書きたいもの詰め合わせた闇鍋話   作:オニヤンマンマ

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方針

 1

 

 仰向けになって柔らかそうな腹部を露出させている大きな獣を、ウルベルトは見下ろす。

 

(ハムスターだよなあ。どう見てもハムスター)

 

 尾は異常に長く哺乳類の動物には本来見受けられないはずの鱗が生えているが、かつてのギルドメンバーが愛していた愛玩動物をそのまま巨大化させたような姿だ。

 こちらの世界のモンスターの一種なのだろうと思う。

 爪は鋭く、むき出しの齧歯は岩をも砕きそうな頑強さを感じる。鞭のようにこの尾がしなったら、ウルベルトからしてみればひとたまりもないだろう。

 怯えをにじませた小動物的瞳には、理知的なものを感じる。

 

 レベルアップがもたらした体調不良が落ち着き、使用できる警戒系のアイテムや短杖を惜しみなく使って歩きはじめてすぐに遭遇した珍獣に、ウルベルトは目を丸めていた。

 

 鉢合わせた瞬間、なぜ、とウルベルトは驚愕した。気配を完全に消している様子もないのに、索敵に引っかからなかった。

 もしかして、索敵系の能力を無効化にする力があるか、この世界ではユグドラシルの警戒アイテムが全く通用しないのか、と焦りながら考えを巡らした。

 

 その疑問はすぐに氷解する。相手に敵意がなかったから、そもそも警戒に引っかからなかったのだ。

 

 木陰からこちらを窺うように見ていた大きなハムスターは、ウルベルトと目が合った瞬間、音をたててひっくり返った。見た目の可愛らしさとは裏腹に獰猛な気配をまとっている獣に、本能的に実力の強弱をまざまざと感じ取れる。正直なところ、心臓を掴まれるような生きた心地のしないものを植えつけられている男のほうが気絶したかった。

 

「降伏でござる! 負けでござるぅ!」

 

 腹を見せることで動物的な恭順な意思を示し、つぶらな瞳でこちらを見上げ、必死に命乞いをしてくる。 

 

(喋った、しかもござるって……)

 

「殺さないでほしいでござるぅう!」

 

「いや、殺すつもりはないないが」

 

 なんというか、実力差的に殺すのも骨が折れる作業になる気がする。

 帰るという目的があるといっても、即座に目指さなければならないものがあるわけではないから、寄り道だってできるだろうが、敵対する意思もない者と戦って無駄にアイテムを消費するつもりはない。

 

「ほ、本当でござるか!?」

 

 ハムスターは勢いよく起き上がる。豆大福のような愛らしさ、というウルベルトが口にしたこともない食べ物に例えられた生き物の立ち姿。

 

(うん、小さければ可愛いんだろうな。でも、これは怖いわ)

 

 巨木のような威容がないとはいえ、ウルベルトの命を簡単に刈り取れる存在なのだ。

 ウルベルトの身長を凌ぐ、大きな生き物だった。見下ろされると圧迫感がいや増す気がする。

 これが本当にゲームなのであればーーハムスター一匹に恐れをなす大災厄の悪魔など、かつての仲間に見られたくはない恥ずかしい光景だと理性的に思う部分はあるのだが、感情はそんなものを無視して勝手に湧き上がってくる。

 

「ひとつ聞きたいいんだが、お前、俺よりも強いだろう? なんでそんなに俺を怖がるんだ?」

 

 ウルベルトの問いに、ハムスターは心底不思議そうに、見た目だけなら大層可愛らしい顔をかしげた。

 

「何を言っているでござるか、それがしが明らかに太刀打ちできないあの邪悪な大きい木を倒してしまったではござらぬか。それも、あんなに強くて、恐ろしいものたちを呼び出していたのをしっかりとこの目で見ていたでござるよ」

 

 目を強調したいのか、まんまるい目を、こころなしかきりりとさせる。

 

「あー、そうか。あれを見ていたか、そうかそうか」

 

 レベル100プレイヤーの一方的な虐殺劇を見たら、確かにその召喚主のウルベルトを恐れるのは当然だった。

 ウルベルトは得心して頷きながら、考える。

 今、彼には圧倒的に情報が足りていない。

 

 かつての自分たちのように、中に人間の意識が入った異業種、という可能性もなくはないのだが、やりとりから感じ取れるものに人間の厭らしさ、というものが一切なかった。

 ハムスターの見た目のユグドラシルのプレイヤーであったならば、もっと違う態度を取るはずだろう。

 ウルベルトは目の前の存在に、過剰な警戒をするのをやめた。

 

 このハムスターは意思疎通ができ、幸いなことにウルベルトを恐れているから攻撃の意思をみせていない。

 知性的なものを感じるが、人間のずる賢さは感じない。性格的には素朴な素直さ、愚直さ、というのが第一印象なのだ。

 どこまでがウルベルトの常識が通用して、どこからがこの世界ではおかしくなるのか。面倒な腹の探り合いなく、引き出すことができそうな気がする。

 はじめの情報収集の相手として、最適ではなかろうか。

 

「いろいろ聞きたいことがあるんだよなあ。命の代金ってことで、話を聞かせて欲しいんだ」

 

 ウルベルトとしては脅すつもりはなかったのだが、目の前のハムスターは彼の言葉に毛皮を逆立てさせ、長い尻尾をぴんと張りつめさせて怯えた。

 

「なんでも答えるから殺さないでほしいでござる!」

 

 黒い瞳を潤ませて、必死に懇願してくる。

 

「あ、悪かった。そんなに怯えなくても……」

 

 そういえば、と思い出す。

 この場を上手く切り抜けるのに、よさそうなアイテムを所持していた。

 ウルベルトのアイテムボックスの中には、低レベルモンスターを手なずけるためのアイテムがいくつかはいっていたはずだ。フレーバーテキストを信じるならば、たぶんこの巨大ハムスターでも美味しく感じるはずだ。無限の背嚢から取り出すふりをしながら、アイテムボックスを開き、手探りでアイテムを取り出す。

 ミーシャと一緒に遊ぶときにこなしたクエストで使った、笹と呼ばれる大きな葉っぱにのった団子の山を巨大ハムスターの鼻先に突き出した。

 ウルベルトの鼻にも届く、ふんわりとした上品な甘い匂い。間近に突きつけられたハムスターはふんふん、と思い切り鼻をひくつかせた。

 恐怖にうるんでいた目が、今や期待に輝いている。

 

「も、もしやこれをそれがしに……?」

 

「ああ。友好のしるしってところだろうな」

 

 ウルベルトが渡すと、前脚で大事そうに笹ごと受け取った。ハムスターは団子の山にかぶりついた。笹の上の団子の山は一瞬でなくなり、目の前でぷっくりとほほ袋がふくれる。

 

(これが、うわさのほほ袋)

 

「美味しいでござるよ! あー、ええと。お前は名はなんというのでござるか?」

 

 一瞬、リアルでの本名を名乗ろうかとも考えたが、ハムスターが喋るメルヘンめいた幻想世界でリアルネームを使うことに、男の中の矜持というか常識力というかなにか耐えられない羞恥的なものが胸を満たしたため、ゲームでの名前を告げることにした。

 

「ウルベルトだ。それで、そういうお前は名前はあるのか?」

 

「それがしは森の賢王と呼ばれているでござるよ! ううん。美味しい! こんなに美味しいものを食べたのははじめてでござる。礼をいうでござるよ、ウルベルト」

 

