なんちゃって戦国人のせいでエンゲル係数がやばい   作:ぽぽたろう

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酢豚は肉ばかり食べてしまう

 流しに浸かっているホーロー鍋を怨みがましく見つめたあと、ため息一つついて洗剤とスポンジを手にとった。

 せめてスープ皿を流しに持って行ってくれ、頼むから。

 

 

 

―――――――――――

 

 洗い物を撲滅した後、近くのスーパーまで買い物に出掛ける羽目になってしまった。目についた安いものをカゴに詰め込んで精算。ついでに図書館によってさっくり帰宅。

 

 買いながらメニューを考えるんじゃない、買ってからメニューを考えるんだ……!考えるな感じろ!と酔拳の師匠(だったけ?)になりながら小分けなり何なりして冷蔵庫もしくは冷凍庫に。

 

 

 しかし豚ブロックかー、何しようかな。グラム78円で思わず掴んだけど、600グラムもあるんか。でか過ぎた、どうしよう。

 

 半分は味噌漬けかな。縦半分切断後、さらに半分にスバっと切り落とす。……トンカツの肉みたいになったけどまぁいいや。

 

 味噌とみりんをたくさんに、砂糖と醤油をタッパーにしっかり混ぜ混み、トンカツ肉を埋没させる。

この味噌漬け大好きなのよね。豚脂が口いっぱいに弾けて、カリッと焼けた香ばしい味噌の風味がそれをさらに際立たせる最強のご飯のお供。実家で作ったら兄貴に半分以上食べられたのは忘れられんわ。

 

 「明日の晩御飯に明後日のお弁当完成。フライパンで焼くだけとか素晴らしい!」

 

後はレタスとか適当にちぎればいいのさ!

 無意味にテンションを上げながら、残りはどうしようかと頭を悩ませる。

 

野菜室を引っ張れば、いつものメンツが雑多にほうり込んである。って言うか自分がほうり込んだんだよ。

 

 「あー、うー、ぬー、めんどい、めんどいけど酢豚作るか?玉葱人参ピーマンとか酢豚しかないか、酢豚だわな」

 

 卵もそろそろ期限がやばいし。うん、酢豚にしようか面倒だけど。大量に小分けしておけば、しばらく弁当のネタには困らないし。

 そうと決まれば下ごしらえだけやっておくか。

 

豚の残りを一口大にブツっとバラし、塩と酒をパパッと塗す。

 野菜もやっぱり適当に刻んで、人参だけ鍋に水を張って湯がいておく。でかい鉄鍋に三度目の揚げ油を流し込み(そろそろ限界かもしれない)、加熱しながら卵を割って衣を作る。分量なんて適当!焦げなきゃなんとかなるねん!

 

入るだけの豚肉を鍋に落とし込み、じゃらじゃらと油の跳ねる音を聞きながら茹で上がった人参を湯切りする。

 

 「うおぉ、唐揚げも食べたくなって来た。魚を食べ切ったら次唐揚げ作ろう」

 

 揚げ物中に胸やけ起こす人は結構いるらしいけど、私は無制限につまみ食いしたくなるタイプの人間だ。食欲魔人の異名を友からもらったようれしくないよ。

 うーん、しかし豚肉を揚げるタイミングの見分けか難しい。油の騒がしい音が、カラカラっていうちょっと高い音に変わったら揚がってるってテレビで見たけれど。

…………いつも通り適当でいいか。

 

 

 

 結局揚げ油をまた缶にもどして(次は捨てよう、うん)、下ごしらえした野菜と肉にラップをかけた。晩ご飯にはまだまだ早い。

 

 さてはて、今日の残りは借りて来た司馬な関ヶ原を読みますか。家康くんと黒田さんのおかげで久しぶりに読み返しちゃうよ。

 石田三成を補佐する島左近が渋くて惚れそうになったのが凄く印象に残ってるんだよね。作者は東軍の事を書く方が楽しいって作中で言っちゃってたけど。

 

……今日一日じゃ無理だろうなぁ、これ。.

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 石田三成と島左近がメインの関ヶ原だったはずなんだけど、ついつい徳川家康が出ているシーンばかりを読み込んでしまう。

 あの詐術のような、と言うか完全に詐術な、加藤清正や福島正則達を巻き込んだ転進を家康くんもいつかやるのだろうか。創作も入っているとはいえ、あまりにも家康くんにはそぐわない気がする。

 

 「何だかなぁ」

 

 石田三成の居なくなった日本は、あまりにも規律が緩まったと色んな人が思ったんだという。石田を切ったのは間違いだった、と徳川家康本人も記したんだったか口にしたんだったか。

……あの家康くんが?将来?

