(完結)灰色の騎士リィン・オズボーン   作:ライアン

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完結までの大まかな流れと着地点は浮かびました。
とりあえず原作よりも帝国へのダメージが少ない形で終わるかとは思います。
リィン・オズボーンは帝国の闇を切り裂き、光を齎す“英雄”ですから。
まあその過程でズタボロになったりするけど、英雄譚に苦難と慟哭はつきものだからしょうがないよね!


清廉なる独裁

 

 特務支援課。それは数々の難事件を前にしても諦める事無く戦い続ける、クロスベルの住人にとっての英雄の名であった。つい、先月までは。

 風向きが変わり出したのは、10日程前。クロスベル総督へと就任したルーファス・アルバレア卿の推薦によってリーダーたるロイド・バニングスを筆頭に支援課メンバーが帝国の貴族へと列席される事が発表されてからだ。

 これによってクロスベルの世論は二分された。片方はあくまで支援課をクロスベルの英雄として信じ続ける者、そしてもう片方は帝国に尻尾を振ったと認識する者たちだ。

 無論彼らに帝国の犬に成り下がるつもりなどなかった。ディーター・クロイス大統領を逮捕したのは、あくまで彼の性急過ぎるやり方と至宝という奇跡を頼りにした、政治など必ず何処かで破綻を来すと考えたからこそだ。それもキーアというロイド達にとって大切な宝物である少女の人格を潰すという最悪の形によって。

 そこに自己の栄達を目指す私欲等は存在しない。彼らは誓ってクロスベルと何よりも大切な愛しい少女の宝石のような笑顔を守るためにこそ、行動したのだ。しかし、世の人間総てが彼らのように高潔な者ばかりではなく、何よりも“若き英雄”等というのは崇敬と同時に必ず妬みと呼ばれるものも買っているものだ。

 かくしてルーファス・アルバレアの策はこの上ない効果を発揮してクロスベルの“若き英雄”達を追い詰めていくのであった……

 

 

「よう久しぶりだな、元気にしていたか」

 

「セルゲイ課長」

 

 呼び出しを受けて総督府を訪れたロイド・バニングス軍警少佐は最近は久しく顔を合わせていなかった人物とエレベーターの中で偶然にも再会していた。

 

「はは、もう課長じゃないっての。それどころか、階級的にはおまえさんの方が俺より上なんだぜ?」

 

 セルゲイ・ロウ軍警大尉は笑いながら告げる。

 そうなのだ、かつての上司であり、ロイドを遥かに上回る経験を持つセルゲイでさえも、いまや階級的に言えばロイド・バニングスは上なのだ。

 エレボニアへの併合に伴い、クロスベル警察はクロスベル軍警察と改められ、階級もまた軍隊に準じたものへと変えられた。そして、それにあたってロイドに与えられた階級はなんと、軍警少佐。

 クロスベル警察きっての腕利きで、1課のエースと謳われるアレックス・ダドリーでさえ、与えられたのは軍警中尉であり、目前の上司のような各課のトップでさえ、軍警大尉なのを考えれば、どれほど異例な抜擢かはわかるだろう。

 今や、ロイド・バニングスは局長であるダリル軍警大佐、副局長であるピエール軍警中佐に次ぐクロスベル警察のNO.3という立場なのだ。当然、ロイドのような若造がいきなり、自分よりも上になって古参の人間にとっては面白いはずもない。

 頑張っている後輩に対しては好意的になれても、自分の上に立つことになった若造相手には多少なりとも妬心が出てくるのはある種必然というものであるーーーましてや、それに帝国に媚びて(・・・・・・)その地位を手に入れた等という疑惑がついてくれば尚更である。

 

「辞めて下さいよ課長、単純な自分の実力だけで今の地位を手に入れたわけじゃない事位俺にだってわかっています。

 ……正直、侮っていました。冷や飯食らいになることも、あるいはキーアの件で手配される程度の事は覚悟していました。でもまさか、こんな手で来るなんて……」

 