(ハムスターが森の賢王? 見た目の割に随分と大層な名前だな……もしやここは、動物だけが暮らすミーシャちゃんが好きそうな絵本みたいな世界じゃないだろうな)

 

 第六層農場領域が世界そのもののような場所を想像し、男の存在感にはとても似つかわしくない場所への違和感に全身に苦渋が広がった。

 

(いや、あんな恐ろしげなイビルツリーがいるんだし、それなりにいろんなやつがいるんだろう。頼む、そうであってくれ)

 

 脳内が疲れてしまう想像に、ウルベルトは首を振った。

 

「美味いようなら良かった」

 

 馬鹿げた妄想で疲れた脳を癒したかったウルベルトは、もぐもぐと団子を食べるハムスターを見る。

 毛感触がやわらかい。あたたかくてだっこすると気持ちい。ギルメンのジャンガリアン談義を思い出す。

 小動物を触ることは、とても癒されることらしい。

 

 はて、この巨大なハムスターはどうなのだろう。

 

 ウルベルトは強さに見合う硬さで手触りはさほどだろう、と諦めつつも、すこし期待しながらさりげない自然さを装ってハムスターの背中に触れた。

 手のひらにちくちくと大量の小枝が刺さるような感触が伝わる。予想通り、毛皮はとても硬かった。

 すこし、いやかなり残念だった。

 

 

 

 この辺りは森の賢王と名乗るハムスターの縄張りで、その言い分を信じるのならばこのハムスターより強いモンスターはいないらしい。

 あの巨木は長くこの森に住んでいるハムスターも初めて見るもので、他の縄張りの主は「この森の賢王に比べれば皆弱いでござるよ!」と豪語した。

 ウルベルトはその言葉を一応、信用することにした。

 ハムスター以外の縄張りの主人達も、森の賢王と並ぶか、多少差があるか程度の実力とあたりをつける。丸腰で準備のない彼では、あっけなく殺される相手、ということだ。ただし、万全の準備さえしていれば、今の自分であっても勝てる相手だろう、と。

 

 少なくとも、あの巨大なイビルツリーが他には存在しない、ということは信じたかった。あんなものがまた出てきたら、今度こそ逃げる暇なく殺されそうだ。

 

 道中の話で、ウルベルトと同じような人間がこの世界にいるのは確認できた。

 森の賢王と名は、その人間たちがつけた異名であり、名前ではないらしい。

 

「美味しい食べ物の礼に、それがしの名前をつけさせてやってもいいでござるよ」

 

 上から目線の偉そうな物言いをハムスターにされて、ウルベルトは少しだけ苛っとした。

 これが丁寧にお願いする態度であれば、異世界転移のようなことをして初めて知り合った知的生命体である。その縁を尊重し、彼の語学センスを持って渾身の名前をつけてやっただろうが、その気力は完全に萎えた。

 いい加減で適当な名前をつけてやろう。

 ウルベルトはそう決めた。

 

「ハムスケ。今日からお前の名前はハムスケだ」

 

 このなんらやる気のないネーミングを聞いたら、アインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーたちがこぞってウルベルトを心配していただろう。

 ギルマスモモンガ並みに安直でひねりのない、ウルベルトらしさとも言える厨二成分の欠けた名前。

 実際、ウルベルトの体調や精神状態は、転移直後で気が張っているせいで本人には自覚はないが、他者から案じられても仕方ない状態だった。

 顔色は悪く、目からはやや生気が欠けている。人間の顔色の違いなどよくわからないハムスケしかこの場にいないから、誰もウルベルトに指摘できなかったが、頭が働かないくらいかなり疲れていたのだ。

 

「ふむ。ハムスケでござるか。今日からそれがしは森の賢王ハムスケと名乗るでござる」 

 

 得意げに鼻を鳴らすハムスケは、ウルベルトの予想を超えるくらいに嬉しそうで、ほんのちょっぴり罪悪感が生まれた。もう少し、ましな名前にしてやってもよかったかもしれない、と。

 

 ウルベルトは生まれてしまった罪悪感をかき消すため、ハムスケが美味しいと喜んでいた団子を差し出した。

 

「食えよ」

 

「むむっ。さっきの美味しかった食べ物でござる。ありがとう、ウルベルト」

 

 うきうきと長い尻尾を揺らし、団子にがっついた。

 一生懸命に食べてほほ袋が膨れる様は、確かに可愛いかもしれない。

 

 図体のでかさはさておき、動物への餌付け行為というのは、なんとなく楽しい。かつては理解出来なかったギルメンの言い分に、ウルベルトは時を経て同意した。自分が差し出したものを相好を崩して嬉しそうに食べている動物の姿は、感じ取れるレベル差さえ無視すればとても癒される。

 それに、アーコロジーの外ではほとんどの動物が死滅していた。動物への餌付けなど、ウルベルトが生きていたリアルでは、決してできなかった贅沢な行為だ。すこしおっかなびっくりであるが、現世に帰って死ぬ前になかなか出来ない貴重な体験できた。あの世にいる両親への、いい土産話になるかもしれない。

 

「さっきからそれがしばかり食べているようだが、ウルベルトは食べなくていいのでござるか?」

 

「あの巨大樹を倒していたところを見たなら、俺が吐いていたのも見てただろ。まだ胃の中に何か入るコンディションじゃないんだ」

 

 怪我や、鼻血、嘔吐の後遺症事態は綺麗になくなっている気がするが、リアルでの感覚をまだ引きずっていて吐いた直後に何か食べる気にはなれない。

 

「お腹が空いたら言うでござるよ。美味しいもののお礼に何か狩ってくる。なにせここはそれがしの縄張りであるゆえ、狩などたやすいでござる」

 

「気持ちだけ受け取っておく。食べ物なら一応あるからな。とりあえず、感謝してるならいろいろ教えてくれ」

 

「わかったでござる。と言っても、それがしは森のことは知っていても、外の人間のことはあまり知らぬから、期待に応えられるかはわからないでござるよ」

 

 ハムスケにさらりと付け加えられたことばに、ウルベルトはそうだようなと内心ひとりごちた。森の中に住む動物に、あまり過度な情報量を期待するのはやめておこう。 

 

「ああ、わかった。最悪、人里まで送ってくれればそれでいいさ」

 

 

 

 

 すぐに人里に向かうことはせず、ハムスケから聞けるだけ話しを聞いてから人間たちが住む村に送ってもらうことにした。

 それに、誰か人と会う前に、自分が今できることなどを安全を確保した上でたしかめておきたい。 

 

 今日はハムスケのもとで休むことになり、ウルベルトはハムスケの寝ぐらへと案内された。

 原始的な住処だ。ごつごつとした土壁でできた大きな洞穴の奥に、巣があった。

 ゲームで見たことがあるネズミ系モンスターの寝床そのもので、枝や葉っぱの自然物で作られた巣だ。丸みを帯びた大きな巣の中央は、凹んでいる。ここでいつも丸くなって眠っているのだろう。

 

 ゲームのネズミモンスターの寝ぐらとちがい、獣の骨や餌の残り、あるいは人間の死骸で巣の中が汚れているということはなく、じんわりと湿った地面には大きなハムスターの巣しかない。

 

 周囲のモンスターは、森の賢王を畏れ、ここには近寄らない。

 ハムスケは自慢げに言うが、それを鵜呑みにするウルベルトではない。

 

