もこと女性の扱いという点については、リィンと似たり寄ったりであったから当てにはならなかった。

 そしてそんな連れない態度の愛しい相手にシャーリィは不満気にぷくリと頬を膨らませる。その様はさながら飼い主に褒めてもらいたくてしょうがないペットのようである、問題はこのペットは油断すれば飼い主も食い殺しかねない人食い竜であるという点だが。

 プクリと頬をふくらませるシャーリィだが、それに味方する者は居ない。目の前の存在を外見通りの少女だと思えば手痛い目に合うだろうという事をその場に居た者達は重々承知している故に。

 

「いかんなぁ。実にいかんぞ。健気に待っていた少女にそのような扱いは男の風上にも置けぬ行いだと自分で思わんかね少佐」

 

 いや、一人だけ居た。老紳士を自認及び自称しているグエン・ラインフォルト氏だ。

 他の面々はこの少女が少女の皮を被った竜だと知っている、ゼンダー門の兵士にしてもそれは同じだ赤い星座の雷名は彼らもまた聞き及んでいる。今はこちら側に雇われているから過度の警戒は不要だが、それでもある程度の緊張は保っておくようにと、そう敬愛する司令官から訓示を貰っている。

 しかし、グエン・ラインフォルトはそんな事は知らない上に、荒事の経験も殆ど無い。故に気づけ無い、戦いに携わるものであれば思わず鼻を塞ぎたくなるような濃厚な死臭が目の前の少女から発せられている事に。それ故にグエンの目から見れば、健気な美少女のアプローチを朴念仁が邪険に扱っているようにしか見えないのである。

 

「いえ、グエンさん。これには少々事情がございまして……」

 

「そうなんだよー聞いてよお爺さん。リィンったら酷いんだよーシャーリィはリィンのために頑張って働いたっていうのにさ。別にリィンのためだったらその位なんて事無いんだけど、少し位頭を撫でてくれるとか抱きしめる程度を期待したって罰は当たらないと思うんだよねー」

 

 そしてその思わぬ援軍をシャーリィ・オルランドは見逃さない。グエン氏に事情を伝えようとするクレアを遮り、間髪入れずにグエン・ラインフォルトを味方に引き込むべく動く。

 

「少佐……それでも帝国男子かね。余り他人の恋路に首を突っ込む気はないが、それでもあまりにあんまりというものだろう」

 

「ううう……良いんだよ優しいお爺ちゃん。所詮はシャーリィが一方的に好きだって言っているだけだもん。リィンにとっては迷惑なだけだったんだよね……」

 

 「その通りだ、迷惑だ」、そうばっさりと切り捨てようとしたリィンだったが、グエン氏の批難するような視線を受けて喉から出かかったその言葉を寸前で飲み込む。甚だ不本意な流れだが、このまま行くと自分はグエン氏から女を弄んで一方的に利用しているとんだ女たらしに思われかねないだろう。

 そしてシャーリィ・オルランドが称賛に値するだけの働きをしたのもまた事実だ。ならば、そう多少の労いをしてやるのは良かろうと、そう考えて一度大きなため息をついて……

 

「足止めご苦労だったなオルランド、良くやってくれた」

 

「……うん!リィンのためだったらこの位幾らでもやるから今後もばんばん私を頼ってね!!」

 

 妥協するように軽く頭を撫でるとシャーリィは飼い主にブラッシングをされた猫のように嬉しそうに目を細め、喜色に満ちた様子で応じる。その様はパッと見仲のいい兄妹のように見える光景である。しかし忘れてはらない、シャーリィ・オルランドは決して愛玩用の猫等ではなく人を喰い殺す猛獣なのだ。そこを忘れて見た目の愛らしさに騙されれば、手痛い傷を負う事となるだろう。

 故にリィン・オズボーンは絆されなどはしない、いずれ戦う時が来ればその刃に一切の刃こぼれを生じさせる事無く容赦なく、今こうして轡を並べている少女を斬り捨てるだろう。そしてシャーリィもそんなリィンの奥底にある剣呑な様子に歓喜する、そんな貴方だからこそ私は好きになったのとばかりに。

