(完結)灰色の騎士リィン・オズボーン   作:ライアン

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また例によって騎神の設定については色々と独自設定となっています。
多分今までで一番改変度合いが強いと想いますので、ご了承いただければと思います。
ちなみに今回の推奨BGMはキラVSアスランの戦いの時に流れていた「再起戦」というBGMになります。


灰色の騎士VS蒼の騎士(下)

 蒼と灰、二色の閃光が空を駆ける。

 そして激突し合う度に激しい火花を散らして、大気を震わせる。

 それは古来より、歴史の節目に於いて幾度も現れたお伽噺の如き光景。

 灰の騎神ヴァリマールと蒼の騎神オルディーネ、2機の騎神は己が起動者の意志に呼応するかの如くどこまでもぶつかり合う。

 灰の騎神は己の掲げる譲れぬ正義のために。蒼の騎神は決して譲れぬ己の意地のために。

 鋼の意志を纏う英雄と漆黒の殺意を抱く復讐者はどこまでも対照的な思いで、されど決して譲る気は無いと相対する敵を討ち滅ぼさんとする。

 戦闘は完全なる均衡状態へと陥っていた。かつて憎悪によってその刃を曇らせた“只人”の姿はそこにはない。

 刃を曇らせる憎悪も、友情も、総て心の奥底へと押し込め、研ぎ澄ませた鋼鉄の刃を、双剣を“英雄”は振るう。

 “護るために殺す”そんな矛盾した行いを体現して、師より伝授された守護の剣を振るう。

 それはまさしく“練達”の境地。幼少期より休む事無く、優れた師の下で休まず歩み続けた研鑽に、歴代の起動者の記憶を引き継いだことによって、唯一欠けていた“経験”という欠点さえも補われた今の“英雄”は限りなく武の至境たる“理”に近づいている。

 だが、それでも“理”に至るには後一歩が足りない。何故ならばどれだけ、鋼鉄の意志によって律していようとも“英雄”の心の中には目前の“仇”に対する、決して消えぬ憤怒と憎悪がマグマの如く煮えたぎっているから。

 そしてそれが時として、噴出するから。限りなく近づいては居るが、されどそれでも到達には未だ至っていない。

 何故ならば、目前の相手は親友にして宿敵、そんな唯一無二の存在だから。

 

「だからこそ、俺はお前を殺す(超える)!!!」

 

 父の仇たるお前を、過去からの刺客にして決して偽りではない語り合った時間と友誼のあった親友を殺すことで自分は父を超えるのだと、そう宣言する事が出来るのだと。

 今も割り切れぬ思いを抱えているからこそ、お前を超えた(殺した)時にこそ、自分は理に至るだろうとそんな予感を覚えて。

 決して譲りはしない、勝つのは俺だと“英雄”は鋼の戦意によって研ぎ澄まされた剣を叩き込む。

 

 それはかつての刃こぼれを生じたナマクラとはもはや別物と言って良い鋭さで蒼の騎神を襲う。

 凡百の兵であれば、為す術無くあっさりと両断されるしかないだろう。

 

「舐めんなぁ!」

 

 しかし、クロウ・アームブラストは断じて凡百の使い手などではない。

 彼もまた騎神に選ばれた歴とした起動者にして“達人”である。

 唯一残された祖父を失い、帝国宰相という強大なる怨敵を倒すために血反吐を味わいながらも研鑽を続け、前任者からの記憶を3年かけて咀嚼してきた。

 心の中より溢れ出る憎悪を律し続けてきた。怨敵を打ち破ったことで一時的に消えたその業火は宿敵を前にして再び激しく燃え盛りだした。

 “英雄”が鋼の意志によって“理”に至ろうとしているなら、“復讐者(アヴェンジャー)”もまた漆黒の殺意によって“修羅の境地”へと至らんとしている。

 

 光り輝く双剣とダブルブレードがぶつかり合う。刃越しに叩きつけ合うのは鋼の戦意と漆黒の殺意。

 決して譲りはしない、勝つのは俺だと両者は互いに咆哮する。

 訪れた均衡、それを前にクロウ・アームブラストは激しく奥歯を噛みしめる。

 

(この、バケモノがぁ……!)