 盗賊の警戒スキルを使用可能になる指輪を握って集中する。

 ゲームでは課金しなければ使えなかった三個目、四個目の指輪が使用可能かはめていたものだ。

 

 ユグドラシルでは表示された簡易マップにエネミーが赤点で表示されるものだったが、ゲームが現実になってしまったらしいこの世界では、視界にマップが出現するということはなく、第六感が刺激されて敵の気配を感じ取れる、というなんともあやふやなものになっている。

 

 研ぎ澄まされていく、聴覚、目に見えない触覚めいたものが多方に伸び、敵を探す。

 今までの自分にはなかったこの第六感を信じるならば、知覚できる範囲には敵はいない。

 

 一応、ここは安全圏といっていいはず。

 

 そう思ったら、肩の力ががくりと抜けて、張り詰めていたものが溶けた。

 

「ゆっくりくつろいでいってほしいでござる」

 

「遠慮なくそうさせてもらう」

 

 ウルベルトは相当疲れていて、無限の背嚢から取り出すふりも忘れてアイテムボックスからもうひとつの無限の背嚢を取り出した。

 

「すごいでござる。いきなり袋が増えたようだが、どうやったでござるか?」

 

「……あー魔法」

 

 その指摘にしまった、とすら感じないウルベルトは、無限の背嚢から毛布を取り出した。

 最終セールバザーで投げ売りされていた、なんの効果もない見た目だけ豪華な家具アイテムだ。

 『ふわふわもこもこな毛皮がしあわせでここちよい快適な眠りを約束します』という説明が書いてあった気がする。

 神獣と呼べる高レベルモンスターの毛皮を無駄にふんだんに使ったという設定の趣味アイテムだ。

 NPCの部屋に置いてもよさそうだし、安かったから買ってみたけれど結局いらなかったもののひとつである。

 

「ウルベルトはやはり、魔法詠唱者なのでござるな。さっきの召喚魔法もすごかったでござる」

 

 聞き覚えのある単語を出されてもそれにはっとすることなく、ウルベルトはなにも言わずに横になりもそもそと毛布にくるまった。

 

(本当に気持ちいいな、これ。リアルの毛布とは偉い違い……)

 

「ウルベルト?」

 

 ハムスケは男の名前を呼ぶが、返事はない。

 毛布にくるまった男を覗き見ると、すっかり眠り込んでいる。

 

 青白い顔をしているーー仮にウルベルトをとても大切に思っているギルドマスターが居合わせようなら盛大に心配してしまう様相でーー気絶するように意識を手放していた。

 

 くりっとした目に、不思議そうな光を宿し、ハムスケは毛皮にうずもれた首の部分をななめに傾げる。

 

「寝てるでござる」

 

 美味しいものをもらい、名前までつけてくれた者を冷たい地面に置いておくのは、森の賢王とまで呼ばれた智者としての名が廃る、とハムスケはウルベルトを乱暴に担いで巣に放り込んだ。

 その衝撃でも、ウルベルトは目覚めることはなかった。

 

 

 

 2

 

 ぷにっと萌え曰く、

 

「自らを深く知らないことは、最初から敵に負けているのと同じことだよ。0から100まで把握しない慢心は死に向かうことに等しいんだ」

 

 その言葉、今のウルベルトには深々と突き刺さるものがあった。

 今、ウルベルトは自分が置かれている状況はおろか、自分のことすらなにひとつ知らない。

 

 死ぬべき場所で、死ぬ。

 そのためには、自らの取れる手段を確認しておくこと。それがこの異常事態で生き残るためには重要だった。

 

 このような状況にでもならなかったら、思い出すこともなかったぷにっと萌えのことば。その助言を忠実に守っているのが、ギルドマスターのモモンガ。

 モモンガは自身が習得する718全ての魔法の特性を把握し、状況に応じた最善の手段を即座に判断し行使することができる。

 

 その膨大な魔法取得数に嫉妬することもあった。そしてウルベルトよりもはるかに優れた状況適応能力にも。

 

 本人は謙遜しがちでそうは見えないが、対人戦においてモモンガほどの戦術構築力を持つ者を、ウルベルトは知らない。

 ギルド内の実力では第三位となっているが、PvPの勝率でいえば圧倒的にモモンガがギルドトップと言っていいだろう。

 ギルド最強のたっち・みーとて相性が悪い相手にはすこぶる弱く、ウルベルトは長期決戦に弱いという弱点を抱えている。総合力ではどんな状況でも臨機応変に対応できるモモンガがダントツなのだ。

 

 一番の武器は、他者の助言に素直に耳を傾けることができる素直さなのだろうと思う。

 ウルベルトだと、相手にもよるがプライドと負けん気が勝って、相手の言い分が正しかろうが我を通してしまう。

 モモンガは、自分は他の者よりも劣っているという過剰な劣等感を持ち、それにより少しでもよくなるために、と砂が水を吸うように吸収して、助言を我が物としてしまう。

 ぷにっと萌えがあれこれとモモンガを構っていたのも、その成長を見るのが楽しかったからだろう。

 

 そんな、モモンガをよくかまっていた彼が完全にギルドを辞めてしまったときの、ギルドマスターの悲嘆と来たら……

 

(重さがっ。思い出したくないあの、重さが。いや、今は昔を懐かしんでいる場合じゃないな)

 

 懐かしむという言葉では言い表せ類の感傷を振り払い、ウルベルトは手にした本に向き合った。

 ウルベルトはワールドサーチャーズ特製のクラス解説読本を手に、現在自分が取得しているクラス《ヘラルディスト》に関して勉強をしていた。

 

 気絶するような睡眠から覚めたあと、朝食をとり(リアルに帰ることを一瞬本気でためらうくらいびっくりするほど美味しかった)、ハムスケの寝ぐらのすぐ外にレジャー用のハンモックを広げ、ウルベルトは熱心に本を読んでいた。

 縄張りの主であるハムスケはウルベルトのすぐ近くで同じようにハンモックに揺られている。こちらは丸くなってすっかりご機嫌で眠っていた。

 

 ハンモックを興味深げに見ていたハムスケのために、騎獣用の大きめのハンモックを出してやったのだ。

 しげしげと見やり「これはなかなかいいでござるな!」子供のような歓声をあげると、すぐに大人しくなっていた。

 

 おおきな大福がぐるんとなっている姿に時折視線をやりつつ、ウルベルトは生存戦略に努める。

 

 イリニの部屋に飾るためにと集めていた本が、こんな形で役に立つとは思わなかった。フレーバーテキストやユグドラシル内にある関連文字データを執念的に集め、解説や考察とともにデータ集を記してある。この本がなければ予備知識を得られず、試行錯誤で能力を確認するほかなく、無駄に時間が取られていたに違いない。時間というのは貴重だ。特に、こんな右も左も分からない状態に陥っていたら、ほんの少しの時間の足りなさで発生した知識不足が、危険や死をまねくかもしれない。変態集団ワールドサーチャーズ様様だった。

 

 ヘラルディストは人間種専用の、下級職においては非常に珍しい系統複合魔法職だ。信仰系魔法と魔力系魔法を習得でき、レベルをあげることで戦士系のスキルの習得を可能とし、完全魔法職にはない体力や耐久のステータスの上がり方をする。いわば魔法戦士のようなものだった。

 

 一見、さまざま手段を選べることから、有用なようにも思えるがこれがゲーム内であれば異形が取得できるクラスだとしてもウルベルトは無視しただろう。

 モモンガに語った通り、いろいろなことができる分、特化した力がない。クラス取得にイベントを必要とするもののためか、その成長値の合計値は目を見張るものがあるが、信仰値も魔力値も、体力や耐久のステータスも、それ専門のクラスに比べると完全に水を開けられるまんべんのなない正九角形成長。