 兄妹のように戯れていたのも束の間の間だけ、すぐさま二人は濃縮された殺気を互いに交わし合う。それは二人から離れたところに居る者達でさえも、体感温度が数度下がるような心地となるような強烈なものであった。

 

「若いってのは良いのう。可愛い方の孫娘もそろそろ好きな男の一人位連れてきてくれると良いんじゃが」

 

 事情を知らず戦いに関しては門外漢のグエン・ラインフォルトだけはそんな二人を微笑ましいものでも見るように満足げに眺めるのであった……

 

・・・

 

「……なるほど、つまり少佐はあくまで貴族連合の開発したその装置を無傷なまま手に入れる事を主張するのだな?」

 

「はい閣下、装置を破壊する事ならば簡単です。それこそ私がヴァリマールで上空から奇襲をかけるだけで事足りるでしょう」

 

 監視塔は元々監視塔という言葉が示す通り、そこまで堅牢な要塞というわけではない。

 当然そこに居る戦力も双龍橋に駐屯していたものとは比較にならぬ規模で哨戒に出ている飛空艇も10に満たぬ数。まず以て騎神の敵ではない、それこそ上空より強襲して装置を破壊する事も容易いだろう。

 

 しかし

 

「ですが、それでは今後の戦い(・・・・・)でもアレに悩まされ続ける事となるでしょう。

 装置を無傷で確保して、グエン氏にその対策を講じて貰う、それが一番かと」

 

「ふむ……そして、そのための作戦案がこれというわけか」

 

 リィンより提出された作戦案、それはレクターとクレアにも手伝って貰いながら作成したものだ。

 まずリィンが灰の騎神単騎により、強襲を駆ける。これによって監視塔の機甲部隊を引きずり出し、相手取る。

 そして更にそこから昼間の陽動ですっかり顔が知れたであろうシャーリィ・オルランドが高原南部の高台、監視塔より死角になっているそこから、崖伝いに降りて監視塔の敷地裏へと出る。無論、相手もそこが監視塔に対して強襲を敢行するのに適している場所というのは把握しているであろう。まず間違いなく網を張っているはずだ。

 だがそれで良い、此処までの作戦はあくまで陽動に過ぎない。リィンが敵の機甲部隊、シャーリィが敵の猟兵団をそうして釘付けにしている間に、アルティナとクレアとレクターの三人はクラウ・ソラスの飛行能力とステルス機能を利用して監視塔の屋上へと到達、導力波妨害装置を停止させて手元にある通信機にてゼンダー門の部隊へと連絡。

 通信妨害という枷が消えた第三機甲師団はリィンが相手取っている機甲部隊の側方より一挙に強襲を掛けるというわけだ。

 

「いくつか確認したい事がある、まず貴官の操縦する騎神、これは本当に単騎で敵の機甲部隊を相手どれる代物かね?」

 

「はい閣下、それにつきましては帝都での戦い、そして双龍橋攻略作戦の結果が示すとおりです」

 

 誇るでもなく淡々とした口調でリィンは告げる。敵の戦力を過小に見積もっているわけでも自分の力を過大に見積もっているわけでもない、ただ純然たる事実がそこにはあった。つまり騎神というのはそれだけの代物なのだという事なのだ。

 その事実にゼクスは若干目眩をするような心地を覚えた、単騎で一個師団に匹敵する戦力等全く以ていい加減にして貰いたいものだ。一騎当千の英雄等と、そんな存在が戦場の主役だった時代はとうの昔に終わった筈だと言うのに。そんな存在を大真面目に考慮に入れていたら、戦術も何もあったものではないだろうに。

 これが味方であるというのならば、頼もしいだけで済むが、蒼の騎神にクロスベルの神機と敵にも存在しているのだから全く以てたまったものではない。神機に壊滅させられた第五機甲師団と現在蒼の騎神を西部戦線にて相手取っている面々にゼクスとしては同情を禁じえなかった。

 しかし、とりあえず今はそんな理不尽な存在はこちらの味方である以上、それは貴族連合側にとっては悪夢でもこちらにとっては福音と呼ぶべきものであった。

 