 

 互角?いや、違う。既に自分は目の前の宿敵に実力に於いて上回られている。

 何故ならば、自分が今振るう武器、それは希少金属足るゼムリアストーンによって作られたものなのに対して向こうが振るうのは機甲兵ように量産した剣でしか無い。

 強度にしても今武器へと纏わせている霊力の伝導効率にしても集束率にしても桁違いにこちらのほうが上なのだ。

 にも関わらず均衡しているという事、それはすなわち単純な実力に於いては自分が目前の敵を下回っているという事だ。ーーー最もリィン自身はそういった条件を整えるのも実力の内なのだから、そんな仮定は無意味だと言うだろうが。

 

(あっさりと霊力を武器に纏わせやがって。俺がそれを出来るようになるには半年懸かったんだぞ)

 

 騎神の持つ機能の一つに霊力を己が武具に纏わせるというものがある。

 これをする事によって刃毀れする心配も、欠ける心配も無く、その性能を維持、いや向上させる事が出来るというわけだ。

 霊力を集束させたその切れ味は鋼鉄さえもまるでバターのように両断する事ができる。

 そして、その霊力を纏わせるのに最も適している金属こそがゼムリアストーンなのだ。

 そんな武具の性能差がありながらも、形成された霊力刀は完全な均衡。

 一ヶ月、たった一ヶ月足らずでかつては自分が圧倒した敵手はあっさりと追いついたのだ。

 その事実にクロウは底知れぬ恐怖を抱く。こいつは此処で討たねばならないと。

 さもなくば、どこまでも高く飛翔していき、父と同等の、あるいはそれさえも超える怪物になりかねないという焦燥を抱いて。

 

「てめぇはこのまま行けば、てめぇの親父のように総てを飲み込んで進み続ける!

 だから、そうなる前に俺が葬ってやる!まだ人間である内にな!!それが、親友(ダチ)としての俺のせめてものの友情って奴だ!!!」

 

 高める。高める。ひたすらに霊力を高め、それを殺意によって研ぎ澄ませる。

 騎神が繋がっている莫大なる力の奔流から力を引き寄せるように。

 目の前の怪物へと勝つために。

 親友を止めるために。

 殺意と友誼、2つの相反する思いは反発しあいながらも互いを高めてその出力を急激に上昇させる。

 徐々に、クロウの振るうダブルブレードが交差させたヴァリマールの双剣を押し込み始める。

 

「戯言を抜かすなぁ!!!」

 

 瞬間、烈火の如き怒りと共にヴァリマールはその出力を跳ね上げ、再び両者は均衡へと陥る。

 

「さっきから黙って聞いていれば、勝手な事をペラペラと!

 俺を怪物だと貴様は罵る、総てを呑み干して進んでいくのだと。

 ああ、その指摘は正しいのだろう。確かに俺はこれから多くの悲劇を作るだろう。

 誰かが笑えば、代わりに誰かが泣くのがこの世界の有り様であり、わが祖国に繁栄を齎すという事はすなわち敵国にその負債を押し付けるという事なのだから」

 

 物語であれば内戦の終結でめでたしめでたしとなるかもしれない。だがそうはならない。

 何故ならば、内戦が終われば必然的に待っているのは次の戦い(・・・・)なのだから。

 此度の騒乱で既にクロスベルは緩衝地帯としての役割を果たさなくなった。

 帝国は内乱に陥り、共和国もまた経済恐慌に陥った。既に二大国のクロスベルに対する国民感情は最悪の域に達している。

 混乱が終われば、両国どちらも国民の感情面からも、そして傷つけられた威信と経済的な痛手を回復するためにクロスベルを巡り争い出すのは半ば必然の流れだ。

 そして、クロスベルを手に入れるのはこちら(・・・)でなければならない。何故ならば、ガレリア要塞、帝国を護るはずだったその盾は既に無く、祖国を護る精鋭たる機甲師団もこの内戦で大きな痛手を負っているのだから。クロスベルを共和国に奪われれば、それは帝国にとっては喉元に刃を突きつけられたも同然。

 何よりも、同胞同志で殺し合いを演じたという事実は帝国に致命的な分断を生みかねない、少しでも手を誤ればエレボニア帝国は分裂しかねないだろう、そしてそうなってしまえば帝国は宿敵カルバードに抗す事など不可能となる。

 だからこそ、必要なのだ。祖国を一つに求めるために“敵”が。

 我らは等しくエレボニアの民(・・・・・・・・・・・・・)なのだと信じさせる“勝利”が。

 無論これがどこまでも自国の都合に塗れたものである事などリィンは百も承知だ。

 自分は多くの敵兵を、ただ国が違うというだけの悪ではない他国の兵士を、国を、家族を、友を護るために武器を取った者を多く殺す事になるだろう。

 敵を殺すために、味方も犠牲にするだろう。数千の味方と数万の敵の屍を作り上げる事となる。

 そんな存在は断じて善良な優しい人などではない、怪物や悪魔とそう形容されるべき存在だろう。

 

「それがわかっていて!」

 

