書きたいもの詰め合わせた闇鍋話   作:オニヤンマンマ

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ユグドラシル

 1

 

 ウルベルトがゲーム内結婚をしたのは、ギルドの仲間が少しずつ離脱しはじめたころだった。

 

 どれほど隆盛を誇っていても避けられない事態、『ユーザーの飽き』というものが来たのだろう。ギルドでは家族関係や仕事の忙しさなどやむにやまれぬ事情あって辞めていくものがほとんどだが、それは一体どれだけが本当のことなのやら。ギルド長たるモモンガはそれを真面目に受け取っているようだが、ウルベルトは穿った見方をしていた。自分ほど極

端な理由はないだろうが、彼だって自分のやりたいことのためにギルドを近いうちに辞めるつもりなのだ。

 

 つまらないと感じるようになっているのに、プレイするのは苦痛だろう。その選択は間違っていない。ウルベルトは彼らのその選択を至極当然に肯定した。

 

 自らが所属するアインズ・ウール・ゴウンだけではない。

 ゲーム自体の人口が減り始めていた。

 目標を失い、マンネリ化したゲームに未来はない。

 

 ユグドラシルという世界にはまだまだ解明されていない要素があるが、それを探そうと気概がわき上がるほどの熱意を持つ者は極端に減っただろう。今でもギルド単位で活発に活動しているところなどこことは違った意味での変わり者揃いであるワールド・サーチャーズぐらいではないだろうか。

 

 坂を転げ落ちるようにユグドラシルの衰退が始まった。

 他のMMOでは珍しくもない『結婚』という機能が新たにアップデートで加わったのは、そんな時期だ。

 やまいこを経由して彼女の妹の明美から頼まれたのだ。

 

◆◆◆◆

 

「結婚指輪による補正、ですか」

 

 一緒に遊んでいた支援職の仲間が辞め、今まで通りプレイするのが難しくなった。そこで目を付けたのが新たに登場したアイテムの補正である。

 

 新規の客引きのためと、ユーザーの復帰を狙ったものなので、一連のイベントを達成するまでの難易度がかなり低い。リスクに比べてリターンが非情に大きいアイテムだ。

 

 この結婚指輪、さすがは自由度に定評があるユグドラシルのアイテム。決まり切った内容の補正ではなく、パートナーとなった相手のクラス構成で補正の項目や数値に幅ができる。

 

 最強の魔法職《ワールドディザスター》をはじめとした強力な魔法職についているウルベルトの補正は、明美にとって理想的であるらしかった。

 

 それに対して、モモンガがたかだかゲーム内の話なのに「結婚!? ウルベルトさんが結婚!? 嫉妬マスクの同士だと思っていたのに!」と非常にみっともなく動揺したり、女の子たちが演技がかった様子で楽しげに声をあげたり、男共がまるで小学生のように囃したてたりしている。

 

 断れる雰囲気でもなく、また断る理由もなかった。

 

 もはやゲームを辞めることに傾いている自分に、補正の旨味など関係のない話だが、この話を受けるデメリットなどないのだから素直に快諾したほうが男として紳士的だろう。

 

 動揺して躊躇うほうが絶対に格好悪いと、極力平静を装って何気なく了承した。女の子とまとも付き合ったことがなかったから、ゲーム内で打算があるとはいえプロポーズされて嬉しい、とかそんなことは絶対にない、とウルベルトは心の中で何度も自分に言い聞かせていた。

 

 この結婚システムは、パートナーがアカウント削除をしても指輪の効果は継続する。いずれウルベルトが辞めても、問題はないだろう。どうせ、明美だって近いうちにこのゲームから離れるのではないだろうか、とも邪推している。ゲーム内の嫁を置いていなくなったところで問題はないはずだ。

 

「いいですよ。魔力系魔法詠唱者の明美さんがパートナーだと、こちらにもメリットがありますしね」

 

 総MP量が30パーセント加算され、魔力攻撃力大増、時間経過によるMP回復の効果が少増、デバフに対する対策効果などなど。

 

 ウルベルトや仲間が苦労して製作した指輪の上位互換となる様々な効果が、この結婚指輪ひとつでこれでもかというくらい付随している。追い詰められているのか、クソ運営にしてはユーザーに対してかなり嬉しい仕様だ。

 これがもう少し前であれば素直に喜べたのだろうが・・・・・・ウルベルトは表情が動かないアバターであることに感謝しながら、内心苦笑していた。

 

「そうと決まれば話は早いわね! 明美ちゃんのために結婚式は派手に挙げないと!」

 

 ピンク色の粘体が音頭をとると、一同が拳をあげておおと賛同した。女性陣を筆頭に、当人たちを置き去りにして熱狂的な盛り上がりをみせていた。

 

「明美とウルベルトさんのためのウェルカムドールは私が作るね!」

「せっかくですから結婚式用の衣装がほしいですねー」

「NPCたちもふたりの結婚式に参加させたいな」

「いいですねそれ! シャルティアの新しいドレスあげないと」

「新郎の身内のデミウルゴスには、特に気合いの入った礼装を作ってあげましょう」

「アウラとマーレも着飾ってあげなきゃ」

「いなくなった同志たちに代わり、メイドさんたちに私が結婚式用パーティドレスを新しく新調しなきゃなあ。みなさんも出来れば手伝ってくれませんか?」

「余興はニューロニストに任せろ!」

「やめて」

「余興は恐怖公にま」

「やめてください!」

「無駄課金で仕込んだ妖精楽団の合奏が役立つ日が来ようとは・・・・・・会場の音楽はお任せください」

「それはいいですね、オルゴールさん。楽しみにしています」

「NPCも参加なら式場はナザリック一択ですね。聖堂を結婚式場用にリフォームしますか」

 

 笑顔のアイコン、はしゃぎまわるアイコン、楽しげな感情をあらわすアイコンが円卓の間いっぱいに飛び交った。

 

 一緒に肩を並べて遊んでいた仲間たちが少しずついなくなっていく寂しさを振り切るように、残された皆はこのイベントを楽しもうと意気込んでいる。

 

 後からこのことを知ったら、いなくなったみんなが悔しがるくらいにいい式にしたいね。

 

 そう笑いあいながら、善は急げと準備に取りかかった。

 

◆◆◆◆

 

「助けてください、モモンガさん」

 

 指輪を手に入れるためのイベントをクリアし、その指輪を二人ではめ合うことでユグドラシルでのふたりは結婚したことになった。皆に祝福される式の予定も間近で幸せいっぱいのはずの男のたわごとに、助けを乞われたモモンガは笑顔のアイコンを表示して「リア充爆発しろ」とのたまった。

 

「あ、すみません。本音が漏れました。どうしましたかウルベルトさん。なにかありましたか?」

「ははっ。酷えよ、モモンガさん。いや、ちょっと聞いてください、明美さんが酷いんですよ」

 

 わざとらしく傷ついた声を上げたウルベルトが、全く酷いとは思っていないのろけのような話しぶりをしはじめたので、モモンガは心を凍らせて間髪入れずに端的に罵った。

 