 改めてロイド・バニングスは自分がまだ未熟な若造でしかない事を実感させられる。

 捜査官として様々な事件を解決した事で、しがらみの中で解決の糸口を探る手段に関してロイドは既に一流と言っていい。

 だが、権力闘争等というステージの戦いにおいて彼はまだ余りに若く未熟だった。

 

「……悪いな、本来ならそういう事からお前さん達を守るのが俺の役目だった。

 上からの圧力、様々なしがらみ、そういう面倒なアレコレを俺が引き受けて、若いお前たちが“壁”を乗り越えるための足場を作ってやること、それが特務支援課というチームを作った目的だったんだが……」

 

 しかし、敵は余りに強大だった。

 何せ相手は今やクロスベルの権力をその一手に握る、クロスベル総督様なのだから。

 警察の一課長等では到底抗し続ける事のできる存在ではなかったのだ。

 何せ、セルゲイ等よりもはるかに力があり、かつ老練と呼べる技量を持つマクダエル議長でさえも圧倒的な劣勢を強いられているのだから。

 

「謝らないで下さい。課長がどれだけ俺たちのために、陰で動いて下さって居たかは俺たち四人全員が知っています。確かに、帝国は余りにも強大です。それでも、俺は、いいや俺たちはまだ誰一人として諦めてなんかいません。

 同僚や先輩方から、冷たい目で見られるのは確かにキツいものがあります。だけど、そもそも支援課が始まった時もそんな感じだったんですから。自分自身の行動によって、また信頼を手に入れてみせますよ」

 

 それまで称賛していた者たちが途端に掌を返したように罵倒しだす、そんな人間不信に陥って当然の状況下に置かれながらも、与えられた地位に奢るでもなく、わかってくれない周囲の無理解に怒りをこぼすでも無く、ただひたむきに自分に出来る事をやり続けるだけだと宣言するその清廉でされど、そこに宿った熱き心を確かに感じる、その元部下(・・・)の言葉を受けて、セルゲイは眩しそうに目を細めて

 

「……ったく、本当に大きくなりやがって。確か、来年には成人だったよな?

 成人したら一つ、飲みに付き合えよ。俺が酒の飲み方ってやつをお前に教えてやるからな」

 

「はは、ランディとも約束していますし、そのときは3人で是非」

 

 何もかもが変化していく激動の最中、それでも変わらぬ確かな絆、それをロイド・バニングスは感じるのであった……

 

 

・・・

 

「良く来てくれた、ロイド・バニングス軍警少佐、セルゲイ・ロウ軍警大尉、アレックス・ダドリー軍警中尉。

 三人共忙しい中、足労をかけて済まないな」

 

 湛える微笑には力強い父性と優しい母性に満ちている。覇気に満ち溢れたその眼差しの中には、相手に向ける心からの敬意が満ちて、春の日差しのように暖かかった。

 

「……准将閣下からのお呼び出しともなれば、従うのは警察官として当然の義務です」

 

 ぶっきらぼうな様子でアレックス・ダドリー刑事は告げる。

 その言葉は私情は別として、公人としての義務は果たすという義務感に満ちていた。

 

「ええ、なんと言っても貴方に全面的に従うようにと警察局長直々に全警察官に命じられていますのでね。給料を払ってもらっている身としては、従わざるをえんでしょう」

 

「それで、自分達が呼び出されたのは一体如何なる理由によるものでしょうか?オズボーン准将閣下(・・・・・・・・・)

 

 そう告げて、ロイド・バニングスは目前の人物を見つめる。

 185リジュの堂々たる体躯。その身には溢れんばかりの活力が満ちている。

 纏う軍服の胸には輝く豪奢な勲章がいくつも存在し、目の前の人物が今日の地位を自らの功績によって手に入れた事を証明している。

 皇帝直属の筆頭騎士にして灰色の騎士の異名を持つ、帝国正規軍准将にして帝国の若き英雄。

 それがほんの一年前はまだ学生であった目の前の人物の今の立場であった。

 

「君たちを呼んだ理由は他でもない、帝国政府と総督府より下されたある要請(オーダー)の遂行のためにその力を借りたいと思ったからだ」

 