 

 「全然思い浮かばんわ」

 

 昼過ぎに重たいことを言っていたのは有ったけれどさ。基本ご飯もりもり食べて、並行世界に頭を抱えていた割と残念な子だったし。

うん、ないわ。

 

 いやしかし流石昔のハードカバー。字が今の本の倍ぐらい詰まってる辞書サイズ二冊。流し読み気味だったのにあっという間に時間が過ぎてしまった。洗濯物取り込んで酢豚完成させますかぁ。

 

 

―――――――――――――――――

 

 「ままっ、三成様、押さえて押さえて!女房さん達が怯えてますって!」

 「知るか。それもこれも貴様が秀吉様のご期待を裏切ったからだ家康!」

 「あの時は降伏を受け入れ城主に武装解除を命じさせるのが最善だった。あれ以上血を流させる必要はなかったはずだぞ三成!」

 

 

 パン!と乱暴に開かれる押し入れの襖。襖を掴んだ右側に家康くん。左側に墨を付けていない筆のような前髪の細い青年に。後ろにはメッシュの若い子。

 

 「帰れ」

 

……パンツを畳んでいた私がそれを言うのは許されると思うんだ。

 

 

 

 

 誰だ貴様はここは何処だ何故秀吉様の居城にいるまさか勝手に城を作り替えたのか何たる無礼を斬滅してやる放せ家康この女に以下略。

 

 「うん、帰れ」

 

 一体私に何が言えたというのか。それにしてもよく舌の回る白い子だ。必死に説得してくれている家康くんを振り切ろうともがいている。聞き違いじゃなければこの子三成とか呼ばれていませんでしたか。

 さっき読み進めていた関ヶ原の主人公ともいえる人物とか言うオチ?なんで戦国時代に終幕の始まりの鐘を鳴らした人が家康くんに羽交い締め……あ、ヘッドロックに変わって瀕死になってる。説得(物理)になってる。

 

 「みみみ三成様!家康さん放してください絞まってます絞まってます!」

 

 それ以上はいけない

 

 

 

 

 

 なんだかんだあって。渋々暴れるのを諦めた石田三成(仮)。

軽い自己紹介をして(仮)が無くなってしまったなんてこった。

 

「しかし五日振りだなめぐみ殿。今回は随分と早かった」

 「あれ家康さん、このねーさんとお知り合いで?」

 「私はお昼振りだよ家康くん……。あー、二度ほどご飯をあげた仲ですよ」

 「妙な仲もあったもんッスねぇ。あ、俺は豊臣、の左腕に近し島左近!よろしくたのんます」

 「……………さ、左近、くん?」

 「そうですよーめぐみさん」

 

 ………………なんてこった!

 あの!あの乱破をサラっと流し石田三成の足りないところを渋く補うナイスミドル(顔知らないけど)がなんかチャラ男に!?

 とんでも戦国時代ここに極まれり。島左近は武田信玄の所にいたっていう文も在って、大分高齢だったはず。それがどうしてこんな

 

 「わ、若いね……」

 「おねーさんだって十分若いですよ!」

 「ありがとう、うん」

 

 わけがわからないよ。

 「そんな事はどうでもいい。貴様、なぜ秀吉様の城の部屋からこんな所に繋げた」

 「繋げた覚えはないのよ。気付いたら家康くんが不法侵入してた。ついでにご飯あげた」

 「ついでと言うのかなあれは」

 「……今すぐ元に戻せ」

 「そこから出て閉めたら直る、筈、多分。二回とも大丈夫だったし」

 

 聞くや否や早々と襖をくぐりスパン、と閉める三成くん。そしてまたスパンと開く押し入れ。

 

 「貴様、虚言を吐いたな!?」

 「知らんわあああああ!?私のせいじゃないからあああああ!」

 

一体何に抗議すればいいんだ、もうどうでもいいよご飯食べて現実逃避したい!睨み付けてくる三成くんに頭を抱えてうんうん唸る私。家康くんと左近くんが何とか宥めてくれているけど、全く落ち着いてくれない。

 

 「見てください三成様!ほらほら何か珍しい物がたくさんありますよ?何ですかねこの薄紅の塊」

 「あー、それは椅子。座っていいよ」

 「椅子、っスか。随分と妙なうわぁ!?沈む、沈むよこれ!」

 