「陽動をシャーリィ・オルランドなる猟兵に任せるようだが、こちらの離反の危険性は?」

 

 当然と言えば当然だが、やはり案の定シャーリィ・オルランドに対するゼクスの評価は余り高くなかった。

 リィン自身もそうであるように正規軍に所属する軍人にとっては猟兵等というのは金で所属をコロコロ変える信用ならない存在として嫌っている人物が元々多い。裏切りを警戒するのはある種の必然であった。

 

「それに関してはまず無いでしょう。赤い星座は超一流の猟兵です、こちらが不義理を働くような事をしない限りは契約を違えるような事はまず杞憂と言って良いかと思います。実際既に彼女は単騎にて陽動の任を果たしてくれています。信用して良いかと」

 

 シャーリィ・オルランドは油断のならない猛獣である。

 だが、それでも最低限の信義と誇りを持ち合わせたプロフェッショナルである。

 故にカイエン公のような不義理がこちら側が働かない限りは、この内戦が終わるまで(・・・・・・・・・・)は契約通りに正規軍にとっての忠実な猟犬で在り続けるだろう。

 せっかく高額なミラを費やして手に入れたカードなのだ、使わなければ損というものだろう。

 

「では最期に、装置の停止措置についてだが、本当にこの三人で大丈夫なのかね?破壊というのならばともかく無傷で鹵獲するのが目的というのなら、技術将校を同行させた方が良いと思うが……」

 

 ゼクスが問うている内容、それはリィンにとっても悩みどころであった。

 今回の作戦の目的はあくまで装置の破壊ではなく奪取にある。故に装置を破壊する事無く停止させる必要が出てくる。

 だが、破壊させずに停止するとなれば、まさかアレほど大掛かりな装置がボタン一つで停止するような代物であるはずもなく、装置の構造等を把握してセキリュティを突破できるような専門の技術者の手が必要となってくる。

 クレアにしてもレクターにしてもある程度の知識はあるものの流石に、専門の技術者ではない。かといってクラウ・ソラスによって一度に運べる人数はアルティナ本人も含めて3人が精々と言ったところ。

 装置の護衛役も十中八九居ることから、達人級の腕たるクレアとレクターはできれば二人共外したくないし、敵の拠点への潜入という危険度の高い任務であることを思えば、腕に自身の無い技術屋を連れて行くのは避けたいところであった。さて、どうしたものかとリィンも思案したのだが……

 

「それに関してはオライオン曹長の方に自信があるようです。自分に任せてもらえれば問題なく装置を停止させて見せるとの事です」

 

 リィンが告げた言葉に目を丸くするゼクスに対してアルティナはペコリと頭を下げる。

 

 「OZシリーズ最終にして最高傑作である自分ならば、装置の構造を解析して把握すること等造作もない事」悩むリィンにそうアルティナは告げていた。曰く、騎神やクロスベルの神機等と言った代物ならばともかく、それ以外であれば自分はあらゆる機械に対して同調し、解析し、そして支配する事が出来るのだとどこか得意気な様子で彼女は告げていた。そしてその証明としてセキュリティのかかったクレアの端末をあっさりと掌握する等という業をやってのけたのだ。OZシリーズとは何なのかという質問に対しては相も変わらず「秘匿事項です」の一点張りであったが、とにもかくにもこと機械やシステムに関して並外れた能力を抱いている事は確かであった。

 

「穴はない……というわけか。うむ、良かろう。貴官の作戦案を採用する。こちらも部隊の出撃準備を整える故、それまで貴官らは休息を取るように」

 

「「「「イエス・サー」」」」

 

 七曜暦1204年12月12日、苦境に立たされている帝国正規軍第三機甲師団を救うべく、リィン・オズボーン少佐は直卒の部下と共に監視塔攻略作戦を開始した。

 




設定改変により、アルティナちゃんはOZシリーズ最高傑作として機械にハッキングして乗っ取るみたいな事が出来るようになっています。
後はそれに伴って演算能力とかが並外れているみたいな想定になっています。

妹より優れた姉など存在しねぇ!
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