(完結)灰色の騎士リィン・オズボーン   作:ライアン

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最近復讐を否定する事に対して厳しい言葉が目立ちますが、やっぱり僕は「許す」事って大事なことだと思うんですよ。


灰色の騎士VS蒼の騎士(中)

(妙だな……)

 

 オーレリア将軍よりの要請に従い、動き出したクロウ・アームブラストは妙な違和感を抱いていた。敵がまるで自分を止めに来ないのだ。騎神は強力な兵器だが、それでも決して無敵なわけではない。多少の攻撃程度にはびくともしないが、飛空艇に装備されている主砲の直撃を受ければ流石に無事とは行かないし、何よりも霊力の残存量というものがある。そして、絶えず霊力を放出している飛行状態では特にこれの消費は著しいし、当然高速機動による空中戦を行うともなればその消費は倍増する。

 帰りの分も考えればそうそう簡単に敵の防空網を突破して、空からの強襲によって敵の司令官を葬り去る等という事は出来ない。《アウクスブルクの会戦》によってそれを為し得たのは総司令官たるオーレリア将軍が2週間に渡る攻防で巧妙に第十機甲師団を釣り出す事に成功したからであって、単独でそんな事をやろうとした日には敵中で霊力が底を尽きて身動きが取れなくなる等という目も当てられない事になりかねない。

 だが、それらはあくまで敵がこちらを警戒して入念な防空体制を整えて入ればこそだ。まるで蒼の騎士の事など眼中にないかのように、まるで攻撃を仕掛けてこないこの状況では霊力の消費等しれている。それこそ、このまま敵陣へと潜り込んで大将首を挙げる事とて不可能ではないだろう。

 

(誘い込まれているのか……いや、それにしたってリスクがデカすぎる)

 

 敵陣へと誘い込んでうっとおしい蒼の騎士を嵌め殺す、あり得ないわけではないだろうが騎神の機動力と突破力をを思えばそれは容易ではないし、そもそもそれは残存する四つの機甲師団の将軍の誰かを囮にするという事だ。全体の戦局が正規軍有利に傾きつつある今、そこまでリスキーな戦法を取るとは思えない。そう、これは誘い込んでいるというよりは信頼の出来る“強者”が守りについているから、他の者に相手をさせるのは無駄な犠牲を出す事になるだけと判断したような……

 

 その瞬間、クロウの脳裏にある一人の男の姿が過る。それは優勢であった貴族連合がいつの間にか劣勢へと追い込まれる事になった元凶。双龍橋に監視塔と行く先々で正規軍に勝利を齎している、正規軍の英雄。そして一ヶ月以上も前に道を別った唯一無二の友でもある存在だ。

 

「クロウヨ、コチラニ高速デ接近シテキテイル機体ガアル」

 

「ははは、なるほどな。そういう事かよ。考えてみたらそりゃそうだ。東の劣勢を覆した後には北に向かった。

 なら、北の劣勢を覆したら?決まっている、この西部戦線だ。そうだろう、親友(リィン)!」

 

 叫んだのとほぼ同時に叩き込まれた激烈な剣撃、凡百の機甲兵であればあっさりと機体を両断したであろうそれを、クロウは軽くダブルブレードで弾き一旦距離を取る。

 文字通り挨拶代わり(・・・・・)だったのだろう、灰の騎神もまた追撃を叩き込む事無くその場へと佇み、口を開く。

 

「ああ、久しぶりだな親友(クロウ)。いや、蒼の騎士殿(・・・・・)とお呼びしたほうが良いかな」

 

「は、んなもん周囲が勝手に呼んでいるだけで俺は一度たりとも自称した覚えはねぇよ、灰色の騎士殿(・・・・・・)

 

 我、知らず操縦桿を握る手に力がこもる。久方ぶりにクロウ・アームブラストは昂揚していた。

 目前の親友の挑戦を自分は受けて立たねばならない。

 何せ自分は裏切り者であり仇なのだから。目の前の親友には自分を討つべき理由が山程ある。

 ならば、罪滅ぼしのために黙って討たれる気なのかと言えば自分でも不思議な事にそんな殊勝な気持ちが欠片も沸いて来ないのだ。

 こいつにだけは(・・・・・・・)負けたくない、そんな意地が燃えカスになっていた自分の心の中でそんなちっぽけな男の意地がメラメラと燃え上がるのをクロウは感じていた。

 

(こういうのは、俺のキャラじゃねぇはずなんだけどな)

 

 思えば初めて出会った時からそうだった。

 気さくな不良生徒、そんな仮面をこいつには外された。

 そう、こいつと接している時の自分は冷徹な復讐者《C》ではなく、ただのクロウに戻ってしまうのだ。

 まだ祖父が生きていた頃のダチと一緒に日が暮れるまで遊んでいた頃の無邪気なガキだった頃に。

 

