なんちゃって戦国人のせいでエンゲル係数がやばい   作:ぽぽたろう

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スープの具材はなんでもいいと思う

怪現象が起きた事より、今日のお昼ご飯の方が重要ですよね。

 

 昨日眠るまで、襖を開けたり閉めたりを繰り返した私は許されるはずだ。見知らぬ青年に見知らぬ部屋。閉じられたそこを再び開ければ、みっしりと服がチェストに収まっている。

青年が残した箸一組に、皿と普段使わない辛子のチューブ。睨んでみたりもしたけれど、洗い物が消えるわけもなく。本当に意味がわからないし防犯面で危険すぎる、が。大事なのは今日と明日のご飯のアテがなくなったことだ。

 

 そうアテがなくなったのよ。

 

 「餃子煮るだけのつもりだったのに」

 軽率に箸を渡したわたしも悪い。ワンタンスープは犠牲になったのだ……。

 

 いやね、無茶苦茶簡単なのよ。玉葱人参を適当に刻んで、中華スープにちょびっと生姜おろして沸騰がてら野菜煮込んで。作り置きの餃子をぶち込むだけ。醤油ちょっと垂らして、好みでゴマ油。いやマジ旨いのよこれ。

餃子の中身が爆裂してもそれはそれでおいしい。ツルッ!とした皮をすごく期待してたんだ、本当は。

 餃子の残りなんてなかった。

 

 

 

「今日のお昼は牛乳スープだ楽に行こう」

 

 ハーブソーセージが特価品だったときに冷凍庫に三つほどほうり込んでた奴を使おうそうしよう。餃子が無くなったことに嘆いていてもお腹はすくんだから。

 

 「人参玉葱ジャガ芋椎茸しめじにうんたら切りきざめー」

 

やけが入ってるなーとは自覚してるんだけど、まぁ誰だって予定が崩れればこんなものだと信じたい。

 冷蔵庫に入っていた、コンソメで煮てもまずくならない野菜全部を適当にさいの目。切り終わってから炒めるなんて事はしない、切れた先から油を引いた鍋にぽんぽんぽんぽん放り込む。ちゅんちゅんチリチリ鳴り響く焼ける音。

 ぶつ切りハーブソーセージも忘れずにね。ううむ素晴らしい、香ってる!

 

 「切ったら後はほっとくだけなんだから楽なもんよ!」

 

 水とブイヨン一欠けほうり込み、弱火にして満足。今のうちに回してた洗濯物を干すとしよう。

 

 

 

 

 

 「なぁあああぜじゃあああああ!」

 「危ないっ……!」

 

ガタタタ!っと建て付けの悪い襖が開く音と、声。

 

 「すまん権現!助かった」

 「はは、怪我がなくてよかったよ」

 

…片方は聞き覚えがあるんだけど。昨日の徳川幕府とか!

 

 「ん?なぁんか妙な場所だな。この倉はこんなに明るくないと小生は記憶しているぞ」

 「ここは……また迷い込んでしまったのか」

 「んん?知っているのか権現」

 「前に世話になったんだ」

 

. なんだかベランダから戻りにくいけどまぁ、気にしない。自室に気兼ねとかアホみたいである。

 

 「昨日に今日だよ家康くん」

 「おお、めぐみ殿!」

 

窓からこんにちは。外に出るために服を着てなかったら大惨事だった。ノーブラだけど細けぇこたぁいいんだよである。

 

 「あの時は本当にご馳走になった。あの呪いのかかった薬も、おかげで一日とても調子がよかった」

 

まじない。なんかこう、その年で口にするには悲しくなる単語が聞こえてきた。

 

 「あー、あれ薬じゃないって。ただの口臭防止。調子よかったのはニンニク食べまくったからじゃない?」

 「そうだったのか?」

 

 はて、と首を傾げるも、何にせよ世話になったと笑う家康にどうでも……よくはならないってどこから来たのよこの子達。

 

 「ここがどこでお前さんが何者なのかも聞きたいが、それよりこの食欲をそそるいい匂いが気になっている」

 「はっ!ぬあああああああジャガ芋がああああああ!?」

 

 しまった溶ける溶ける溶けてるってこれ絶対。大男の言葉に慌て、不法侵入者に背を向けて台所にダッシュ。私の昼ご飯と晩飯のスープがあああ!