「だが、それが軍人だ(・・・・・・)

 

 静謐にリィンは宣誓する。それこそが自分の選んだ軍人という者が負う役割なのだと。

 国のために必要悪を担う事、それこそが自分の役目なのだと。

 

「基より神ならざる身で救える者などたかが知れている。

 ならば、自分の祖国とそこに住まう民だけでも幸福であれと贔屓を行う事の一体何が悪いというのか!」

 

 咆哮と共に叩きつけられた一撃についに均衡を破られ、蒼の騎神は弾き飛ばされる。

 この機を逃さんとばかりに叩きつけられた一撃、それをすんでのところで躱し、態勢を立て直す。

 

「そういう自国至上主義が、今回のクロスベルの暴走を生んだんだろうが!

 てめぇら帝国と共和国にエゴを押し付けられて、それに耐えきれないという想いが独立への意志を!

 力で押さえつけられていたのだから、こちらも力によって押し通るまでだと!」

 

 引かない、怯まない。出会った時の頃のような事を、出会った時の頃よりもはるかに性質が悪くなって言う親友を食い止めるべくクロウは言葉と共に再びその剣を叩きつける。

 

「その通りだ。我らには我らの理があるように、クロスベルにはクロスベルの理があるのだろう。

 だからこそ戦いは起きる。互いに譲れぬ物がある以上、それを決するには“力”を以てするしかないのだからな!今、俺達がこうしてぶつかり合っているように!!!」

 

 ぶつかり合う。ぶつかり合う、2つの閃光は己が決して譲れぬ想いを叩きつけ合いながらも。

 

「そして、既に血は流れた!クロスベルを緩衝地帯としていた事による均衡と平和は崩れ去った。

 “悪”である事は百も承知!だが、それでも“悪”であろうと為さねばならぬ事がある!

 で、あるのならば俺は祖国にこそ繁栄を齎す!

 この力によって最速で最短で以て戦争を終らせる、それが結果的に一番流血を少なく済ませる方法なのだから。 

 祖国の民が血を流さずに済むように必要最小限の犠牲で以て敵を殺す事。それこそが必要悪を担う軍人たる俺の役目だ!」

 

「~~~~~~~~この、大馬鹿野郎が!」

 

 揺らがない、リィン・オズボーンは揺るがない。

 傲慢なる大国のエゴを実現するために、無慈悲なる歯車となると宣誓している。

 それはかつての真の意味で敵を殺す事の意味を理解していない子供故の発言ではない。

 いくつもの哀しみを生み、憎悪を向けられるとわかりながらも決して止まらずそれを呑み干して進み続けるのだと、総てを覚悟して宣言しているのだ。

 だからこそ(・・・・・)性質が悪い。総てを覚悟していると言う事はすなわち、決して譲らず止まらないという事なのだから。

 

「こんな事は俺が言えた義理じゃないがな!

 てめぇがそんな風に勝手に荷物を背負い込んでてめぇの周りの奴が喜ぶとでも思ってんのか!

 賭けたって良い!あいつは、トワの奴は絶対に泣くぞ!」

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 

 一瞬、これまで決して揺らぐ事のなかった鋼の英雄はわずかに、ほんのわずかな間だけ揺らぎを見せる。

 脳裏に過るのは優しく暖かな陽だまりの記憶、ああ、そうだ。自分はきっとそんな優しい人たちをこそ守りたいと想い出発した。

 

「……そうだな、確かに優しい彼女は決してそんな事を望みはしないだろう」

 

 そう彼女は、彼女たちは泣くだろう。

 だって自分が大切に思う人達は優しい人達だから。

 他国の人間だからどうなっても良い、そんな事をまかり間違っても思うような人たちではないのだから。

 

「だったらーーーー」

 

「だが、逆に聞こう。そういうお前が復讐する事を一体俺達の中の誰が望んだ?

 お前が宰相暗殺犯等という大罪人になる事を俺達の中の一人でも望んだとでも思うのか?」

 

「ーーーーーーーーそれ、は………」

 

 容赦のないリィンの切り返しにクロウは押し黙る。

 言い返す事は出来なかった、エゴを押し通したというのならばそれは自分の方が先だったのだから。

 

「今更、その是非をとやかくは言うまい。お前は総てを覚悟して(・・・・・・・)それを行ったのだからな。

 自分の為す事が正義ではなく、悪行である事など認識した上でそれでも尚、お前は結局復讐を選んだのだろう。

 ああ、だからつまりはそういう事だよ(・・・・・・・)

 身近な大切な人たちを泣かせてでも、例えその結果憎まれる事になっても成し遂げたい理想がこの身にはあるのだから!