「良いぜ、父親の仇討ちであり、リベンジマッチってわけかよ。受けて立つぜ、改めて年季の違いって奴を教えてやる」

 

 燃え尽きて灰と化して己が心に確かな火が灯るのを感じながら、クロウは不敵に笑う。

 そうだ、来いよ親友(宿敵)。お前の討つべき仇は此処に居るぞと。

「その前に、お前に聞いておかなければならない事がある」

 

 しかし、そんな自分からの誘いに友人は打って変わった穏やかさで応じる。

 それに不可解な思いを抱きながらもクロウはそのまま聞き役に徹する。

 

「クロウ、貴族連合を抜けて正規軍へと、いいや帝国に(・・・)忠誠を誓う気はないか?」

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーは?」

 

 何を、コイツはナニを言っているのだ?

 

「我が父、いいや宰相閣下を撃ったことでお前の目的は達成されたはずだ。

 よもや、心の底からカイエン公を主君と思い忠誠を誓った等という事はあるまい。

 お前が貴族連合に力を貸しているのは計画に協力してくれたカイエン公への義理立て、そんなところのはずだ。

 で、あるのならば我々の間には妥協の余地があるはずだ。

 確かにお前は帝国宰相の暗殺という大罪を犯した。

 だが、お前は貴重な騎神の起動者だ。

 前非を悔いて(・・・・・・)、今後その力を帝国のために奮うというのならば超法規的措置によって免罪となる可能性は十分にあるはずだ。

 ーーーカイエン公を見捨てて帝国へ忠誠を誓え、クロウ。

 俺も、力の及ぶ限り擁護(・・)しよう」

 

 伝えてくる言葉、目前の相手が大真面目に語っているその内容がクロウにはまるで理解が出来ない。

 なんだそれは、何故そんな事を言える。自分はお前の父親の仇なんだぞと目前の親友が理解不可能な英雄(怪物)なのではないかと、そんな想いが満たし始める。

 

「ちなみにこれは俺の独断というわけではない。

 もしもお前が奸臣クロワール・ド・カイエンを見限り、以後帝国へと忠誠を誓うというのならその罪を不問にする。

 その確約をアルフィン皇女殿下とレーグニッツ知事閣下より頂いている。

 わかるか?お前にさえその気があるのならば、お前は帰ってこられるんだよ、こちらに。

 取り戻せるんだ、あの日々(・・・・)を。

 一緒に卒業して、卒業後も時たま会って、近況を語り合いながら昔話に花を咲かせる。

 そんな、こうなる前に俺たち5人の内、お前以外は疑っていなかった日々がな」

 

 告げた言葉には使命感だとかだけではない確かな友誼が込められていた。

 だからこそ余計に(・・・)理解が出来ない。

 なんでだ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ。何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だーーー何故だ。

 なんで、そんな事を目の前の男は言えるのだ。

 疑問がクロウの頭を埋め尽くす。そして気がつけば、心の中に抱いたその思いをそのまま口に出していた。

 

「俺は、お前の父親の仇だぞ!?ずっとお前らを騙していたんだぞ!憎くねぇのかよ!!!」

 

「憎くないかだと?憎いに決まっている。何故ならばお前は我が父の仇なんだからな」

 

 奥底にマグマの如き憎悪を滲ませながら、聞いている者の魂さえも凍てつくような冷たさでリィンはクロウの問いかけへと応じる。

 

「俺には夢があった。父の力となり、祖国を変える一助となる。そして父と共に母の墓前へと報告に行く。

 それをお前は俺から永久に奪い去った。憎くないはずがないだろう」

 

 クロウ・アームブラストは自分の親友だ。だが、同時に父の仇だ。

 黄金色に輝く思い出がある。だが、目の前の男はそんな中で漆黒の弾丸を研ぎ澄ませていた。

 確かな友情がある。だが、決して消えぬ憎しみがある。

 唯一無二の友にして宿敵、それがリィンにとってのクロウだ。

 抱く思いも形容する関係も、もはや一言では言い表す事ができない。

 

「だが、それでもお前は俺の友だ。そして俺は帝国に身命を捧げた軍人(・・)だ。

 それが祖国にとっての最善(・・)だと言うのならば、俺はお前を許す(・・・・・・・)