 

 取得魔法にも目新しいものはなく、一回目のスキルの発動は何が起こるかわからない紋章に秘められた力を解放するということにロマンを感じる者用の、あるいは博打を楽しむ者用の、完全趣味職。その博打感覚も、レベルアップすると得られるスキルによって、意味がなくなる。

 

 このクラスに、旨味を感じない。

 だが、それはゲームであれば、の話である。

 仮想現実が血肉を伴った現実になってしまった以上、できることが多く完全魔法職のような肉体の脆弱さがないというのは、窮地に活路を見出すことができるはずだ。肉壁になってくれる仲間をすぐに見つけられるゲームとは、わけが違う。

 魔力値がわずかに足りなくて死ぬような状況よりも、回復や使える手数の多さ、肉体の頑健さが生死を分ける状況のほうが多いだろうと推測する。

 

 レベルを最大である15まで上げれば、第五階位の信仰系魔法と魔力系魔法まで取得することが可能。下級職を最大レベル15まであげることはゲーム内ではステータスや取得魔法、スキルなどの無駄が多かったから、できるならばヘラルディストが10まで上がったら、ハイ・ヘラルディストに切り替えたい。しかし、ゲームとはちがいコンソールで指定のできないここでは難しそうだ。だいたい、レベルが10まで上がったからと言って、機械的に新しいクラスを取得できるのかも定かではないのだ。

 

 目に見えて確証を得られるものがない、ステータスを閲覧できない、というのは大変不便だとウルベルトは内心嘆いた。

 

 今できるのは、所持スキルや取得できる魔法で自分のクラスレベルや合計レベルを推測できるだけだ。

 

 《魔法距離延長化》、ゲーム内の特殊文字を日本語訳してくれる《翻訳》スキル、戦士系の初期防御スキル《パリイ》、ヘラルディスト専用スキル《紋章知識》これは紋章にふれるとあらかじめ解放(リリース)での効果を知っておけるスキルだ。

 試しに、これを使えるようになっているかどうか、ウルベルトは試みてみた。

 結婚指輪には、自分の紋章も刻まれている。

 紋章にかざした手から、ふ、と知識がはいってくる。

 

 生贄の使用により上位悪魔の召喚が可能。

 ちらり、と見覚えがあるかつて廃却した悪魔の姿が視界によぎった気がしたが、ウルベルトは気にも止めなかった。

 

解放(リリース)するにも条件付の場合があるって、書いてあるがこれのことか)

 

 スキルを発動させるだけでは、紋章の力を発動できない場合がある。生贄を必要としたり、一定の割合のHP以下であったり、なんらかのステータス異常を起こしている場合であったり。

 

 淡々とスキルの確認を続ける。

 レベル6で新たなスキルは習得せず、7、8でまたヘラルディスト専用のスキルを習得する。

 複写(コピー)というもとからある紋章を、コピーする力。このスキルで複写されたものは原本のものより効果は劣化する。 

 ヘラルディストの説明欄に、使える紋章一覧という項目があり、ウルベルトはそれに複写(コピー)を使用した。

 スキルの使用を意識すると、指に何かが張り付くような感覚があった。

 指を見てみるが、はっきりと形のあるものは見えない。だが、粘着質なものが自身の指に絡まっているのは確かだ。

 アイテムボックスから紙を取り出し、そこにシールでも貼るように貼り付けた。コピーした紋章がしっかりと紙に印字されている。

 成功した。手応えがあるのは正直嬉しい。

 紋章自体の精度、紋章が刻まれている材質により解放(リリース)の効果の強弱が決まるらしく、ただの紙にコピーした紋章は、あまり期待できるものではない。

 だが、ウルベルトは大量の上位素材をもっており、効果を劣化させる複写(コピー)であっても、かなりの威力をもつ紋章を作れるだろう。

 

(上手くいけば、攻撃、治癒、防御の能力が量産できるが、大量に紋章を作っても解放(リリース)は一日に使用回数が決まってるスキルなんだよな)

 

 複写(コピー)も同様で、一日の使用制限がある。時間がある限り延々と紋章のコピーをできるわけではない。

 便利そうでいても、ゲームの仕様がある以上制限はあるのだ。

 次に、描画(デザイン)。解放に使える紋章を、自分でも作成可能になるアクティブスキル。なんらかのアイテムにあらかじめマークを書いておけば、力を引き出せる。

 

(絵心が割と絶望的な俺でも、それっぽいものが描けるのか?)

 

 ウルベルトは◯の中に三角や四角くらいしか描けない自分の描画力を思い、ため息をついた。

 とりあえず、使えるかどうかやってみるべし、と意識を前向きに切り替えた。

 下手なものしかできなくても、ウルベルトには模写(コピー)という便利なものがあるのだ。

 リーザやミーシャのギルドサインを考えるときに参考にした書籍や、ギルドメンバーのギルドサインを記したデザイン帳も持ってある。

 自分で描けなくても、困りはしない。

 

 アイテムボックスから宝石がついた洒落た羽ペンと下敷きがわりになる板を取り出し、スキルを意識して描き始める。

 

(う、これは……)

 

 すらすらとペンが動いていく。

 丸みある線に迷い線がまったく生まれず、パソコンのペイントツールでも使っているような均一な太さの線が描画できる。歪みのない円形の中に、頭の中思い浮かべた形が、そのまま手によってアウトプットされていく。

 

 渾身のNPCであるデミウルゴスをイメージした紋章が、自分の理想通りに完成してしまった。

 

(ゲームスキルってすげえ)

 

 ウルベルトは調子にのりスキルを使わない状態で、完成した紋章を真似て描こうとした。線ががたがたになり、てんで似つかないものになった。無言で破り捨て、失敗したほうはゴミ袋代わりの背嚢に放り込んだ。

 

 紋章の仕様効果は、支配の呪言を一定時間だけ使えるようにするもの。紙に書いたものであるため非常に短い時間だが、あれば便利なものだ。

 

(時間限定とはいえ、スキルを付加できるのか。ヘラルディストの説明に書いてあるよりも、大分できることが多いんじゃないか?)

 

 ヘラルディストが解放(リリース)によってできるパターンというのは、本を信用するならばそんなに多くはないのだ。

 スキルが一時的に付加されるなどの文言は一切ない。あの変態集団がそんな簡単な情報漏れをするとは思えず、ウルベルトが偶然運良く発見した、という可能性も低い気がした。

 

解放(リリース)の効果も、ゲームと変わってるのかもな)

 

 ゲーム中は、スキルが付加されることはなかったが、現実世界にシステムが即したことで、データで支配していたときよりも膨大な可能性がひろがったのだ。

 

 ゲーム中には反映されることはなかったが、ヘラルディストの説明にある『解放(リリース)は使用者や周囲のイメージによって能力が決まる場合がある』というのが、ひとつのキーワードなのかもしれない。

 

(時間があるときに、これに関してもいろいろ調べてみるか)

 

 何事も試行錯誤は欠かせないのだろう。

 

 ヘラルディストがレベル10で取得するスキルは、自分の中で使える気がしなかった。どうやら、そこまではレベルが上がってはいないらしい。

 