 リアクション芸人バリの驚きを表す左近くんに虫を見る様な目を向ける三成くん。

 

 「ぅっわ、これ体に密着して1番楽な形になるんですかね?仰天したけど凄く坐り心地がいいっすよ動きたくないっス」 

「なれると目茶苦茶居心地いいよそれ。高い買い物だったけど元以上の価値はあったわ」

 

 三成くんそっちのけでぐりぐりと人をダメにするソファで遊ぶ左近くん。

 

 「よっと。ほらほら三成様も。座ってみてくださいよ!」

 「黙れ私はそんなものには……っ!」

 「よいせ。力抜いてください三成様。すごく楽です」

 

 自分の上司を容赦なく私のソファに倒しこみ、キラキラ笑う左近くん。ああ若い。文句を言っていた三成くんもなんだかんだいってソファを気に入ったのか無言で表面をなぞっている。

 

 「おい女」

 「めぐみ」

 「……女。この椅子を半兵衛さまに献上しろ。そして秀吉様に後3倍大きな物を用意しろ」

 「誰がやるかああああああ!!」

 

 無銭飲食犯が強盗犯に進化した!?石田三成くんは自由すぎる!

 

 

 

 

 

 

 

 笑顔で説得(物理)に走ってくれた家康くんのおかげで無駄にエキサイティングしていた私の精神は落ち着いた。むしろ引いた。

 家康くんを睨み付けている三成くんは何か言いたげだが、さすがに学習したのか口をつぐんでいる。

 

 「しかし困ったな、帰れはするが繋がったままか。このままでは大坂城の人に迷惑がかかってしまう」

 「私にも迷惑だからね?マジ迷惑だからね?」

 

 ピンポイントで見知らぬ他人が勝手に来客してくる押し入れとか迷惑って一言じゃ片付けられないからね?セコム付けただけじゃどうしようもないわこのどこでも襖。

 大坂の名前に少し反応した三成くんだったけど、口は開かなかった。

 

 「どうすればいいかな。と言ってみたものの、やっぱりアレだろう」

 「なんとかなさるアテがあるんで?」

 「………ごはん」

 「今日はワシが腹が減っててなぁ」

 

 スマンが頼む、ははははと笑う家康くん。………はぁああああああ。息を全部吐き出すため息を付けば、微妙に理解していない視線をくれる左近くん。

 

 「……夕餉を摂るだけで本当に直ると本気で言っているのか貴様」

 「信じられないのはすごくすごく分かるんだけど。今の所それで何とかなってるのよ……」

 

 つらいのは私の財布と時間。さようなら私の酢豚。健康男児三人とか300グラムの肉じゃ足りんわ。お手軽単品、お手軽単品……。

 

 「ちょっとまって、追加考えるから」

 「夕餉の内容は決まっていたのか」

 「一人ならね!絶対足らんわ」

 「えーと、野菜の煮付けとかでいいっすよねーさん」

 「ありがと、そう言ってくれるのはうれしいんだけど、メイン…主菜はもう決まってるからね。ちょい増やしぐらいでいのよ」

 

 サブ、酢豚のサブ。酢の物は不可。煮物はだるい。お浸し?合う野菜がない。やっぱり汁モンか。酢豚に入ってない具菜で汁物、ぐおおおおお!

 

 「よし、ワカメ特盛で」

 

 いきなり何を言っているんだ的白い目はやめてください。

 

 

 

「ちゃっちゃか作るから茶碗やら何やら出しといて。そこ食器棚」

 「了解した。なんでもいいんだな?」

 「そのでっかい深皿だけは出しといて」

 

 なんでも言いから早く秀吉様の城をお直ししろ!と結局叫んだ三成くんに押されるように台所へ。ラップをしていた酢豚の玉葱を、豚を揚げたでかい鉄鍋に放り込む。

 中華は火が命っていうけど、容赦なく弱火。じわじわ焼く間に、中華スープを沸かす。買っておいたきのこ類を適当にばらして、沸騰がてら一緒に鍋に流し込む。生姜はちょっと悩んだけど、おろすのが怠いので諦める。

 半端に焼けた玉葱に残りの野菜と揚げた肉を放り込み火力をあげる。と言っても中火だけど。

ピーマンをじわじわ焼いて肉を温めながら、すごいわかりやすい甘酢あんを混ぜますかぁ。

 ばーちゃん家の昭和臭漂うレシピ本いわく、43211。ケチャップ、酢、砂糖、醤油、カタクリ粉。好みで酢を増やしたり味醂入れたりすればいいんだけど、基本はそれ。後は中華味の元と水適当にじゃかじゃか混ぜて一気に肉野菜に流すだけ。

