「空の女神も照覧あれ!クロスベルの地と帝国に永久の繁栄を!!!」
響き渡る鋼鉄の宣誓。
それはクロスベル自治州がその70年の歴史に幕を下ろし、正式な帝国領となった事を改めて宣言するものであった。
もう一つの宗主国たる共和国は2ヶ月前の大敗の痛手から回復しておらず、クロスベルの“英雄”達には首輪が嵌められ、帝国の英雄《灰色の騎士》によって帝国への畏怖を植え付けられたクロスベルの民にもはやそれに抗う術など無かった。
しかし、そんな中地下にて蠢く者が居た。
それはかつてクロスベルの守護神と謳われ、今や帝国軍によって追われる身となった一人の男。
妻を失った悲劇によって心へし折られ、一度は奇跡に縋ったが、それでも若き意志を目の当たりにして再び希望を胸に立ち上がった一人の男。
元クロスベル独立国国防長官にして《風の剣聖》アリオス・マクレイン、その人であった……
進む。まさしくその異名が示すような疾風の如き、速度でアリオス・マクレインは魔獣を蹴散らしながら、ジオフロントの地下を進み続ける。
目標はジオフロントの中枢、クロスベルの総ての情報が集約されている集中端末室だ。
本土より帝国宰相が来ている今日この日、警備の大部分は当然ながら演説が執り行われるオルキスタワーへと集中している。
故にこそが、今この時こそがデータの初期化を行う最大の好機と見て潜伏中のアリオスは動いたのだ。
表での立場が有り、身動き出来ない
一部では特務支援課は帝国の走狗に成り下がったーーー等と罵倒されているが、アリオスの心に疑いなど欠片も存在はしない。
(アイツらが、ガイの遺志を継ぐ者たちが、この程度で諦めるはずがないのだから)
何故ならば彼はその目で見ているから。自分が屈した“壁”を前にしても、奇跡に縋る事無く、抗い続ける事を決めた眩しき若人達のその意志を。
(ルーファス・アルバレア……貴様の打った手は確かに見事だ。
だが、それでも俺はあえて言おう。貴様は、いや
帝国側はその策謀の為に特務支援課の面々を厚遇した。
地位という鎖によって彼らを封じ込める方策を選んだ。
それは確かにこの上なく強烈な一手で、なるほど。クロスベルの民の意志を分断させただろう。
だがしかし、同時に地位という鎖は、ある種の抗うための足場になったという事でもある。
自由に動けることこそ出来なくなったかもしれないが、代わりにある種の力をロイド達は手に入れたという事でもあるのだから。
妬みが、疑心が彼らの足を引こうとするだろう。だが、それでもアリオスは信じている。
彼らの持つ輝きは決してその程度の策謀に屈する程度の物ではないと。
故に今は、身動きの取ることの出来ない彼らに代わって自分こそが動こう。
アリオスにとって最後に残った宝石たる愛娘であるシズクは、レミフェリアの地の信頼できるとある人物に既に託している。
故に自分はこの命を惜しみなくクロスベルのために
そう決意してアリオスはジオフロントの中枢を目指して駆け抜けるのであった……
・・・
「此処が中枢か……」
その言葉と共にアリオス・マクレインは預かっていた初期化ユニットを取り出す。
これを用いる事で情報のバックアップを取りながら、クロスベルの機密情報が帝国に渡る事を防ぐ、それが今回アリオスがこちらに赴いた理由だ。
そうしてアリオスが作業に取り掛かろうとした、その時であった。
「ーーーああ、待っていたよ。《風の剣聖》アリオス・マクレイン殿」
「目標を補足。指名手配中の元クロスベル独立国国防長官アリオス・マクレインと断定。この地のシステムとの同調を完了。これよりプランに従い、この区画を封鎖します。」
響き渡るのは鋼鉄の宣誓とどこか淡々とした無機質な言葉。それと共に区画に存在するシャッターがまたたく間に封鎖されていき、逃げ道を塞いでいく。
そして現れたのは、アリオスがこの場には居ないと踏んでいた双剣を携え、エレボニア帝国においてアルノール家の象徴たる緋色の外套を纏った一人の青年とそんな青年に寄り添う黒衣の少女であった。
「……なるほど、まんまと俺はおびき出されたというわけか。今日この日ならば、貴殿も動く事は出来ないとそう踏んでいたのだが」
「ああ、そうだろうな。本来であれば、帝国宰相が本土より来ている記念式典ともなれば私が直々に警備を行うのが筋というものだ。
何故ならば帝国の威信がかかった式典の警備のために総督府の戦力をそちらに集中させる、今日この日こそが反帝国勢力にとってはそれ以外の場所で蠢動する絶好の機会なのだから。
帝国軍が血眼になって行方を追い続けていた目前の男も、必ず動くとそう踏んでいた。