(とりあえず、ヘラルディストは最低でも8までは上がっている、と。ワールドディザスターを持ってたけど、それもレベルが上がってるのか? 燃費が悪くなるから、正直今の段階ではレベル1にだってしたくないんだが)

 

 ワールドディザスターが強制的に取得してしまうスキルがある。

 魔法の威力を跳ね上げる代わりに、MP消費が格段に上がる呪いのようなスキルだ。このスキルを一度覚えてしまうと、ワールドディザスターのクラスを失わない限り、解除することは不可能。かつてのウルベルトの圧倒的殲滅力を担うスキルであり、最大の弱点を生み出すもの。

 

 このスキルのことを意識したとき、自分の内側にある何かを明確に認識する。

 ウルベルトの体内で、大釜の中でぐつぐつと燃えたぎる魔法の根源が蠢いている。もうひとつの心臓が息づいているようであった。

 地獄の渦がフレアのような原始的で凶暴な火を散らし、純粋な魔力を凶悪な魔法へと精製する本来なら存在しないはずの内臓が、血液を循環させる心臓のように動いている。それは底なしの胃袋でもあった。大食らいの口を奈落のようにぽっかりと開けて、ひとたびその内蔵を意思を持って動かそうとすれば、ウルベルトの中にある魔力を吸い尽くす。

 

「レベルアップしてんじゃねえか!」

 

 あまりの衝撃に思わず怒鳴ると、眠っていたハムスケがびくっとして飛び起きた。

 

「ど、どうしたでござるか、ウルベルト! 敵襲か!」

 

 きょろきょろと辺りを見回すハムスター。

 

「悪いな。気が動転して大声を出した。寝直してくれ」

 

 顔を抑えてうつむきがちに呻くウルベルトに、ハムスケは心配そうな目を向けた。

 

「ウルベルト、あんまり根をつめるのはよくないでござるよ」

 

 いい歳したおっさんとしての尊厳めいたものが、ごりごり削られていって目眩がした。

 うっかり声を上げてしまった恥ずかしさに、ハムスターにいたく案じられる人間というシュールな絵面が加わり、ウルベルトは気が遠くなり意識がぐらついたが、なんとか持ちこたえる。

 

「大丈夫だ。本当に気にしないでくれ」

 

 ウルベルトは重ねて言った。

 ハムスケは信用していない眼差しでウルベルトをじっと見つめる。

 

「本当でござるか? 昨日もウルベルトは疲れてすぐに寝ていたでござるよ。それがしは魔法のことはあまり詳しくないが、あの召喚魔法はウルベルトの負担になっていたのではなかろうな? 顔にも模様のような怪我の跡がまだ残っているでござる。無理はしないでゆっくり休むか、人間の村に行って治療したほうがいいのではござらぬか?」

 

「本当に大丈夫なんだ。気にしないでくれ」

 

 ウルベルトはハムスケの追及を強い言い方で封じ、本に視線を戻した。

 と言っても、低レベルでワールドディザスターのレベルが上がってしまったという衝撃は、いまだにウルベルトの中に残っている。

 文字はまともに頭の中に入ってこなかった。

 

 彼の中でトップクラスの理想であるワールドディザスターを、こんな中途半端な強さで保持している悔しさと、最強クラスを使いこなせない歯がゆさがある。

 同時に、スキルのデメリットがこれから魔法詠唱者としてのウルベルトの足を存分に引っ張っていってくれるだろう不安も。

 

 普通の低レベルの者に比べれば、アイテムと装備に恵まれていているから困ることはないだろうが、これからのことが全く想像がつかない不安から、スキルのデメリットにばかり注目がいって居心地が悪かった。

 

 気を取り直すために、本を閉じる。

 

 ウルベルトはレベルが上がってしまったものは仕方ない、とすぱっと諦めた。

 大量にストックしてあるスクロールの一部が使えることになったことを喜ぼう。

 

 魔法の取得順予定は、ワールドディザスターのレベルが上がったところで変わらない。

 今のウルベルトでは、高位クラスが取得する魔法は使えないからだ。

 もしかたしたらユグドラシルの魔法習得の法則と違い、いきなり高レベルの魔法を使えるようになるのかもしれないが、ウルベルトはとりあえずユグドラシルのルールに則った魔法習得をしていくことに決めた。習得の仕方の法則性に違いがあるのかは、徐々に調べていけばいい。

 

 今のウルベルトがワールドディザスターを最大レベル5まで上げて得られるのは、スキルと能力値だけだ。

 ワールドディザスターの代名詞とも呼べる大災厄(グランドカタストロフ)はレベルに関係なく使えるスキルであることが、幸いだろう。

 ワールドアイテムの補正があるとはいえ、最大レベルのガチビルドが放つそれには、今のウルベルトでは到底比肩できない威力しかでないであろうが。

 

(とりあえず、ワールドディザスターをレベル5まで上げるのを目標にしよう。

 まだ総合レベルが低いから、ハムスケと同じくらいのモンスターがいれば簡単に上がるはず。

 むしろ、上げすぎないように注意しないとな。またあんな目にあうのはごめんだ。

 それで、ヘラルディストを10まで上げて、ハイ・ヘラルディストのクラスを取れるならとって……魔力系魔法系統の下位クラスをもう一個か二個くらい取りたいな。どうすればクラスを得られるんだ? 都合よくクラスを得るイベントは起こらないだろうし……)

 

 クラス読本をぱらぱらとめくり、考える。

 魔法の研究をするマギ・リサーチャー。

 秘術に触れることで才能を芽生えさせるアーケイナー。

 魔法の世界に接続する才能を持つウィザード。

 特定レベルに達するどころか、初期段階からコンソールを叩くだけでレベルを上げられた基礎クラスが、今やウルベルトには遠いものとなっている。漠然とした解説ばかりで、これといってすぐにクラスを得られるきっかけになりそうなものはない。

 

(ウィザードなら、基礎中の基礎クラスだし頑張ればクラスレベルを上げられるか? でも、ウィザードは完全魔法職だから打たれ弱い。魔力の上がりは下級職の中で一番高いが……)

 

 メリットとデメリットの天秤をかけながら考えていると、メイジ・ティーチャーという項目に目が止まった。

 チュートリアル並みに簡単なイベントによって取得するクラスで、ざっと見てヘラルディストとスペルリストの被りが少なく、魔力はウィザードに劣るが体力や耐久が魔力系魔法詠唱者のクラスにしては高い。

 第三階位の魔法ファイアーボールを披露し、生徒役であるNPCにファイアーボールを教えることで取得できるクラス、とある。

 はっきりとクラスにつく条件が提示されている下級魔法職だった。

 

(魔法を教えられる状況になったら、このクラスの取得を考えてみるか?