 

 「めぐみ殿、皿はこれでいいか?舶来物がいくらかあって、使ってよいものかわからなかったのだが」

 

 某祭りのシールの交換品を恐る恐る置き直す家康くん。あー、それ元手はただです、はい。

 

 「しかし薄く軽い茶碗だ。絵付けも見事に揃っているな。さぞ名のある陶工が造りあげた物なのだろう」

 「猫に鞠。随分と気の抜けた構図だがな」

 

 すみませんそれフリマで五枚一組200円で買ったやつです。可愛いからついつい衝動買いしちゃったやつなんだよね。

 結婚式の引き出物なんかが出回ってるから良いやつなのかもしれないけど、残念ながら名も知らぬ野性の茶碗です。

 

 「どーもありがと、んじゃ後ちょっとだからまってて」

 「三成様、さっきの椅子もう一回座りましょうよ!」

 「貴様一人で遊んでいろ左近」

 「またまた、三成様だって気に入ってたじゃないですか」

 

 ボフ、っとソファに何かがめり込む音を聞きながら、きのこ汁に乾燥ワカメを粉砕して追加。醤油でちょっと味を整えゴマぱらり。

 

 「立てませんよこの椅子踏ん張りが利かないんです押さないでくださうわわわ!」

 「そこで一生埋もれていろ左近」

 「……あー、すまないめぐみ殿」

 「破れたら死ぬ気で掃除してね」

 

 あんたら弁償は出来ないから破るなとは言ったけど、破ったらソフトビーズで部屋があかん事になるらしく。正直そっちを想像するのがつらい。

 

さてはて、いい加減あったまっただろう鉄鍋の中身に、しっかり混ぜた甘酢の元を流し込む。調味料全部を水にまぜ混んだからダマにはならないはず。一気に強火で回し炒め、肉の衣と人参玉葱に絡み付く様を見届ける。

 

 「お、おお!すっぱい香りがなんとも腹に響く。いかんよだれが出そうだ」

 

 一気に蒸発した水分がお酢とケチャップの匂いをばらまき、それにつられた唾液を飲み込む。くああああ、良い匂い!

 ピーマンに弾かれる甘酢餡を確認して、おっしゃあ!と大皿に流し入れた。うん、つやっつや!

 

 「できたよー!はい家康くん、ご飯ついで。二合しか炊いてないからお代わりはないんであしからず」

 「おお、強飯まであるとは贅沢だな!」

 「えーっと、姫飯だよ、多分」

 

 炊飯したご飯の名称なんざ小学校の社会の資料集で見た以来だよ。

 玄米じゃない!?白米だって!?うおおメッチャ良い匂いじゃないっすか、と完成の声でこっちに来た左近くん達が(というか主に左近くんが)なにやら荒ぶっている。いいからさっさとつぎなさいとシャモジを押し付け炊飯器の電源を切った。どうせ完売しますよねと諦めながら中華スープを取り分けていく。

 

………!そういえば。

 「やばい机ないわ」

 

 あの一人用おこたでは絶対に4人分の皿は乗らない。なんの躊躇いもなく床に器を置いていく三人を見てちょっと慌ててしまう。

 

 「ごめん、お盆はないんだわ。一枚しかない」

 「おかまい無しっすよめぐみさん。こんなご馳走を用意してくれちゃったのに我が儘なんていいませんよー」

 「家康、私はそんなに食べない。そんな山になった碗を寄越すな!」

 「昨日、一昨日とお前がほとんど飯を食わないと刑部が嘆いていたのをワシは聞いているぞ?せっかくの姫飯だ、食べやすいだろうし胃に詰め込んでおけよ三成」

 

 パタパタと手を振りながら構わないと笑う左近くんの横で、見た目がすさまじい事になってる茶碗を手渡そうとする家康くん。力の限り拒否する三成くんからは、食べれないと言うより食べにくいわ!という雰囲気が刺さっていた。

 ……いいから食べようよ、私のご飯ちょうだい。いつまでも無茶苦茶なもんを押し付けてないで。

 

 

 

 「んじゃいただきまーす」

 「御相伴に預かる」

 「ゴチになりやす!」

 「………」

 

 酢豚の入った大皿と私の食器だけが机の上にあるので、小皿に取り分けて皆に配布。ペロっと指に付いた分をなめて、ついでにご飯を一口。うん、やや柔らか。

 そうこうしていたら、三人ともイの一番に白いご飯を大切そうに口にして、ゆっくり飲み込んだ。何と言うか背筋がはって所作が綺麗な子達だ。

ま、そんなことより酢豚!いきなりメインの肉!