「リア充爆発しろ」

「お願いします、俺の話聞いてください」

「ウルベルトさん、それって聞いていると独り身の心が第四階層になりませんか? ブリザードが吹き荒れませんか? ダメージが入りそうなのは俺の気のせいですか?」

 

 骸骨が絶望の嘆きをあげるが、山羊は冗談だと受け取っているのか一切取り合わない。

 

「何を言っているんですか、モモンガさんはアンデットだから冷気系じゃダメージ入りませんって。ええとですね、話の本題にはいりますけど、明美さんが設定した子供NPCが酷いんですよ!」

 

 モモンガの聞きたくないという心の叫びに気付いているのかいないのか、ウルベルトは懸命に訴えた。

 

 結婚すると、特定アイテムを手に入れるクエストに挑むことができるようになる。一度挑むと、失敗成功にかかわらず二度と挑戦することはできないそのイベントの成功報酬は、子供NPC作成アイテム『愛情の雫』という。

 

 子供NPCは、傭兵モンスターよりもキャラ性能に融通が利きAIが優秀だ。そして拠点NPCの運用よりもかなり気軽に行えるようになっている。傭兵モンスターのように判に推したような決まった姿形やクラス構成ではなく、拠点NPCのように一から自由に作成できる。なおかつ死亡したときの復活に拠点NPCのような膨大な金貨を要求されることもない。デスペナルティによるレベルダウンが生じるが親プレイヤーのログイン時間に応じた自動復活の機能があり、他にもプレイヤーと同じようにデスペナルティを緩和する魔法やアイテムでの蘇生が可能だ。

 

 使い勝手のいいNPCを獲得できることもあり、子供NPCを作成できるようになるのは結婚するためのクエストよりも難易度が高い。この難易度の高さは、二人だけで挑まなければならないという条件があるためだのだが、話しぶりからすると問題なく既に終わっているようだ。

 

 モモンガがギルドメンバーと一緒にお祝いのための準備に奔走するなか、ふたりっきりで楽しく難関クエストに挑んでいたらしい。打算のためのゲーム内結婚とはいえ、二人きりで協力して困難に挑むことで深まる絆があったかもしれない。それによって、データではあるが子供を得るのだ。

 

 別にウルベルトは悪くはないのだが、モモンガの中にある精神的な限界が決壊し、血の滲むような悲鳴をあげた。

 

「やっぱりのろけじゃねえか!」

 

 ギルド長はいつもの慇懃さをかなぐり捨てて、素に戻って叫んだ。

 

「いやいや、のろけじゃないんです。これを見てください」

 

 ウルベルトはコンソールを操作し、一枚のスクリーンショットを表示する。

 モモンガはウルベルトが指さしたスクリーンショットを見る。オフ会であったことがあるウルベルトのリアルの姿に似ている幼い男の子だ。

 

 ここでモモンガようやく真面目に対応するようになる。

 

「酷いっていうかネットでプライベートに近い姿をさらすのは問題があるのでは・・・・・・」

 

 というか、問題しかない。個人を特定できるような情報を流すのは安全を考えると御法度だ。

 

「明美さん、俺に黙って女性陣だけでNPCの装備品作っちゃったんですよ。この子の装備は完全に明美さんの趣味のコーディネートなんです。正直言うと、俺の意見も聞いてほしかったです。あ、ちなみにですね、このNPCの名前は明美さんがつけたんですけど、イリニって言うんです。悪に拘る悪魔の子としてはあまり相応しくないんですけど、明美さんの子供でもありますからね-。目元は俺に似ているんですけど、口元とか輪郭戦は、明美さんが子供のころの写真を参考にして作っているんです。なかなか可愛いと思いませんか? あ、さすがにこの姿のままは外に出しませんよ。頭部装備で仮面を付ける予定です。クラス構成方針なんですけど・・・・・・」

 

 立て板に水どばかりにウルベルトが饒舌に話す。

 それを聞きながらモモンガは嫉妬マスクをかぶっていなくとも血の涙を流すような思いだった。

 二段構えの精神攻撃に、仲間内で攻撃が意味などないことも忘れてあらゆる魔法をウルベルトにたたき込んだ。

 

「うおおおおお!!!!」

 

 温厚な青年の声がドスの効いた雄叫び染みた咆哮となる。

 

 

 

 これが、ギルド内で後々まで語り継がれることになる『ギルドマスターモモンガ様ご乱心事件』の全貌である。

 

 

 

 2

 

 思い出話に花を咲かせている最中、ウルベルトと明美の結婚の話になりモモンガは意識を遠くに飛ばした。

 忘れていた傷が抉られ、乾いた笑いが漏れる。

 

「うわ、モモンガさんがなんか怖い」

 

「貴方のせいじゃないですか、ウルベルトさん」

 

 たっちが咎めるような口ぶりでからかう。

 

「全くもってその通りです、たっちさん」

 

「えー、なんでですかモモンガさん、選りに選ってたっちさんの味方なんかしないでくださいよ」

 

 態とらしく拗ねた風に言うウルベルトに、モモンガは朗らかに笑った。

 

 モモンガ様ご乱心事件は、大多数の男性陣の意見によりウルベルトが完全に悪いとギルド内の厳然たる多数決により決定し、結局ウルベルトに謝っていない。ウルベルトも謝罪を求めている風でもなかった。彼にとってあれは仲間内の戯れあいで、後に禍根を残すほどのものでもないのだ。

 普段、腰が低すぎるほど低いモモンガの堪忍袋の尾が切れたあの一件は、ギルド内でのモモンガへの評価を少し変えた。無論、いい方向に。人を大事にし、遠慮しがちで真面目すぎるのは彼の長所だが、少しだけ絡みにくいところがあり、どこか踏み越えにくい一線があった。

 

 温厚なギルドマスターとて、逆鱗に触れられれば怒るのだ。気を使われすぎることで逆に取っつきにくいところがあったモモンガに対して、他者が感じてしまう垣根をあの一件が大分取り払った。

 

「あのあとはペロロンチーノさんたちに慰めてもらって、勢いで敵対ギルドに喧嘩売りに行って大敗して帰ってきて……懐かしいなあ」

 

 モテない男たちの嘆きと憎しみを原動力にし、綿密な作戦もなしに本当に勢いだけでPvPを仕掛けたら返り討ちにあったのも、今では懐かしい思い出である。

 

 女性陣には呆れられ、リア充な男たちには大いに笑われ……責任のあるギルドマスターとしてあるまじき失態が本当に情けなく、だが子供のように大笑いをして、最高の仲間たちとの馬鹿をやったことが本当に楽しかった。

 

 表情の変化はないものの、声に漂わせるしんみりとしたせる空気に、たっち・みーとウルベルトは同様に過去に思いを馳せる。そして同時にこいつと喧嘩した思い出が大半でなんかムカついてきた、と表面に出しはしないが険悪な感情を抱いた。

 

「いやー、ほんと昔はいろいろありましたよ。たっちさんがクソッたれセラフィムの罠にかかった時なんて傑作でした。そうでしょう、モモンガさん」

「初見殺しイベントボスに一発で潰されたウルベルトさんのあの情けない断末魔が今でも覚えてるんです。あれは面白かったですよね、モモンガさん」

「え、ちょっと待ってください。二人とも、なんで今までの会話でいきなり喧嘩になりそうになってるんですか?」

 