 悪くはないな。

 魔力特化は格好いいしロマンがあるしゲーム的に見ると無駄はないが、生き残ることを念頭におくと危険が多すぎる)

 

 ウルベルトはそれ以外にもペラペラとページをめくったが、メイジ・ティーチャーほどはっと目を引く下級クラスはなかった。

 近く、このクラスの取得を目指そう。

 人間種が住む街に出て、第三階位のファイアーボールを覚えたいという者を探すのだ。

 

 そのためには、まずは自分が魔法を習得しなければならない。

 ゲームの通りならば、今の自分のレベルなら魔力系、信仰系共に第二階位まで習得できる。

 

 ヘラルディストが習得できる魔法をリストの中から選ぶ。全ての魔力魔法の基本である始まり魔法の矢(マジック・アロー)などの攻撃魔法が数種類、バフ系の早足(クイックマーチ)、状態異常おこす睡眠(スリープ)そして信仰系魔法の初歩軽傷治癒(ライト・ヒーリング)と簡単な状態異常を回復する魔法や信仰系の防御魔法がいくつか。そしてなんらかの魔法を取得できる状態になると魔法選択リストにのる伝言(メッセージ)となる。

 

 魔法の矢(マジック・アロー)は必須だろう。保持魔力に応じて攻撃力が上がり、ある程度のレベルになっても長く使える魔法だ。それに加え、高位の魔法を取得する際に必要な前提魔法になっていることが多い。

 次に軽傷治癒(ライト・ヒーリング)。もっとも下位の治癒魔法のため効果は薄いが、これより上の治癒魔法の取得には必要不可欠なもの。せめて、第三階位の重症治癒(ヘビーリカバリー)くらいは使えるようにしておきたい。

 

 とりあえずはこの魔法を習得しよう。

 そう決めたウルベルトは、はっと動きを止める。

 習得しようと、したのだ。

 

「どうやって、覚えるんだよ」

 

 コンソールが開かない今、リストからの魔法の選択は不可能だった。

 

 3

 

 ユグドラシルの魔法という現象に対して深い考察がなされている本の読み解きを放棄したウルベルトは、リアルの世界には一切役に立たない、効率的な魔法の習得方法というものを半日の間で編み出していた。

 

 黄金豊穣の宝鍵を無駄に使った、力技である。

 第一階位魔法をわざわざワールドアイテムに限界までストックさせ、何度もそれを使用する。

 スクロールを行使し、魔法の世界に接続する感覚、というものを徹底的に肉体に叩き込み、習うよりも慣れろの精神で魔法の使い方を体に理解させる。

 理屈を頭の中で暗記しても、それが魔法の発露にまで到達しない。ならば感覚に飽きるまで刻み込んでやる、と投げやりになって実行してみた手段だが、ウルベルトにはあっていた。

 スクロールでは分からない自分の中にある魔力を魔法へと変換させる、という段階に一度躓いたが、そこさえ超えてしまえば、ウルベルトは第一階位の魔法を使える駆け出しの魔法詠唱者となっていた。

 

魔法の矢(マジック・アロー)

 

 的にした岩めがけて、光の玉が五つ飛んでいった。ぶつかった光の玉は、岩を粉々に砕く。

 スクロールでは自身の魔力は反映されず、光球は決まった数しか出現しない。

 魔力に応じて出現する玉の数が変わるということは、自分自身の力で魔法を使ったということだ。

 

 達成感に、ウルベルトの口元は知らないうちにほころんでいた。

 

 しかし、ゲームであれば一瞬で習得可能になる魔法に、半日も時間をかけて習得した自身の体たらくぶりにすぐに肩を落とす。

 もっとも簡単で基本的な魔法にこれだけ時間をかけることになるとは。第二階位、第三階位の魔法を習得するとなるとどれだけ時間を必要とするのだろう。

 ウルベルトはゲームのシステムに現実が伴うことによって判明した才能の無さに落胆する。

 比較できる他者がいないから分からないが、優秀ではないだろう。

 

 男は、現地の人間にとっては破格の速度で魔法を習得していることなどまったく知らず、てんで見当違いの理由で失意に沈んでいた。

 

「ウルベルトー。そろそろ休んだほうがいいのではないでござるかー?」

 

 ひと段落ついたと察したハムスケが、落ち込むウルベルトに声をかけた。

 

 もう、時刻は夜になっていた。

 取り出した懐中時計の時刻が正しければ、もう11時だ。

 一応といえる程度の時間魔法の対策が施された懐中時計は、ゲームでは一応ブローチ扱いの装備品だったが、そういった定義を無視できる今はトレンチコートの上に通したベルトに引っ掛けてある。

 ゲームの仕様を無視できる場合と、そうでない場合があり、ウルベルトはその仕様に困惑しながら装備を整えなおしていた。

 指輪は、十本の指全てに通しても、効果が表れているようだ。違う効果のブレスレットを二重、三重に巻いても、しっかりと機能は果たす。

 しかし、レベルによる装備の制限と、クラスによる装備の制限は不思議なことに残っていた。

 

 現在装備しているのは、最上級のアクセサリーを中心とした元から着ていた上級の衣服だ。

 状態異常や、精神異常、監視魔法はワールドアイテムが完全に防いでくれるので、アクセサリーは自身の能力を底上げするものや、属性魔法に対する耐性をあげるものを中心に選んだ。

 ゲームの中で装飾品をじゃらじゃらさせているのは、一種の示威行為であるため気にならなかったが、現実の自分に近い姿でアクセサリーをこれみよがしにつけるのは気になったので、黒いレザー手袋をはめたり袖の下や襟の下にしっかり隠すなどして対策してある。夜であろうと燦然と輝き闇を照らすワールドアイテムも、しっかりとコートの中に隠した。

 

 コートの上に通した工具をしまうポケット付きのベルトには短杖や、スクロールをいれてある。マイナーヒーリングポーションも二本ほどベルトに下げた。見た目の薄いガラス瓶とちがいだいぶ頑丈で、多少乱暴に扱っても割れそうにないのはウルベルトにとってありがたかった。

 これからどんな荒事に巻き込まれるのか分からないのだ。すこし動いただけでポーションの瓶が割れてしまっては困る。

 

「おお。流石にそろそろ休むよ」

 

 経過した時間を理解すると、どっと疲労が肉体に降りかかった。自覚していなかった疲労を認識すると、立っているのも億劫になった。

 

 とにかく、魔法を覚えるという一つ目の課題はクリアした。

 あとは、明日頑張ろう。

 

 ◆◆◆◆

 

 ウルベルトは三日間でいくつかの魔法を習得した。

 魔力系魔法は魔法の矢(マジック・アロー)で要領を理解し、黄金豊穣の宝鍵を使うことで比較的簡単に習得できたが、信仰系魔法は難航し、第一階位の軽傷治癒(ライト・ヒーリング)の習得で精一杯だった。

 黄金豊穣の宝鍵に込められるのは魔力系魔法だけなので、スクロールを持ち合わせていなかったことと、神に祈ることで得られる祝福、という言葉がウルベルトにとって取っ付きにくかったためだ。

 

 ウルベルトは悪魔なら信奉できるだろうが、人民を救うなどいう耳障りのいい言葉を平然と吐き捨てられる詐欺師に祈れるような性根は育っていなかった。

 神に祈らずともシステム的に習得できたのだから、ここでもそうだろうという一念で、ウルベルトはなんとか信仰魔法の使い方のコツ、というのを掴んだ気がする。

 これからは、少しは信仰系魔法を覚えやすくなるといいのだが。

 

 

 ユグドラシルの終了から四日たった、今日。

 一人と一匹の、ある種の牧歌的で平和な生活もこれにて終了である。

 ウルベルトはある程度魔法を習得を覚えたことでこれを区切りとし、人里に向かうことに決めた。

 これでハムスケとも別れることになると思ったのだが。

 

「それがしは、ウルベルトと一緒に行くでござるよ! 生き物の務めとして同族を探し出して子孫を繁栄させるでござる!」

 

 縄張りの森を捨てて、ウルベルトの一人旅について行くことを勝手に決定していた。

 何を言っても無駄に終わりそうだ。

 団子がすっかり気に入いられて、ずいぶんと懐かれてしまっていた。

 ハムスケに懐かれて悪い気はしないのだが、問題があるとすればハムスケの気配にモンスターが警戒して、経験値稼ぎによさそうな雑魚モンスターと遭遇がなかなかできないことだろう。