 告げられた言葉にロイド・バニングスは身構える、占領地の統治において発生する現地住民の取締り、それの遂行を現地の治安組織に行わせるというのは常套手段である。

 そうすることによって、現地の人間の意志と立場を分断させるのだ。だからこそ、自分達をこうして厚遇した後に待ち受けているのはおそらくそうした踏み絵だと

 そう別れ際に掛け替えの無い仲間(当人にそういうと何故かどこか物足りない表情をするが、ロイドとしては全く以て理由が不明で困惑している)がした忠告を思い出して。

 

「………その要請とは?」

 

「クロスベルの腐敗と闇を一掃せよ、それが私に下されたオーダーだ」

 

 瞬間、吐き出されたのは燃え盛るような覇気。

 そこには確かな“怒り”が宿っていた。

 そうして打って変わった穏やかな口調で

 

「ロイド・バニングス軍警少佐、セルゲイ・ロウ軍警大尉、アレックス・ダドリー軍警中尉、私は君たちの事を高く評価している。

 腐敗に塗れたこの地にて一点の曇り無く、祖国のために戦い続けた君たちの在り方は尊敬に値するものだ。君たちのような人材こそ、真に国の宝と称すべきだろう」

 

 告げられる言葉は上段から見下したものではなく、むしろその逆。

 リィン・オズボーンは心よりの敬意を目の前の人物達に抱いている。

 それはおだてでもなんでもない、本心から吐き出されたものだ。

 

「そんな君達だからこそ、抱いたはずだ“怒り”を。

 納めた税が民のために正しく使われる事無く、醜い豚共を肥やすために使われる事に。

 善良な民草達の生き血をすすり続ける悪党共の存在に」

 

 続いて吐き出されたのは激しく焔のように燃え盛る怒り。

 ロイドたちに向けるのとは真逆の、そんな奴らを今すぐにでも燃やし尽くしてやりたいのだと告げる嚇怒の炎だ。

 そうして帝国の英雄は微笑を湛えて

 

「今こそ、我らの間に存在する遺恨という“壁”を乗り越えよう。

 そして、手を取り合って共に進もう。

 笑顔に満ちた幸福な明日を目指して。

 そのために、君たちの力を私に貸して欲しい」

 

 告げられるのはどこまでも誠実さに満ちた言葉。

 本気なのだろう、語る言葉に虚飾はない。

 リィン・オズボーンは心より民の幸福を願っているのだと、そう思えるものであった。

 

「……ま、さっきも言ったように閣下の指示に従うのが俺たちの仕事ですからね。

 警官としての職務を逸脱しない範囲でなら、当然協力させて貰いますよ」

 

 年の功というべきだろうか、その高潔な意志にダドリーとロイドが呑まれかけた中、口を開いたのはセルゲイであった。

 これは別段二人がセルゲイに意志という点において後塵を喫しているというわけではない。

 むしろその逆、高潔で情熱に燃える若い二人だからこそ、年齢を重ねたセルゲイよりもリィンの言葉に感化されかけたのだ。

 何故ならば、リィンの語った不正を糺すためにこそ両名は警官となったのだから。

 

「ならば、問題ないな。君たちにお願いするのはまさしく職務に全霊を以て取り組んでもらいたいというそれだけの事なのだから」

 

 そしてそんなセルゲイの様子に動じるでも無くリィンは微笑を湛えたままに告げる。

 それは先の言葉が二人を取り込むために打算で吐かれたものではなく、本心より告げられた事を意味するものであった。

 

「全責任は私が持つ。有形無形の圧力に晒されて、これまで君たちが逮捕する事が出来なかった悪党共を拘束せよ。

 そして、そのために帝国軍情報局と鉄道憲兵隊、それぞれ一個小隊への指揮権を君たちに委ねよう」

 

「「「ーーーーーーーーーーーーーーーー」」」

 

 告げられた言葉に三人は絶句する。

 つまり灰色の騎士はこう言っているのだ、責任は自分が取るから好きにやれと。

 そのための手足もこちらで用意するのだと。

 