 

 「ず、随分と元気な女人だな?」

 「また何か食事を作られてでもいたのだろう」

 

招いてない客が何かを言っているが、美味しいもののために全スルーだよ。

 

 

 

 セーフでした。割としっかり形を残したジャガ芋が、箸で強めにつまむとホロリと砕ける。うん、バッチリ。牛乳を適当に加えてカサ増し、塩胡椒をぱっぱとな。

 やや甘ぐらいでソーセージと一緒にかっ喰らうが至上!異論は認める。ペロっと舐めて味見も良し。朝ごはんという名の昼飯だ。ええ、さっきまで寝てましたよ。

 

 「御八ツか、めぐみ殿」

 「いい匂いの正体はこの汁物だったのか」

 

 不法侵入者二人がチラチラとスープマグを見つめている。ほかほかの牛乳スープから立ち上るコンソメとソーセージの脂の匂いに生唾を飲み込んでいた。

 グキュ~ルルル………。

家康くんと一緒に来ていた、渋い大男が体格に似合った腹の虫を鳴かせる。

 

 「………………そういえば調度八ツ時、刑部の奴に倉を見てこいと言われたな。小生の大根とゴボウの煮付けがぁ」

 「多分刑部の事だから下げさせているだろうな」

 「なぜじゃあぁ!?」

 

 えーっと、ガタイの割にヘルシーな物食べてますね。食べそこねた昼ご飯を思い出したのか、再び腹を響かせる大男。掌で摩りながら涙目になっている。ええい、いい年こいたおっさんが泣きそうになってるんじゃない!

 

 「……少しだけ待ってください、これじゃ絶対足りないんでとこ増やししてくるわ。家康くんも食べて行きなさいな」

 「いいのか?そんな旨そうなものを?」

 「腹減りを目の前に一人だけ食べる神経なんてないって」

 「す、すまん…(刑部ならニヤニヤしながら一人で食べるだろうな)」

 「ははは、まためぐみ殿の料理が食べられるのか。申し訳ないのはあるが、とても嬉しいな」

 「はいはいどう致しまして」

 

 

 

 とりあえず注いだスープを鍋に戻して、もう一つ別にお湯を沸かす。電気ポットのお湯使ったから早いわー。

沸騰したお湯の中に封を切っていなかったシェルマカロニを半分一気に投下。マカロニにが茹で上がるまでにもう一声。

 スープに水と牛乳、ブイヨン半分と塩を追加して、甘くない程度に味を調節。……ホントは邪道なんだけどなぁ。野菜どっさりの食べるスープにしてたから、まぁバランスは悪くないか。

 早煮えマカロニさんを適当に湯切りしてスープにイン。もう一回味を見て、塩パラリに味ぺろり。…塩加減は良いんだけどなぁ。

 

 

 

 「はいおまたー。牛乳マカロニスープできました」

 「おおおおお!感謝するぞぉ!」

 「ありがとう!」

 

この漲りようは何なのか。一人用おこたサイズの机に三人寄るのはつらすぎる。まぁいいか。

 

 「んじゃさっくり食べて」

 

 ほい、とステンレスのでっかいスプーンを手渡す。二人して興味深そうにスプーンを見ているけれど。そんなことどうでもいいのよ、とにかくご飯!注ぐだけ注いで食べそこねた私のハーブソーセージさん!はぐ、っと一口はじける肉汁。

 

 「うん、まぁまぁ」

 

 ……やっぱり何となく味がぼやけてるなぁ。スープに野菜のうま味が出まくってたのに、半端にブイヨン増やしたからまろやかさが足りない。コンソメが尖んがってる。

尖んがってるからぼやけてるって変な感想だけど事実なんだから仕方がない。

 