 

「俺はいずれ、帰るべきところに帰るつもりだ。そのときは俺と一緒にいられないからな」

 

「構わないでござるよ。ウルベルトの大事なことを優先するといいでござる。一匹でも今まで暮らせていたのであるから、元に戻るだけ。でも、それまではついていくでござる」

 

 ハムスケは別離を承知したうえで、ウルベルトの終わりの分からない旅の共となることを決めた。

 

(この世界、テイマーはいるのか? 魔獣を連れ歩いても騒がれないといいんだが)

 

 ハムスケはおそらくレベル30ほど。ウルベルトよりも強いが、ユグドラシルのプレイヤーからしてみればプレイ初日で倒せるようになる雑魚と言っていい。モンスターを連れ歩くことがおかしくない世界であれば、ハムスケの可愛らしい見た目からして、街中に連れて行ってもさほど問題はないとおもうのだが。

 

 人里についたらいったんハムスケには隠れてもらい、そのあたりのこの世界の常識も聞き出そう。

 

 今後の予定を決めつつ、ハムスケの先導で歩く。

 まさしく獣道と言える道程から、森の中に人によって踏み固められた道が表れる。

 途中、ハムスケが止まった。

 

「血のにおいがするでござる」

 

 警戒するように鼻をひくつかせ、耳をぴんとたてた。

 

 ◆◆◆◆

 

 少女の当たり前の世界は、その日崩壊した。

 しあわせという言葉を口にすることはなかったが、その当たり前の日々は少女にとってしあわせなことであったのだと、幼いながらも理解した。

 痛みも感じなくなるほどに、全身の感覚がうすかった。

 蹴られ、殴られ、そして切り捨てられ……その直後は悲鳴をあげるほどに痛かったが、今は痛みよりもただただ悲しみが少女を満たしていた。

 真っ赤にそまった視界の先に、瞳孔を完全に開いた姉が倒れているのが見えた。

 夕焼けよりも、ずっとずっと赤く染まった、姉の姿。

 痛めつけられ、それでも少女を助けようとしてくれたやさしい大好きなおねえちゃん。

 もう、かつてのように少女に微笑みかけてくれることはないのだろう。

 

 必死に、命がけて、少女を守ろうとしたがゆえに、失われてしまった大切な存在。

 

 突然の激変によって降りかかった己の不幸も嘆くこともなく、少女は悲しみになみだをこぼした。

 からだが動かないことが、とても辛かった。

 

 いずれ、自分も姉と同じように動けなくなるのだろう。

 

 すぐ隣に迫って来た死を、少女は理解していた。

 死ぬことはもはや受け入れている。

 けれども姉のそばに寄り添えないのが少女は悲しく、悔しかった。

 せめて、最期のときをだいすきなひとのとなりで終わらせたかったから。

 

 おねえちゃん。

 おねえちゃん。

 おねえちゃん。

 

 こえにならないこえで、よぶ。

 

 まっててね、ネムをおいていかないでね。

 

 のばそうとした、ゆびさき。それが姉ではない何かにふれる。

 

 なあに、これ。さっきまでは姉と自分の間をさえぎるものはなにもなかったはずなのに。

 

 おかしい、足音がする。

 あの、こわい兵士がもどってきたのかな。

 こわい、こわいよ、おねえちゃん。

 

「ウルベルト、こっちの子供はまだかろうじて生きているでござるよ」

 

「わかった。致命傷にポーションが効くといいんだが」

 

 ぼろぼろの体を支えられた。仰のかされると、血の色のような液体がはいった瓶が、近づいてくる。

 血の色にそまった視界よりも尚赤い液体がくちびるを濡らして、口内にすべっていった。薄い呼吸とともに飲み込むと、ゆっくりと沁みていくそれにより奇跡のように体に力が湧いた。あんなにも近くにあったはずの暗い死の気配が、靄が一気に晴れるように遠ざかる。

 

「あれ……?」

 

「こんな怪我にでも効くとか、凄いな……物理法則どうなってるんだ……大丈夫かい?」

 

 支えられた首を傾け、声の主を見る。

 頬に禍々しい模様めいた痣を持つ、黒髪の目つきの悪い男。

 

「おじさん、だれ……?」

 

 

 

 これが、少女にとっての神との出会いだった。

 

 ◆◆◆◆

 

「おねえちゃん、おねえちゃん」

 

 姉の遺体にすがって泣く少女を、ウルベルトは言葉なく見つめていた。

 帰ってこない両親に泣き、世界への憎悪に身を焦がした過去の己の幻影を、少女の背中を透かして見てしまった。

 耐えきれなくなって、視線を逸らした。

 息がつまり、吐き気がこみ上げて来た。

 どうしてそん目にあったのか、詳しい事情はわからないが、一目で、その死が理不尽なものだということがわかった。

 これからの未来への希望を感じさせる若く、そして無力などこにでもいる少女が、一方的な暴力に晒され、命が失われた。

 胸のムカつきを懸命に飲み込む。

 やりきれなさに、奥歯を強く噛む。 

 

 今、一番感情をあらわにすべきなのは、部外者の自分ではない。

 身内を亡くしたことをひたすら悲しむ、幼い少女だ。

 

 ハムスケは肉親と涙の別れをしている少女には無関心な様子で、うつむくウルベルトをじっと見つめていた。

 

「ウルベルト……? 大丈夫でござるか? いつもの倒れる寸前の顔になっているでござるよ」

 

 三日間共に過ごすうちにいつの間にか、人の顔色を見ることを覚えてしまったハムスケが、ウルベルトをのぞきこむ。

 

「なんでもない」

 

 口もとを手のひらで強く押さえ、視線から逃れた。

 

 

 

 

『とうさん、かあさん。はやくかえってこないかな』

 

 

 

 

 リアルにだって、当たり前のようにどこにでも存在していた悲劇。

 仰々しく語られることに陳腐さすら醸し出す話だ。

 いちいち同情をしていてはキリがない。

 テレビの向こう側、ネットニュースの向こう側、誰かの過去、なんどもなんども聞いて、自分だって体験したことだ。

 

 目の当たりして、下手に心を揺さぶられたからといって、こんなにも動揺するのは今更おかしいだろう。

 

 世界はいつだって弱者には理不尽だ。それはよくわかっているはずなのだ。

 

 あるいは、こんなことがこの世界でも当たり前なの出来事なのかもしれない。

 そのたびに自分は、身動きを取れなくなっていいのか。

 

 

 

 

『かえせ、かえせよ! かえしてよ! とうさんと、かあさんをかえしてよ!』

 

 

 

 

 リフレインする過去の己の声に、体が冷えて行く。

 幻聴が不愉快だった。

 幻聴を生み出す原因の子供を置いて、どこかに逃げてしまおうかと出来もしない解決策を浮かべて自嘲する。

 

 どうするのが一番いい?