「……質問があります。議会に存在する俗に帝国派と言われる議員の方々に何らかの配慮をする必要は」

 

「一切ない。腐敗を一掃するために必要なのは公正さだ。

 どれほどその血が高貴であろうと、あるいは多くの財産を抱えていようとも法を破ったものには断固とした措置を以て臨む。

 上がそうした徹底した姿勢で望んで、初めて人は襟首を正して生きられるものだ」

 

 暗に帝国に反対するものを粛清せよという事かを問うダドリーの言葉に対する返答は、そんな回答。

 それは自治州時代、ダドリーがずっと望んでいて、されど出来なかった紛れもない“正義”の実現で……

 

「他に何か必要なものはないかな?君たちが望むのならば、私の権限が及ぶ範囲ではあるが叶えよう

 流石に機甲部隊を一個師団貸して欲しい等という願いには叶えられんがね」

 

「それでしたら准将閣下、一つお願いがあります。

 俺の仲間を。ランドルフ・オルランドにエリィ・マクダエル、そしてティオ・プラトーにノエル・シーカー。

 彼らを俺の指揮下に加えさせて頂けませんか?彼らと一緒に俺は多くの壁を乗り越えてきました。

 彼らが一緒でこそ、俺は力を本当の意味で発揮できるんです」

 

 さあどう出る、リィン・オズボーン。

 告げた瞬間にロイドの心を過ったのは若干の期待とそんな目前の人物の意図を必死に推し量ろうとする思いであった。

 自分達が離れ離れになった事に帝国政府と総督府の思惑が絡んでいる事は明白だ。

 ならば、自分のこのお願いは間違いなくそんな政府の意向に反するものだ。

 はぐらかそうとするのか、それとも却下するのか。どちらにせよ、此処まで言っておきながら断るにはそれ相応の理由付けが必要なはずだ。

 その理由付けの仕方からわずかでもいい、突破口を見つけられればとそんな思惑から発せられたロイドの言葉にリィンは微笑を浮かべて

 

「ああ、わかった。そうするように取り図ろう」

 

 ロイドの言葉に快諾の旨を伝えていた。

 思わず唖然とするロイドを他所にセルゲイは何かに気が付いたように苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

「さて、他に何か要望は無いかな。何でも言ってくれたまえ。

 叶えられるかはともかくとして、言うだけならばタダなのだからな」

 

「そういうことでしたら私の方も同じ一課のエマ少尉を補佐役につけていただきたい」

 

 そしてロイドの要望が容れられたのを見てダドリーもまた続く。

 与えられた職務に裏がないというのならば、それに全霊を以て精励することこそ自分の役割なのだと信じて。

 

「ああ、承知したとも」

 

 その後もリィンは次々と必要なものとして挙げられていったものに快諾の意を伝えていき

 

「さて、必要なものはこんなところかな。

 それでは共にこの地から腐敗を一掃するために尽力するとしよう。

 私達ならば、必ずや成し遂げる事が出来るはずだ。

 何らかの妨害にあった際は報告してくれたまえ。何とかしよう(・・・・・・)

 

 最後にそんな青空のように晴れやかな笑みに見送られながら、三人は部屋を跡にするのであった……

 

 

・・・

 

「……やられたな」

 

 帰りのエレベーターの中でポツリとセルゲイは呟く。

 

「セルゲイさん、やられたとは一体どういう?」

 

「ダドリー、お前さん今回の件一体どう思った?」

 

「……正直に言って望外の申し出でした。予算も人員も好きに使って構わないし、政治的な圧力は上が総てはねのけてくれるなど今までは到底望めない事でしたから」

 

 アレックス・ダドリーはこれまで多くの壁にぶつかってきた。

 捕らえたはずの犯人が政治的な圧力によって起訴まで持っていけないという事例などもはや数える事も馬鹿らしくなるほどに経験してきた。

 それを取っ払ってくれるというのだ、警官として燃えないはずがない。

 