 故に、決して譲りはしない!止めるというのならば、この覚悟毎砕いて見せろ!!!!」

 

 数十にも及ぶ激突の後、まるでその意志にでも呼応するかの如く跳ね上がった出力、そして叩きつけられた一撃にがついにオルディーネの装甲を刳り、吹き飛ばす。

 叩きつけられた衝撃で一瞬クロウのその意識に空白が生じる、そして当然その好機をリィンは逃さない。間髪入れずに追撃をーーーー

 

「!?」

 

 入れる事が出来なかった。

 目前の敵手より感じた悪寒。虫の知らせとでも言うべき第六感が踏みとどまらせたのだ。

 

「ヴァリマール、これは恐らく……」

 

「ウム、心セヨ。リィン、来ルゾ、第2形態ダ」

 

 

「ああ、クソッタレこんちくしょう。これだけは(・・・・・)絶対に使いたくなかったってのによぉ」

 

 心底忌々しそうに吐き捨てるかのようにクロウは口にする。

 そう自分にはとっておきの切り札がある。だがそれを使っていなかったのは別段勿体ぶっていたとか手加減していたとかそういうわけではなく……

 

「ナラバ、コノママ逃ゲルカ?撤退スルトイウノモ一ツノ手デハアル」

 

「魅力的な事この上ないが、止めておくぜ。何せ目の前の大馬鹿野郎と来たらたった一ヶ月で此処まで来たんだ。

 ーーー此処で退けば、取り返しのつかない事になる。だから、柄にもなく無茶をやる!」

 

 そこでクロウは全ての感情を飲み干すように一度大きく息を吸い込んで

 

「ーーー展開(エヴォルブ)

 

 まるで罪を告解するかのようにその文言を呟いた瞬間クロウ・アームブラストの身体の各所から血が吹き出す。

 これこそがお前の罪の証だと言わんばかりに、クロウ・アームブラストの欺瞞を容赦なく暴き立てる。

 仮面を被り友人を欺いた罪。多くの無関係の者を犠牲にした罪。それらを容赦なく突きつけ、抉る。

 さあ狂ってしまえと、堕ちてさえしまえば楽園なのだと。

 そしてそれと共にオルディーネを漆黒の闇が包み込み、その姿を変えていく。

 神聖さを宿した守護神の如き姿から、まるで悪魔の如き禍々しさを宿したものへと。

 

 これこそが、騎神の第ニ形態。

 輝かしき決意を宿して“力”を手にした多くの起動者を奈落へと突き落としてきた魔の形態である。

 内部で相克を繰り返している《鋼の至宝》の力をより純度の高い状態で引き出す事により至る事の出来る形態である。

 そして、それはすなわち至宝の持つ呪いをその身に強く浴びるという事でもある。

 その呪いは起動者の心を蝕む。己が心の闇、力を振るうという事が如何なる結果を生むのかをどこまでも容赦なく突きつけ、堕としにかかる。

 

 故にこそ、これは極力使いたくない切り札なのだ。

 その力を制御するのが極めて困難な上に、使うだけで心の痛い部分を思いっきり刺されてえぐられ続けるような痛みが起動者を襲う。

 だが、代わりにその力は絶大だ。スピードもパワーも何もかもが第一段階の頃とは比べ物にならない。

 第一段階の騎神が機甲兵一個連隊に匹敵するというのならば、第二段階の騎神は、起動者の精神が保てばという前提だが、一個師団に匹敵するのだから。

 

「悪いが、この形態はマジでしんどいでな。とっとと終わらせてもらうぜ」

 

 忌々しそうな吐き捨てるような口調で、されど勝利の確信を抱きながらクロウは告げる。

 第二形態と第一形態の戦闘力は隔絶している。存在そのもの自体の格が違うような差がそこには存在するのだ。

 そう、これに対抗するにはそれこそ相手も第二形態にならなければーーー

 

「ーーー展開(エヴォルブ)

 

 瞬間、リィンの身体からもまた血が噴き出し始める。

 つきつけられるのは護るために殺すという行為の欺瞞。

 お前がやるのはどこまでも、どこまでも人殺しに過ぎないのだと容赦なくリィン・オズボーンの有する矛盾をそれは責め立てる。

 

 地獄を見た。リィンの殺した兵士の遺族が泣きながらその遺骸に縋っている。涙を零しながら、「人殺し!」とその遺族はリィンを責め立てる。殺された兵士は友人であるフリーデルの家族であった。

 地獄を見た。リィンの行った帝都での戦いの時に発生した瓦礫に押しつぶされた罪なき民の死体がそこに転がっている。瓦礫に押しつぶされたのはトワの家族であった。トワが涙を流しながら詰め寄ってくる、「どうしてあんなところで戦ったのか」と。ちゃんと誰が犠牲になるのかを本当に考えたのかと。