 モモンガは一触触発の二人に慌てるよりも呆れた。

 険悪さが落ち着いたかと思ったのだが、本当にこの二人はかわらない。

 全く、今日が最後の日だと言うのにこの二人は……

 

 そう、思ってからモモンガは落ち込んだ。改めて考えると、気分が重たくなってしまう。この楽しい時間は、もう数時間しか残っていない。

 

 最後、ユグドラシルは泣いても笑っても今日で終わってしまうのだ。

 

 昔に比べれば幾分かマシになり、心穏やかに眺めていられる程度の舌戦を繰り広げている二人に気づかれないよう、モモンガは内心悲しい吐息をついた。

 

 寂しい、悲しい、そんな暗い感情が胸いっぱいに広がる。

 表情が動かない仮想空間のアバターで良かったと、モモンガは嘆息する。そうでなければ、今にも泣きそうな顔に歪んでいるに違いない。

 

--ヘロヘロさんがログインしました

 

 視界に現れた電子メッセージ。

 モモンガは涙が混じりそうな感覚を慌てて引っ込める。

 この大切な日に大好きな仲間に失態を見せたくない。

 メッセージとともに現れた黒い粘体に向かってモモンガは努めて明るい声で言う。

 

「お久しぶりです、ヘロヘロさん」

 

◆◆◆◆

 

 四人は円卓の間にいた。

 

 豪奢な作りの部屋には、それにふさわしい造りの巨大な黒曜石の円卓が鎮座している。それを囲むのは四十一の椅子。

 繊細な細工で飾られた豪奢な椅子は、そのほとんどが空席で、どこかもの悲しさを漂わせている。その空虚さは人の心が離れていって衰退したゲームの終わりを、如実に物語っていた。

 

 全員が座っていたのは既に遠い過去のこととなってしまっている席が使われているのは、今やたったの四つ。

 

 ひとつは暗夜の威圧を纏う恐ろしげな骸骨が座っている。緻密な金と紫の縁取りが美しい漆黒のアカデミックガウンを纏うその姿は、ゲーム内のモンスターとして相対するオーバーロードなどとは一線を画した魔王の偉容すらあるだろう。

 

 もうひとつは白銀の全身鎧を纏う威風堂々とした聖騎士が座っている。魔王のような骸骨とは真逆の存在感を放ち、見る者に救国の英雄を思わせる姿は座っているだけでも清冽さがある。ギルド内屈指の良心であると皆が意見を一致させるほどの正義感を保つ男。一見して異形とは判別できないが、全身鎧の下には昆虫型の屈強な身体が隠されているのだ。

 

 もうひとつは黒の粘体が座っている。ドロドロとした塊が波のように常に動き、同じ姿を保つことなく表面が蠢いている。

 

 最後のひとつの席には黒髪の男。前者ふたりと違い、異形ではなくただの人間である。抜き身の刀のようにすらりとした痩躯を黒のトレンチコートに包んでいる。端正な顔立ちでありながら人をあまり寄せ付けたがらない鋭い目つきをしており、きゅっと引き結ばれた唇からはどこか非情な内面が滲み出ているようにも見える。

 

 異形種限定ギルドである“アインズ・ウール・ゴウン”において、男の存在はひどく場違いであった。

 不思議そうにするヘロヘロにことの経緯を説明すると、彼は同情しながら納得してくれた。

 

「そんなことがあったんですかー、それは大変でしたね。ウルベルトさん」

 

「最終日にこうやってウルベルトさんに会えて本当に良かったです。三日前のチート誤認の垢BANは本当に焦りました」

 

 恐ろしげな見た目に反して、骸骨の声は実に柔和な声で喜びをあらわす。

 

「あれは、控えめに言って喜劇でしたね」

 

 くつくつと喉を鳴らし笑うたっち・みー。

 

「なんですか、たっちさん。あんたの正義も堕ちたんじゃないですか、人の不幸を笑うなんて。当事者の俺からしてみれば、あらぬ疑いをかけられて最悪だったんですから。まあ、一番大変だったのはモモンガさんでしょうけども・・・・・・その節は本当にお世話になりました、ギルド長」

 

 感謝を向けられたモモンガは、いえいえと謙遜したそぶりで首を振った。

 

 ギルドにおいて最も悪に拘る男、ウルベルト・アレイン・オードルは三日前に五人で参加したイベントにおいて、魔力攻撃の火力上げまくった《大災厄》を放ったところ運営からチートの疑いをかけられアカウントが削除された。

 

 運営の誤解であるので、そこを徹底的に――最終日間近の垢BANによってゲームへのやる気が完全に折れたウルベルトに代わり、ギルド長であるモモンガが――責め立てて、悪魔のキャラは取り戻せなかったもののなんとかこうやってゲームにログインできるまでに至ったのだ。なにせ、終了が決まったゲームなので、新規を受け付けていない。現行のアカウントが削除されてしまうと、最終日に顔を合わせることが不可能になってしまうのだ。モモンガは文字通り死ぬほど忙しい仕事の傍ら何回も運営とメールを取り合い、苦労の末にウルベルトの新アバターを獲得したのだ。

 

「笑うな、と言われましてもね、ウルベルトさん。運営の無能さには失笑がもれます。後付けの結婚関連の支援とワールドアイテムの相乗効果が、運営の想定を超えていたからといって、チート認定はないですね」

 

 たっちは明瞭な声で続ける。

 

「火力特化型のガチビルドと装備、結婚指輪の壊れ補正と子供NPCからの支援効果、モモンガさんからのバフ魔法とスキル、ステータスアップの使い捨てアイテム。そこにバランス崩壊上等のワールドアイテムを突っ込むと・・・・・・いや、本当にすごかった。最後にあんなに見事なものを見せてもらって感謝しています、ウルベルトさん」

 

 珍しくウルベルトを褒めるたっち・みーにモモンガとヘロヘロが驚き、それ以上に褒められたウルベルトが驚きたじろいだ。

 

「感謝って、あのくらいでさ……たっちさん、あんた。なんですか、それ、ほんと大げさですから」

 

 声が随分と上ずり、なんか変なものでも食べたんじゃないですか、と言う悪態にいつもの覇気がない。

 

「何を言ってるんですかウルベルトさん、貴方らしくもない謙遜ですよ。大げさとは思いませんが? ワールドエネミーにぶつけてみたかったですね。ワールドエネミー最小人数攻略記録を更新できたんじゃないでしょうか」

 

 たっちの賞賛に新手の嫌がらせかよ! とウルベルトが吠える。本気で嫌がってるのではなく、とてつもなく照れている。

 

「本当にすごかったです、ウルベルトさん。あの破壊力はギルド内どころかゲーム内でもトップクラスでした。みんなにもお見せしたかったなあ」

 

 モモンガがとどめのように褒めちぎると、ウルベルトは頭を両手で盛大に掻いた。表情が動いたら、大いに照れている彼を見られたのだろうと思うとなんだかおかしい。

 

 運営がゲーム終演を飾るために用意した渾身のイベントボスをものの二発で撃破した光景は、まさに圧巻であった。これが全盛期に起こった出来事であれば、ゲーム内に激震が走り伝説となった出来事であろう。

