ⅣのPVは色々感想があったんですが一番に浮かんだのは「あ、クレアさんは本当にブレブレすぎてある意味ブレてない平常運転だな」でした。
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今後の展開を考えて終盤部分を修正しております。
ミヒャエル・ギデオン、その名前を目にした瞬間にリィンの手は自然とその本へと吸い寄せられていた。
何故ならばその男は数ヶ月前に死亡した帝国解放戦線幹部《G》の名であったからだ。
元々は学術院の准教授を努めていたが、激しい宰相批判を繰り広げてその過激さと事実無根の誹謗中傷を行ったが故に秩序を乱したという事でその職を失い、その事による恨みが彼を帝国解放戦線に投じさせたとそう情報局のファイルには記されていた。
その説明を読んだ時、リィンは違和感を抱いた。
たかだか一准教授に批判されただけで、圧力をかけて解任する等、余りにも賤しいやり口で、威風堂々たる父らしくない行いだったからだ。
そもそも革新派の有力者が激しい批判に晒される等日常茶飯事だ。長年に渡り帝国に君臨してきた大貴族達は、その金脈と人脈を帝国のあちこちに張り巡らせている。当然お抱えの学者も多く抱えており、それこそ息子であるリィンとしては聞いているだけ、読んでいるだけで眉を顰めるどころか、目の前に居たらすぐさま八つ裂きにしてやりたいと思うような父に対する誹謗中傷を行う学者、有識者、ジャーナリストを自称する貴族の犬共がとても数え切れぬ位に存在する。
そしてそんな罵詈雑言等意に介さずに鋼の意志によってどこまでも突き進み、有無を言わさぬ実績を以て黙らせてきたのがギリアス・オズボーンという男だったはずだ。だというのに、何故ミヒャエル・ギデオンに対してだけはそのような行動に出たのかとリィンとしては疑義を抱かざるを得なかった。
加えてリィンが疑問を抱いたのは、恨みからギデオンが解放戦線に投じたという一文であった。
確かにあの男は間違いなく父を恨んでいたし、許されざる行為に及んだテロリストであった。そういう意味でたどった末路についてリィンは全く以て同情するつもりはない。Gも含めて解放戦線の連中がたどった末路に関してはまごうこと無き自業自得なのだから。
だが、それでもあの男には恨みだけではない、ある種の
許されざる悪事を行ったテロリストだったとはいえ、その動機や思い総てを否定する事は出来ない。父の後継足る事を志す身としては、何が彼をそのような凶行に至らしめたのかはきちんと知るべきであった。
テロリストなのだから、敵なのだからその発言に一切耳を貸さない等というのはそれこそ許されざる怠惰であろう。
かくして激しい宰相批判を繰り広げられているのを覚悟の上でページを捲って見るとそこには至って理知的な文が綴られていた。
まず第一に著者であるギデオンは自分が貴族派を擁護する立場ではないという事を序文に於いて銘記する。
それは如何にも第三者で客観的な視点を装っているというわけではなく、真実貴族派に肩入れしているわけではない事をアピールするために、オズボーン宰相の行った改革への一定の評価を下す。
卓越した指導者であり、その施策の多くは確かにエレボニアと平民の大多数に対して益を齎したと強力なリーダーシップを持った当代の偉人である事は間違いないと序章に於いてはむしろオズボーン宰相に対して好意的とさえ言える内容が綴られている。
此処だけ読めば、この作品が帝国政府から発禁を食らった本だと言う触れ込みを聞いたもの達はまず間違いなく、首を傾げるだろう。
本題に入りだすのは2章に入ってからだ、此処で著者は現時点での宰相が卓越した偉大な指導者である事は間違いないとした上で、その施策の陰について触れ出す。
著者が指摘するのは宰相の語る「激動の時代」という言葉だ。
導力革命の発展に伴い、あらゆる物事が加速した、故にこそ帝国はそんな時代に
「政治と軍事とは凡そそうした悪徳に一切手を染めないという事は不可能である事は百も承知である」と前置きしつつ、ギデオンは単なる難癖で終わらせないために、その綿密な調査と統計によってたどり着いた膨大な調査の結果を具体的な数字と共にそこに記していく。
「それでも、
宰相閣下が導く先にあるものそれはすなわち国家が国民を護るためにあるのではなく、総ての国民が国家のために奉仕する『総力戦体制』であるのだと警鐘を鳴らす。