 「う、うまい!うぅぅまぁああいぃぃぞおおおお!!」

 「これはまた前の料理とは随分様相が違うな?だが口の中で崩れる野菜が実にうまい!」

 

 お前は味王か。うまいしか言わなくなった大男が急ぎ過ぎたのか舌を火傷している。あーはいはい麦茶どうぞどう致しまして。

 

 「汁と一緒に具菜と肉を一度に食べると、いつまでも噛み続けたくなるな」

 「小生、こんなに幸せで大丈夫なのか……?明日死んでいるかも知れん」

 

 真面目に食レポしてる横でネガティブな事を言ってる大男。はいはい、お代わり一杯くらいならありますよ。いや、貴女が神か的視線はもう昨日の家康くんで間に合ってますから。

 便乗してこっちを見るな家康くん!

 

 

 

 

 

 「ふううぅ!食った食った!小生久しぶりに満腹になったぞ!感謝するぞ、その、めぐみ殿?」

 「……自己紹介すらしてなかった」

 

 お互い様とは言え、これでいいのかまぁいいか。

 

 「お粗末様でした。私はめぐみ。適当に覚えて下さい」

 「小生は黒田官兵衛。こんなうまい飯を作る女人を忘れることなんて出来ない!」

 「あー、うん、ありがとう?」

 

個人的に納得してない味だったから、微妙な気分だけどね。しかしクロカンか……。また有名所が。これだけデカければ虐めも無かったかな。

名前にしげしげ眺めてしまい、黒田さんがうろたえている。おっとすみません。

 

 「あー、さてめぐみ殿。前回着たときはうやむやになったが、ここがどこか教えてもらってもいいだろうか?」

 「どこは言えるけど、何がが言えないからどうにかなってるじゃ駄目?」

 

考えるのが面倒なんですが。むしろなんで私不法侵入者にご飯をあげてるんだろう……。

 

 「さすがに二度目ともなるとな。そこを潜れば帰れるのは分かるのだが」

 「小生はまたここに来たい。ご飯が食べたい」

 「おいおい官兵衛……」

 

 あー、お腹一杯で考えたくないわ。

 

 

 

 

「ケースが少な過ぎて確定できない」

「けぇす?」

 

 

 ………幕府とクロカン凄いですね、と適当に流していたのだけれども。

 話す機会が訪れてしまっていろいろ確認したら本人でした。頭にアニソンが流れすぎて理解できないレベルで今の私には理解出来ない。

 史実からは微妙にズレてたり、ばさらワザなる何かを少しだけ見せてもらったり。頭を抱える事象が目の前に存在している。豊臣秀吉がでかいおじさんとかどういう世界線なんだ意味がわからない。

 未来に見せかけた「何か」、としか説明出来ない私の現状。蝶々的プチカオス理論と意志決定、賽の出目を例にした確率による可変式平行線を説明して、二人を(今の僕には理解できない)頭痛に苛ませた後。

 whyの解明に入ったわけだけど。

 

 

 「現象が起きた対象の回数が少な過ぎて、原因の確定には至らない、と言う話しね」

 「ああなるほど、先程のばたふらい?より解りやすい」

 「小生は何となくだが理解できたぞ?

 ともかく。聞くかぎりこっちに繋がったのはまだ二度目なんだな。少なくとももう二、三度程起こらないと断定はできんだろう」

 

 黒田さんが渋い目元を細めて家康くんに伝える。やっぱり軍師の人だから数計に強いのだろうか。でも芥川な徳川家康は、なんとか信正?正信?と謀略誅略しまくってた頭脳派だったけども。平行世界の家康くんはそういうタイプじゃ無いのか積み立てる時間が足りていないのか。

まぁなんにせよ。

 

 「こちらに来るには、ワシが関わっている[かも]しれない、ぐらいのつもりでいればいいのだろう?」

 「身も蓋も無く言っちゃえばね。個人的にはあんまり来なくていいと思うよ、うん」

 「二度とも馳走になってしまったからな」

 