 

 かつて1500人の襲撃者たちがチートを連呼した第八階層のあれらをゲームとして正当として認めた運営が、バランス崩壊前提のワールドアイテムというものを作ったあの運営が、思わず垢BANしてしまうくらいに圧倒的な短時間総与ダメージであった。

 ギルドメンバーがそろっていれば、ウルベルトの最後の結末も含めて盛大なお祭り騒ぎになったはずだ。

 

「あの火力をもう見られないのは残念ですね。アカウントだけじゃなくアバターも取り戻せたら、最終日イベントにでも乗り込んで《大災厄》を放って悪役ギルドらしく最後を終わらせられたんだろうけど」

 

 正義の味方を目指した男のセリフとは思えぬ言葉を吐くたっちに、昔と変わらぬ良識と常識人らしさでたっちの物言いに苦笑した。

 

「運営としてもそうされるのが怖いから、ウルベルトさんの元のアバターを返さずにレベル1の既存NPCから選ばせたんでじゃないでしょうか」

 

 運営主体のパレードをメインとしたまさにお祭りイベントはそのフィールド限定で攻撃行動不可になっているが、そういった場所以外でも掲示板などの呼びかけで集まって楽しんでいる者たちがいる。迫り来る敵を倒すイベントもゲーム内のそこかしこで行われている。運営のミスで削除してしまったキャラを復活させるのはある意味仕方ないこととはいえ、そのイベントをぶっ壊しかねない存在を最終日に野放しにすることは、かのクソ運営でも流石にできなかったらしい。

 

 悪名高きギルドに所属し、なおかつその中でも実力者としてそこそこ有名だった弊害なのだろう。ウルベルト・アレイン・オードルという男には、本人にその意思がないと必死に言い募ろうが、記念すべき最終日になにもしでかさないという信用がなかった。

 

 ワールドアイテムを使用していたとはいえ、違法改造のようなダメージを叩き出したウルベルトにたいしてどのような協議がなされたかは推測しかできないが、レベル100のウルベルトのアバターを復活させるのは危険、と判断されたのだろう。ワールドアイテムや、各種装備を喪失した状態でアカウント復活させれば簡単に回避できる問題なのではと、一介のプレイヤーである三人は思うのだが、運営は念には念をいれたようだ。

 

 運営の意図せぬ状況を作り出さないように、言いがかりでしかない様々な理由をつけて最終日に使えるアバター制限をかけた。

 

 最終日にログインするアバターを何種類か用意し、そのひとつを選ばせる手法をとったのだ。レベル1に逆戻りしたうえに、種族を選ばせる自由すら与えてくれなかったらしい。ウルベルト曰く「せめて異形種のひとつくらい入れておいてもいいのに、全部人間種でしたよ! しかもこれ以外は無駄にキラキラしててとてもじゃないけど選べたもんじゃありませんでしたね」と、わざとらしくぞっとしたそぶりを見せるような選択肢しかなかったらしい。

 

 賞賛地獄の流れを変えたいのか、ウルベルトがなんか厨二病患者がやりそうな格好いい? ポーズをおもむろに行う。

 

「流石の私も、無知蒙昧な人間種ども相手といえども最後の貴重な時間を壊すような無粋な振る舞いをするつもりはないのですが」

 

 山羊の悪魔のときは似合っていた慇懃なロールプレイが、今の姿だと非常に滑っている。滑稽と言ってしまってはいけないのだろうが我慢しきれずにモモンガはつい吹き出し、ヘロヘロも小さく笑い、たっちは態とらしく腹を抱えて笑った。

 

「たっちさんはともかくモモンガさんにヘロヘロさんまで、酷いですよ、そこは笑い耐えて一緒にのってくださいって」

 

 ウルベルトは憮然とした様子でたしなめる。本気で言っている訳ではないのは雰囲気で伝わる。しかし、真面目なギルド長はすみませんと慌てて謝る。わざとらしい咳払いののち仲間内との悪ふざけで培った渾身の魔王ロールを遅まきながら演じる。

 

「ウルベルトさんの言う通り、残りの少ない大切な時を、忌々しい人間共に関わって浪費したくない。大切な思い出が残るこのナザリックで、玉座の間で最後を迎えようと思っているのだが、みんなはどうだ?」

 

 本当ならば、どうですか? と下手に出てお願いしたいのがモモンガの本心なのだが、ロールプレイに任せて偉そうに言ってしまった。その内心はかなり冷や冷やしている。

 

「モモンガ卿のご意志に従いましょう」

 

 王に従う騎士のようにたっちは優雅に応え、

 

「ええ、それはいい。こればかりは同士に賛成ですよ。モモンガさんの最後を側で飾るには、あまりにも貧相な姿なので私としては非常に心苦しいのですが。このような形でよければ喜んでお供いたします」

 

 ウルベルトは嬉しそうに返してくれる。

 

「あ、えと、せっかく来たし私も最後までいようかな」

 

 ヘロヘロはためらいながらも承諾してくれた。

 

 

 3

 

 ちょっとした企みがあってモモンガはギルド武器を携えて四人で玉座の間に向かった。

 メッセージでたっち・みーの妻であるリーザと娘のミーシャを呼び、ギルド武器の権限でこっそりとイリニを玉座の間に呼び出す。

 

 ちなみに、本来であれば異形種しか所属できないギルド《アインズ・ウール・ゴウン》であるが、人間種になってしまったのは不可抗力の理由があることと、最終日であることもありウルベルトはそのままギルドの一員として終わることは多数決で決まっている。

 

 既に姿はないが、モモンガからのメールもあり顔を出したギルメンたちも「今さら、そんなことでギルドから出ていけなんていえる資格はありませんよ」「オレ達がここにこれない間、ずっとモモンガさんを支えていてくれたウルベルトさん追い出せるはずないって」「ギルメンが楽しく遊ぶための縛りでしたし、それがギルドのみんなにとってマイナスになるならばいらないルールだと思うんです。残っているモモンガさんたちが悲しい思いまでして、みんなで決めたルールを守る必要はないって、断言できますよ」と快く、そして今まで全く沙汰のなかったことを申し訳なさそうにしながらウルベルトの存在を認めていた。

 

 玉座に向かうまでの間、たっちはヘロヘロにリーザとミーシャも来ることを説明した。

 

「へー、今日もたっちさんの奥さんと娘さんが来てるんですか」

 

 実はたっちには内緒である事を進めているため、今日も滞在している事を知っていたヘロヘロだがモモンガたちのサプライズに協力するために初めて知ったような素振りでうんうんと応えている。

 

「はい。いつもは夜更かしは禁止しているんですが、今日だけは特別に。昼寝はたっぷりしたから、きっと今も元気にはしゃいでいます」

 

 お気に入りの第六階層に、これまたお気に入りのNPCセバスやエルフ姉弟を従えて遊びまわっているだろう。

 ギルドに所属していない妻と娘を頻繁に出入りさせていることに後ろめたさがあるのか、たっちは申し訳なさそうにしている。それに関してはたっちには内緒でウルベルトと一緒に画策していることがある。こちらの件も、たっちを除くギルドメンバーには許可を取って根回し済みだ。最終日なのだ、ウルベルトの件と同様、ギルド内ルールを破っても、罰は当たるまい。臨機応変とは素晴らしい言葉だと、モモンガは後ろめたさから完全に開き直って晴れやかに内心で微笑んだ。