「ええ、彼は本気でクロスベルの腐敗に怒っていた。

 それを何とかしたいという思い、それに嘘はなかったんでしょう」

 

 それに続くロイド・バニングスの言葉もまた喜びに満ちていた。

 離れ離れになった仲間とまた会える事もそうだが、一年前に語り合った少年と確かに同じ思いを抱いているのだと確かめる事が出来た事で。

 

「ああ、そうだな。奴さんは本気も本気。大マジだ。語った言葉に嘘なんてものは欠片たりとも含まれちゃ居ないだろうさ。だからこそ、性質が悪いんだがな」

 

「……課長?」

 

「セルゲイさん、それはどういう?」

 

「簡単な話さ、奴さんの言った事は自治州時代にはどれも出来なかった事だ。

 そのせいで俺たち警官は市民から散々な言われようだったよな。

 そんな問題が、帝国に併合された途端にまたたく間に解決されていくんだ。

 果たして、市民の皆様方はどう思うだろうな?」

 

 告げられたセルゲイの言葉に二人は息を呑む。

 

「奴さんは本気だ。実現出来るだけの力がある。

 マフィアの連中だって敵じゃないだろうし、クロスベルの議員連中からの圧力なんてそれこそ歯牙にもかけんだろうさ。

 かくしてクロスベルの腐敗と闇は一掃されていくわけだ。帝国の英雄、灰色の騎士様によってな」

 

 清廉なるその刃がクロスベルに掬っていた闇を一掃していくその姿にクロスベル市民は畏怖と同時に、どこか痛快な感情を抱くだろう。

 「“悪党”にしかるべき裁きを」それは人の持つ普遍的な願いなのだから。それを叶えてくれる者へと喝采をあげるのは自然な流れだ。

 そして何時しかこう思うようになるだろう。自治州時代よりも今の方が幸せなのではないか?と。

 

「でだ、この辺の事情がわかっても……お前さん方、仕事から手を抜けるような性格していないだろう?」

 

 そのセルゲイの言葉に二人は頷く。

 そう、何故ならばロイド・バニングスとアレックス・ダドリーは高潔で理想に燃える気高き本物の警官だから。

 それが結果として帝国の利になるからと言って、職務から手を抜くことなど出来ようはずもない。

 だって命じられたのは二人がずっと、行いたくて、それでも“壁”にぶつかって出来なかった事なのだから。

 

「その辺の性格を読み切っての事なんだろうが……あるいは手を抜いたら抜いたで構わないのかもしれねぇな。

 そうしたら職務怠慢を理由に更迭すりゃ良いだけの話なんだからよ。

 そうしてクロスベルの警察などは宛てにならなかったとなった後で、あの英雄様が直々に解決していけばどの道市民の支持は得られるわけだ」

 

 何故ならばリィン・オズボーンには溢れんばかりの情熱とそれを実現するだけの実力、そして更に後押しをするだけの権威が後ろについているのだから。

 常人が地道に時間をかけて解決していく事を、まさしく快刀乱麻の如く解決していくのだろう。

 何故ならば、彼は真実“英雄”だから。属州だろうと見下す感情等一切無く、心の底より民の幸福とそれを阻む寄生虫と悪党共に怒りを燃やしているから。

 有能なトップによって行われる高潔で清廉なる独裁は、迂遠なる民主主義よりも遥かに劇的にかつ颯爽と事態を解決していくものだから。

 あるいはそれこそ、彼に心酔する人間も出てくるかもしれない。何故ならば、彼は紛れもない英雄だから。

 話す前には義務感しか存在していなかったダドリーが、このわずかな時間で好意を抱いてしまうほどに。

 

 ディーター・クロイスの奇跡による救済を否定したクロスベルの英雄に待ち受けていたのは、そんなディーターよりもはるかに非の打ち所のない高潔で清廉なる他国の英雄(・・・・・)によるデウス・エクス・マキナであった……

 

 




「責任は俺が取る。こんだけの人員を用意したけど他に何か必要なものはあるか?
なんでも言ってくれ、お前たちならきっとできると信じているぞ」

これは理想の上司ですね!

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