 

 「んんん!うんまー。」

 

尖り過ぎず丸過ぎない酸味が衣に柔らかく絡み、噛めば噛むほどお肉に染みる。お肉やわらか!さっぱりくどい!矛盾!

 家主の私を一応たててくれたのか、私が一口食べ終えるのを待っていたようで。それぞれが酢豚の皿を取った。

 四方八方に撒き散らされるすっぱくも塩っこい香りにゴクリと生唾飲み込んで、いざとばかりに箸を口に運んだ。

……いやそんな全力で食べなくてもいいのよ?

 

 

 「うんめぇ!」

 「う、旨い!」

 「………っ!」

 

 おめめぱっちりに丸くする三人組。切れ目気味の三成くんも盛大に目を見開いていた。

 信じられないとばかりに酢豚のお皿をガン見。どこまでおいしさに感動なさっておられますか貴方がた。

 

 始めに復活したのが左近くん。猛烈な勢いで自分のお皿から酢豚を掬い上げている。んながっつかなくても。

 次点に家康くん。昨日の餃子を思い出す勢いで口に掻っ込みはじめた。ああ、ちょっと、タレがほっぺたついてるよ気にしてないし。

 すごくいい笑顔でお代わり頼むって速いよちょっと!出来立てあんかけの火傷注意はどうなった。

 

 最後にゆっくり三成くん。いや、起動したのはゆっくりだったんだけどたべる速度は二人に負けていない。

 味が濃いのか、たびたびご飯を口にしながら着々と酢豚を攻略していく。ピーマンが苦かったようで盛大に眉をしかめ、甘酢を玉葱で掬って口にしていた。

 

 うーん、濃い味になれてなかったか。スープもうちょっと軽くしてあげればよかったかね。

 ってかお代わり注ぐばっかりで私食べれてない!?ちょっとまってよ私も酢豚好きなんだから少しは遠慮しろおおお!

 

 って熱いいいいい!

そのペースでたべるのはおかしいって!

 

 私もたべるうううう!

 

 

―――――――――――

 

 「無茶苦茶うまかったっす!こんなにうまいもの人生初でしたよ」

 「……旨かった」

 「ふぅうう、満腹。あの茸と若布の汁物も、酸い餡から口を休めるのに調度良く美味だった。ありがとうめぐみ殿」

 

 「……………お粗末さまでした」

 

 私は始めの一杯とちょっとしか食べられなくて軽く絶望してるよ!家康くんと左近くんは申し訳ないんですけどって口と表情になりつつ、結局ご飯お代わりして炊飯器の中身にとどめを刺してくれたしさあああ。

 

 「三成さまもしっかりあの酸っぱいお肉を食べられておられましたし、刑部さんも安心っすね!」

 「ああ、こちらの料理なら三成もしっかり食べるかもしれないと思っていた。流石めぐみ殿!」

 

ああはいありがとう。何となく三成くんを見てみれば、

 

私としたことがあれほどの馳走、秀吉様と半兵衛様への土産としてご用意することを忘れるとは何たる不覚素晴らしく財が掛かっているだろうとは分かるがもう一度料理をしてくれ必ずやこの三成秀吉様と半兵衛様のためになんだ家康離せ私はお二方のために以下略。

 

………うん。気に入ってくれてありがとう。

 

 

――三成達が急に消えて帰ってこないとな?やれ奇妙、奇妙。

――家康君と左近君まで一緒にとは、少々心配だね

――賢人よ、まったくそうには見えぬがなぁ

 

 

 「半兵衛様!刑部!」

 「そろそろ帰らなきゃ心配かけちゃってますね三成様」

 「今回の迎えだな。さて、挨拶もそこそこだがすまないめぐみ殿」

 「はいはい、さっさと帰ってちょうだいな。もうくるな」

 

馳走になった、ありがとうと口々に話し、押し入れを潜る三人。最後に深々と家康くんが頭を下げて襖を閉めた。

 

 

 

 「なぁにがワシが腹が減っている、だか。三成くんにご飯食べさせたかっただけでしょ、まったく」

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