 

 雑談をしながら目的地に向かっていると、ヘロヘロの黒い粘体の挙動がおかしくなった。アバター越しでも見ていると不安になるヨタヨタ、よろよろとした擬音がつきそうな動きが、一転する。道の途中で待機しているメイドを見るや否や、過去の情熱を思い出したのかヘロヘロがそれまでの疲れを忘れたかのように盛り上がって語り出し、勢いが止まらなくなったのだ。「メイドさんこそ至宝!」「この子達のデザインも本当にこだわって、こだわり抜いて……もっといろんなメイド服を作ってあげたかった! なんで今日でユグドラシルが終わってしまうんだ!」泣き出さんばかりにメイドの足元の床にへばりつき、このまま動きそうにならないヘロヘロのために彼女たちも最後を飾る玉座の間に配置することにした。

 

「せっかくだし、守護者たちも玉座の間に配置しませんか? まだ時間がありますよね」

 

 たっちの提案に、

 

「う~ん、いいですね、その方がそれらしく(・・・)なりますから」

 

 モモンガは即座に答えた。設定を変えたアルベドとイリニのみを相手にする予定であった、ある計画。その計画に一枚噛んでいるたっちの提案に、モモンガはそれはいいと頷いた。

 素早くギルド武器で設定画面をいじる。まだ時間はあるから、これで守護者たちも玉座の間に集合するはずだ。

 

 せっかくだから、最後は最強装備で締めくくろうという話になり、装備を整えた三人を見て、

 

「最強装備いいなあ。俺、レベル1だから元の武装が装備できない」

 

 うらやましそうにウルベルトがぼやく。

 

 ワールドアイテムを含めて当時の所持品もともに復活した。しかし、レベル制限にひっかかって最強装備を身にまとえないのだ。

 

 仕方ないので、イベントNPC用に作られている黒いトレンチコートやそれに合わせた上下の衣服とブーツを着たままにしている。上級に分類される物の中では破格の性能を持つ物だが、ウルベルトが所持している神器級の武装と比べるにはおこがましいものだ。せめてと思い装備した宝石で飾られた半仮面とて、最強装備の装飾品にはほど遠い。

 

 そして両手の指にあるのは、ギルド内を自由に行き来できる指輪と、結婚指輪だけだ。

 

 かつては十本の指すべてに指輪がはまっていたが、現在キャラにかけた課金が無効化されて左右一本ずつしか指輪が装備できないようになっている。

 

 スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンに相応しい装いを、と意気込んで完全武装するモモンガ。それに触発されてより一層勇壮で美しいワールドチャンピオンが纏える鎧に着替えたたっち・みー。古き漆黒の粘体の姿が、さらに悍しくなって見えるような黒い霧を纏うヘロヘロ。

 

 その側に立つにはちょっと見窄らしいとウルベルトは珍しく肩を落としていた。

 

「コートの下にワールドアイテム隠さないで、見えるように装備するのはどうでしょう。『黄金豊穣の宝鍵』はワールドアイテムなだけあって、外装がとても作り込まれていますからね。それを見せるようにするだけでも、大分違うのでは?」

 

 そんなウルベルトに同情したのか、たっちが助言する。

 

 名称には鍵とあるが、形状は宝石飾りである。大小さまざまな大きさの虹色の輝きを閉じ込めた真球の宝石が、幾重もの房となって緻密に作らせた帯状の金属細工の下で繊細に揺れている。ウルベルトはそれを腰に巻き、コートで隠していた。

 

 黄金に染まる豊穣のように魔力を常に溢れさせている、という設定のアイテムで魔法効果を莫大に底上げし、かつ課金アイテムがなければ使い物にならないとされる超位魔法の詠唱時間を(課金アイテムほどではないが)極限にまで短縮できる。二十四時間の間に回数が制限されているが、十階位までの魔力系魔法のスクロールとして使用することも可能だ。

 

「ええ!? ワールドアイテムをまたゲット出来たんだですか? 凄いじゃないですか!?」

「みんなゲームを引退していくからギルドを解散するからと、明美さんが所属していたギルドのワールドアイテムを貰い受けたんですよ」

 

 世界に数少ないワールドアイテムを持っていることに驚くヘロヘロに、ウルベルトは説明した。彼は話しながらたっちの助言に珍しく素直にうなずき、コンソールを叩き装備を調えなおす。

 

そんなウルベルトを見ながら、たっちはそれにしても、と何か思い出すように顎に手をやり思案する仕草をした。

 

「先ほど貧相な姿、とウルベルトさんは先ほど言っていましたが、そのアバターってどことなくどころかリアルの貴方にかなり似ていますよね、自虐ですか?」

 

「ゲーム内のウルベルトと比較すると確実に貧相ですし、リアルと比べても細いですよ。リアルの俺はもっと筋肉ついてますから。視力下がってませんか? なんであれが自虐になるんですか?」

 

 親切な助言の後にわざわざ指摘してくるたっちに、ウルベルトはふんと不愉快そうに鼻を鳴らす。

 

 確かに似てるよなあ。とモモンガも思っていた。オフ会で会ったことのあるリアルの彼とアバターは目鼻立ちが似ているのである。ぱっと見たときのはっきりと違いが、全体的な体の線がアバターだと華奢であることくらいだ。

 

 しかし、ここで声に出してたっちに賛同すると、ウルベルトが不快な思いをしてしまうかもしれない。というか、後々拗ねかねない。

 ここで喧嘩されて今度たっちの家で予定しているオフ会の空気が悪くなってしまったら困る。それはもう非常に困る。

 少しばかり険悪になってしまった空気をかき消すために、モモンガは必死に話題をそらす。

 

「あー、もしかしてそのアバターも魔法職なんですか? 運営が準備したNPCが元のアバターなんですよね? 何か特別なクラスやスキルを持っていたりするんですか? レベル1だって言うのはお聞きしたんですが、詳しくはまだ聞いていなかったので」

 

「これのクラスですか。人間種専用のクラスみたいですよ。クラスは《ヘラルディスト》、レベルは1。紋章に隠された力を解放して戦うクラス、だそうです。分類としては、一応魔法詠唱者ですね」

 

 モモンガの問いに、ウルベルトは険のある空気を潜め、コンソールで調べながら丁寧に答えてくれる。

 

「へえ、初めて聞きますね。まだ発見されていないクラスとか、取得が難しいクラスだとかだったりするのかな」

 

「どうでしょう、人間種専用クラスなんて強力なやつしか覚えていませんかね。このクラス、結構微妙です。ガチビルドの上位陣プレイヤーなら取らないんじゃないでしょうか。ユグドラシル上に存在するなんらかのマークをバーコードリーダのように読み込んで、マークに応じた攻撃やバフ、デバフ、回復効果が出る、と。ひとつのクラスで様々なことができるけれど、その分特化したクラスの能力には及ばない、器用貧乏クラスですね。まあ、便利ではあると思いますけど」