 よく言うだろう、『憎しみは何も生まない。許す事が大事だ』とな。 

 陳腐な言葉だが、陳腐というのはそれだけ良く使われる言葉、すなわち世の普遍的な真理を突いた言葉でもあるという事だ」

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 

 ナニを言っているんだ、目の前の男は。

 憎しみがあると言った、そしてそれは確かな事実だ。

 一瞬だけ自分に向けられた心の中でくすぶり続け煮えたぎるヘドロのような感情。

 それをクロウ・アームブラストはこの上なく良く知っている。

 何故ならば、それこそが自分が黄金色の青春時代に別れを告げさせたものだったのだから。

 当然、それがどれだけ御すのが厄介なのか知っている。

 なのに、何故そんな事が言える。

 『憎しみは何も生まない。許す事が大事だ』等という真に大切な者を失った事がない頭に花畑が咲いているような戯言を。大真面目に。

 わからない、わからない。理解を超えている。

 実は父親の事などなんとも思っていなかった?いや、違う。こいつが父親をどれだけ尊敬していたかはいやというほどに知っている。何故ならば、自分たちが初めて喧嘩をする事になったのはまさしくこいつの父親を自分が侮辱したことがきっかけだったのだから。

 では、自分が友人だからこそこいつは手心を加えているのか?いいや、それも違う。これはそんな生易しい(・・・・・・・・・・)ものではない。情に絆されたとか、そんなものでは断じて無いのだ。

 何故ならば、そこに込められているのは余りにも覚えのある鋼鉄の意志(・・・・・)だから。

 崇拝も憎悪も、常人には到底背負う事のできないありとあらゆる感情を呑み干してどこまでも突き進み続ける鋼鉄の意志力。

 自分が葬り去ったはずの怪物(・・)と同じものなのだ。

 

「だから、クロウ。お前も、もう過去に囚われるのは辞めろ。

 この内戦を終わらせるために、カイエン公と手をきり、こちらへと付け。

 それが、お前の祖国のためにもなるはずだ。

 経済特区であるジュライが、この内戦でどれだけの被害を被っているか知らないとは言わせないぞ」

 

 旧ジュライ市国、現帝国政府経済特区ジュライ自治区は経済特区という名が示す通り、交易と経済活動によって成立しているところなのだ。そして経済というのは当然ながら「平和」という安全が確保されていてこそ、初めて活発に行えるものである以上、この内戦でその経済活動は大きな停滞を余儀なくされている。当然「経済特区」足るジュライ自治区が無関係でいられるはずもない、間違いなく一刻も早い内戦の終結をこそ望んでいるはずだ。

 そして既に戦局は正規軍の優勢へと大きく傾き始めている、この状態で蒼の騎士が正規軍側へと寝返るような事が起これば、それはまず間違いなく苦境にあるカイエン公へのトドメ(・・・)となり得るだろう。

 鉄血宰相の暗殺さえも実行してのけたカイエン公の腹心にして貴族連合の英雄でさえ、カイエン公を見放したというその事実はこの上なく貴族たちにカイエン公が既に落ち目(・・・)だという印象を与える。

 そうなれば、貴族連合の内部でも完全に戦力を喪失する前に交渉に応じるべきだという声が出て来ることだろう。後は政治の次元の話になるが、兎にも角にもこの内戦は、同胞同士での殺し合い等という悲劇にはとりあえず幕を下ろす事が出来るのだ。

 正しい。正しい。大局的(・・・)に見て、どこまでもリィンの告げる言葉は正しい。

 

「ジュライだけじゃない、お前がこちら側へと帰ってこれば取り戻せるんだよ、あの日々を。

 トワにジョルジュにアンゼリカ、あの三人が俺たちが殺し合う様を望んでいると思うか?

 お前がこちら側に付くというのならば、俺がお前に剣を向ける理由は無くなる。

 もうジュライに愛着など無い、知った事ではないというのならば俺達への友情を理由にしろ」

 

 ああ、確かに自分には負い目がある。

 あの黄金色に輝いていた青春時代をぶち壊してしまったという負い目が。

 きっとトワの奴は泣いていて、ジョルジュの奴も悲痛な顔を浮かべていて、ゼリカの奴を滅茶苦茶怒って居るだろうなと。

 そんな事も思った。

 響く。大局ではなく友情に訴えかけたそのその言葉は確かにクロウ・アームブラストの心へと響く。

 

「カイエン公への義理があると、お前は言う。

 だが、それならば俺達への義理は無いとでも言うつもりか?

 ジュライにしても、もはや捨てた祖国だからどうなろうと知ったことではないとでも?