エレボニア帝国は覇権国家となるべく、勝利を目指しどこまでも際限なく闘争と拡大を続けていくーーーそして帝国という巨大な焔は周辺諸国を煽りつつ呑み込んで行き、時には憎悪という薪をくべられる事で際限なく大きくなっていく。
そして当然だが周辺諸国とてそれをただ黙って見ているはずもないーーー帝国という巨大な焔に対抗するために自らもまた大きな焔と化す。
かくして当然の帰結として、戦争は起こる。それもこれまでのような軍と軍の激突によって勝敗を決していた、大半の国民にとってはある意味他人事であった局地戦とは全く異なる、別次元の国力の総てを投じて行われる『総力戦』という史上類を見ないほどに激しく、悲惨な形となって。
そして一度始まってしまったその戦いは早々には終わらない。何故ならばどちらも国の存亡がかかっているのだから、
そんな善悪と倫理が溶け落ちて、誰もが“勝利”に焦がれて戦い続ける“闘争原理”に支配されたディストピアが待っているのだと、ギデオンは恐怖と共に警鐘を鳴らす。
愚にもつかぬ妄想と取られても構わない、個人への誹謗中傷、貴族派の回し者だという非難を覚悟の上で。
「願わくば一人でも多くの心ある人たちの目に止まらんことをーーー」そんな痛切な願いを込めた一文によって本は締めくくられていた。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
読み終えたリィンはしばし、その場で固まる。
愚にもつかぬ妄想ーーー等と笑い飛ばす事は出来なかった。
何故ならば彼には
蓄えた知識が、養ってきた見識が、そしてあの日以来に目覚めた統合的共感覚が、ギデオンの語った内容が正鵠を射ていることを。
何よりもギデオンの語った内容が正しいと考えれば、リィンの抱いたギデオンへの「父らしくない」対応の理由が説明できてしまうのだ。
ギデオンが学術院の准教授の座を負われたのは“根も葉もない誹謗中傷”を行い、秩序を乱したからでは断じて無い。
むしろその逆、彼の推論は正鵠を射ていた。そう射すぎていたのだ。自分に対する罵詈雑言など意にも介さない父が
そうミヒャエル・ギデオンは学術院の人間として在るまじき無根拠のデマを流したからその地位を負われたのではない。
真相にたどり着いてしまったが故に、圧力をかけられて潰されたのだ。
天地がひっくり返ったような衝撃がリィンを襲う。
ずっと自分は父の背中を追い続けてきた、父の目指す地平が自分の目指すところだとそう無邪気に信じていた。
故に亡き父の遺志を継ぐ事こそが自分の為すべき事だとそう信じていた。
だが違ったのだ。自分と父の目指すところは同じ等ではなかった。
何故ならば鉄血宰相の、亡き父の導く先が総ての人間を闘争へと誘う総力戦体制にあった事だとわかってしまったから。
それはリィンにとっては決して認められぬ事だ。
何故ならば彼の願いは徹頭徹尾、祖国の民に戦いという地獄を味合わせないために、代わりに自分がそれを担う事にあるのだから。
地獄には自分一人が堕ちる、故に愛する民には平穏をーーーそれこそが彼が軍人となった理由である。
愛する民総てを地獄へ誘う総力戦体制など、断じて認められるはずがない。
「父上……貴方は何故そのような地獄を作ろうと……」
わからない。ずっとわかった
帝国を侵し蝕む呪いをなんとかするためだとしても、そのために帝国の民を犠牲にしては意味が無いではないか。
共和国の全面戦争へと突入すれば犠牲者の数は数万どころでは到底足りない、数十万数百万へとのぼるはずだ。
それも犠牲となるのはもはや命を賭すことを覚悟した軍人ばかりではない、温かな世界で幸せに暮らすべきだった人達も死んでいくのだ。
あるいはそれさえも
多数のために少数を犠牲にするという点では何ら変わらない、ただ犠牲とする数が数千数万の単位から数十万数百万となっただけだと。
「俺は感謝すべきなのだろうか……アイツに……」
愛する父にして帝国の偉大なる宰相を討った仇だとそう自分は思っていた。
だが、父への疑念が生じた今、間違っていたのはこちらだったのではないかとそんな疑念がリィンの脳裏に過る。
「いや、違う。これはあくまで状況証拠に過ぎない」
ミヒャエル・ギデオンの記した内容は決して無根拠な誹謗中傷ではなかったし、状況証拠もその推論の正確性を裏付けるものではある。