 

 コンソールで自らのクラスを詳しく確認しているのか、目で画面を追っている。そのときウルベルトが小さいながらも驚きの声をあげた。

 

「あ」

 

「どうかしましたかウルベルトさん」

 

 モモンガが心配そうに声をかける。

 

「いや、なんでもありません。運営の謝罪のつもりなのかは知りませんが、ワールドディザスターもレベル0の状態で保持していたので、ちょっと驚きました」

 

 特殊な方法でしか取得できないクラスをレベル1アバターが所有していたことに、ウルベルトは素直に驚いていた。

 

「宝の持ち腐れってやつだなー。ちっ」

 

 これから終わるゲームで最強クラスを保有していようがなんら意味はないのだが、ウルベルトは悔しそうにしている。悪に拘ってロールプレイしていたウルベルト・アレイン・オードルというキャラクターを最も相応しく彩ったワールドディザスターというクラスに思いいれがあるゆえに、クラスに相応しくない雑魚のまま終わることに未練があるのだろうか。

 

 話しているうちに巨大な階段を下り終わり、最下層へとたどり着く。

 

 階段を降りきると周囲には襲撃者を迎える広間となっており、そこには複数の影が待機していた。

 ヘロヘロたちメイド好きが、時間とお金と情熱を注ぎ込んで作り上げた傑作たち。プレアデスーー

 

「ソリュシャン……」

 

 自身が作ったNPCと久方ぶりに会って、感きわまるヘロヘロ。

 

「私、馬鹿なことしたなあ」

 

 独り言のようにこぼす。

 

「今更になって、ここに来れなかった時間があまりにももったいなかったって、後悔してる」

 

 泣き言のように小さくこぼれ落ちた言葉に、モモンガの胸が詰まる。

 そう、言ってくれる仲間がいてくれた。

 それだけで、自分が注いできたもの全てが報われる気がした。

 来なかったことを後悔してしまうほどの場所を、最後のこの瞬間まで残すことができたのだ。

 

 

 それはきっと、誰に理解されなくても、誇っていいことだ。

 

 

 

 4

 

 仮想空間であることを理解していて尚、圧倒される光景が広がる玉座の間。

 ここに辿り着くまで、軽口を叩き合っていた面々だが、扉を開けた瞬間に一変した空気に飲み込まれるように神妙に押し黙り、感嘆の嘆息をこぼした。

 つい最近訪れたばかりの場所であるが、モモンガはそれでも慣れずに空気に飲まれる。

 

 圧倒的な力持つ者の居城であると知らしめる広大で荘厳な部屋。巨躯を持つ異形であろうと届かない、見上げるほどに高い天井。天井から吊り下げられた絢爛豪華なシャンデリア。シャンデリアの宝石の光が生み出す美しい輝きを、精緻な金細工で飾られた純白を基調にした壁が反射する計算され尽くされた美しさ。

 

 壁にかかった四十三(・・・)の旗に、モモンガは満足気にうなずく。

 この仕込みのために、ぶくぶく茶釜とペロロンチーノ姉弟、やまいこや武人建御雷、二式炎雷それに加えてウルベルトにも協力してもらったのだ。旗に描かれるシンボルデザインから始まり、旗を作りにあたり足りない素材を集め、製作系クラス持ちがいないため他所のギルドに手を借りるための手配、旗の配置を変更するため全体的なバランスの見直し、かなり大変だった。

 だが、その大変さに見合う結果になった。

 最初からここにあったかのように、玉座の間に馴染んでいる。

 

 たっちは玉座の間の変化には気づいていないらしい。ウルベルトと黙って顔を見合わせる。多分、顔が動けば悪戯の成功を心待ちにする子供のようになっているはずだ。

 

 玉座の間にメイドたちを引き連れた四人が辿りつくと、続々とNPCたちがやってくる。

 

 たっちの妻であるリーザと娘のミーシャも、セバスと六階層の守護者たちを伴い玉座の間に到着した。

 リーザは部屋に入るなり圧倒され、どこでも元気にはしゃぎ回るミーシャも、今までいた場所とは全く違うと全身を威圧するような玉座の間の空気に呆けた様子で固まった。ここはおいそれと声をあげていい場ではない、そう小さな子供にすら理解できてしまう荘厳な間ーー

 

 そんなふたりにモモンガは歩みよる。

 

「今日は来てくださってありがとうございます、リーザさん、ミーシャちゃん」

 

「モモンガおじさん! 今日は招待してくれてありがとう! とっても楽しかったよ」

 

 子供の屈託のない感謝に、心の中が暖かくなる。

 子供って本当にいいなあとしみじみと感じる。だがそれと同時に、我が子どころか結婚、そもそももっと前段階の恋人という存在と全く縁のない生活を送っていることに少々のわびしさを覚えてしまった。

 

 ヘロヘロの紹介も簡易に済ませると、リーザはおずおずと礼を告げた。

 

「いえ、大事な日なのに私たちもお邪魔させてもらってこちらこそありがとうございます。夫や娘とこうやって遊ぶのは本当に楽しくて……それが、今日で終わりだなんて、なんだか寂しくなりますね。でも、友達同士での集まりに、本当にお邪魔してよかったのかしら?」

 

「もちろんですよ。お二人にも来てくださらないとーーそれで、そのことなんですが」

 

 モモンガはちょっともったいぶって間を置く。

 

「ーーあの、旗を見て欲しいんです。壁に掛かっている旗なんですが、ギルドメンバー全員のイメージからそれぞれの文様をデザインして、あしらっているんですが、今まで旗は四十一ありました」

 

 あ、と声をあげたのはたっちだ。

 旗を見てもなにを伝えたいのか意図がまだ理解できないリーザは首を傾ける。

 

「今、あの旗は四十三枚、飾られています。サプライズをしたかったので、旗のデザインはお二人の意向を無視してしまったんですが気に入っていただけると嬉しいです」

 

「あの、モモンガさん、もしかして」

 

 声が動揺で上ずっている。

 たっちの斜め後ろに立ったウルベルトが無言でサムズアップしていた。

 ヘロヘロは笑顔のアイコンを浮かべている。

 

「今まではギルドのルールがあって今までお二人をギルドメンバーに迎え入れられませんでしたが、今日はユグドラシル最後の日。杓子定規にならずに、全員が楽しく終わろう、ってみんなで決めたんです」

 

 その”みんな”が四十一人全員でないことに寂しさを感じるが、ほとんどメンバーが集まらなくなり解散して消えていくギルドが多い中、一緒にゲームを遊んだ仲間と一緒に最後を飾れるのは僥倖だろう。

 

「リーザさんとミーシャちゃん、二人にアインズ・ウール・ゴウンの一員になってもらいたい。ギルドを代表して、スカウトさせてください。今までこんなにギルドに貢献してもらったのに、最後までお客様扱いはしたくないんです。あの、お嫌でしたか?」

 

 恐る恐る問いかけるモモンガに、リーザは首を振る。

 

「嬉しいです、とっても」

 

 社交辞令ではない、感情がこもった柔らかな女性の声。

 モモンガは安堵の息を吐きながら頬を緩める。

 