 違うはずだクロウ、お前はそこまでの人でなしじゃない」

 

 確信を以てリィンは断言する。

 露悪的な言葉でごまかそうとしても、そんなものにはもはや騙されないと。

 

「だから改めて言おう、親友(クロウ)

 戻って来い、カイエン公ではなく俺の手を取れ。

 そうすれば、全てが取り戻せるんだ」

 

 そうして、リィンは手を差し伸べる。この手を取れと。

 感動的な光景なのだろう、父を討った仇さえも許して(・・・)手を差し伸べるその度量。

 それはまさしく“英雄”と称すべき寛大さだ。

 語った内容もどこまでも正しい、情と理双方に訴えかけた言葉は確かにクロウの心を揺さぶった。

 そう正しい、正しい。どこまでもひたすらに正しい。まさしくそれは人はこう在らなければならない(・・・・・・・・・・)と示す英雄の背中だ。

 どこまでもどこまでも鮮烈に輝く人を導く眩い光だ。

 

 だからこそ認められない(・・・・・・・・・・・)、認めるわけにはいかないこいつだけは(・・・・・・)

 

「あいにくだが、その手をとる事は出来ねぇよ、親友(リィン)

 

「……一応聞いておこう、何故だ」

 

 半ば予想していたのだろう、言葉の中にはさしたる驚きも無くただ未練を吹っ切ろうとするかのような色が込められていた。

 

「理由か、そうだな。

 理由ならまあ色々とあったにはあったんだよ。

 なんのかんのでカイエンのおっさんには恩があるからだとか、解放戦線のリーダーだった俺がそんな事をしたら死んだアイツラへの筋が通らねぇとか色々な。

 だけどな、てめぇと会話していたらその辺の細かい理屈は全部吹っ飛んだ。俺がお前の手を取れない理由、それは……」

 

 そこでクロウは一度大きく深呼吸をする。あらゆる感情を飲み干すように。

 

今のてめぇが!気に食わねぇからだ!リィン!!!

 

 叩きつけたのは裂帛の戦意。絶対に認める事は出来ないという互いにある断絶を改めて突きつけるものであった。

 

「ああ、わかっているさ。本来俺にこんな事を言う資格はない。

 裏切り者である俺は、寛大なる英雄様の慈悲に感激して、泣きながらその差し伸べられた手を取るべきだってな!

 だけど、だからこそ(・・・・・)俺は今のてめぇを認める事が出来ない」

 

 だって認めてしまえば、それは自分で自分の復讐が間違いだったと認めてしまう事になるから。

 『復讐は何も生まない。許すことが大事』そんな反吐の出るような甘ったれた言葉に従って心の中にヘドロのようにこびりついた思いを押し殺し続ける事が正しい事になってしまうから。

 

「てめぇは正しいよ、どこまでも。ああ、支離滅裂な事を言っているのは俺で正しいのはお前の方だとこれを見ている奴が十人居れば、十人がそう答えるだろうさ」

 

 英雄は正しい。暗闇の中に迷える衆生を照らして導くが如く、どこまでも眩く光り輝いている。

 

「だからこそ俺はお前を認められねぇ!

 なぜなら、お前はその光で、正しさ(・・・)で総てを飲み込んでいくからだ!

 お前の親父のようにな!!!」

 

 多くの人は正しいものに逆らう事が出来ない。

 だからこそ、多くの権力者は大義名分というものを確保する事に執心する。

 正しいのはこちらで、敵は悪なのだと。

 そしてその正しさの前には人のちっぽけな想いは飲み込まれていく。

 かつてジュライが、祖父が解放戦線の多くのメンバーが鉄血宰相という巨大な焔に飲み込まれたように。

 そして目の前の男はそんな父親とまさしく瓜二つだ。

 この男は決して止まらないだろう、祖国のためという正しさのために。

 決して砕けぬ鋼鉄の意志で総てを呑み干し進み続ける。

 

 だからこそ、クロウ・アームブラストは何があっても認める事は出来ないのだ。

 焦りと恐怖さえも込めながらもクロウは必死に叫ぶ。

 

「……そうか、それがお前の答えか」

 

 そしてそんな逆ギレ(・・・)をどこまでも英雄は静謐に受け止める。

 揺らがない、いまさらその程度では英雄は。

 たかだか(・・・・)親友に罵声を浴びせられた程度では。

 心の中にあった黄金色の思い出、あるいは取り戻せるかもしれなかったそれを今度こそ心の奥底にしまい込む。

 さあ、今こそ決別の時だと。何故ならば、今の自分はトールズ士官学院副会長ではなく帝国正規軍特務少佐なのだから。

 祖国に身命を捧げた一振りの剣なのだから。刃を曇らせる情はしまい込め。そして研ぎ澄ませろ、目の前に居る者は敵なのだから(・・・・・・)

 

ならば死ね(・・・・・)

 奸臣クロワール・ド・カイエンに与した愚かなるジュライの遺児よ。

 帝国に騒乱を巻き起こした罪、その生命を以て償うが良い!」

 

「やってみろ!この英雄(バケモノ)が!!!」

 

 その叫びと共に、貴族連合の英雄《蒼の騎士》と正規軍の英雄《灰色の騎士》は此処に二度目の激突を果たした。

 

 

 

 

 

 

 




裏切った親友に対して戻って来いと必死に声をかける……ペロッこれは紛れもない主人公の行い!
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