「……名高き《灰色の騎士》が直々にとはな。随分と俺もまた買いかぶられたものだ」
嘆息しながら双剣を携えた目前の敵をアリオスは見つめる。
その構えに隙も油断も当然ながら微塵も存在せず、こちら側に叩きつけられる剣気は否応なくアリオスの持つ剣士としての本能を刺激する。
そこに1年前にみた未熟な少年の面影は全く無い。アリオスでさえも死を覚悟しなければならない“強敵”の姿が、そこには存在した。
「買い被り等ではないさ。ーーー風の剣聖殿。帝国は貴方の存在はそれだけ重く見ているという事だよ、A級遊撃士の立場に有りながら、陰でクロスベル独立のために蠢動していた元クロスベル独立国国防長官殿。
貴方には帝国への“反逆”の容疑と出頭命令が出ている。大人しく同行していただこうか」
今、この地で帝国に最も警戒されている人間が誰かと言えば、それは眼前にいる男ーーーアリオス・マクレインその人に他ならない。
何故ならば彼にはクロスベル独立のために暗躍し、クロスベル独立国の国防長官に就いていたという前科とクロスベルの守護神と謳われた名声と八葉一刀流皆伝という実力、その総てを兼ね備えた人物だからだ。
放置しておけば、反帝国勢力の旗頭と成りかねない特級の危険人物ーーーそれが帝国政府に総督府、そして情報局が出した結論だ。
それこそ、帝国最高峰の戦力たる灰色の騎士が、帝国宰相とクロスベル総督の警護を捨ててまでも投入される程に。
「悪いが、それは出来ない」
「何故だ?かつてクロスベル警察に所属し、遊撃士としてはA級にまで登り詰めた秩序の守護者たる貴方が、自らの罪を償う事は出来ないとでも?」
「……俺が裁かれるべき罪人である事に異論はない。
ままならぬ現実を前に心を折られ、“奇跡”に縋り、たった一人の少女に総ての責任を押し付けようとした挙げ句、この事態を招いたどうしようもないロクデナシ。
クロスベルの守護神等と持ち上げられていた男のそれが実態だ。いずれ、然るべき罰を受けねばならないだろう」
自身が大罪人である事、それを否定する気等アリオスには毛頭ない。
親友を殺し、その罪を裁かれる事もなくクロスベルの守護神等と持ち上げられて、陰で暗躍していた恥知らず。それが自分、アリオス・マクレインという男だ。
そんな男が裁かれもせずのうのうと生きていて良いはずがない、いずれ罰を受けねばならないだろう。
そう、その事に対してアリオスには異論など一切ない。むしろ、誰よりもその時を待ち望んでいるのが他ならぬアリオス自身なのだから。
「だがーーー」
そこでアリオスは愛刀を抜き放って
「俺を裁くのは“クロスベルの法”であって、お前たち“帝国の法”ではない。
ーーー俺たちが“奇跡”による救済に縋った挙げ句、現実へと立ち向かう気概を失った事が此度の事態を招いた。
ならばこそ、
俺が屈してしまった途方もなく大きな“壁”を前にしても今もなお諦めていない、アイツらの道を切り開くためにも。
帝国の英雄よ、全霊を以て抗わせて貰うぞ!」
叩きつけられるのは裂帛の闘志。
そこには逃避も陶酔もない、どこまでも清廉で研ぎ澄まされた一人の男の決意が漲っていた。
故にこそ、リィンもまたあらゆる説得は無意味だと悟って
「ーーー良いだろう。ならばその“意志”毎こちらは叩き潰そう。
そしてクロスベルの守護神と謳われた英雄の敗北というその事実を以て、この地の民に刻みこもう。
帝国には決して敵わないのだという“畏怖”を。魂の底にまで。
ーーーオライオン少尉、区画の封鎖を念入りに行え。この男だけはこの場にて確実に仕留めなければならない」
「承知致しました」
両者の闘志に呼応して爆発的に高まり続ける闘気。
肉眼で視認できる程の膨大な闘気の奔流が二人から発せられ、それは隙があれば援護をしようと考えていたアルティナに自分の割って入れる戦いではない事をこの上なく叩き込んだ。
「八葉一刀流弐之型皆伝アリオス・マクレイン」
「ヴァンダール流皆伝リィン・オズボーン」
「「参る!」」
足掻き続ける事を誓ったクロスベルの守護神と帝国の守護神はどちらも決して譲る事の出来ない思いを抱いて、此処に激突を開始した。
クロスベル最強戦力《風の剣聖》を相手にして、帝国に逆らう気が起きないように意志毎叩き潰してやんよぉ!と宣言する
傍らにツルーンペターンロリーンななんか作られた存在っぽい美少女副官を侍らせる帝国の英雄(皇帝直属の筆頭騎士にして宰相の実子)
うーん、これはボスキャラ。
なお、アリオス・マクレインはまごうことなきクロスベルの最強戦力だが
帝国におけるリィン・オズボーンは最高峰の戦力だが、コイツに匹敵する実力者がまだ他にもいる模様。
……これは駄目かもわからんね。