「ええと、ミーシャもパパと仲間になれるっていうこと? 子供だから、ミーシャはギルドっていうのに、入れなかったんだよね?」

 

「そう、ミーシャちゃんも、たっちさんや俺たちの仲間になってくれないかな?」

 

「うん! なりたい! 仲間に、なるよ!」

 

 力一杯頷く。

 

「あれがミーシャちゃんの旗だよ。そして、隣の旗がリーザさんの、お母さんの旗だ。反対側が、たっちさんの旗。」

 

 モモンガが指し示すと、ミーシャは一瞬固まった後飛び跳ねて喜んだ。

 

「可愛い! 素敵だよ、モモンガさん大好き!」

 

 予想以上に喜んでくれて、モモンガは相好を崩した。

 

「おれだけじゃなくて、ペロロンチーノさんや茶釜お姉さんに、やまいこお姉さん、武人おじさんに弐式さん、ウルベルトさん、みんながミーシャちゃんたちのために作ってくれたんだよ」

 

「良かったね、美沙。ありがとうございます、モモンガさん。それと、ウルベルトさんも」

 

 落ち着きなく旗を指差し母親と父親に視線を移動させて可愛いと連呼している。そんなミーシャと娘を見守るリーザの肩に手をおき、たっちは頭を下げた。

 

「別に、あんたのためじゃありませんから。お礼を言われる筋合いはないです。モモンガさんにも頼まれちゃいましたし、ミーシャちゃんとリーザさんのためです」

 

「ウルベルトおじさんもありがとう! ペロロンお兄さんも、茶釜お姉ちゃんも、みんなみんな大好きだよ!」

 

 誰も得しないおっさんのツンデレは幼い少女の大好き発言によって穏やかに流され、微笑ましい空気に満たされる。

 

(あんた、馬鹿だよ。ペロロンチーノさん。なんで今日、ここにいないんだ)

 

 ミーシャの発言を聞いたら一番狂喜乱舞して喜びそうな男の不在を心の片隅でぼやく。

 

「たっちさん、お礼を言われることじゃないんです。むしろ、ルールに縛られずにもっと早くしていれば良かったなって思います。俺が意気地が無いからこんなギリギリになるまで言い出せなくて、謝って礼を言わなきゃいけないのは俺の方なんです。だって、リーザさんとミーシャちゃんは、私たちの大切な仲間なんですから」

 

「そう言ってもらえると、すごく嬉しい。なんだか、面映ゆくなっちゃいます」

 

「仲間! 友達! ギルド! モモンガさんともウルベルトおじさんともヘロヘロおじさんともみんなと友達っ。アウラお姉ちゃんともマーレお兄ちゃんも仲間で、お友達なんだよ。ずっとずうっとお友達なの。もう、会えなくなっても、大切な友だち。絶対に忘れないんだ」

 

 明るさの中に誓いをにじませる少女。

 

(会えなく、なるんだよなあ。分かってても、覚悟してても辛いよ。終わりかあ、なんで終わるんだよ。こんなに、楽しくて幸せで仕方ないのに)

 

 二人の加入の操作をしながら、落ち込んだ気分を出さないよう努めて明るく振る舞った。

 

 玉座の間がNPCたちで埋まっていくにつれ、モモンガは目眩のような感覚を覚えた。

 仲間がいて、自分の我儘にも付き合ってもらって、幸せなはずなのにこの現実から目を逸らしたい。

 

 終焉がひしひしと近づいてくる。

 時計を見たくない。

 でも、終わるからには綺麗に終わらせたい。

 みんなが笑えるように。

 とても大切な思い出になるように。

 ユグドラシルで過ごした時間は宝物だった、とそう言いたい。そう仲間達に言って欲しい。

 

「もうそろそろ、ですね」

 

 名残惜しげなたっちの声、突きつけられた現実に胸が潰えるような気がした。

 

「モモンガさん、ほら貴方がそこに座らないと締まらないって」

 

 ウルベルトが玉座を指差す。

 

「そうそう、あの玉座に相応しいのはモモンガさんしかいないんですから」

 

 ヘロヘロが同意する。

 

「さあ、モモンガさん、玉座に」

 

 たっちも促してくる。

 

 部屋の最奥にある玉座。ギルド発足以来、そこはモモンガの座るべき椅子と定められた至高の座。

 仲間に薦められ、階段を上がり、モモンガは玉座に座る。

 

 さて、終わりを始めるとするか。

 

 ふう、とため息をつきスタッフを強く握る。

 ここからが正念場だ。

 

 役になりきるのが恥ずかしいなど言ってられない。

 変に羞恥心が混じると、かえって格好悪くなる。

 最高のロールで、感動的に締めくくるのだ。

 ペロロンチーノさんとも約束したではないか。絶対に格好いい魔王ロールで最後を飾ると。

 だが、土壇場になってモモンガは気付いた。

 

(あれ、でも別にロールしなくても良くないか?)

 

 調子よく煽ててくる今はここに集まれなかった仲間たちにその方が絶対にいいよ! と勧められて勢いで頷いてしまったが、いざ聴衆(ほとんどが意思のないNPCだが)の前に一人だけ座ると、経験したことのない緊張が襲ってくる。

 

(なんで俺一人だけ座って、偉くもないのに偉そう……でも、何か喋らないと間延びするし、時間もなくなるし、ええい、ままよ!)

 

 モモンガは大事な場面の寸前に襲いかかってきた羞恥心をかなぐり捨て、話し始める。

 

「皆、今日はよく集まってくれた」

 

(まだ小さいミーシャちゃんには退屈だろうし、リーザさんはロールプレイだなんてよく分からないだろうからドン引きされるんだろうな。でも、あと少しの間だけお付き合いください、すみません)

 

 心の中で二人に土下座した。

 

「今日、世界(ユグドラシル)はついに終焉(おわり)を迎える。いかな隆盛を誇ったアインズ・ウール・ゴウンとてそれは免れえぬ。このままであれば世界の消滅と共に、過去の栄光もろともナザリックは消滅するだろう」

 

 できうる限り、厳かな声というものを意識する。

 しんとした玉座の間にそれは思いのほかよく響く。

 

 滑りそうな時はモモンガをけしかけた者たちの一人でもあるウルベルトがなんとかカバーしてくれることに期待しながら、必死に考えた台詞を脳内で反芻する。

 

「しかし、それを許す私たちではない。最愛の我が子でもあるシモベたちよ、お前たちまで崩壊に巻き込まれることは決してさせない。私たちアインズ・ウール・ゴウンの大秘術を持ってユグドラシルとは違う別の世界に転移してもらう」

 

 大秘術とは何か? と問われたら、モモンガは知らんと答えるしかない。単なる雰囲気作りの勢いである。こう、それっぽい何かになりさえすればいいのだ。

 要は、このままNPCたちのデータが消えてしまうだけなのは惜しく、悔しく、悲しいから、彼らは消えるのではなく、これから別の世界に行って俺たちの代わりに一大冒険活劇を繰り広げるんだよ! という妄想を過剰なまでに仰々しく語っているのだ。