あっははは、と朗らか過ぎるくらい爽やかに笑う家康くん。何だかなぁ。

 

 「こっちに来たときは腹が減っていたのか?」

 「一度目はともかく、今回はそこまでではなかったぞ。官兵衛にあやかり汁物を頂いたようなものだし」

 「じゃ別に空腹は関係ないのね」

 

 そもそもそんなノリで世界線を越えれるものでもないだろうし。

 

 「人が傷つかず絆を血で千切る事のない世界があり、訪れる可能性がある。それを知れただけでワシは十分だ」

 

 歳の割に随分と切ない事を口にするものだと思う。何歳かはしらないけどさ。自分が学生のころは何を考えていたんだったか。

 

 「旨い飯にもありつけたからな!」

 

ごまかしも無い本音に チリッとした雰囲気は霧散する。なんだかねぇ。

 

 「ま、小生は安定してこっちに来れるようになりたいね。さっきも言ったがまた飯が食べたい」

 「人ン家をメシ屋扱いするのやめて、いやホントに。昨日の分含めたら3日分は貴方達の胃に収まってるんだからね?」

 「そ、それほどか?」

 

 餃子も明日の昼御飯まで持たせるつもりだったのよ。ワンタンスープに揚げ餃子に普通の焼き餃子もう一回。あぁ、食べそこねたメニューが悲しい。

 牛乳スープだってマカロニ分を加えても五杯分あったのだ。訳あり物件で賃貸料格安で、割と給料も安定してはいるけども。

 

 「作り置きしないと仕事帰りがしんどくて辛いのに、一人暮らしに対する嫌がらせかと」

 「す、すまない……」

 「すまん、めぐみ」

 

 いやまぁ、今日明日は二連休でグダグダしたかった手抜き感だったんだけどね。

 

 

 

 「しかし、昨日と言われたか?」

 「んー、そうだけど?」

 「時間があわないんだ。ワシがここに着たのは、前回大坂に参内し滞在した中頃。つまり二月前だな。あれからしばらくして三河に戻り政に追われていたのだから間違いない」

 

 「……………私のところにも二ヶ月後に来てくれたらご飯が壊滅しなかったのに」

 

 買い物行きたくないよー、引きこもってたいよー。餃子が全滅したのはホント痛い。卵ぐらいしか残ってないわ。

 

 「そ、それはワシにはどうしようもない!というか言うべきところはそこなのかめぐみ殿」

 「そうだぞ!?ほら時間がずれてるとかなんだとか!」

 「とんでも戦国時代人がここにいる時点で、なんかもうどうでもいいかなと」

 

 悟りをひらいて開祖になれる勢い。当人ふたりして気まずそうに目を逸らすんじゃないよまったく。

 

 

―――やれ、荷の確認にどれだけ手間取っているのやら。暗は変わらず使えぬ男よ

 

 「げぇっ」

 

 関羽?相変わらず異次元に繋がった押し入れから聞こえた声に、黒田さんが呻き声をあげた。

 

 「あの声は刑部か、時間切れだな。迎えが来たなら仕方ない」

 「帰りたくない、小生は帰りたくないぞぉ!」

 

 ブンブン首を振る黒田さんを引っつかみ、引きずる家康くん。自分よりも二回りほどある相手をそう出来るとかどんな体をしているんだ怖い。

 

 「結局よくわからないままだったが、とにかく世話になった!今度は何が材料を持って来れることを願っておいてくれ!」

 「うん、もうくるな!じぁあね!」

 「なぁぜじゃあああああああ!」

 

2度と来なくてもいいと思う。

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

――ほう、徳川も一緒であったか。

――ちょうど階段で足を滑らしているところに遭遇してなぁ

――……すまんな刑部、しばらく動けなくて調査は済んでないぞ

――頑丈な暗にしては妙な話よな。ほれ、動けや動け

――少しは小生を労れ!

 

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