 地獄を見た。人質に取られたフィオナをリィンは見殺しにした。身内を人質に取られたからと言って屈する等軍人に在るまじき行為だからだ。涙で顔を歪めたエリオットが問いかける。「どうして姉さんを見捨てたの?」と。

 

 地獄を見た。地獄を見た。地獄を見た。地獄を見た。地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄を地獄をーーー作った。数千の味方を犠牲にして、数万の敵を殺した。屍をうず高く積み上げ続けるーーー護るためにと自分は嘯いて。歩き続ける、敵と味方の屍を踏みしめて。どこまでも自分は進み続ける。

 

 この光景(・・・・)こそが自分の作り上げるものなのだと容赦なく突きつける。

 こうまでして一体お前は何を護るのか?と。お前等結局はただの人殺しに過ぎないのだとどこまでも容赦なく突きつける。

 それをリィン・オズボーンは飲み干す。痛みを感じないわけでは決して無い、されどその歩みは決して止めずリィンは走り続ける。自分に出来る事はこれを背負い続ける事なのだからと。

 

 そして、そんな起動者の思いに呼応するかのように灰の騎神はその姿を変えていく。

 灰色だったその機体はマグマの如き赤黒いオーラを纏い。まるで地獄に住まう鬼のように、禍々しき悪魔の如き姿へと。

 此処にリィン・オズボーンと灰の騎神は第ニ形態へと至った。

 総ては目の前の敵手を超える(殺す)ために。奪った犠牲に報いるためにと。

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 

 その光景に今度こそクロウは絶句する。

 3年だ、自分がこの第二形態へと至るのには三年かかったのだ。

 それもヴィータという相棒の補佐を受けて、何度も何度も制御に失敗して実戦で使えるようになったのはようやくだ。

 自分でも、これを使えるようになったのはついこの間マテウス・ヴァンダールとの戦いを経てようやくだったのだ。

 だというのに、目の前の男はわずか一ヶ月でその境地へと、当然のように至ったというのか。

 

「ーーーその覚悟に敬意を払おう、我が宿敵よ。故にこそ、決して譲りはしない。勝つのは俺だ」

 

 自らの心の闇にでも向き合って尚も勝利を掴み取ろうとする宿敵の有り様にリィンは心からの敬意を評してされど、揺るがぬ鋼鉄の戦意を以て告げる。

 

「クソッタレがぁ!!!」

 

 そして再び二人の英雄は激突する。戦いの規模を激化させて。

 どこまでも激しく、激しく激突し合う。どちらも決して譲れぬ思いを掲げて。前任者たちの行いをなぞるかのように。

 あるいは永劫に続くかと思われたその戦いは、貯蔵霊力という限界により幕を下ろす。

 流石にどちらも孤立して、自軍に帰還できない等という愚を犯す事は出来なかった。

 

 《ドレックノール要塞攻防戦》は完全な膠着状態へと陥った。

 蒼の騎士と灰色の騎士は上空で死闘を繰り広げる。誰にも邪魔させないとばかりに。それは歴史としてではなく、神話として語り継がれるが如き光景であった。

 地上での戦いもまた均衡状態になっていた。オーレリア将軍とウォレス将軍はありとあらゆる戦術を以て突破を図るが、鉄壁のミヒャールゼンはその尽くをはねのける。時に突破されかかる危うい局面へと陥っても、最後まで踏ん張り続けて最後にはその攻勢を凌ぐ。

 

 そうして死闘が繰り広げられて8日が経過した12月22日、両軍の下へと衝撃的な報告が飛び込む。

 ログナー侯爵、貴族連合よりの離脱を表明。それはいよいよ以て貴族連合に後がなくなった事を示すものであった……

 




なんか気がついたら第二形態になるってのも味気なくね?セカンドフォームになるって言ったらもっとこう格が違う感出したいよな。
→そういえば、騎神って悪魔だったり守護神だったりと割と対照的な伝承が残っているよな。第一形態は神々しい感じだし、第二形態は悪魔っぽい禍々しいっぽい感じにすればそれっぽいんじゃね?
→でもほいほいセカンドフォームになれるなら、なんでわざわざ第一形態の状態で戦うのってなるよな?
→よし、ゼロインの影装からパクろう。

今回の騎神の第二形態の設定はZero Infinity -Devil of Maxwell-という作品の設定を参考にしています。
第ニ形態になった騎神だったらクロスベルの神機ともかなりいい勝負をする想定です。

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