 意思の持たない者たちが消えていく者たちが、その悲しさなどわかろうはずもないから、これは残される自分たちのための儀式。

 NPCたちがまるで生きているように振る舞い、『俺たちの冒険はまだまだこれからだ!』を彼らにさせて、ユグドラシルが終わった後も、彼らは消えてしまうのではなく、別の世界で生きているのだと考えることで喪失を紛らわせ癒すのだ。

 

「転移した先がどのような場所かは、私たちを持ってしても分からない。だが、お前たちであればどんな場所であろうと、ナザリックの名を知らしめてくれると信じている」

 

 モモンガはギルド武器の権限で設定画面を開き、予め用意していたデータを素早くペーストする。

 子供NPCには、プレイヤー不在時のギルド管理代理能力というものが搭載されている。

 敵襲による破壊したギルド内の修復、NPCの復活、罠の配置変更、スキルに応じたギルド維持のために必要な金貨の精製など様々な項目がある。

 プレーヤー人口が少なくなり、ギルド管理が困難になってきたが故に後発的に搭載されたこの機能は、拠点NPCは持つことができないものだ。

 ウルベルトの子供NPCであるイリニに譲渡できる権限を、最大まで拡張する。

 

「イリニよ、此方に」

 

 モモンガの命令により、イリニが壇上に上がり跪く。

 

「このナザリックを、私の宝を、私たちの宝を、お前に託そう」

 

「え」

 

 最後は魔王ロールでNPCに未来を託すような演出にすることは共に計画したが、イリニに関することは全くの寝耳に水だったウルベルトは、呆気にとられた声をあげた。

 

「このナザリックの象徴とも言うべきスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン。今日からお前がこの杖の所有者としてナザリックを治めるのだ。そしてシモベたちよ、よく聞け。イリニは見てわかるようにまだ幼い、この子を支え、守り、教え導き、育み愛してやって欲しい。これは命令ではなく、私たちからの願いだ。よくよく心がけて欲しい」

 

(ふふ、驚いてるなあ。ウルベルトさん。後でみんなの動画見たらどんな顔をするかな)

 

 自分一人だけ、しかも大勢の前でロールさせるのは酷くないか? とモモンガごねて、ウルベルトには秘密で製作者からNPCに未来を託すロールをしてもらっているのだ。シナリオは一本、『これで最期のお別れになるけれど、新天地で頑張って欲しい。イリニがナザリックを継ぐから、幼いあの子を支えてやって欲しい』という感じの内容だ。これに関してはたっちにも協力してもらっているので、最終的に巻き込み事故にあったモモンガ自身を含めて、全七本の動画が作成された。

 

(ウルベルトさんが、未来を託すロールを一番して欲しがってたからなあ。俺も、NPCが消えるのは悲しいけど、俺は、みんなと遊べなくなるのが一番悲しいし辛い。でも、ウルベルトさんは、イリニとデミウルゴスに会えなくなるのが一番辛いんだろうな。なんだか、イリニには思い入れがあるみたいだし……)

 

 ウルベルトがゲームを続けていた理由がNPCの二人であるのならば、ユグドラシルが終わってもみんなと会えたり違うゲームで遊んだりする手段がある自分よりも彼のほうがずっと辛いはずだ。

 

(違う世界でも我が子が大切にされている。そう思えたなら、ウルベルトさんの気が、少しでも軽くなるといいな)

 

「私たちは共に行けぬ。だが、何処であろうとどんな時であろうと、お前たちの幸せを願っている」

 

 ちら、ちら、と眼下にいる仲間たちに視線をやり、モモンガは彼らにも何かいうように促す。自分だけ話しているのもそろそろ辛くなってきた。察してくれたのだろう。たっちたちは壇上に上がってくれる。

 

「セバス、あとは任せた。ナザリックの風紀を守れそうなものは数少ないからね、とても大変だろうけれど君の働きに期待している。みんなも、セバスをあまり困らせないでくれると嬉しい」

「ソリュシャン、みんな、なかなか会いに来れなくてごめんね。信じられないかもしれないけど、君たちは私の大事な宝物だ」

「じぃじぃ、アウラお姉ちゃんマーレお兄ちゃん、猫ちゃん、今までありがとう、楽しかったよ、バイバイ」

「美沙が笑えるようになったのは、あなたたちがいてくれたおかげ。本当にありがとう」

 

 リーザやミーシャまで一緒にNPCに声をかけてくれた。このノリに付いてきてくれるなんて、と感動する。

 ウルベルトは少し黙ったあと、イリニに近寄って何事か耳打ちし、デミウルゴスに向かって口を開く。

 

「デミウルゴス、あとは任せた。どんな困難な状況に直面しようとなにひとつ間違いなく動けることを確信している。それだけの力があると俺は知っている。有した知識になんら間違いがないことを、俺は分かっている。俺はお前に期待しない。なぜなら、必ず結果を出すことを知っているからだ。曖昧な『期待』なんていうものをかける無駄なことはしない。だが、それは悪魔という異形にとってだけ正しい結果だということを忘れるな」

 

(なんか格好いいこと言ってる! すごい! これが真の厨二病の渾身ロール)

 

 ウルベルトの内心の悲しさへの同情も吹き飛び、一瞬、本気で感心してしまった。

 すぐに気を取り直し、最後の〆に入る。視界の端にある時計を確認する。

 あと少ししかない。

 

「さて、最後の命令だーーお前たち、アインズ・ウール・ゴウンを不変の伝説とせよ」

 

 この台詞の次は、たっちとウルベルトの合の手が入る段取りになっている。

 

「アインズ・ウール・ゴウンは、永遠に不滅なり!」

「アインズ・ウール・ゴウンこそ、世界の絶対者なり!」

「アインズ・ウール・ゴウン万歳!」

「アインズ・ウール・ゴウン万歳!」

「アインズ・ウール・ゴウンばんざい!」

 

 ミーシャまで混じってくれた。

 ヘロヘロの声も重なる。

 リーザの声も。

 たっちとウルベルトが、互いに負けてたまるかとばかりに声を張り上げている。

 モモンガも声を上げる。

 こんなに無我夢中で叫ぶように声を出すのは、ギルドホームを手に入れるあの時以来かもしれない。

 

 

 終わる。

 終わるのだ。

 

 おわ、

 

 57、58、59、00

 

 

 01、02、03、04

 

 らない?

 

「父様! どこに行ってしまわれたのですか!? 父様ぁ!」

 

 どういうことだと、訝しみコンソールを叩くよりも先に、聞いたことのない子供の悲鳴が聞こえた。

 ありえないはずのことが起こっている。驚きと困惑に胸中がざわつくが、感情のうねりがある一定のラインを越えようとすると、勝手に鎮まっていく。モモンガは自分が自分ではないと錯覚するような冷静さで、その声の発生源を見つめた。

 

 子供が、固定された表情でただずんでいただけの小さな男の子が、不安げに眉を潜めて目尻に涙をためて父親の姿を求めている。

 小さな体には不釣り合いなスタッフ。モモンガが先ほど渡したばかりの杖を持った、作られた存在が、このように泣き叫んだりしたりしないはずの存在が、それを一生懸命に抱えながら、泣いていた。

 

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