もしも武装錬金の再殺部隊が本気で勝ちに行ったら 作:さいとし
「見つけたぞ」
犬飼から一報が、再殺部隊の五人へ届いた。
『こちらでも捕捉した。現在、BC45付近。野営中だ』
「よし、根来はそのまま監視。戦部、円山。行けるか」
『無論だ。このまま突っ込む。レイビーズを連携させろ…!』
『アタシも準備OK。襲撃と同時に檻を作るわ』
阿吽の呼吸で二人が答える。かつては錬金戦団の厄介者だった再殺部隊のメンバーたちは、火渡戦士長の元で研鑽を積み、今や一個の群として完全に機能していた。
その先鋒にして司令塔は、軍用犬の武装錬金『キラーレイビーズ』の使い手、犬飼。彼の従える二匹の軍用犬は、普通の犬すら遥かに上回る嗅覚を武器に、常に部隊の先陣を切る。
「行くぞ。隊長は別方面ですぐには合流できんが、ヴィクターⅢと反逆者、ここで仕留める!」
『応!!』
無線越しにも、4人の覇気が伝わってくる。頼もしい仲間たちの返答に、犬飼は笑みを浮かべた。
「おおおおっ!」
戦士・戦部の十字槍が舞い、反逆者たちのテントを一撃の元に引き千切る。全戦士中最多のホムンクルス撃破数を誇る戦部の近接戦闘力は、戦士長・防人に肉薄する。
「むっ!」
だが、吹き飛んだのは野営道具のみ。テントの中はもぬけの殻だった。
「再殺部隊、か?」
背後からの問いかけに、瞬時に後方へと槍を向ける戦部。その両側から、茂みに偽装したビニールシートを跳ね除け、二人の戦士が襲いかかった。
「甘い!」
戦部の槍が風車のように回転し、死角からの奇襲を弾き返した。そのまま、正面から突っ込んできたもう一人の攻撃をも受け止める。突撃槍を手にした少年。紛れもなく、戦部たちの標的であるヴィクターⅢ、戦士・武藤だ。
「一人で仕掛けるとは良い度胸だ!」
叫んだのは、4本のブレード付きアーム『ヴァルキリースカート』を展開させた戦士、斗貴子。もう一人の戦士・剛太も、戦輪の武装錬金『モーターギア』を構える。
三人の使い手に囲まれても、戦部は怯まない。
「一人?まぁ、確かに一人だな」
ニッと笑う戦部。次の瞬間、二匹の獣・キラーレイビーズが斗貴子と剛太の背後を突いた。武装錬金によって構成された、大型犬の姿の武装錬金。その牙はホムンクルスを容易く仕留める。
咄嗟に武装錬金で防ぎ、後退する二人。それを見た武藤のわずかな動揺を見逃さず、戦部は槍の柄を突き出して武藤を弾き飛ばした。
「正確には、一人と二匹だ」
十字槍を構え直す戦部と、その背後を守る二匹の犬。隙のない円陣を見れば、まるで戦部こそが犬たちの主人のようにも見える。実際は、本当の主人たる犬飼と戦部が積んだ十分な訓練の賜物なのだが。
「行くぞ!」
激しい攻防が始まった。戦部は武藤に槍の猛攻を浴びせ、残り二人をレイビーズが牽制する。獣特有のしなやかな動きでヒットアンドアウェーを繰り返すレイビーズに、斗貴子と剛太はなかなか攻めきれない。
「剛太!」
しびれを切らした斗貴子が、剛太にアイコンタクトを送る。剛太が一旦手元に戻したモーターギアを二匹の犬に向けて高速射出。その瞬間を狙って、斗貴子が戦部に斬りかかった。
「獲った!」
容赦のない連撃が戦部を貫いた。普通の戦士ならば、武装錬金を維持できなくなるほどの重傷。だが、戦部は意に介さない。
「殺意は十分。だが、俺には効かん!」
十字槍の武装錬金・激戦の特性。それは激戦そのものと所持者の高速自動修復。槍が手元に有る限り、戦部はたとえ全身を粉々にされようとも、数秒で元どおりに再生される。斗貴子が与えた傷も、瞬く間に塞がった。
「くっ!これがお前自身の武装錬金の特性か!カズキ、剛太!犬の使い手が別にいるぞ!」
「アタリ♡」
声と共に、木々の間から球体がいくつも漂い出てきた。円山の武装錬金『バブルケイジ』だ。
「新手?いや、三人目か!」
ふわふわと漂ってきたバブルケイジを、ヴァルキリースカートが払いのけた。アヒンッという奇妙な擬音と共に、球体が弾ける。同時に、斗貴子の肉体が急激に縮んだ。
「なんだ?!」
「アタシの武装錬金『バブルケイジ』は、敵の身長を吹き飛ばすの。アナタ、見た所あと10発程度で消滅ね」
多数の球体を従え、木立の中から円山が姿を現す。彼を中心に、バブルケイジが弧状に広がり、敵を押し包もうとゆっくり展開していく。
高速再生の戦部と、周囲にバブルケイジを漂わせて身を守る円山が敵を足止めする。風でバブルケイジを吹き飛ばそうにも、レイビーズの波状攻撃がその隙を与えない。その間にもじわじわとバブルケイジの包囲が広がる。この三人の連携だけでも、数え切れないほどのホムンクルスを仕留めてきたのだ。
「カズキ、剛太!囲まれる前に一旦引くぞ!」
斗貴子の号令が走る。カズキの突撃槍、サンライトハートが激しい光を放ち、目くらましを張った。剛太は足にモーターギアを装着して加速。カズキは槍の穂先からエネルギーを放出して一気に上空へ離脱する。斗貴子も、ヴァルキリースカートの機動力で剛太と共に木々の向こうへ退却した。
「判断、早いわね。防人戦士長に育てられただけのことはあるわ」
「だが、まだまだ未熟だな。どうだ、根来」
無線の向こうで、根来が答える。
『犬飼の読み通りだ。順調に狩場へ向かっている』
「良し。俺はレイビーズと共にこのまま追い込みをかける。万一、ルートを外れるようなら、お前が牽制しろ」
『承知』
返答と共に、根来の無線が切れる。亜空間に潜んだのだ。
「アタシは上空から先回りね」
「月を背負って発見されるなよ。お前が今回の要だ」
「アタシがそんなミスをすると思う?」
「……愚問だったな」
戦部が下がったのを見てから、円山は周囲のバブルケイジをいくつか炸裂させた。自らの身長を吹き飛ばして軽量化した円山は、大きく膨らませた風船の風圧を利用し、一気に飛び去った。