だが、それでもこれはあくまで予測に過ぎず、確たる証拠が存在するわけではない。
ならば、ギデオンの記した内容が単なる杞憂であったという可能性とて十分にあるのだ。
何せ、ギリアス・オズボーンはもはや死んだのだから。その真意がどうだったかを確かめる術はない。
そう、父が何を考えていたのか、それはもはや残された自分達が考えるしかないのだ。
ならば、例え故人に対する美化だと言われようと、自分は自分なりの理想を実現させよう。
それこそが鉄血の後継たる自分の役目なのだから。
「残念だよ、ギデオン殿。出来ることなら、貴方が解放戦線などというテロ組織に身を投じる前に出会いたかった」
祖国に災いを齎すテロリストと断じ、死んだ敵の中にあった祖国を愛し、憂う心。それをリィンは余さず受け止めた。
それは確かに推論であり、杞憂であったかも知れない。
解放戦線の行ったテロリズムを肯定するわけでも断じてない。
されど、その行動の中には確かな愛国心があった事、それをリィンは認めたのだ。
かくしてリィン・オズボーンの気高く高潔なる意志と鋼鉄の理性によって押さえつけられていた父の仇に対する“憎悪”は昇華される。
何故ならば、この時彼は改めて知ったから。父を否定し、殺した者たちの中にあった思いを。彼らにとっての
「《G》、いやミヒャエル・ギデオン殿。貴方の犠牲と想いは決して無駄にはしない。
故にこそ私は往こう。この国に繁栄を齎すためにも」
ずっと自分は父と同じ夢を抱いていたと信じていたーーーしかし、もはや無邪気にそう言い切れる子どもではない。
そして父を討った貴族達の作ろうとする貴族による支配も否定するーーー既に時計の針は進み始めているのだから。この国は生まれ変わらねばならない時が来ているのだ。
ならば、自分の思い描く理想の国とはどんな国なのか?
そう心の中で自分自身へと問いかけたリィンの脳裏に過るのは数日前に見た平民も貴族も関係なく笑い合う絆で結ばれた頼もしく、眩しい後輩達。
そう彼らのような在り方こそが在るべき人の姿だという事にリィンは信じている。
同時にそんな彼らが続く事が出来るように、道を切り開く存在が必要なのだという信念もますます強固となる。
「平民も貴族も関係なく、誰もが笑顔で生きられるーーーそんな国へとするために。未来をこの手で切り開こう」
道を誤りテロリストとして去った真の愛国者へと心よりの敬意と哀悼を捧げながらリィンは宣誓する。
されど、その心の中には確かな父に対する“疑念”という楔が打ち込まれた。
鉄血宰相亡き今、それは大した意味を持たないのかも知れない。
もはや彼の父は居ないのだから。その真意をする術はない以上、思い出は美化されていき、いずれはこの抱いた疑念もあくまで状況証拠によって導かれた推論に過ぎないと結論づけられ、彼の中の父は“美しい思い出”と化すだろう。
全面的な肯定をする事は出来ないし、その覇道によって傷ついた者も確かに居たが、それでも祖国を繁栄に導こうとした偉大なる宰相にして偉大なる父として。
だが、もしも宰相が蘇るような事でも起きれば。
その時こそ、灰色の騎士は選択を迫られる事になるだろう。
彼の“手駒”で終わるのか、それとも父の思惑をも超えて己自身の物語を紡ぐ、真の英雄となるのか。
リィン・オズボーンという英雄の真価はその時にこそ測られる事となるのだ……
Ⅳではなんか割とあっさり共和国負けそうムードが漂っていますが
この作品では帝国と共和国がガチの全面戦争に至った場合泥沼の戦いとなり、現実で言う第一次大戦クラスの悲惨な事になるとしています。
理由?そうしないとヨルムンガンド作戦でまず間違いなく先陣きって共和国軍を帝国無双とばかりにちぎってはちぎっては投げして、特にオズボーンパッパに反旗を翻す理由がなくなるからだよこの英雄。
まあ現実でも戦争を起こす時というのは往々にして短期決戦を目標にしてやってみたら想定外の連続で泥沼化ってのが世の常なので、原作のアレもそのパターンかもしれませんが。
なおこれは現時点での話なので、進める内及びⅣをやってみて変わる可能性が大ですので「俺の占いは三割当たる!」位の信憑性で聞いていただければと思います。
Ⅳをやってみた結果やっぱりパッパの忠実な腹心としてヨルムンガンド作戦で先陣きって共和国をちぎっては投げちぎっては投げしている可能性も多いにあります。