 後先考えず、感情のまま助けてしまったからには少女に対してウルベルトは責任ができてしまった。

 この森の中にひとり放って置いていいはずがない。

 両親のもとに送り届けるのが一番いいだろう。

 

 ウルベルトは泣き縋る少女に、できるだけ優しい声で話しかける。たっちの娘のミーシャに話しかけるとき以上に慎重に、気を使う。

 けれども男の問いに返ってきた答えは、最悪のものだった。

 

 しあわせだった貧しい村での生活。

 大好きな家族。

 このままずっと続くと思っていた毎日。

 

 訳も分からないまま、日常と家族が奪われる。

 

 同調できてしまう悲しみに、渦を巻く強い感情が男の中でぶり返す。

 たっち・みーのように正義感で動くような性格はしていない。ただただ私怨がウルベルトを突き動かそうとする。

 

 一方で、理性がそれに歯止めをかける。

 

 後先も考えず、感情のまま振る舞っていいのか?

 頭の中の冷静な部分が、激情に身を焦がそうとしている自身を押しとどめる声を聞く。

 自分が全てを投げ打つべきは、家族を奪ったあの世界なのだ。

 ゲームで手に入れた力に酔って、調子にのっていないか? 自分はなんの力も持たないちっぽけな存在のはずだ。そんな自分に何ができる? ここで我も忘れて行動して、下手をうって呆気なく死んだらどうするつもりだ? 俺はそんな死に納得できるか? その死は、家族に胸を張れるか? 己の全てをかけて作り上げた悪魔に誇れるか?

 

 答えはノーだ。

 

 ウルベルトは思考を変える。

 じゃあ、自分が一番したいことはなんだ?

 

 見ず知らずの少女の窮状を哀れむこと?

 理不尽に勝手に同調して、怒りのまま惨劇の原因を討ち亡ぼすこと?

 家族を失ってしまった悲しみから救うこと?

 

 その答えに行き着いたとき、ウルベルトは知らぬうちに舌打ちしていた。

 ずっと昔から、男の中に巣食っている虚しさがある。それが浮上してきたことによる不快感に、渋面を作った。

 

 

 

 

 自分を重ねてしまう誰かを助けることで、過去の自分が助けられているような気がする。

 

 

 

 

 この少女を助けることで、ウルベルトは自分の中にある何かが救われるような気がした。

 馬鹿馬鹿しいと吐き捨てたくなる女々しい感傷である。

 他人を助けたいから手を差し伸べるのではい。本当は、自分が誰かに助けてほしくて、手を差し伸べるのだ。

 

 損得勘定など度外視した純粋な優しさ、それは一体どんなものなのだろうと思う。

 ウルベルトには絶対に理解できない未知のもの。美しいのか、澄んでいるのか、輝いているのか。

 自分がそれを得られたならば、助けられたならば、そんな愚かな期待をにじませているのだ。

 

 馬鹿げているという自覚があっても、少女を救いたいという感情ーー自分を救いたいという感情ーーは消えない。

 

 ウルベルトは頭をふった。

 考えすぎて、頭痛がしてきた。

 

 少女を救うことには、きっと利点がある。利点を探せ。

 今から自分が行うことは、利害行為なのだ。

 決して、小さなこどもが泣き喚きながら無い物ねだりをする感情の発露ではないのだ。

 

 コートの裾の下から取り出すふりをして、短杖を取り出す。

 幸いなことに信仰系の魔法を使えるから、短杖にこめられている魔法の位階が高かろうと、課金アイテムがなくてもこれを使用できるはずだ。

 

 この事態は、ウルベルトの責任だ。

 少女を助けてしまったからには、面倒を見る必要がある。だが、いつ帰還するかわからないウルベルトに、小さな女の子をずっと見てやる余裕はない。では、どうすればいいのか。

 簡単なことだ、この少女の面倒を見られる身内を蘇らせればいいだけの話なのだ。

 

 それに、これは実験でもある。

 ユグドラシルの蘇生アイテムが使えるかどうかの実験をする。それだけだ。いつかやらなければいけないことを試す、ちょうどいい機会にでくわした。それだけのことなのだ。

 

「これから、俺がすることはお姉さんにも内緒にするんだ、いいね?」

 

 ウルベルトは少女と視線を合わせ、安心させるように出来るだけ笑みを作った。

 

「君のお姉さんは、死んでいない。少し、深い眠りについているだけなんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 倒れ伏した少女に、柔らかな光がそそいだ。




現時点でのウルベルトが使えるスクロール・短杖について

スクロールの使用条件に『その魔法を習得しているか』、魔法を習得していなくても『取得しているクラスの覚えられる魔法一覧にのっていること』とあるので、魔法自体は習得していなくても、そのクラスが覚えられる魔法ならばスクロールは使えます。
なので、レベルが低くてワールドディザスターの魔法自体は習得できなくても、ワールドディザスターのクラスで習得できる魔法のスクロールを、ウルベルトは使うことができます。

短杖は込められた魔法と『同じ系統の魔法を使える』魔法詠唱者が使えます。
ウルベルトは現在は魔力系と信仰系の魔法を使えるので、その二種類の系統の短杖をつかえます。
エンリを蘇らせた最高位の蘇生の杖は、例によって最終日の安売り品を買ったものです。
イリニに渡しておくつもりでしたが、上位互換のワールドアイテムのゲットに成功したので、そちらをわたしてあります。蘇生アイテムは結局ゴミになり、自分で持ったままにしておいたものです。

ウルベルトが習得できる魔法に関して

低レベルでワールドディザスターになったからといって、破格の魔法を覚えられるわけではなく、魔法習得には条件があります。
第一に、魔法行使レベル。第二に前提条件をクリアすること。

ユグドラシルには三千強の魔法があり、その魔法は四系統に分けられる。

魔法の発動に魔力の数値が重要となる魔力系魔法。
信仰系の数値が重要となる信仰系魔法。
精神力が重要とされる精神系魔法
その他の能力値によって発動されるその系列の魔法

魔法行使レベルは、クラスレベルの積み上げによって決定する総合レベルとは別に、系列ごとの魔法行使レベルというのが設定されいて、この魔法行使レベルの積み上げによって使える位階が決まる。

この魔法行使レベルは、戦士系では上がらず、魔法クラスをとった場合のみ上がるレベルですね。
魔法クラスならなんでもいいのか、というとそうではなく、系列毎に全く違うものとなっているので、魔力系魔法の高い位階魔法を覚えたいのなら、魔力系魔法のクラスレベルをたくさんあげなければなりません。

魔力系、信仰系、精神系、その他系の魔法を覚えるクラスをぐちゃぐちゃにとると、それぞれの魔法行使レベルが中途半端にしか上がらずに、高い位階の魔法が使えなくなります。

極端な話で例
魔力系魔法のウィザード系クラスを合計50分、信仰系魔法のプリースト系クラスを合計50分ずつ取得し、総合100レベルになった場合、魔法行使レベルは50ずつになり、どちらも超位階どころか十階位にも到達しない中途半端な魔法職になってしまいます。

拙作では、位階魔法は魔法行使レベルの7刻みで一段階上がっている説を採用しております。十階位の魔法を習得するには、魔法によって少しばらつきはあるものの、それぞれの系統の魔法行使レベルを64まで上げる必要があるとしています。

第二の前提条件は、特定のイベント、特定のアイテム、そして特定の魔法ーー前提魔法と呼ばれる魔法の存在です。
前提となる魔法を覚えておかなければ、得ることができない魔法が存在し、これにより習得できる魔法総数の四分の一や三分の一費やされることもあります。

このへんはwebのオーバーロードでも説明されているので原作様を見ていただけるといいと思いますよ!

なにが言いたいのかというと、ゲームルールにはしっかり縛られているので、ワールドディザスターをもっていようと高い位階にはつけず、現状ではフールーダにぺろぺろされないどころか路傍の石ころ扱いしかされないってことですかね。






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